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第8章 王子の宣言と変化
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バサバサとデスクに新聞、タブロイド類が置かれていく。
当のアレックスはネットでエゴサーチをしてはニヤついていた。
国民の反応は概ね祝福ムードだ。一部からは王族がテレビ番組を利用したことに批判もあるが、もともとトーク番組、なにを話すかは自由だ、とアレックスは思っている。
番組を観た国王陛下と王太子夫妻からは、次男坊のやんちゃな方法に苦笑しながらも「頑張るように」との言葉を賜った。
それほど、陛下にも王太子夫妻にも【ミス・ハロルド】は鮮烈に印象に残ったのだろう。
「私邸からは、あらかたのマスコミは撤退しました。残っているのはフリーのパパラッチが10数名程です」
テッドの報告に、そうか、とアレックスは答えた。
「ビクトル・ファーセンのトークショー」の結果は上々だ。
生放送で出演したが、番組終了と同時に、アレックスは全メディアに王室府を通じて、正式に通達を出した。
ザ・ワールドが掲載した私邸にいる女性は、番組で説明した通り、恋人であること。
彼女の氏名、経歴、写真は民間人であることから、当面は公表しない。
この通達以降、その女性のプライバシー、肖像権の管理は王室府にて行う。
王室府の許可なき報道は許さない、報道した場合はプライバシーの侵害として法的措置に訴える。
然るべき時期が来たら、国民に女性を紹介するから、それまではプライバシーに配慮するように。
報道する側からすれば、報道の自由はどこに、と言う内容だが、個人のプライバシーを侵害する報道が多いのも事実なので、この通達に表立って異議を申し立てるメディアは出なかった。
第二王子はいままで自分が撮られ、どのように報道されてきても、なにも言うことはなかった。
だからこそ、賢いメディアは王子の本気が分かり、大人しくしておこうと思ったのかもしれない。
王子の相手が民間人だと言うところも影響しているが、何よりも「ビクトル・ファーセンのトークショー」でのアレックスの様子に毒気を抜かれてしまったというところが本音でもあると、ひとしきり業界内では噂されたのだった。
「名言ありすぎっすよ!!今年の流行語大賞は王子は不良物件っすかね!?」
「クロード、落ち着きなさい」
テッドは喧しいクロードを諌めると、チクリと嫌味を言った。
「全く、あれが婚約発表でしたら良かったのですが。恋人宣言なのが情けないですね、クリスティアン殿下」
その言葉にふんっと鼻息だけで答えるとアレックスはテーブルのタブロイドを読んだ。
どれもこれも、一面に
第二王子、本命現る!
クリスティアン殿下の恋人宣言!
今時の王子は不良物件!!!!!
王子は恋人に骨抜き、メロメロ!
などの見出しが躍っている。
アレックスとて、真理を「未来のプリンセス」にする気満々だ。
だが、まだ真理にそこまで急がせる気はなかった。
なにしろ、やっと側にいたい発言が出た段階だ。終生のパートナーにもっていくためにも、宝物のように真理との絆と愛情を育みたいと思っている。
昨夜は番組終了後、通達を出すために私邸ではなく王宮に戻った。
彼女に番組に出ることは伝えていたが、どんな風に思ったか気になったから、終わってすぐに電話したら「びっくりした」と恥ずかしそうに言ってたので、なににびっくりしたのかは今夜ゆっくり聞こう、ベッドの中で、と破廉恥極まりないことを考えていた。
これで当分、パパラッチの干渉は多少は減るだろう。
「その代わり・・・今度は殿下の過去のお相手達の嫌がらせが増えそうっすね」
クロードの面白そうな顔を睨め付けると、アレックスは不機嫌な顔で答えた。
「厳重に警戒しろ。護衛を増やせ。ソーンディック家もな」
クロードは、はいはい、もうやってるっすけど、と答えたあと、目下の懸念となっていることを口にした。
「それにしても、一体いつになったら俺はミス・ジョーンズに紹介してもらえるっすか?テッドなんて、もうアメリア様呼びっすよ。これってテッドもお気に入りってことっすよね」
側近中の側近、首席補佐官の愚痴にアレックスもテッドも苦笑した。
彼女にクロードを紹介するタイミングを逸しているのは確かだ。
真理自身は第二王子の補佐官に会っていないことを特に疑問には思っていない。王子とともにいつもいる存在とは認識してるが、自分と会うとは想像もしてないのだろう。
「そんなわけないじゃないっすか!!あんたの本命なら、首席補佐官の俺が一番にミス・ジョーンズのお世話したいっすよ。俺は後始末ばっかりで、テッドが出てばかりでずるいっす。だいたい、なんで命を助けてもらったこと話さないんすか、そこが、ややこしくなってる原因っすよ!」
まくし立てるクロードに悪いと思いつつも、アレックスはずっと考えていたことを言った。
「あーーー、命を助けてもらったことは・・・当分言うつもりはない、って言うか、ずっと言わねーかも」
「へええっ???!!!」
その言葉に、クロードが憤ろうとしたところで執務室のドアがいきなり開いた。
アポなし、連絡なしで、こういう風に開けるのはクロードと・・・
「クリスティアン殿下、失礼する」
一緒に帰国していたウィリアム卿だ。
表情を見て悪いニュースだと悟る。
「ガンバレン国が停戦合意を正式に拒否する、と通告してきたとの報告が国連安保理よりありました」
重々しい口調で告げられたそれに、アレックスのそれまでの陽気な気分は一気に重苦しいものへと変わった。
クロードもテッドも表情を厳しいものに変える。
交戦は避けられない、状況が一気に緊迫したものに変わったことに、アレックスは苛立たしげにチッと舌打ちしたのだった。
当のアレックスはネットでエゴサーチをしてはニヤついていた。
国民の反応は概ね祝福ムードだ。一部からは王族がテレビ番組を利用したことに批判もあるが、もともとトーク番組、なにを話すかは自由だ、とアレックスは思っている。
番組を観た国王陛下と王太子夫妻からは、次男坊のやんちゃな方法に苦笑しながらも「頑張るように」との言葉を賜った。
それほど、陛下にも王太子夫妻にも【ミス・ハロルド】は鮮烈に印象に残ったのだろう。
「私邸からは、あらかたのマスコミは撤退しました。残っているのはフリーのパパラッチが10数名程です」
テッドの報告に、そうか、とアレックスは答えた。
「ビクトル・ファーセンのトークショー」の結果は上々だ。
生放送で出演したが、番組終了と同時に、アレックスは全メディアに王室府を通じて、正式に通達を出した。
ザ・ワールドが掲載した私邸にいる女性は、番組で説明した通り、恋人であること。
彼女の氏名、経歴、写真は民間人であることから、当面は公表しない。
この通達以降、その女性のプライバシー、肖像権の管理は王室府にて行う。
王室府の許可なき報道は許さない、報道した場合はプライバシーの侵害として法的措置に訴える。
然るべき時期が来たら、国民に女性を紹介するから、それまではプライバシーに配慮するように。
報道する側からすれば、報道の自由はどこに、と言う内容だが、個人のプライバシーを侵害する報道が多いのも事実なので、この通達に表立って異議を申し立てるメディアは出なかった。
第二王子はいままで自分が撮られ、どのように報道されてきても、なにも言うことはなかった。
だからこそ、賢いメディアは王子の本気が分かり、大人しくしておこうと思ったのかもしれない。
王子の相手が民間人だと言うところも影響しているが、何よりも「ビクトル・ファーセンのトークショー」でのアレックスの様子に毒気を抜かれてしまったというところが本音でもあると、ひとしきり業界内では噂されたのだった。
「名言ありすぎっすよ!!今年の流行語大賞は王子は不良物件っすかね!?」
「クロード、落ち着きなさい」
テッドは喧しいクロードを諌めると、チクリと嫌味を言った。
「全く、あれが婚約発表でしたら良かったのですが。恋人宣言なのが情けないですね、クリスティアン殿下」
その言葉にふんっと鼻息だけで答えるとアレックスはテーブルのタブロイドを読んだ。
どれもこれも、一面に
第二王子、本命現る!
クリスティアン殿下の恋人宣言!
今時の王子は不良物件!!!!!
王子は恋人に骨抜き、メロメロ!
などの見出しが躍っている。
アレックスとて、真理を「未来のプリンセス」にする気満々だ。
だが、まだ真理にそこまで急がせる気はなかった。
なにしろ、やっと側にいたい発言が出た段階だ。終生のパートナーにもっていくためにも、宝物のように真理との絆と愛情を育みたいと思っている。
昨夜は番組終了後、通達を出すために私邸ではなく王宮に戻った。
彼女に番組に出ることは伝えていたが、どんな風に思ったか気になったから、終わってすぐに電話したら「びっくりした」と恥ずかしそうに言ってたので、なににびっくりしたのかは今夜ゆっくり聞こう、ベッドの中で、と破廉恥極まりないことを考えていた。
これで当分、パパラッチの干渉は多少は減るだろう。
「その代わり・・・今度は殿下の過去のお相手達の嫌がらせが増えそうっすね」
クロードの面白そうな顔を睨め付けると、アレックスは不機嫌な顔で答えた。
「厳重に警戒しろ。護衛を増やせ。ソーンディック家もな」
クロードは、はいはい、もうやってるっすけど、と答えたあと、目下の懸念となっていることを口にした。
「それにしても、一体いつになったら俺はミス・ジョーンズに紹介してもらえるっすか?テッドなんて、もうアメリア様呼びっすよ。これってテッドもお気に入りってことっすよね」
側近中の側近、首席補佐官の愚痴にアレックスもテッドも苦笑した。
彼女にクロードを紹介するタイミングを逸しているのは確かだ。
真理自身は第二王子の補佐官に会っていないことを特に疑問には思っていない。王子とともにいつもいる存在とは認識してるが、自分と会うとは想像もしてないのだろう。
「そんなわけないじゃないっすか!!あんたの本命なら、首席補佐官の俺が一番にミス・ジョーンズのお世話したいっすよ。俺は後始末ばっかりで、テッドが出てばかりでずるいっす。だいたい、なんで命を助けてもらったこと話さないんすか、そこが、ややこしくなってる原因っすよ!」
まくし立てるクロードに悪いと思いつつも、アレックスはずっと考えていたことを言った。
「あーーー、命を助けてもらったことは・・・当分言うつもりはない、って言うか、ずっと言わねーかも」
「へええっ???!!!」
その言葉に、クロードが憤ろうとしたところで執務室のドアがいきなり開いた。
アポなし、連絡なしで、こういう風に開けるのはクロードと・・・
「クリスティアン殿下、失礼する」
一緒に帰国していたウィリアム卿だ。
表情を見て悪いニュースだと悟る。
「ガンバレン国が停戦合意を正式に拒否する、と通告してきたとの報告が国連安保理よりありました」
重々しい口調で告げられたそれに、アレックスのそれまでの陽気な気分は一気に重苦しいものへと変わった。
クロードもテッドも表情を厳しいものに変える。
交戦は避けられない、状況が一気に緊迫したものに変わったことに、アレックスは苛立たしげにチッと舌打ちしたのだった。
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