営業2課の恥!枕営業でも何でもして契約取ってこい!と怒られる日々に嫌気がさしたので、ガチで枕営業で営業成績1位を目指します。

四ノ瀬 了

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9.営業4課の男

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会社の健康診断を受けろと再三人事にせかされる。同じ部署の人間と顔を合わせるのは億劫だ。
営業2課ではなく営業4課の人間に割り当てられたタイミングで参加することにした。

検尿用の尿を取るのを忘れ、水を大量に飲みながらフリースペースでスマホを眺めていると異様な光景に出くわした。連れションである。
学生ならまだしも大人の男たちが連れ立って便所に行くなど発展場でも無ければまず有り得ない。
おそらく営業4課の男たちだ。

ちょうど尿意を催してきたのと彼らに対する興味で彼らの消えていったトイレに足を踏み入れた。
そこには思いもよらない光景が拡がっていた。1番奥の個室が開かれっぱなしになりそこに男が3人も群がっているのだ。呆然とトイレの入口でその光景を眺めていると、1人の営業マンと思しき男がこちらに気がついた。

「ん、なんだアンタ見ない顔だけど、そんな所にぼーっと突っ立って混ざりたいのか?」

厳つく偉そうな態度の風貌の営業マン達は若干齋藤や一部の2課の人間を思い出させ、一ノ瀬の中で何かが急速に冷めていくような感じがしていた。
他のふたりもこちらを見、中からもう1人若い男が顔を出した。若い男のネクタイが解れワイシャツがはだけていた。

「小便したいだけなら別のとこでしろよ。」
「……なぜだ?こっちは検尿の準備をしないといけないんだ、悪いけどここでさせてもらう。」

一ノ瀬は男たちが何か言う前に1番手前の個室に入りこみ検尿用のキットに尿を入れながら、あれはパワハラかセクハラにあたるだろうし、うちの会社はブラックなのではないだろうかと思い始めていた。

そのままこもっていると外側から扉を勢いよく蹴られた。どこまで品性がない人間なんだと尿の始末を行いながらトイレのドアを開けると、逆に男が中に入ってきて一ノ瀬を便座の上に再度座らせた。

「お前よく見れば随分いい顔してるじゃねぇか。新入社員か?にしては大人びてるし、中途採用か?まぁどちらでもいい。見られたんなら混ざるかお前が俺らの始末をするかどちらかだ。選ばせてやる。」

目の前で男のペニスがあからさまに怒張しており、嫌な気分になってきた。彼の後ろでさっきまではだけていた男が服をなおしている。

「誰だかしらねぇけど、これ、セクハラじゃないですか?嫌だなぁ、言いますよ人事とかに。」
「はぁ、言えるもんなら言ってみな。」

男はベルトを外し始め下着を下げて一ノ瀬の目の前に見せつけるようにペニスを露出させた。
「面倒くさい変態共だな。そんなにしゃぶって欲しいならしゃぶってやるが、俺は確実に人事にチクるからな。」
「おう、じゃあしゃぶってもらおうじゃないか。ほら、2人同時だ。」

2人の似たような厳つい男のペニスが目の前に突き出され喋っていた方の男が一ノ瀬の頭を掴み口の中にイキり勃った肉棒を突き入れた。しばらく口を動かしていると粘着質な音がひびき口の端からよだれがつたい落ちた。

「おら、もっと口を開けろよ。うるさい口の中に突っ込んでやる。」

口を横に開かされるように指を入れられそこにもう一本の肉棒の先端が無理やり入ってくる。
吐き出すようにしながら最初に入れられた方の肉棒を出し、手でしごいてやり、あとから入ってきた方の肉棒を喉の奥までくわえこみ舐め上げた。

「随分と慣れた口遣いと手つきじゃねぇか。前の会社でも便器やってた口か?まるで娼婦だな。先端2本同時にくわえてみろ。」

口の中から肉棒が引かれ、2本の肉棒が下唇に触れた。舌で両方のペニスの先端を回旋するように舐め上げながら、口に入る範囲まで肉棒を収め先端を嬲った。とんでもない変態どもだ。 そうして暫く二本のペニスの先端を舐め上げていると片方が射精し引き抜かれた。

交代するように後ろにいた男が目の前に同じようにイキり勃ったペニスを見せつけてきて、同じように処理した。3人分処理してひどい臭いのする手で口を拭っていると、最初に突っ込んできた男が嘲るのと同時に惚れ惚れしたような気持ちの悪い目付きでこちらを見下ろしながら口を開いた。

「おい、山下、お前も突っ込んでやれよ。いつも突っ込まれてばかりで具合悪いだろ。」
山下と言われた細身の男は、いや俺はいいよと困った顔で男とこちらを交互に見ていた。
「俺がやれと言ってるんだからやるんだよ。」

もはやペニスが3本であろうと4本であろうと大差ないので冷めた目をして成り行きを見守っていると、山下は「無理だ勃たない……」などと言い出した。

一ノ瀬はおもむろに立ち上がると、3人の営業マンを押し退けるようにして山下の目の前に立った。イッたばかりで息を荒らげている男たちならば一ノ瀬でも簡単に押しのけることが出来た。

「本気か?本気で今の俺を見て勃たなかったのか?素晴らしい……。」
そのようなケースは経験上かなり稀だった。自分は興味が無いというふりして見ているやつほど1番性欲が高いか変態の確率が高い。

一ノ瀬は山下に対して1発抜いてあげるか、そのままにしておくか、かなり迷ったがそのままトイレを後にすることにした。後ろで男達がなにか言っていたが、彼らは出したばかりだ。山下に対してこれ以上危害を加えることはないはずだ。

別の階のトイレに行き、石鹸で丁寧に手を洗う。流石良い会社で、手洗いに備え付けられた泡石鹸も上質だ。
手首のあたりまできれいに洗い上げ、水で泡を落とす。再度中指と薬指の上に石鹸を盛り、そのままそれを口の中にこすりつけた。営業で外を回っているときであれば必ず歯磨きセットを持参するのだが、緊急時はこれしかない。
酷い味は酷い味で打ち消すのが好きだ。身体の中にアルカリ性の物を含んだ時の特有の吐き気。慣れたものだ。

そのまま指で歯を磨きながら一番手前の個室に入り、喉の奥に指を突っこみ中のものを出した。息を整え、口の中を水ですすいでもう一度手を洗ってから、健康診断の会場に向かった。



自宅に戻り、直ぐに会社ポータルサイトや社員情報のデータベースから彼らが誰だったのか特定することが出来た。営業4課で成績上位グループに入っている前川、木谷、目黒と中位グループの山下だ。
てっきり自分のような最下位の人間かと思っていた山下が先月の自分より遥かに良い成績を残し、営業成績一位になった過去もあったことに軽くショックを受けた。

営業4課は2課とは異なり、物流と言うより金融寄りの商品を売っている。契約ひとつ単位の額が大口のものが多く契約数が少なくても大きく稼げる。
一ノ瀬に最も突っかかってきた男が前川であり、彼は2年ほど前までは一ノ瀬と同じく2課所属であり、彼の扱っていた会社の内いくつかは齋藤や上位の人間が引き継いで回しているようだ。

4人の営業用携帯番号をとある変態向けの掲示板に貼り付け、自己紹介文と共に社員証の写真に目線などで加工した写真を添付しておいた。
登録情報は登録者が自ら消すか、運営に訴えることで消すことができるが、即に消すことは難しい。一ノ瀬自身がこの掲示板にいたずらに載せられた回数は学生の頃をピークに徐々に落ち込んできているが、おかげで管理人と親交を持つことができた。
管理人の鹿瀬は一ノ瀬に関連する情報は積極的に抹消し、一ノ瀬が載せた情報は悪質なものでも三日間は放置してくれる。山下だって奴らと同じだ。被害者が加害者になって、それで救われたら教訓にならない。

そう思って登録しておいたが、山下の情報は一時間程度で削除しておいた。一時間でも個人情報を流出させればそれなりに拡散される。まして山下は変態に受けそうな可愛い顔をしていた。

自分の営業用電話のアドレス帳を開き、人事イエロー窓口の野崎という男に電話をかけた。イエロー窓口は、会社内で労基に触れるような問題が起きた場合まず相談する窓口だ。

「はい、人事課窓口野崎です。」 
「お疲れ様です。総合事業本部 営業2部の一ノ瀬と申しますが今お時間よろしいでしょうか。」
「……」

明らかに電話口の向こうで戸惑っているであろう野崎の顔が思い浮かんだ。野崎は転職時の一次面接で面接官として参加していた男のひとりで面識があった。面接の後、あからさまに一ノ瀬に対して隠そうもせずに言いより、勝手に履歴書の電話番号に電話をかけてくるイカれた人事だった。

コンプライアンス違反では?と再三言い続け、上にこのことを話すといえば、お前を採用しないと言う最悪な人間だった。しかし、蓋を開けてみれば野崎は人事課のなかでも末端社員で、一ノ瀬は無事に採用となった。それ以降野崎からは一切電話がかかってこなくなり、あまりにも哀れだった。
向こうが黙りこくっているのでこちらから口を開く。

「先程メールした件なんで、本文と添付見てもらっていいですか?営業4課、っていってわかりますか?の人たちが私に対してハラスメントをしてきた音声を添付してます。正直名前が出ている訳でもないので信ぴょう性が薄いでしょうが、今後同じようなことが起きた時に証拠として使ってください。」

トイレのドアをけられた時点で、もしやの事態を想定してスマホの録音機能をつけておいた。
一方的にそう言って電話を切ると一分程度して折り返しがきた。音声を聞いたのだろう。

「一ノ瀬君、すぐにそいつらをクビにしてあげよう。とんでもないことだ。」
こもったような低い声が電話口から響いてくる。人事はもっと優しくはきはきと喋るべきだ。
「あなたにそんな権利ないでしょう。」
「私にはないが、上の者にはある。昨今はコンプライアンスが厳しいからな。」
「あなた自身が真っ先にクビにならないことが不思議でなりませんね。」
「前にも言ったけど、私は普段はあんなことしない真面目な男なんだ。君が悪いんだよ。」
「……。呆れてものも言えないが、クビにまでしてほしいとはいってない。厳重注意かできれば別の部署に飛ばすとかその程度でいいですよ。特に山下は元々被害に遭っていたようだから彼と彼らは離した方がいいでしょう。そうだ、山下を俺と同じ営業二課にしてくださいよ。それくらいならアンタにでもできそうだ。」



山下から電話がかかってきたのは、それから三日たった昼間だった。
寝起きの頭で電話に出ると、電話口の向こうの山下の声はおどおどとしておらず、所謂営業マン的なはっきりした声をしていた。一ノ瀬より遥にできそうな声だ。

「一ノ瀬さん、この前は本当に申し訳ありませんでした。なんといったらいいか……」
「……」
「聞いてるかもしれませんが、急遽来週から貴方と同じ二課に異動になりました。そこの社員情報を見ていてあなたの顔を見つけたわけです。」
「俺がいかにダメな社員かということがわかっただろう。」

「……。しかし、きっと貴方が人事に何か掛け合ってこうなっているんでしょう。私にはずっとそういうことができませんでしたから。一ノ瀬さんというよりも、この会社に問題があるのです。一ノ瀬さんは最近中途入社されていますね。それからろくな研修や引継ぎもなく即現場配属。前職が営業ならまだしも、一ノ瀬さんはもともと全く畑ちがいの分野から来ていると部長さんから伺いました。私は新卒からここで鍛え上げられているので、これでも営業スキルはそこそこあるのです。よろしければ時間のある時、基礎的な営業技術やねらい目の企業の探し方くらいは教えてさしあげることができます。あと、わからないことがあれば何でも相談してください。電話でもメールでも、直接でも。お力になります。」

「……じゃあさっそく伺いますけど、文具ベンチャーのユリシーズについてどう思ってます?」
「ちょっと待ってくださいね。今デスクにいるので軽く情報さらいます。」
しばらく電話の向こうでパソコンのキー操作音やマウスをクリックする音が聞こえていた。

「ちょっと危ないですね。契約はやり方次第でとれそうですが、そこまで力を入れてとりいっても利率が微妙です。身体をはってやるにはショボすぎる。やるなら同業の水井文具のほうがいいですね。」
"身体をはってやるには"の部分にどの程度の意味が含まれているのか推測できなかった。山下は定期的に同僚に身体を明け渡すことができる程度には、性に対するハードルが低いのだ。やっててもおかしくない。もしくはこちらがやってると思われていても仕方がない痴態を見せてしまっている。しかし今ここでそのことを聞くのはなぜか躊躇われた。

「そうですか、ありがとうございます。水井文具について調べてみます。」
「ぜひ調べてみてください。少しでも一ノ瀬さんの力になれればうれしいです。それでは会社で顔を合わせられることを楽しみにしています。失礼します。」

自宅のPCで水井文具について情報を集めていると、水井文具の上位会社の水井ホールディングスの幹部や営業の名前が、例のリストの名前と一致し始めた。これは確かにねらい目企業だ。

ある程度情報を集めてから、別ブラウザで変態サイトの様子を見に行く。まだ三人の情報は消されず残っていた。今ころひっきりなしに電話が鳴っているはずだが、大丈夫だろうか。
試しに何度か前川の携帯に電話をかけてみるが、何度かけても話中のビープ音が流れるだけであった。
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