85 / 95
第十四章 ― 分かっているさ…自分の立場なんて…自分がマリーゴールドだって事ぐらい…―
4
しおりを挟む突然の電話だった。
高橋健志と名乗ったその人は亮から桂の携帯の番号を聞いたと言った。
電話の声は確かに記憶通りの、健志の声だった。
一体どうして彼が…。湧きあがる疑問を胸に桂は健志の声に耳を傾けた。
「亮の事で話しがあります。お忙しい所申し訳無いですが、お会い頂けないでしょうか?」
丁重に、だが有無を言わさない口調で健志は桂に告げた。
動揺で震えそうになる声を押さえながら桂は了承の言葉を口にしていた。健志は、「J’s Bar」を指定すると時間を桂に告げた。
淡々と時間と場所を伝えると健志はあっさりと電話を切ってしまった。後に取り残されたように桂は呆然と携帯を見つめつづけたのだった。
健志の電話で不安ばかりが膨らんでいった。彼がどんな用件なのか…嫌な想像ばかりをしてしまう。
こういったパターンでありがちなのは修羅場だよな…桂はそう考えてため息を吐いた。
亮と自分の関係を考えれば修羅場なんてありえない。
亮の気持は健志にあるのだから。健志が嫉妬をする必要はないのだし…。しかも今は俺と亮の間に肉体関係は無くなってしまっている。
それだったら…なぜ…?桂はあれこれと健志の用件を考えつづけた。ハッと息を呑んだ。二つだけ思い当たる事がある。
「冬休みの事かな…?」
もしかして亮が冬はニューヨークに行かない…とでも言ったのかもしれない。当然怒るよな。俺の所為だと思っているのかも…。
「それとも…」
もう一つの理由を考えて桂はぎゅっと胸を押さえた。どうしてもこれを考えるたび胸がギリギリと痛んでしまうのを押さえる事ができなかった。
もう、亮との恋人ごっこを止めろと言うつもりかもしれない…。これも当然だ。
自分の恋人が他の奴と付き合っていれば、いくらごっこと言っても気分は良くないはずだ…。
「契約解除…かも…な…」
呆然と桂は呟いた。ショックを押し込めて桂はうっすらと一人笑いを浮かべた。頭を振って…覚悟を決めたのだ…。
どんな用件にしろ…毅然とした態度で接しよう…。
桂はそう決めた。
別れろと言われても絶対に取り乱したりはしない…。
プライドを持って健志の要求を受けいれよう…。
健志の要求を拒絶する権利など俺には無いのだから…。
桂は、覚悟を決め、健志に会いに行こう決意し、この場に来たのだ。
そして、今・・・・桂は亮の恋人、健志と対峙する。
0
お気に入りに追加
105
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
生まれ変わりは嫌われ者
青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。
「ケイラ…っ!!」
王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。
「グレン……。愛してる。」
「あぁ。俺も愛してるケイラ。」
壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。
━━━━━━━━━━━━━━━
あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。
なのにー、
運命というのは時に残酷なものだ。
俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。
一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。
★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる