28 / 101
《第9章》―お前を手放さない為に…抱きしめる為に、俺は行くんだ―
2
しおりを挟む
ジュリオの反応は意外に冷ややかだった。亮の話しを聞き終えて、何かを考えるように空中を睨んだ。
「なんか言えよ。」
反応を示さないジュリオに焦れて亮は語気鋭くジュリオを促した。
健志と別れる…だから桂に手を出すな。そうジュリオに告げた後だった。亮の言葉にジュリオはフッと微笑むと
「分かりました。」
と返した。あっさりしたジュリオの答えに亮は拍子抜けしたようなポカンとした表情を浮かべると「ホントに分かったのかよ?」と念を押した。疑いに満ちた顔で自分を見る亮の顔にジュリオは苦笑を浮かべると肩を竦めて見せると答えた。
「SI.分かりました。リョーの気持は。リョーが桂を好きなら…私はカツラを…。」
言いながら、手元の辞書をぱらぱら捲った。目当ての単語が見つかるとニッコリ笑って
「カツラを諦めます。」
ジュリオの言葉に亮はホッと胸をなでおろした。これ以上、厄介ごとを抱え込むのは真っ平だったのだ。明らかに安心したような亮の顔つきにジュリオが呆れたように見つめた。
「ホントにカツラを大事にしますか?リョー。」
ジュリオの言葉に、亮が当たり前だと怒って返した。桂しか大事なものなんてない…。
「でも…カツラ…。リョーが愛している人、タケシだと思っています。カツラの気持…難しくなっています。」
人間観察に優れたジュリオ。短期間で桂の不安定な気持を見抜いている事に亮は心の中で舌を巻きながら答えた。
「ああ。分かっている。でも…俺は桂が好きだ。健志とはきっぱり別れる。健志と終りにしないと、桂と…始める事が出来ないんだ。」
真摯な口調の亮にジュリオは驚いたように、心持片眉を上げた。ふぅっと息を吐き出すと、少し責める様に亮を眺めて言った。
「なぜ、こんな…」
言いながらまた、辞書を捲る。そのジュリオの動作を亮は苛々しながら眺めた。ジュリオの言いたい事など分かっていた。
「おい、いちいち辞書引くなよ。お前の言いたいのは、馬鹿げた事を始めたのかって事だろ。」
「そうです!なぜこんな愚かな事始めたのですか?カツラに対してひどいです。」
また、辞書を捲ると、ジュリオは責めるように続けた。
「リョー。二股掛けるのはサイテ―です。イタリアでは許しません。こんな事。」
ジュリオの言葉に、亮は憮然とわかっているさ、と返した。
分かっている…二股かけるより、これは性質が悪い…。桂は健志の存在を知っていて、自分の立場を決めている。二股なら、自分に愛情があると信じる事が出来る。でも、自分達は遊びの関係で、桂は俺の中に桂に対する愛が在るなんて…さらさら信じていない…。それが問題なんだ…。
「ジュリオ…お前の考えは全部正しいさ。俺が悪いのも分かっている。ただ…。」
言いかけて言いよどんだ言葉を、ジュリオは厳しい眼差しで続きを促した。
「ただ…なんですか?リョー。」
亮は渋々自分の過ちを認めて、言葉にした。
「ただ、最初は桂に本気になるなんて思わなかった…。お遊びのつもりで、桂もOKしていたんだ。」
言ってしまってから後悔する。聞き苦しい言い訳にしか過ぎないのは分かっていた。ジュリオは厳しい一瞥を亮にくれると、また辞書を括った。
「おい…なんだよ?」
ジュリオの様子に亮は嫌そうな表情を見せた。亮の質問を冷ややかに無視するとジュリオは辞書を忙しなく捲る。ひとしきり、静かな室内にジュリオが事典を捲るパラパラと言う紙の音が響いた。
「おぉ…有りました。」
目当てのページを見つけると、ジュリオは亮に視線を戻した。
「リョーにピッタリの言葉見つけました。」
なんだよ?と不機嫌さを顕に亮は顔を顰めた。
「ミイラとりがミイラになった。…ですね。貴方の浅はかな行動が皆を不幸にします。」
何かを言い返そうと口を開きかけた亮を、指を脅すように突き付けて左右に振るとジュリオは厳しい表情で脅すように亮に告げた。
「いいですか?リョー。もしリョーがホントにタケシと別れたら私はカツラを諦めます。それがカツラのハッピーだからです。でも、これ以上リョーが曖昧でいい加減なコトをカツラにしたら、私がカツラを愛します。」
小難しい言葉を交えて毅然とそう自分を脅すジュリオに感じる憤りを、亮は何とか押し殺すと、分かった…と答えてから、思わず弱気にポツッと呟いた。
「なんか…ぐちゃぐちゃになってるな…。」
自分と桂、健志…そしてジュリオ…4人の関係が歪んで狂ってしまっている。ましてや自分が一番立場も分も悪い。
ゲッソリと疲れたような表情を見せる亮を眺めると、ジュリオはまた辞書を括った。そして何かを見つけて、ニヤッと笑みを浮かべると、意地悪くトドメを刺すように亮に言った。
「リョー。自業自得です。貴方がすべて悪い。」
「なんか言えよ。」
反応を示さないジュリオに焦れて亮は語気鋭くジュリオを促した。
健志と別れる…だから桂に手を出すな。そうジュリオに告げた後だった。亮の言葉にジュリオはフッと微笑むと
「分かりました。」
と返した。あっさりしたジュリオの答えに亮は拍子抜けしたようなポカンとした表情を浮かべると「ホントに分かったのかよ?」と念を押した。疑いに満ちた顔で自分を見る亮の顔にジュリオは苦笑を浮かべると肩を竦めて見せると答えた。
「SI.分かりました。リョーの気持は。リョーが桂を好きなら…私はカツラを…。」
言いながら、手元の辞書をぱらぱら捲った。目当ての単語が見つかるとニッコリ笑って
「カツラを諦めます。」
ジュリオの言葉に亮はホッと胸をなでおろした。これ以上、厄介ごとを抱え込むのは真っ平だったのだ。明らかに安心したような亮の顔つきにジュリオが呆れたように見つめた。
「ホントにカツラを大事にしますか?リョー。」
ジュリオの言葉に、亮が当たり前だと怒って返した。桂しか大事なものなんてない…。
「でも…カツラ…。リョーが愛している人、タケシだと思っています。カツラの気持…難しくなっています。」
人間観察に優れたジュリオ。短期間で桂の不安定な気持を見抜いている事に亮は心の中で舌を巻きながら答えた。
「ああ。分かっている。でも…俺は桂が好きだ。健志とはきっぱり別れる。健志と終りにしないと、桂と…始める事が出来ないんだ。」
真摯な口調の亮にジュリオは驚いたように、心持片眉を上げた。ふぅっと息を吐き出すと、少し責める様に亮を眺めて言った。
「なぜ、こんな…」
言いながらまた、辞書を捲る。そのジュリオの動作を亮は苛々しながら眺めた。ジュリオの言いたい事など分かっていた。
「おい、いちいち辞書引くなよ。お前の言いたいのは、馬鹿げた事を始めたのかって事だろ。」
「そうです!なぜこんな愚かな事始めたのですか?カツラに対してひどいです。」
また、辞書を捲ると、ジュリオは責めるように続けた。
「リョー。二股掛けるのはサイテ―です。イタリアでは許しません。こんな事。」
ジュリオの言葉に、亮は憮然とわかっているさ、と返した。
分かっている…二股かけるより、これは性質が悪い…。桂は健志の存在を知っていて、自分の立場を決めている。二股なら、自分に愛情があると信じる事が出来る。でも、自分達は遊びの関係で、桂は俺の中に桂に対する愛が在るなんて…さらさら信じていない…。それが問題なんだ…。
「ジュリオ…お前の考えは全部正しいさ。俺が悪いのも分かっている。ただ…。」
言いかけて言いよどんだ言葉を、ジュリオは厳しい眼差しで続きを促した。
「ただ…なんですか?リョー。」
亮は渋々自分の過ちを認めて、言葉にした。
「ただ、最初は桂に本気になるなんて思わなかった…。お遊びのつもりで、桂もOKしていたんだ。」
言ってしまってから後悔する。聞き苦しい言い訳にしか過ぎないのは分かっていた。ジュリオは厳しい一瞥を亮にくれると、また辞書を括った。
「おい…なんだよ?」
ジュリオの様子に亮は嫌そうな表情を見せた。亮の質問を冷ややかに無視するとジュリオは辞書を忙しなく捲る。ひとしきり、静かな室内にジュリオが事典を捲るパラパラと言う紙の音が響いた。
「おぉ…有りました。」
目当てのページを見つけると、ジュリオは亮に視線を戻した。
「リョーにピッタリの言葉見つけました。」
なんだよ?と不機嫌さを顕に亮は顔を顰めた。
「ミイラとりがミイラになった。…ですね。貴方の浅はかな行動が皆を不幸にします。」
何かを言い返そうと口を開きかけた亮を、指を脅すように突き付けて左右に振るとジュリオは厳しい表情で脅すように亮に告げた。
「いいですか?リョー。もしリョーがホントにタケシと別れたら私はカツラを諦めます。それがカツラのハッピーだからです。でも、これ以上リョーが曖昧でいい加減なコトをカツラにしたら、私がカツラを愛します。」
小難しい言葉を交えて毅然とそう自分を脅すジュリオに感じる憤りを、亮は何とか押し殺すと、分かった…と答えてから、思わず弱気にポツッと呟いた。
「なんか…ぐちゃぐちゃになってるな…。」
自分と桂、健志…そしてジュリオ…4人の関係が歪んで狂ってしまっている。ましてや自分が一番立場も分も悪い。
ゲッソリと疲れたような表情を見せる亮を眺めると、ジュリオはまた辞書を括った。そして何かを見つけて、ニヤッと笑みを浮かべると、意地悪くトドメを刺すように亮に言った。
「リョー。自業自得です。貴方がすべて悪い。」
0
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
ハルとアキ
花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』
双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。
しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!?
「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。
だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。
〝俺〟を愛してーー
どうか気づいて。お願い、気づかないで」
----------------------------------------
【目次】
・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉
・各キャラクターの今後について
・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉
・リクエスト編
・番外編
・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉
・番外編
----------------------------------------
*表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) *
※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。
※心理描写を大切に書いてます。
※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください


キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる