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《第17章》—コントロール出来ない、荒れ狂う黒い感情…それが嫉妬なのか…—
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ショックで呆然と立ち尽くしたまま、亮は腕の中で崩れ折れた桂を見つめた。
「かっちゃん!」
リナが突然倒れた桂に驚いたように飛びついてくる。亮の腕から桂を引き剥がすと必死で揺さぶって声を掛けていた。
「…あ…か…つ…ら…?」
何が起きたのか分からず亮はその光景を悄然と見つめていた。
― もう…俺達…やめようよ… —
言い争いの果てに告げられた桂からの終わり。
桂を信じられず、桂を傷つける言葉を吐き続けた自分…。そしてとうとう桂が自分に愛想を尽かして終わりを願った。
…どうして…こんな事になってしまったんだ…俺は…ただ…桂を・・・愛しているだけなのに…。
「かっちゃん!しっかりして!かっちゃん!」
リナが悲痛に桂を呼ぶ声に亮ははっと我に返った。
「あ…桂っ!」
リナの腕の中から桂を乱暴に取り上げると、しっかりと抱きしめる。
「桂!しっかりしろ!桂っ!」
意識のないグニャリとした熱っぽい体を掻き抱く。あまりの桂の体の軽さに亮は桂が居なくなりそうな恐怖にゾッとした。
浅くひっきりなしに桂の唇から漏れる呼吸。
抱きしめても抱き返さない糸の切れた操り人形のような桂の腕。
その何もかもに亮は、桂に殴られた痛みを忘れて必死で桂の名前を呼び続けた。
「桂っ!桂っ!返事をしろよ!桂っ!」
「かっちゃん!大丈夫!?かっちゃん!」
リナが亮の腕の中の桂に手を差し伸べる。桂の頬に触れようとしたそれを亮は乱暴に振り払った。
「触るなっ!桂に触るなよ!」
桂の体をきつく抱きしめたまま亮はリナを睨み付けた。我慢できなかった…桂に触れることなど許さない…。
振り払われた手をもう一度伸ばしかけたリナが腕を引っ込める。一瞬の沈黙の後リナの手が今度は亮の頬に振り下ろされた。
…パシッ…という渇いた音がやけに静寂に包まれた部屋に響く。
「なっ…」
突然のリナの行為に亮が目を見張った。リナは端然と亮の正面に立つと腕を組んで亮を見据える。怒りを押し殺したような口調でリナが口を開いた。
「いい加減にして。触る、触らないの問題じゃないわ。かっちゃん、ずっと調子が悪かったはず。医者に見せなきゃ。救急車を呼んでちょうだい」
かっちゃんを殺す気なの?というリナの語気鋭い言葉に今度は亮の思考が回転を始めた。
…救急車などとんでもなかった。桂がどこに連れて行かれるか分かりやしない…。
亮は桂を抱き上げると、ベッドに横たえた。そっと毛布を掛けると、冷や汗の滲んだ熱い額を優しく撫でる。リナの目を気にすることなく、桂の額に唇を触れさせると亮は立ち上がった。
振り返って、自分を見つめているリナを真っ直ぐに見返す。先程まで感じていた怒りや怯えが影を潜めて、いつもの様子に戻った亮の姿に一瞬リナが驚いたような表情を見せた。
そんなリナを無視すると、亮は感情を見せない表情で口を開いた。
「医者を呼んでくる。桂を見ていてくれ」
そう言い置くと亮は脱兎のごとく桂の部屋を飛び出していた。
「かっちゃん!」
リナが突然倒れた桂に驚いたように飛びついてくる。亮の腕から桂を引き剥がすと必死で揺さぶって声を掛けていた。
「…あ…か…つ…ら…?」
何が起きたのか分からず亮はその光景を悄然と見つめていた。
― もう…俺達…やめようよ… —
言い争いの果てに告げられた桂からの終わり。
桂を信じられず、桂を傷つける言葉を吐き続けた自分…。そしてとうとう桂が自分に愛想を尽かして終わりを願った。
…どうして…こんな事になってしまったんだ…俺は…ただ…桂を・・・愛しているだけなのに…。
「かっちゃん!しっかりして!かっちゃん!」
リナが悲痛に桂を呼ぶ声に亮ははっと我に返った。
「あ…桂っ!」
リナの腕の中から桂を乱暴に取り上げると、しっかりと抱きしめる。
「桂!しっかりしろ!桂っ!」
意識のないグニャリとした熱っぽい体を掻き抱く。あまりの桂の体の軽さに亮は桂が居なくなりそうな恐怖にゾッとした。
浅くひっきりなしに桂の唇から漏れる呼吸。
抱きしめても抱き返さない糸の切れた操り人形のような桂の腕。
その何もかもに亮は、桂に殴られた痛みを忘れて必死で桂の名前を呼び続けた。
「桂っ!桂っ!返事をしろよ!桂っ!」
「かっちゃん!大丈夫!?かっちゃん!」
リナが亮の腕の中の桂に手を差し伸べる。桂の頬に触れようとしたそれを亮は乱暴に振り払った。
「触るなっ!桂に触るなよ!」
桂の体をきつく抱きしめたまま亮はリナを睨み付けた。我慢できなかった…桂に触れることなど許さない…。
振り払われた手をもう一度伸ばしかけたリナが腕を引っ込める。一瞬の沈黙の後リナの手が今度は亮の頬に振り下ろされた。
…パシッ…という渇いた音がやけに静寂に包まれた部屋に響く。
「なっ…」
突然のリナの行為に亮が目を見張った。リナは端然と亮の正面に立つと腕を組んで亮を見据える。怒りを押し殺したような口調でリナが口を開いた。
「いい加減にして。触る、触らないの問題じゃないわ。かっちゃん、ずっと調子が悪かったはず。医者に見せなきゃ。救急車を呼んでちょうだい」
かっちゃんを殺す気なの?というリナの語気鋭い言葉に今度は亮の思考が回転を始めた。
…救急車などとんでもなかった。桂がどこに連れて行かれるか分かりやしない…。
亮は桂を抱き上げると、ベッドに横たえた。そっと毛布を掛けると、冷や汗の滲んだ熱い額を優しく撫でる。リナの目を気にすることなく、桂の額に唇を触れさせると亮は立ち上がった。
振り返って、自分を見つめているリナを真っ直ぐに見返す。先程まで感じていた怒りや怯えが影を潜めて、いつもの様子に戻った亮の姿に一瞬リナが驚いたような表情を見せた。
そんなリナを無視すると、亮は感情を見せない表情で口を開いた。
「医者を呼んでくる。桂を見ていてくれ」
そう言い置くと亮は脱兎のごとく桂の部屋を飛び出していた。
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