〜Addicted to U〜 キスまでの距離

《第１２章》—お前がいない不安、お前を傷つける苦しみ、それでも手放さないのは・・・全て俺のエゴだ—

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　乱暴にコックを捻って熱い湯を頭から浴びる。着ていた洋服を破るようにして脱ぎ捨てると、亮は石鹸を掴み取って皮膚に擦りつけるようにしてゴシゴシと体を洗う。

「…これのせいだ…」

　擦っては体についた泡を流し、また石鹸で体を皮膚が剥がれそうな程の勢いで洗っていく。

　さっき、ジュリオと話しながら俯いた瞬間に自分の体から香った匂い。健志の怒りのままに染みついてしまって取れなかった…健志の香水の香り。

「くそっ…これのせいで桂は俺を…」

　亮はバシャっと体に冷たい水を浴びせ掛けると、怒りのままバスルームの壁を拳で叩きつける。

　抱きしめた時に桂にもこの匂いが分かったんだ…。
俺が普段つけないコロンの匂い…。
ニューヨークから帰った俺がこんな匂いをさせていれば…健志の残り香だと思うわけだ…。

「…畜生…」

　また…桂を傷つけた…。
　きっと桂…俺が健志と寝たと思ったんだ…。
健志を抱いた俺に…桂は抱かれたくなかった…。だから…あんな風に言ったんだ…。

「……桂……ごめん……ごめん…」

　亮は桂の泣きそうな瞳を思い出して、自分への憤りを募らせる。
健志と何も無かった…そんないい訳通じるはずもない…。

　それに、どんなに謝ってみても…この思いが桂に伝わる事は無い…。健志がいる限り、桂は自分をセックス・フレンドだと決め、自分たちは契約関係だと思い込みつづける。

…どうしたら良いんだ…。

　亮は、また石鹸を取り上げると、皮膚が赤く染まるのも構わずに後悔と自己嫌悪に苛まされながら体を擦りつづけた。