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第8章 王子の宣言と変化
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ダイニングテーブルに料理を並べる。
アレックスが私邸に戻ると連絡をもらってから、宅配で食材を注文していたのだ。
帰ってきたら、美味しいものを食べさせてあげたい。そう思うのは当然だろう。
彼は食いしん坊さんだから。
私邸のキッチンはバスルームと同様、当然ながら贅沢だ。
パーティーを開催する時などのために、シェフが入る大きな専用の厨房も完備されているが、真理はプライベートスペースの普通のキッチンを使っている。
普通とは言っても、豪華な造りで調理スペースが大理石なこととガスオーブンがあることに驚いたものだ。
ガスオーブンからキャセロールを取り出すとダイニングテーブルに置いた。
焼き上がりは上々、チーズの香ばしい香りが漂う。
今日はラザニアにシンプルなコンソメスープ。温野菜のアンチョビソースをかけたサラダに、グレープフルーツとアボカドのマリネ、という献立だ。
アレックスのメンタルの揺れを思うと、少しでも家庭的な雰囲気で過ごさせてあげたいと思う。
バゲットを切り、炭酸水をテーブルにセットしたところで、アレックスが書斎から出てきた。
あえて、アルコールは出さない。
「うーん、美味そうな匂いだ」
鼻をくんくんさせながら、嬉しそうにテーブルの料理を見ると、アレックスは彼女の身体を緩く抱きしめて、鼻を擦り合わせた。
甘えたような仕草が擽ったくて、真理はふふっと笑うとアレックスを座らせた。
ラザニアを切り分け彼に渡すと嬉しそうに食べ始める。
一口食べて空腹を思い出したのか、美味いといつも通り連発しながら、ガツガツと勢いよく食べ始めた。
その様子に良かった、と安心する。
いつもの彼に戻ってきている。
さすがに朝はベッドから出られず、昼もいささか過ぎた時間のランチだから、お腹も空いたろう。
当たり障りのない会話を続け、食後のコーヒーを出したところで、アレックスが口を開いた。
「パパラッチ達からは何かされたりはしてないか?」
そういえば、忘れていたが、未だに外はすごいメディアの数だった。
真理は、外に出ないでいたから何もされてない、と答えた。
最初の数日は私邸のインターフォンが鳴ることもあったが、護衛が無視で良いと言っていたので、出なかったのだ。
その答えにアレックスは頷くと、コーヒーにミルクを入れながら続けた。
「これからどうするか、考えた」
その言葉に、真理は頷いた。どんな事であれ、アレックスがやる事を受け入れようと思っていたからだ。
自分では、自宅に戻りほとぼりが冷めるまで距離を置くのではないかと考えていた。
彼は多分今までの女性ともそうしていたのではないかと思ったからだ。
そして、メディアを無視するのだ。
記事が出るたびに、王子は無言を貫き皮肉に笑い、それで済ませてきた。
この私邸から女の・・・自分の存在が消えればパパラッチ達も諦めるだろう。
「アレク、大丈夫。私は自宅に戻るから」
「えっ!?」
その言葉に、アレックスは持っていたコーヒーカップをガチャリと乱暴にソーサーに戻すと、
飛び上がらんばかりの勢いで、立ち上がり真理の席にやってきて、彼女の身体を抱き上げた。
「ちょっ、アレクっ!!待っ!待って!ひゃあっ!」
そのまま、リビングのソファーに座ると、ギュッと抱きしめられる。真理はアレックスの膝の上だ。
「ダメだ、戻るのは許さない」
見上げると、思い詰めたような顔のアレックスで。
「絶対にダメだ、君はここにいるんだ」
射抜くような眼差しで見つめられ、あっと思う間も無く口付けられる。
「あんっ!・・・くぅん・・・」
コーヒーの香りをまとった舌が、自分のそれに絡みつくと、真理はくたりと身体の力を抜いた。
強引な舌が自分の口の中を乱暴に擦り、喉の奥まで舐められるのではないかと思うような、彼の舌に翻弄される。
これ以上ない程、深く合わされた唇に、珍しくアレックスのそれがカサついているのに気づいた。
呼吸が苦しくなって、彼の胸を軽く叩くとやっとキスを解かれ、唾液まみれになっているアレックスの唇を見て、真理は羞恥に頬を染めた。
キスなんて今さらだが、恥ずかしいのは仕方がない。
彼の唇をティッシュで拭おうと、サイドテーブルに手を伸ばしかけるが、それを阻まれて少し抱き起こされる。
アレックスが鋭い眼差しで見つめてきて、真理はここに来てやっと自分の言ったことが間違っていたことを悟った。
ただでさえ、今の彼は繊細だ。
「えっと・・・ごめんなさい、ここに居ます・・・」
その言葉に、アレックスの厳しい表情がやっと緩む。
ホッとしたように表情を緩めると、アレックスは口を開いた。
「色々考えたが、ちゃんと真理とのことを国民に説明しようと思う」
「えっ!?ええっーーーー?!」
素っ頓狂な声をあげたのは今度は真理だ。
「どういうこと」
アレックスはニヤリと悪い笑みを浮かべると
「隠すから、みんな知りたがるだろう。だから写真の女性は、大切な女性だ、と言う」
「それって・・・」
真理は言ってる意味が飲み込めず、クラクラしてきたが、アレックスは嬉しそうで。
「父上と兄上には相談していて、了承をもらった。二人とも大賛成だ。もちろん、まだ真理の名前も写真も出さないから安心して。プライバシーは侵害させない」
言われてる事はひどく重大なのに、彼の輝くような笑顔で、真理は混乱した。
「なっ、何をするの?国民に説明って?」
アレックスは動揺しまくる真理の頬と耳朶をすりすりと撫でると甘い声で答えた。
「会見にするか、囲み取材にするか、それとも他にするかはまだ考え中だけど・・・だから真理、許して欲しい」
——-君を俺の恋人だと、国民に紹介するのを——-
アレックスが私邸に戻ると連絡をもらってから、宅配で食材を注文していたのだ。
帰ってきたら、美味しいものを食べさせてあげたい。そう思うのは当然だろう。
彼は食いしん坊さんだから。
私邸のキッチンはバスルームと同様、当然ながら贅沢だ。
パーティーを開催する時などのために、シェフが入る大きな専用の厨房も完備されているが、真理はプライベートスペースの普通のキッチンを使っている。
普通とは言っても、豪華な造りで調理スペースが大理石なこととガスオーブンがあることに驚いたものだ。
ガスオーブンからキャセロールを取り出すとダイニングテーブルに置いた。
焼き上がりは上々、チーズの香ばしい香りが漂う。
今日はラザニアにシンプルなコンソメスープ。温野菜のアンチョビソースをかけたサラダに、グレープフルーツとアボカドのマリネ、という献立だ。
アレックスのメンタルの揺れを思うと、少しでも家庭的な雰囲気で過ごさせてあげたいと思う。
バゲットを切り、炭酸水をテーブルにセットしたところで、アレックスが書斎から出てきた。
あえて、アルコールは出さない。
「うーん、美味そうな匂いだ」
鼻をくんくんさせながら、嬉しそうにテーブルの料理を見ると、アレックスは彼女の身体を緩く抱きしめて、鼻を擦り合わせた。
甘えたような仕草が擽ったくて、真理はふふっと笑うとアレックスを座らせた。
ラザニアを切り分け彼に渡すと嬉しそうに食べ始める。
一口食べて空腹を思い出したのか、美味いといつも通り連発しながら、ガツガツと勢いよく食べ始めた。
その様子に良かった、と安心する。
いつもの彼に戻ってきている。
さすがに朝はベッドから出られず、昼もいささか過ぎた時間のランチだから、お腹も空いたろう。
当たり障りのない会話を続け、食後のコーヒーを出したところで、アレックスが口を開いた。
「パパラッチ達からは何かされたりはしてないか?」
そういえば、忘れていたが、未だに外はすごいメディアの数だった。
真理は、外に出ないでいたから何もされてない、と答えた。
最初の数日は私邸のインターフォンが鳴ることもあったが、護衛が無視で良いと言っていたので、出なかったのだ。
その答えにアレックスは頷くと、コーヒーにミルクを入れながら続けた。
「これからどうするか、考えた」
その言葉に、真理は頷いた。どんな事であれ、アレックスがやる事を受け入れようと思っていたからだ。
自分では、自宅に戻りほとぼりが冷めるまで距離を置くのではないかと考えていた。
彼は多分今までの女性ともそうしていたのではないかと思ったからだ。
そして、メディアを無視するのだ。
記事が出るたびに、王子は無言を貫き皮肉に笑い、それで済ませてきた。
この私邸から女の・・・自分の存在が消えればパパラッチ達も諦めるだろう。
「アレク、大丈夫。私は自宅に戻るから」
「えっ!?」
その言葉に、アレックスは持っていたコーヒーカップをガチャリと乱暴にソーサーに戻すと、
飛び上がらんばかりの勢いで、立ち上がり真理の席にやってきて、彼女の身体を抱き上げた。
「ちょっ、アレクっ!!待っ!待って!ひゃあっ!」
そのまま、リビングのソファーに座ると、ギュッと抱きしめられる。真理はアレックスの膝の上だ。
「ダメだ、戻るのは許さない」
見上げると、思い詰めたような顔のアレックスで。
「絶対にダメだ、君はここにいるんだ」
射抜くような眼差しで見つめられ、あっと思う間も無く口付けられる。
「あんっ!・・・くぅん・・・」
コーヒーの香りをまとった舌が、自分のそれに絡みつくと、真理はくたりと身体の力を抜いた。
強引な舌が自分の口の中を乱暴に擦り、喉の奥まで舐められるのではないかと思うような、彼の舌に翻弄される。
これ以上ない程、深く合わされた唇に、珍しくアレックスのそれがカサついているのに気づいた。
呼吸が苦しくなって、彼の胸を軽く叩くとやっとキスを解かれ、唾液まみれになっているアレックスの唇を見て、真理は羞恥に頬を染めた。
キスなんて今さらだが、恥ずかしいのは仕方がない。
彼の唇をティッシュで拭おうと、サイドテーブルに手を伸ばしかけるが、それを阻まれて少し抱き起こされる。
アレックスが鋭い眼差しで見つめてきて、真理はここに来てやっと自分の言ったことが間違っていたことを悟った。
ただでさえ、今の彼は繊細だ。
「えっと・・・ごめんなさい、ここに居ます・・・」
その言葉に、アレックスの厳しい表情がやっと緩む。
ホッとしたように表情を緩めると、アレックスは口を開いた。
「色々考えたが、ちゃんと真理とのことを国民に説明しようと思う」
「えっ!?ええっーーーー?!」
素っ頓狂な声をあげたのは今度は真理だ。
「どういうこと」
アレックスはニヤリと悪い笑みを浮かべると
「隠すから、みんな知りたがるだろう。だから写真の女性は、大切な女性だ、と言う」
「それって・・・」
真理は言ってる意味が飲み込めず、クラクラしてきたが、アレックスは嬉しそうで。
「父上と兄上には相談していて、了承をもらった。二人とも大賛成だ。もちろん、まだ真理の名前も写真も出さないから安心して。プライバシーは侵害させない」
言われてる事はひどく重大なのに、彼の輝くような笑顔で、真理は混乱した。
「なっ、何をするの?国民に説明って?」
アレックスは動揺しまくる真理の頬と耳朶をすりすりと撫でると甘い声で答えた。
「会見にするか、囲み取材にするか、それとも他にするかはまだ考え中だけど・・・だから真理、許して欲しい」
——-君を俺の恋人だと、国民に紹介するのを——-
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