〜Addicted to U〜 キスまでの距離

嘉多山瑞菜

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《第16章》― 俺だけが、お前の「特別」でいたいんだ…。他の奴がお前の特別なんて嫌だ…―

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 自分の部屋に戻ると、亮は一気に水を飲み干した。
心臓がドクドクと激しく打ち、体中の血液が凍り付いてしまいそうなほど身体は冷え切っていた。

 落ちつこう…亮は何度も自分に言い聞かせた。そう言っても、脳裏に今朝見てしまった、桂の部屋に入って行く女の姿がちらつく度に心臓が素手で鷲掴みされるような痛みが走る。

 それでも、昼過ぎ頃には平常心を取り戻しつつあった。
亮は桂からの「今夜、山本の部屋に行くから」という返信メールを見て、なんとか胸の痛みを抑え込む。

 もしかしたら、今朝の女性は桂の姉か妹かもしれない…そう思うことで亮は必死に「桂の恋人」という考えを否定した。
  
 二人の間で家族というプライベートな事が話題になった事はなかった。亮が話しを聞きたいと思っても桂がやんわりと話題をすりかえてしまう…。
その様子から、桂は家族の事を自分に話したくないんだという事が感じられて亮も話しを続けることができなかったから…。

 今朝の女はきっと桂の家族なんだ…だから、桂の部屋に入れる…。

 亮はそう考えながら、その考えを信じていない自分に気付いていた。
疑いばかりが、黒い霧のようになって胸の中を覆い尽くしていく。嫉妬と疑いが交じり合ったその霧に咽びながら亮は桂にメールを打った。

「外で会おう。7時に桜木町の駅で待っているから」

 亮は決意を持って、そのメールを送信していた。
メールが送信されたのを確認すると亮は暗澹とした気持で、リビングの窓から外の風景に眼をやった。
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