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第六章 あいつはどんどん俺を蝕んでいく…甘い毒なんだ…

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 亮からの連絡が絶えた…。
もう2週間…。

 桂は不安を膨らませたまま、毎日スマートフォンを見つめていた。

 今も鳴る事の無い電話を眺めていた。自分から亮に電話する事も出来ずにいる。

 部屋で授業の準備をしようとしても、いつのまにか亮の事ばかりを考えて手がお留守になってしまう。

 桂は集中できないまま、諦めて仕事の準備を止めた。
立ちあがって冷蔵庫にビールを取りにいく。

 ビールを手にリビングに戻ると、窓辺に腰掛けて外を見つめた。マンション前の公園は土曜日の夜の所為か、人気が無く閑散としている。

 原因は分かっている。あの夜の諍いなのだ。それまで頻繁に桂を呼び出していたのに、あの夜以降ぷっつりと亮からの連絡がなくなっていた。

「もう…終わったのかな…?。」

 桂はいくばくかの諦めと悲しさを胸に抱えながら、そう考えていた。リナに相談する事も出来ない。

 終わってしまったのなら、仕方がないと思う反面、終わりにしたのなら、はっきりとそう言って欲しい…そう思う自分。

「何が…気に入らなかったのかな…?俺にどうして欲しかったんだろう…?」

 桂は繰り返しあの夜を思い起こしていた。どうしたら良かった?どうすれば亮は満足した…?

「ごっこ」はごっこでしかないから、やって良い事、悪い事がある。

 そうけじめをつけていただけなのに…。

 それなのに最近の亮はまるで本当の恋人のように振舞って、桂を苦しめていた。

 桂と片時も離れていたくないかのように桂を束縛し、そして激しく身体を求めて抱いてくれる。

 優しい愛撫を受けるたび、熱い吐息と共に「桂…」と名前を呼ばれる度、きつく抱きしめられる度…桂の胸は甘く疼いて期待してしまう。

 まるで…自分が本当の恋人かのように思ってしまって…。

「…バカだな…俺も…」

 桂はそこまで考えて苦笑すると頭を振る。ありえないのだ…。

 俺達の関係は…セックス・フレンドで恋人ごっこのオプション付き。

 それだけなんだ……。

 止めればよかった…こんな関係…。片思いだけで終わらせればよかったのに…。

 桂は溜息を吐くと、ビールを1口含む。やけにビールが苦い気がして、桂は顔を顰めた。

「終わりなら…終わりって言ってくれよ…。こんなんじゃ中途半端だ…」

 桂は煌煌と光を放つ、青白い月を見上げながら一人呟いていた。
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