〜Marigold〜 恋人ごっこはキスを禁じて

嘉多山瑞菜

文字の大きさ
24 / 95
第四章 この想いを終わらせるために…始めたんだ…

しおりを挟む

 すっかり夢の中…久し振りに桂は心地良い睡眠を貪っていた。  

 亮との激しいセックスでどうしても体力は消耗しがち、授業に手を抜く事も出来ず…やはり疲労は溜まっていたのか。

 桂は来週の授業の準備を一通り終えるとベッドに直行していた。亮の事を考えて眠れないかも…と思った心配も枕に頭を着けた途端霧散して、桂はコットリと寝入っていた。

 スマートフォンの着信音が深夜の静寂を切り裂くように鳴り響いた時すら、桂はなかなか目を覚ませないでいた。

「…あ…れ…電話か…。」

 やっと起きた頭を振りつつ身体を起こす。目覚し時計に目をやるとまだ深夜の3時だった。

 こんな時間になんだよ…と悪態をつきながら暗闇の中で携帯を手探りで引き寄せた。

 出るの止めようかな…。眠い誘惑に打ち勝つ事が出来ず枕に頭を戻そうとする。瞬間リナのことが頭を過ぎってハッと桂は身体を起こした。

 もしかしたらリナかも…新しい恋人となにか有ったのか…心配がどっと吹き出してきて桂は慌てて、まだ着信音を鳴らすスマートフォンを手繰り寄せると、画面だ発信者を確認せずに耳に当てた。

「リナ…リナか…?」

 受話器ごしから答えは無く、リナの声も聞こえてこない。

 間違い電話?思って桂は暗闇の中で携帯のディスプレイに目を凝らす。何となく…桂はディスプレイに映るのが亮の名前のような気がして…一気に目が覚め、冷や汗が身体を伝いはじめていた。

 嘘…?なんで…?どうして…?深夜だぜ…?もう日曜日なのに…?どうしよう…?取りとめも無い考えが頭をグルグル回る。

「…俺…だけど…。悪かったな…リナ…じゃ無くて…。」

 普通深夜に電話を掛けてきた非常識を詫びるんじゃないか?なんでリナじゃ無い事を嫌味たらしく謝るんだ?

 桂は喉もとまで出かかった言葉をグッと飲み込んだ。受話器の向こうの亮はなぜかまた黙り込んでいる。

「…どうしたんですか…?」

 少し拗ねたような不機嫌な声だったのを思い出して桂は、気持を落ちつかせて声を出した。

 亮を怒らすようなことはしたくなかった。もちろん彼のためもあったが、自分のためでもあった。

 亮は桂が自分の気に障ることをすると、必ずセックスで桂を責め立てていたからだ。

 冗談じゃない…彼の機嫌を損ねて…体ががたがたになるようなセックスだけは勘弁だった。

 桂の穏やかな声に少し気分を和らげたのか、受話器の奥で亮が身体を身じろぎさせる微かな音が聞こえる。

 少しの沈黙の後、亮がポツリと呟いた。

「こいよ…。」
「…え…?」

 亮が何を言っているのか分からず、桂は聞き返す。少しだけ亮が苛々したような声で続けた。

「今から…迎えに行くから…だからこいよ。俺…眠れなくってさ…。」
 
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

氷の支配者と偽りのベータ。過労で倒れたら冷徹上司(銀狼)に拾われ、極上の溺愛生活が始まりました。

水凪しおん
BL
オメガであることを隠し、メガバンクで身を粉にして働く、水瀬湊。 ※この作品には、性的描写の表現が含まれています。18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。 過労と理不尽な扱いで、心身ともに限界を迎えた夜、彼を救ったのは、冷徹で知られる超エリートα、橘蓮だった。 「君はもう、頑張らなくていい」 ――それは、運命の番との出会い。 圧倒的な庇護と、独占欲に戸惑いながらも、湊の凍てついた心は、次第に溶かされていく。 理不尽な会社への華麗なる逆転劇と、極上に甘いオメガバース・オフィスラブ!

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

学校一のイケメンとひとつ屋根の下

おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった! 学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……? キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子 立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。 全年齢

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

処理中です...