58 / 95
第九章 普通の恋人同士なら行かないで…そう言うのかな…
7
しおりを挟む
「かっちゃん、私絶対かっちゃんって人が良すぎると思うわ」
リナの恐い表情に桂は苦い笑みを浮かべた。
「珍しく優しい言い方だな。リナ…。俺お前に馬鹿って言われるかと思ったよ」
飄々と軽口で返す桂にリナの表情が今度こそ怒りに変わっていた。
蝉の鳴き声が高くなり、熱い日の中にも秋の風が感じられるようになったお盆。桂は珍しくリナの店で飲んでいた。
桂が日本語を指導していたホステスのアイラは、先日から国に帰省していた。彼女の日本語は、本人の熱心な勉強の賜物か、かなりのスピードで上達していた。
リナはアイラに諸々の点で合格点をつけたようで、彼女が日本に戻ったら店に出すことに決めたと桂に告げていた。
ついでに「アイラがこんなに早く店に出られるのも、かっちゃんの指導のお陰だから…。お礼をさせて」と言ってリナは桂を強引に店に呼び出していた。
リナの店は都内でも高級な店の5本の指に入る。普段桂は絶対に寄りつかない。値段だって恐ろしい程高いのだ。
今日だって、リナからの誘いの電話に渋る桂を「アイラのお祝いだから」と言って強引に呼んでいたのだ。
もちろんリナにとって「アイラのお祝い」は口実で、桂と亮の事を聞くのが真の目的だった。
何かあれば、自分が桂の相談に乗ってあげよう…そんな思いもあったのかもしれない。
…で…その結果、リナの形のよい綺麗な唇から今の言葉が発せられたのだった。
桂はリナの鋭い視線から逃げるように顔を何気なく逸らすと、氷の溶けかけたグラスに口をつけた。
途端リナがアルコールに強くない桂の為に細心の注意を払ってオーダーしたカクテルの甘い香りが口の中にフワッと広がっていく。
リナが居ずまいを正して、桂を鋭く見据えると更に続けた。
「あまりに呆れて…無神経で…バカと言う気力も起きないわ。かっちゃん。どうして…止めなかったの?どうして…送ったり出来るわけ?おかしんじゃない」
リナの言葉に、桂はカクテルを飲み干すと、グラスを彼女に差し出してお代わりを強請りながら答えた。
甘い口当たりのアルコールに、早くも酔いが回ってふわふわとした気持ち良い気分になってくる。自然口も滑らかになっていた。
「まぁ…おかしいといわれてもなぁ…。だって山本は何も悪くないだろう?どうしてお前が怒るんだ?俺は…バカかも知れないけど、自分でやりたくて山本を送ったんだ。山本の側に少しでも長く居たかったんだ。だから、成田まで一緒に行っただけさ…」
桂の答えを聞いてリナの表情が悲しげに歪んだ。桂は宥めるような優しい笑みを浮かべてリナから次のグラスを受け取った。
リナの恐い表情に桂は苦い笑みを浮かべた。
「珍しく優しい言い方だな。リナ…。俺お前に馬鹿って言われるかと思ったよ」
飄々と軽口で返す桂にリナの表情が今度こそ怒りに変わっていた。
蝉の鳴き声が高くなり、熱い日の中にも秋の風が感じられるようになったお盆。桂は珍しくリナの店で飲んでいた。
桂が日本語を指導していたホステスのアイラは、先日から国に帰省していた。彼女の日本語は、本人の熱心な勉強の賜物か、かなりのスピードで上達していた。
リナはアイラに諸々の点で合格点をつけたようで、彼女が日本に戻ったら店に出すことに決めたと桂に告げていた。
ついでに「アイラがこんなに早く店に出られるのも、かっちゃんの指導のお陰だから…。お礼をさせて」と言ってリナは桂を強引に店に呼び出していた。
リナの店は都内でも高級な店の5本の指に入る。普段桂は絶対に寄りつかない。値段だって恐ろしい程高いのだ。
今日だって、リナからの誘いの電話に渋る桂を「アイラのお祝いだから」と言って強引に呼んでいたのだ。
もちろんリナにとって「アイラのお祝い」は口実で、桂と亮の事を聞くのが真の目的だった。
何かあれば、自分が桂の相談に乗ってあげよう…そんな思いもあったのかもしれない。
…で…その結果、リナの形のよい綺麗な唇から今の言葉が発せられたのだった。
桂はリナの鋭い視線から逃げるように顔を何気なく逸らすと、氷の溶けかけたグラスに口をつけた。
途端リナがアルコールに強くない桂の為に細心の注意を払ってオーダーしたカクテルの甘い香りが口の中にフワッと広がっていく。
リナが居ずまいを正して、桂を鋭く見据えると更に続けた。
「あまりに呆れて…無神経で…バカと言う気力も起きないわ。かっちゃん。どうして…止めなかったの?どうして…送ったり出来るわけ?おかしんじゃない」
リナの言葉に、桂はカクテルを飲み干すと、グラスを彼女に差し出してお代わりを強請りながら答えた。
甘い口当たりのアルコールに、早くも酔いが回ってふわふわとした気持ち良い気分になってくる。自然口も滑らかになっていた。
「まぁ…おかしいといわれてもなぁ…。だって山本は何も悪くないだろう?どうしてお前が怒るんだ?俺は…バカかも知れないけど、自分でやりたくて山本を送ったんだ。山本の側に少しでも長く居たかったんだ。だから、成田まで一緒に行っただけさ…」
桂の答えを聞いてリナの表情が悲しげに歪んだ。桂は宥めるような優しい笑みを浮かべてリナから次のグラスを受け取った。
0
お気に入りに追加
107
あなたにおすすめの小説

お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

愛人は嫌だったので別れることにしました。
伊吹咲夜
BL
会社の先輩である健二と達哉は、先輩・後輩の間柄であり、身体の関係も持っていた。そんな健二のことを達哉は自分を愛してくれている恋人だとずっと思っていた。
しかし健二との関係は身体だけで、それ以上のことはない。疑問に思っていた日、健二が結婚したと朝礼で報告が。健二は達哉のことを愛してはいなかったのか?

花いちもんめ
月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。
ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。
大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。
涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。
「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる