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《第6章》―どうして、お前の胸はこんなに温かいんだ…心地良いんだ…?俺は…この胸が一番…―

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 3勝2敗…まぁまぁかな…。亮はそう結論付ける。今回はこれで良しとしよう…勝手にそう決めていた。

 やっと熱が引いて、体調が戻りつつあった。

 ずっと週末の間は桂の部屋にいることが出来た。
思い通りになったこと、ならなかったこと…色々あったけど、それでも久し振りに穏やかに過ごす事が出来た。

 亮は、桂が自分のためにブランチを作っているのを眺めていた。
今日はもう日曜日。明日からは仕事に行かなきゃいけない…。そうなると、桂のこの部屋から出なきゃいけない…。

 それが堪らなく嫌だった。

 この部屋にまた入ることが出来るのだろうか…馬鹿げた不安が頭をもたげてくるのを亮は必至で振り払った。

「出来たよ」

 桂は亮にニッコリと笑いながら、出来立てで湯気を立てている煮込みうどんを運んできた。
まだ、くどい物を受けつけない亮の胃に負担にならないように…そう桂が思って作ってくれたうどんだった。

 丁寧に出汁を取った関西風の汁にほうれん草にねぎ、しいたけにかまぼこが色取り取りに乗っている。
余りにも良い匂いで、亮はくんくんと鼻を鳴らした。その仕草に桂がまた笑う。亮に箸を渡すと「熱いから気をつけて」と言う。

 亮は箸をつけると、うどんを啜る。途端にビリっとした痛みが舌先に走った。

「あちっ!」

 うどんの熱さに亮は顔を顰めると舌先をペロッと出した。

「だから、熱いっていっただろ」

 桂がクスクス笑いながら言う。

「じゃぁ…桂が冷ましてよ」

 亮は何度目かのお願いを試みる。
ビックリしたような表情で桂が亮を見つめる。

 亮はこの2日間、なにかにつけて桂にお願いを試みた。風邪の所為で自分を心配して甘やかしてくれる桂につけ込んだのだ。

 幾つかはダメ…いくつかは良いよ…。桂の返事に一喜一憂した自分。

 今回は…?呼吸を詰めて桂の顔を亮は見つめた。

 桂はフッと諦めたように息を吐き出すと、亮の手から箸を取り上げた。茶碗にうどんをよそいながら、それをフッ―と息を掛けて冷ます。
それから、首筋まで赤くなりながら「ほら」と亮の口元にうどんを持っていった。
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