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《第16章》― 俺だけが、お前の「特別」でいたいんだ…。他の奴がお前の特別なんて嫌だ…―
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しおりを挟む仕事に集中出来なくなっていた。鬱々と繰り返しジュリオの話しを頭の中で再生する。
― どうして…恋人…だなんてお前に分かるんだ?―
― 身体を寄せ合って、腕組んで歩いてりゃ普通恋人同士だって思うだろう。―
皮肉に顔を歪めて、そう言ったジュリオ…何も言う事の出来ない自分…。
脳裏に「リナ」の名前が過ぎった…。
― 二人で駅前のシェラトンホテルに入って行った…—
追い討ちをかけるように告げられた言葉…。ジュリオは何も言わない自分に焦れたように言葉を継いだ。
― お前、ちゃんとカツラに自分の気持言わなきゃだめだ。言わなくたって伝わるだろう…なんて日本人の悪い癖だ。気持は言葉で言わなきゃ伝わらない…—
わかっているさ…そんな事。言えるものなら、とっくに言っている…。苦々しい思いのまま胸の中で呟いた。
― いいか。このままだと、絶対カツラはお前から離れるぞ。いい加減にしろよ—
「くそっ!」
亮はやり切れない思いで、机にドカッと拳を叩き付けた。すっかり癖として定着したそれは、亮に疼く痛みしか齎さない…。
叩き付けた手の痛み以上に、胸の中が締めつけられるように痛んだ。
― 俺の愛情は健志のものだから…—
― 俺と君の間に愛は存在しないから—
そう無神経に出会った時に桂に言った自分…。桂は、その言葉を今でも忘れていたりなんかしていない…。
だから…桂は女と出掛けるし、それはデートにだってなるだろう…。
桂の中で、その女への愛情が育っているのだろうか…?その女に惚れているのか…?
亮は髪の毛を掻き毟る。どうしたら良いのか分からなくなりはじめていた。
桂を愛している…その気持は変わらない…。でも、桂が俺の気持に気付かない限り、桂は俺の傍を離れるんだ…。
どんなに俺が態度で示そうとしても…桂は気付かない…絶対に…。桂はセックス・フレンドだって思い込んでいるから…。
亮はその事実を再認識すると、ブルッと身体を怯えで震わせた。
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