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第10章 狂気の狭間、深まる気持ち
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真理はウクィーナ共和国南部、ガンバレン国国境にほど近い場所にある難民キャンプ—ザルティマイ・キャンプに来た。
ここには、内紛でガンバレン国より逃げてきた390人近いガンバレン国民とガンバレン国に一時期、街を占拠され住む家を失ったウクィーナ共和国民150人余りが難民として住んでいる。
お互い、諍うこともせず協力しあって暮らしていると、キャンプを運営している国際赤十字とUNHCRから報告されている稀有なキャンプだ。
もっともガンバレン国民を難民として受け入れたウクィーナ共和国の度量の大きさが一番だ。
最初、その話しを聞いた時、真理は不思議でならなかった。
ガンバレン国民はともかく、ある日突然理不尽に攻め込まれ、街を攻撃され、焼き払われ・・・家族を殺され、日常を奪われたウクィーナの民がどうしてガンバレン国民と共同生活が出来るのかと。
その理由を掴むために、ガンバレン国の戦争取材の最期の目的地として、この場所を選んだ。
もし掴めれば、この戦争の真実が少しは見えるかもしれない、そう思ったのだ。
「俺は戻るぞ」
ランディは真理と一緒にこのザルティマイキャンプまで一緒に戻ってきた。ここからウクィーナの首都に向かい、グレート・ドルトンに戻ることにしたようだ。
仮の停戦合意は出来ているが、ガンバレン国は誰が代表として戦後処理をするかで、揉めておりなかなか先に進まないでいる。
そのためランディは取材に一区切りをつけたようだ。
開戦から2ヶ月、停戦から二週間が経過していた。
「気をつけて帰ってね、ロニー叔父さまによろしく伝えて」
真理はランディの顔を見て、不機嫌顔の叔父を思い出してクスリと笑った。
ロナルドからは、停戦したのだから、一回帰国しろと何度も言われているが、真理はキャンプ取材を理由に帰国を引き延ばしている。
恐らく聡い叔父はその理由が王子だろうとわかるのだろう、真理の返事に機嫌が悪くなる一方だ。
「了解、先に俺がお前の叔父さんの機嫌を取っといてやる。それで、まぁ、ミリー、あれだな」
ランディはニヤニヤしながら、とんでも無いことを言い出した。
「お前さんのコレが・・・」
グッと親指を突き出すと、真理の耳元に口を寄せて誰にも聞かれないように囁く。
「我が国の軍神とは、な」
「ランディ!?何を言って!?」
真理は嘘がつけない。思わぬことにみるみるうちに顔が真っ赤になる。
それを楽しそうにランディは眺めて、続けた。
「ビクトールの番組は見たが、まさかお前だとは想像もしなかった。あんなスゴイ女がいるなんて、ちと信じられなかったからな。理想を語ってんじゃねぇか、頭沸いてんじゃねえって思ってたくらいだ。でも、ミリーだと思えば、あの内容は納得できるなぁ」
もう隠せない、そう腹が決まると真理は赤い顔のままランディを見つめた。
「どうして?」
分かったのかと問えば、ランディは真理の左腕を取った。
「コレだよ、コレ」
アレックスから貰った軍用腕時計を示す。
「これは軍用腕時計を手がけるジョイナックスのものだ。それ自体はドルトンの軍人だったら、支給されるから珍しくない。だが、これは・・・ジョイナックスの特注品で一般販売されてない、王室が企画した特別モデルだ。これを嵌めてるのは、世界でただ一人、我らが軍神様だけだ。お前は知らんかもしれんが、ここに入ってる赤いラインとこの特殊な形状は出回ってないからな」
笑い続けたまま、ランディは
「あの会見で同じものを付けてたのを俺は確認してる」と言い切った。
ランディは軍装備マニアだ。彼の博識さに敵う相手を見たことないが、こんな所まで見抜くとは・・・。
真理は首を竦めた。
「さすがね、ランディ」
自分の正解が嬉しかったのか、ガハハと豪快に笑うと、彼は真理の肩を叩きながらハグをした。
「さすが規格外の聖母《マドンナ》だ。ミリーの相手が軍神なんて、俺は嬉しいよ。あの王子がしっかりした会見が出来た理由がわかったような気がした。ミリーがいるからだな」
そんなことはない・・・褒められて気恥ずかし過ぎる。
ランディは体を離すと真理の頭を幼子にするようにポンポンと叩いた。昔、よくしてくれた仕草だ。
「まぁ、あれが相手じゃ色々大変だろうが頑張れよ。それに、今回も一緒に取材が出来て、生きてここまで来れて嬉しかったぜ」
戦地で会えば、いつも可愛がってくれた先輩の言葉に真理は頷いた。
生きて、は二人が取材を終える時の合言葉だ。
「次はデイリー・タイムズで会いましょう」
ランディはニヤリと笑うと、いやいやと首を左右に振った。
「先にお前のオトコを紹介してくれよ、一緒にエールでも飲もう」
そう言って、また彼は空に突き抜けるほどの大きな声でガハハと笑った。
ここには、内紛でガンバレン国より逃げてきた390人近いガンバレン国民とガンバレン国に一時期、街を占拠され住む家を失ったウクィーナ共和国民150人余りが難民として住んでいる。
お互い、諍うこともせず協力しあって暮らしていると、キャンプを運営している国際赤十字とUNHCRから報告されている稀有なキャンプだ。
もっともガンバレン国民を難民として受け入れたウクィーナ共和国の度量の大きさが一番だ。
最初、その話しを聞いた時、真理は不思議でならなかった。
ガンバレン国民はともかく、ある日突然理不尽に攻め込まれ、街を攻撃され、焼き払われ・・・家族を殺され、日常を奪われたウクィーナの民がどうしてガンバレン国民と共同生活が出来るのかと。
その理由を掴むために、ガンバレン国の戦争取材の最期の目的地として、この場所を選んだ。
もし掴めれば、この戦争の真実が少しは見えるかもしれない、そう思ったのだ。
「俺は戻るぞ」
ランディは真理と一緒にこのザルティマイキャンプまで一緒に戻ってきた。ここからウクィーナの首都に向かい、グレート・ドルトンに戻ることにしたようだ。
仮の停戦合意は出来ているが、ガンバレン国は誰が代表として戦後処理をするかで、揉めておりなかなか先に進まないでいる。
そのためランディは取材に一区切りをつけたようだ。
開戦から2ヶ月、停戦から二週間が経過していた。
「気をつけて帰ってね、ロニー叔父さまによろしく伝えて」
真理はランディの顔を見て、不機嫌顔の叔父を思い出してクスリと笑った。
ロナルドからは、停戦したのだから、一回帰国しろと何度も言われているが、真理はキャンプ取材を理由に帰国を引き延ばしている。
恐らく聡い叔父はその理由が王子だろうとわかるのだろう、真理の返事に機嫌が悪くなる一方だ。
「了解、先に俺がお前の叔父さんの機嫌を取っといてやる。それで、まぁ、ミリー、あれだな」
ランディはニヤニヤしながら、とんでも無いことを言い出した。
「お前さんのコレが・・・」
グッと親指を突き出すと、真理の耳元に口を寄せて誰にも聞かれないように囁く。
「我が国の軍神とは、な」
「ランディ!?何を言って!?」
真理は嘘がつけない。思わぬことにみるみるうちに顔が真っ赤になる。
それを楽しそうにランディは眺めて、続けた。
「ビクトールの番組は見たが、まさかお前だとは想像もしなかった。あんなスゴイ女がいるなんて、ちと信じられなかったからな。理想を語ってんじゃねぇか、頭沸いてんじゃねえって思ってたくらいだ。でも、ミリーだと思えば、あの内容は納得できるなぁ」
もう隠せない、そう腹が決まると真理は赤い顔のままランディを見つめた。
「どうして?」
分かったのかと問えば、ランディは真理の左腕を取った。
「コレだよ、コレ」
アレックスから貰った軍用腕時計を示す。
「これは軍用腕時計を手がけるジョイナックスのものだ。それ自体はドルトンの軍人だったら、支給されるから珍しくない。だが、これは・・・ジョイナックスの特注品で一般販売されてない、王室が企画した特別モデルだ。これを嵌めてるのは、世界でただ一人、我らが軍神様だけだ。お前は知らんかもしれんが、ここに入ってる赤いラインとこの特殊な形状は出回ってないからな」
笑い続けたまま、ランディは
「あの会見で同じものを付けてたのを俺は確認してる」と言い切った。
ランディは軍装備マニアだ。彼の博識さに敵う相手を見たことないが、こんな所まで見抜くとは・・・。
真理は首を竦めた。
「さすがね、ランディ」
自分の正解が嬉しかったのか、ガハハと豪快に笑うと、彼は真理の肩を叩きながらハグをした。
「さすが規格外の聖母《マドンナ》だ。ミリーの相手が軍神なんて、俺は嬉しいよ。あの王子がしっかりした会見が出来た理由がわかったような気がした。ミリーがいるからだな」
そんなことはない・・・褒められて気恥ずかし過ぎる。
ランディは体を離すと真理の頭を幼子にするようにポンポンと叩いた。昔、よくしてくれた仕草だ。
「まぁ、あれが相手じゃ色々大変だろうが頑張れよ。それに、今回も一緒に取材が出来て、生きてここまで来れて嬉しかったぜ」
戦地で会えば、いつも可愛がってくれた先輩の言葉に真理は頷いた。
生きて、は二人が取材を終える時の合言葉だ。
「次はデイリー・タイムズで会いましょう」
ランディはニヤリと笑うと、いやいやと首を左右に振った。
「先にお前のオトコを紹介してくれよ、一緒にエールでも飲もう」
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