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≪第15章≫ —身体の中がお前を求めて熱くさざめく。それが恋なんだ…って俺はやっと気付いた…—
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しおりを挟む「山本…このオイルどこで買ったんだ?」
桂は空と思しき瓶を片手で振りながら、亮に問い掛けた。桂の声にピクッと亮は肩を震わせる。
最近逢えない日が続いて、やっと逢えた夜…。
どう言うわけか最近桂に話しかけられるだけで、身体がもろに反応してしまう自分がいた。
ガキじゃないんだから…!亮は一呼吸グッと飲み込むと、疼き出す身体を宥めながらゆっくり桂を振り返った。
桂はといえば、無邪気な笑みを浮かべたまま、ドギマギしている亮を、ん?と首を心持傾げて見つめている。
くそっ…何で煽るんだ…桂は…!
桂に自覚が無いから、なおの事性質が悪い…。
桂とセックスをしなくなってから、1ヶ月が経っていた。
…新記録だ…
その事に気づいた時に亮は驚きながら自分をそう、褒めていた。
自分にこんな忍耐強さがあるなんて思いもしなかったのだ。
最初は本当に自信が無かった…。
もちろん今でも自信は無い。桂の何気ない仕草に、こうして煽られている自分。気を抜けば、今でもその場で桂を押し倒したい衝動に駆られる。
「なんだ…?桂…?」
身体の衝動を堪える余り、声が不機嫌になってしまう。
つっけんどんな言い方になってしまって、少し後悔する。
久し振りに桂と過ごす夜なのに…。
桂は亮の言い方が気にならなかったのか…それとも気付かない振りをしたのか…亮には分かりかねたが、明るい笑みを見せたまま、もう1度瓶を振って見せた。
「これ…このオリーブオイル。もう空なんだ…。すげェ美味いからさ…。どこで売っているのか知っていれば、俺に教えてくれよ」
俺、これ買いたいんだ…そう言って、空の瓶と亮を交互に見つめた。
「…えー…。どこだったかな…」
桂が熱心に言うのに釣られて、亮も記憶を手繰り寄せる。
大体、食べる事は好きだが、自炊をした事が無いし、当然食材を自分で購入した経験も無い。
ましてや、自分の部屋にオリーブオイルが存在することすら知らなかった。
「やっぱ…わかんないか…?」
「イヤ…そんな事ない!分かる!分かるって!」
がっかりしたような桂の口調に、亮は慌てて頭を振った。
立ち上がってキッチンに入ると、桂の身体を抱き寄せる。
桂の手からオリーブオイルの瓶を取り上げると、桂の腰を抱き寄せたまま瓶のラベルを眺める。
「…んー。多分これイタリアに行った時に、試供品でもらった奴だ。こっちじゃ売ってないはずだ」
亮の答えに桂が落胆したような表情を浮かべた。
「そうか…やっぱりそうだよな。俺、見た事無いなって思ったんだけど…。イタリアの食材店で売っていれば欲しい…って思って」
「そんなに気に入ったのか?」
桂のがっかりした顔に、亮は心配して訊ね返した。亮の言葉に桂がウンと頷く。
「ぜんぜん違うんだよ。魚とかの旨味を引き出す力が…。だから俺…売っていれば欲しかったんだけど…」
残念だな…と言いかけた桂の頭を、亮が分かった…と言って胸に引き寄せた。自然口が嬉しさで綻んでしまう。優しく桂の首筋に唇を這わせると、耳元に口付けながら囁いた。
「分かった…桂。それ…俺が用意しておくから…」
「…え…?山本どうやって…?」
桂がビックリしたように顔を上げて亮を見つめた。その瞳を心地よく思いながら、亮は悪戯っぽく笑いながら、内緒、と子供のように言っていた。
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