〜Addicted to U〜 キスまでの距離

嘉多山瑞菜

文字の大きさ
上 下
11 / 101
《第4章》―傷つけるつもりなんてない…。ただ…お前と…キスしたい…―

2

しおりを挟む
「あっ…あぁぁぁぁ…!!」

 ヒクッと桂が体を撓らせて、亮の手の中に今夜何度目かの吐精をする。

 鈴口を喘がせてチロチロと零す熱い蜜を愛しげに指で掬いながら、亮はその蜜を口に含んだ。

 激しい絶頂で落ち着かずに収縮を繰り返す桂の蕾の刺激にたまらず亮も抜き差しするスピードを上げ始めた。

 ギリギリまで引きぬく度に、熱く潤んだ桂の襞が亮のペニスに絡みつく。最奥を激しく打ちつける度に桂の中が淫猥に蠕動した。

 もう達する事も出来ずに、桂は亮の激しい律動に快感だけを受けいれながら熱い喘ぎを上げつづける。桂の嬌声を聞きながら、亮は自分も激しく桂の中に熱い飛沫を放っていた。

 はぁはぁと荒い呼吸を繰り返しながら、亮はグッタリと桂の胸の中に体を沈めた。弄ったせいで紅くプクッと勃っている桂の胸の果実に誘われるように、それを唇に含んで舌先で転がしながら吸い上げていく。

「…ん…」

 切なそうな吐息を零して桂が亮の体を抱きしめる。その腕の強さが嬉しくて、亮は飽かずに桂の乳首に愛撫を執拗に施しつづけた。


…そう…健志からの電話さえなければ…。


 乳首の甘い硬さに夢中になって舌先で転がしながら、亮は恋人からの…電話を思い出す。

…あの電話さえなければ…もっと…桂は俺に心を開いてくれたかもしれないのに…。

 留守電に健志がメッセージを吹き込むなんて思わなかった。思いもよらない…誤算だった。

あの瞬間まで、桂は絶対に俺のものだった…。

 最初、健志の声が流れてきた時一体何が起こっているのか、亮はわからなかった。桂の方が素早くて、パッと亮の胸の中から飛び出すと、呆けたままの亮に早く電話に出るよう促したのだ。

『俺…煙草吸ってくるから…。ゆっくり話して…。久し振りなんだろ…。』

 全てを悟ったような、穏やかな笑みを浮かべてそう告げた桂。

 多分…俺の為にそう言った…。
煙草なんか吸えやしないのに…。
自分がいちゃいけない…そう思ったんだ…。

俺と健志の邪魔をしちゃいけない…と…。

 いつの間にか、桂は意識を失ったのか眠り始めていた。
亮は胸への愛撫を止めると、静かに体を起こして桂の顔を眺める。そっと汗ばんだ額にくちづける。  

 桂は、俺が健志と話していても平気なんだろうか?
どうして…電話に出るなって…言わないんだろう?それとも俺と健志の関係に興味は無いのか…?

 いや…違う…。 
 そこまで考えて亮はその考えを否定した。

 桂は絶対…俺に惚れている筈。だったらどうして健志に嫉妬しない?普通するだろ…。  

 え…?…俺は…桂に嫉妬して欲しいのか…?

 亮はそっと繋がりを解くと、桂の体を胸の中に抱きしめる。フッと自分たちの始まりを思い出した。 

 自分が桂に突き付けた虫の良い要求。

―もっと軽く考えて欲しいんだ—

―お互い軽いノリの恋愛を楽しむ。ドライでライトな関係。都会的でお洒落じゃない?—

 それを聞いて桂は傷ついたような瞳で返した。

―良く分かりました。ようはセックスフレンドって事ですよね—

 セックス・フレンドって言う言葉が嫌で…俺は色々へ理屈を並べた。

でも…そうなんだ…。
亮は気付く。

 亮は桂の瞼にもう一度キスをする。桂が擽ったそうに無意識に顔を捩った。

自分に、健志という恋人がいる以上…いくら格好つけた事をいくら言ってみても…桂は俺のセックス・フレンド…なんだ。

 その事実に亮はギョッとした。

 だから、桂は自分と距離を置くし、キスもしない、マンションの場所も教えない…そして嫉妬もしない。

―期間は10ヶ月。割り切った大人の関係。そして愛情は抜き。そうですよね—

…そう…愛情は抜き…俺はそう言った。

―貴方の愛は健志さんのモノだから…俺の愛ももちろん俺が愛する人のモノって事ですよね—

…そう…俺の愛情は健志のモノ…。

―俺達は愛情抜きの関係。心は自由。
ということは貴方と健志さんの間で存在する、束縛や嫉妬心は当然無いって事ですよね。ドライでライトな関係…ですよね—

…そう…。ドライでライトで軽い恋愛…。束縛も嫉妬も俺と桂の間には存在しない…。

 自分たちの関係を整理したい…桂はそう言ってこの言葉を並べた。
そして…あの時は自分もその通りだと思っていた。お遊びだから…恋人ごっこだから…セックス・フレンドだから…。

 亮は、苛立たしげに髪の毛を掻き毟った。自分がどういう状況に陥り始めているのかが朧気ながら理解できたのだ。

 桂は何も悪くない…。俺が望んだ通りに振舞っている…。悪いのは俺だ…俺なんだ…。

 亮は桂をもう一度強く抱きしめる。

 悪いのは俺なんだ…。俺の方が契約を守れていないのかもしれない…。
でも、俺はどうすれば良いんだ?俺は桂とどうなりたいんだ…?

 亮は、混乱したまま桂を見つめ続けた。セックス・フレンド…割り切れていない自分に気付いて亮は愕然としていた。
 
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

ハルとアキ

花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』 双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。 しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!? 「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。 だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。 〝俺〟を愛してーー どうか気づいて。お願い、気づかないで」 ---------------------------------------- 【目次】 ・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉 ・各キャラクターの今後について ・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉 ・リクエスト編 ・番外編 ・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉 ・番外編 ---------------------------------------- *表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) * ※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。 ※心理描写を大切に書いてます。 ※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

あなたが好きでした

オゾン層
BL
 私はあなたが好きでした。  ずっとずっと前から、あなたのことをお慕いしておりました。  これからもずっと、このままだと、その時の私は信じて止まなかったのです。

処理中です...