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欲望・暴力・無
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「別にもう死んだって構わないからですよ、いつ死んだってね。」
蜂谷は薄手のセーターを被り、頭を出した。裾を引っ張って整えて、セーターが彼の形になった。
彼は俺の方を振り向くと、張り付いた様な笑みを浮かべた。彼の白い皮膚の上に余熱が残っていた。
「いいんです、もともともう、終わろうと思っていたわけだから。疲れたんです。」
耳にぞわぞわする声だった。殴りたくなる。喉から、甲高い声を絞り出させてやりたい。蜂谷は誘うような微笑みを続ける。俺は拳を握りなおして、項垂れた。口を開きかけ、やめた。頭の狂ったお前に良い医者を紹介してやろうか、と言いかけ止めたのだった。
「終わるならせめて快楽をもういいってくらい享受してから終わりたい。そうすれば、もしかしたら、もっと生きていたいと思うかも。」
蜂谷は芝居がかった様子で自分を抱くような仕草をした。場末の劇場で上演されるような演劇を見ているようだった。彼は明らかに俺の視線を意識して表情も身体も演出していた。しかし、演じているにしても、生き生きしている男を見るのは好きだ。すっかり黙るまで、嬲ってやりたくなるから。獣臭さの残るベッドの縁に腰掛けたまま、黙って、蜂谷のやりたいようにさせていた。
「時々このまま死んだらどんなにいいかと思う。そうだ!私が昨日貴方の足元で見た夢をお教えしましょうか。」
「いい、別に興味ない。」
蜂谷は指を一本立て、俺の方を見おろして笑った。
「貴方に、土の中に、埋められる夢ですよ。」
蜂谷はやけにゆっくりした口調でそう言うと、俺が興味ないというのを無視し、小鳥の歌うように夢の内容を語るのだった。彼の言葉を聞きながら、昔妹の飼っていた文鳥をそっと殺したことを思い出した。文鳥をどうにかした時に俺の叫び出しそうでどうしようもなかった心は初めてすっと晴れやかになった。後になって妹の泣いているのを見て申し訳ないと感じた。どうして殺す前に妹のことを一切忘れていたのだろう。
蜂谷の異常な淫夢は、俺の主治医である速水が悦びそうな夢であった。速水は医師業の傍ら異常心理の研究をしているようだった。蜂谷は速水にとって俺と並んでよいモルモットになるに違いなかった。ちゅうちゅう。
「君が殺したわけでは無いのだから。」
速水は優し気に語りかける。目の奥が、お前が殺したんだろう、と興味深げに光っているような気がした。それでも偽善的に微笑んでいるカウンセラーより彼の方によほど好意を抱く。だから今でも彼を主治医にし続け、長い付き合いがある。速水が俺が考えていることを予想して、わざとその野性的な瞳を輝かせていると考えられなくもない。でも、問いかけるのは野暮だから、お互いに何も言わないでいる。その可能性を含めて速水のことが好きだ。
イジメの場面に遭遇したことは、人生において何度もある。遭遇と言うとおかしい。どちらかとえいば、引き寄せると言った方が良いだろう。人は自分が無意識に望んでいるモノを進んで認識するようにできてる。毎日ノートに自分の夢を書き記すことで、夢が叶う。あながちまったくのファンタジーではない。清水との出会いも、その中にある。俺と清水は中学二年生の頃に、クラスメイトを一人死に追いやる原因を作っている。いやもっと簡単に言うといびり殺したのだった。
沖は、転校生だった。俺は沖に初めからクラスの女達より、いや、この学校の誰よりも好印象を持っていた。しかし、クラスの他の男連中は全くそうでは無いだろうと感じた。沖を脅威と感じるだろう。俺が沖と対等に仲良くなれば、沖を守ることができるだろうが、わざとそうはしなかった。
沖は、俺に金を渡した。俺が「稼いで来たら許してやるよ」と言って持ってこさせた金である。
許すも許さないも本当はそんなものないのに。
どうやって稼いできたのかしつこく聞くと、言い渋る。じゃあそのゴミ金を受け取るのを止めるぞ、と言うと、思った通り、親の金を取ってきたというではないか。親不孝の最低の人間だな。俺がそう言うと沖は、母親思いのとっても良い奴だからすっかり黙ってしまった。これで俺に殴りかかってきてでもくれれば張り合いがあるというのに。芯から絶望した表情で俯いてしまったのだった。可哀そうな沖。俯いた時の睫毛の感じが、沖の母親によく似ていた。俺は沖から受け取った金を握りしめて、お前の母親に俺の口から言って返してやろう、と言うと、頼むからやめてくれと鳴き始めた。そう、「鳴き」始めたのだった。
俺にとって沖から発せられるすべての言葉、涙、涎、その他様々な物全てが動物が鳴くのと変わらない。沖だけが、俺にとっての動物だ。他は、いてもいなくても同じだ。
放課後、夕陽が教室全体を赤く照らした。俺と沖以外には誰もいなかった。あまりに静かで、この世界に俺と沖以外誰もおらず、他は死んでしまったかのようだった。
「俺は盗んで来いと言ったか?稼いで来いって言ったんだぜ。随分意味が違うと思うけどな。」
俺が立ち上がると、沖は顔を上げた。濡れた顔の中に口元を固く結んでいた。
俺は金を突き返し、沖はそれを静かに受け取った。
「黙ってても何もわからないな。お前の意見は?どう思う?俺が何か間違ったこと言ってるなら指摘してくれよ。」
「稼ぐと言っても、まだバイトができる年でもないじゃないか。」
沖は意外にもはっきりした口調でそう言った。その態度を他の連中の前でもやりゃいいのに。
「いくらでも詐称できるだろ。」
「学校に、それに母さんにバレたら」
沖は母親によく似た顔を歪めた。
「なんだ、そんなこと気にしてたのか。じゃあ俺が良いバイトを紹介してやるよ。」
俺が爽やかな口調で沖に微笑みかけると、沖は優しいから、安堵したような顔をするのだった。
優しいってバカだ。
今まで観測して来た感じでは、1回やっただけで心が折れはずだが、意外にも沖はしぶとかった。俺が10万円稼いで来たら許してやるし、母親にも黙っててやると言ったからだろう。良い子は精神力が強い。沖には男から1回につき1万円の賃金が支払われているが、裏で常に斡旋した俺の元に都度5万円の賃金が支払われていることを沖は知らない。いや、明晰な彼のことだから本当は察していても、黙っていた可能性もある。彼は一生懸命なのだ。だから成績優秀だ。
俺は沖が酷い目に遭っているところを影から生で見たり、後からビデオをもらったりして、10回分全てを見届けた。本当にもうこれで終わらせようと思ってたのに、手が滑ったのだ。いや、滑らせたのだ。衝動が。
学校でのいじめの、凄惨になるのを、俺はただ、黙って見ていた。限界まで蕾を膨らませた椿が一斉に花開きそして黒く枯れ果その首を零れ落とすのを側で見ているようだった。他の連中が女の身体がどうと言って騒ぎ立てる中、俺は沖の堕ちていく様子でしか、勃たなくなっていた。そのまま死ねばいいとさえ願っていた。そしてその通りに、すべてが俺の願った通りになったのだ。
清水も加害者の1人で2回くらい沖に何やらさせていたのを見たが、主に手を下してた人間は別の男子生徒2名であり、これらは報道もされ、清水は情状酌量となった。しかし清水は事の起こりも、なぜこのようなことになったのかも、それから、俺が沖で一番興奮していたのも知っている。清水は俺を脅しもせず責めもしない。それは清水が俺を畏れたからでも、好いていたからでも無い。清水は俺をただ肯定したいのだった、彼自身も沖に対する罪悪感よりも満足感の方が大きく、そのことに対して罪悪感を抱いていたようだから。俺を肯定することが彼の免罪符になるようなのだ。
沖は遅かれ早かれ、俺のような邪悪な人間や社会の仕組みの中に取り込まれ、縊り殺されていたのではないかと思う。だってとても良い子だから、沖は。
沖は、遺書の中にさえ俺の名前を出さなかった。他の人間の名は書いたのに。
「善太郎君、君は多分病気なんだよ。医者に行きなよ。」
決定的ないじめをする前のことだ。沖は俺の異常性を鼠のような嗅覚で感じ取り優しく忠告した。忠告する余裕があったら早く俺の元から逃げたらよかったのに。
「世間ではこういうのを思春期っていうらしい。」
俺がそう言うと、沖は穢れた顔に奇妙な笑みを浮かべて俺を見上げるのだった。その笑みを見たのは最初で最後であり今もまだ覚えている。悦んでいるでも、馬鹿にしているでもない、その中間だった。
「思春期で済めばいいけど、どうだろう。君はきっと一生涯苦しむと思うよ。」
「苦しむ?俺は愉しいと思ってるのに、一体何が苦しい。」
「今にわかるようになるよ。」
沖はそう言って立ちあがった。
「僕は苦しいから。」
蜂谷は薄手のセーターを被り、頭を出した。裾を引っ張って整えて、セーターが彼の形になった。
彼は俺の方を振り向くと、張り付いた様な笑みを浮かべた。彼の白い皮膚の上に余熱が残っていた。
「いいんです、もともともう、終わろうと思っていたわけだから。疲れたんです。」
耳にぞわぞわする声だった。殴りたくなる。喉から、甲高い声を絞り出させてやりたい。蜂谷は誘うような微笑みを続ける。俺は拳を握りなおして、項垂れた。口を開きかけ、やめた。頭の狂ったお前に良い医者を紹介してやろうか、と言いかけ止めたのだった。
「終わるならせめて快楽をもういいってくらい享受してから終わりたい。そうすれば、もしかしたら、もっと生きていたいと思うかも。」
蜂谷は芝居がかった様子で自分を抱くような仕草をした。場末の劇場で上演されるような演劇を見ているようだった。彼は明らかに俺の視線を意識して表情も身体も演出していた。しかし、演じているにしても、生き生きしている男を見るのは好きだ。すっかり黙るまで、嬲ってやりたくなるから。獣臭さの残るベッドの縁に腰掛けたまま、黙って、蜂谷のやりたいようにさせていた。
「時々このまま死んだらどんなにいいかと思う。そうだ!私が昨日貴方の足元で見た夢をお教えしましょうか。」
「いい、別に興味ない。」
蜂谷は指を一本立て、俺の方を見おろして笑った。
「貴方に、土の中に、埋められる夢ですよ。」
蜂谷はやけにゆっくりした口調でそう言うと、俺が興味ないというのを無視し、小鳥の歌うように夢の内容を語るのだった。彼の言葉を聞きながら、昔妹の飼っていた文鳥をそっと殺したことを思い出した。文鳥をどうにかした時に俺の叫び出しそうでどうしようもなかった心は初めてすっと晴れやかになった。後になって妹の泣いているのを見て申し訳ないと感じた。どうして殺す前に妹のことを一切忘れていたのだろう。
蜂谷の異常な淫夢は、俺の主治医である速水が悦びそうな夢であった。速水は医師業の傍ら異常心理の研究をしているようだった。蜂谷は速水にとって俺と並んでよいモルモットになるに違いなかった。ちゅうちゅう。
「君が殺したわけでは無いのだから。」
速水は優し気に語りかける。目の奥が、お前が殺したんだろう、と興味深げに光っているような気がした。それでも偽善的に微笑んでいるカウンセラーより彼の方によほど好意を抱く。だから今でも彼を主治医にし続け、長い付き合いがある。速水が俺が考えていることを予想して、わざとその野性的な瞳を輝かせていると考えられなくもない。でも、問いかけるのは野暮だから、お互いに何も言わないでいる。その可能性を含めて速水のことが好きだ。
イジメの場面に遭遇したことは、人生において何度もある。遭遇と言うとおかしい。どちらかとえいば、引き寄せると言った方が良いだろう。人は自分が無意識に望んでいるモノを進んで認識するようにできてる。毎日ノートに自分の夢を書き記すことで、夢が叶う。あながちまったくのファンタジーではない。清水との出会いも、その中にある。俺と清水は中学二年生の頃に、クラスメイトを一人死に追いやる原因を作っている。いやもっと簡単に言うといびり殺したのだった。
沖は、転校生だった。俺は沖に初めからクラスの女達より、いや、この学校の誰よりも好印象を持っていた。しかし、クラスの他の男連中は全くそうでは無いだろうと感じた。沖を脅威と感じるだろう。俺が沖と対等に仲良くなれば、沖を守ることができるだろうが、わざとそうはしなかった。
沖は、俺に金を渡した。俺が「稼いで来たら許してやるよ」と言って持ってこさせた金である。
許すも許さないも本当はそんなものないのに。
どうやって稼いできたのかしつこく聞くと、言い渋る。じゃあそのゴミ金を受け取るのを止めるぞ、と言うと、思った通り、親の金を取ってきたというではないか。親不孝の最低の人間だな。俺がそう言うと沖は、母親思いのとっても良い奴だからすっかり黙ってしまった。これで俺に殴りかかってきてでもくれれば張り合いがあるというのに。芯から絶望した表情で俯いてしまったのだった。可哀そうな沖。俯いた時の睫毛の感じが、沖の母親によく似ていた。俺は沖から受け取った金を握りしめて、お前の母親に俺の口から言って返してやろう、と言うと、頼むからやめてくれと鳴き始めた。そう、「鳴き」始めたのだった。
俺にとって沖から発せられるすべての言葉、涙、涎、その他様々な物全てが動物が鳴くのと変わらない。沖だけが、俺にとっての動物だ。他は、いてもいなくても同じだ。
放課後、夕陽が教室全体を赤く照らした。俺と沖以外には誰もいなかった。あまりに静かで、この世界に俺と沖以外誰もおらず、他は死んでしまったかのようだった。
「俺は盗んで来いと言ったか?稼いで来いって言ったんだぜ。随分意味が違うと思うけどな。」
俺が立ち上がると、沖は顔を上げた。濡れた顔の中に口元を固く結んでいた。
俺は金を突き返し、沖はそれを静かに受け取った。
「黙ってても何もわからないな。お前の意見は?どう思う?俺が何か間違ったこと言ってるなら指摘してくれよ。」
「稼ぐと言っても、まだバイトができる年でもないじゃないか。」
沖は意外にもはっきりした口調でそう言った。その態度を他の連中の前でもやりゃいいのに。
「いくらでも詐称できるだろ。」
「学校に、それに母さんにバレたら」
沖は母親によく似た顔を歪めた。
「なんだ、そんなこと気にしてたのか。じゃあ俺が良いバイトを紹介してやるよ。」
俺が爽やかな口調で沖に微笑みかけると、沖は優しいから、安堵したような顔をするのだった。
優しいってバカだ。
今まで観測して来た感じでは、1回やっただけで心が折れはずだが、意外にも沖はしぶとかった。俺が10万円稼いで来たら許してやるし、母親にも黙っててやると言ったからだろう。良い子は精神力が強い。沖には男から1回につき1万円の賃金が支払われているが、裏で常に斡旋した俺の元に都度5万円の賃金が支払われていることを沖は知らない。いや、明晰な彼のことだから本当は察していても、黙っていた可能性もある。彼は一生懸命なのだ。だから成績優秀だ。
俺は沖が酷い目に遭っているところを影から生で見たり、後からビデオをもらったりして、10回分全てを見届けた。本当にもうこれで終わらせようと思ってたのに、手が滑ったのだ。いや、滑らせたのだ。衝動が。
学校でのいじめの、凄惨になるのを、俺はただ、黙って見ていた。限界まで蕾を膨らませた椿が一斉に花開きそして黒く枯れ果その首を零れ落とすのを側で見ているようだった。他の連中が女の身体がどうと言って騒ぎ立てる中、俺は沖の堕ちていく様子でしか、勃たなくなっていた。そのまま死ねばいいとさえ願っていた。そしてその通りに、すべてが俺の願った通りになったのだ。
清水も加害者の1人で2回くらい沖に何やらさせていたのを見たが、主に手を下してた人間は別の男子生徒2名であり、これらは報道もされ、清水は情状酌量となった。しかし清水は事の起こりも、なぜこのようなことになったのかも、それから、俺が沖で一番興奮していたのも知っている。清水は俺を脅しもせず責めもしない。それは清水が俺を畏れたからでも、好いていたからでも無い。清水は俺をただ肯定したいのだった、彼自身も沖に対する罪悪感よりも満足感の方が大きく、そのことに対して罪悪感を抱いていたようだから。俺を肯定することが彼の免罪符になるようなのだ。
沖は遅かれ早かれ、俺のような邪悪な人間や社会の仕組みの中に取り込まれ、縊り殺されていたのではないかと思う。だってとても良い子だから、沖は。
沖は、遺書の中にさえ俺の名前を出さなかった。他の人間の名は書いたのに。
「善太郎君、君は多分病気なんだよ。医者に行きなよ。」
決定的ないじめをする前のことだ。沖は俺の異常性を鼠のような嗅覚で感じ取り優しく忠告した。忠告する余裕があったら早く俺の元から逃げたらよかったのに。
「世間ではこういうのを思春期っていうらしい。」
俺がそう言うと、沖は穢れた顔に奇妙な笑みを浮かべて俺を見上げるのだった。その笑みを見たのは最初で最後であり今もまだ覚えている。悦んでいるでも、馬鹿にしているでもない、その中間だった。
「思春期で済めばいいけど、どうだろう。君はきっと一生涯苦しむと思うよ。」
「苦しむ?俺は愉しいと思ってるのに、一体何が苦しい。」
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沖はそう言って立ちあがった。
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