堕ちる犬

四ノ瀬 了

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最後に俺で思い出作れてよかっただろ。感謝しろよ。この変態野郎。

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「……どうして組長はあんな男に融資OKを出したんだろう。結構な巨額。返すアテなどないだろうに。」

 カジノの勤務の始まる前、夜21頃、霧野と美里は川名の元に次々やってきて金を無心する人間、否、養分達を眺めていたのだった。美里が欠伸を噛み殺している横で、霧野は目の前で”札束のレンガ”とでも言ったらいいか、万札の塊が次々融資されていくのを眺めいていた。

 当時の霧野には、川名の裁量、つまり、誰に対していくらまで貸せる、あるいは一切貸さないで追い払う、その基準が気紛れで規則性の無いものに思えた。先ほどの「あんな男」とは、その日20数名近く現れた人間の中で一番返済能力が無いと見受けられる、全く首の回らなくなった状態の経営者の男である。

「あんな男だから、さ。だからこそだよ。」

 雑踏を歩く度、人が自分達を避ける。二人は連れ立って次の仕事場である闇カジノへ向かっていた。ふいに横を歩く男を見ると、機嫌が悪いわけでもないのに、俯きがちである。美里は人が多い場所、もしくは昼間外に出ると顔を斜め下の方に向ける癖があった。が、霧野の方をふいに見上げて口の端を上げるのだった。なぜだろうかさっきまで見ていた川名に似た笑い方。笑っているとも品定めしているとも言えるような。

「わかる?俺の、言ってる、意味。」

 子どもに言い聞かせるようにゆっくり喋りかけてくる美里。言わなければ良かったと思った。こうやって美里がいやらしくからんでくるということは、嫌な解答、つまり、一番無いなと”思いたい”解答が正解の可能性が高い。霧野は無表情を繕い前を向いたまま、考えを言った。

「首が回らないから強盗でも何でもして金をかき集めてくるってか。」

 別にこの回答自体は、当たってようが外れてようがどうでもよい。一番の不正解は、美里を調子に乗らせること、つまり、黙ったまま言い淀むこと。人は、相手から自信満々に物事を言われるとそれが明らかに間違っていようが本当かと思ってしまい、首を振るべきところで縦に振ってしまう。その程、弱い。一体多の場合余計にその傾向が強くなる。黒い物を白とも言わせてしまう。それで美里がこっちの考えに乗ってくれれば、こいつの精神の歪みを治すという意味で一石二鳥というものだが。美里の表情を横目で伺うと、そう簡単にはいかないようである。

「はぁ?マジで言ってんのか?全然違うねぇ。優しいんだねぇ~、優紀君は~。」

 多少は効いたが、やっぱり駄目か。流石にこいつにそこまで効きは無理ってことだ。

「あんまり言いたくないこ、言わせるなよ俺に。」
「言いたくない?じゃあ別の回答があるってことじゃねぇか、……、言えよ。」
「……」
「言えねぇの?そんな甘ちゃんじゃこの世界じゃ」
「殺すんだろ」
「………で?」
「まだ言わせたいのか。ああ、そう、いいよじゃあ、お前が聞きたいというならば、ちゃんと、最後まで言ってやるから、聞け。奴には家族がある。家族に手を出さない云々の話を細かくしていた。聞かずとも、調査済なんだろうがな。まぁ、とどのつまり、家族、弱みを作った、もしくは弱みがあるのを隠さない方が悪い、……と、組長なら言うだろう。本人が死んじまえば、その家族とやらがどうなるかなんか本人はわからない。組長の本質を知らないで、こんな人間にまで金を貸してくれるいい人だと思ってる時点で終わってるの。まず保険金。終わってる人間が、最後に家族を守る方法はもうこれしか、無い。他殺、及び他殺に見せかける自殺の方法なんか、ウチに聞けばすぐわかる。ハナから死ぬか殺される気だろあの人。でこれを、ウチが一番最初に掠め取る。プラスになる。が、それだけで終わらせる気など、無い。だからこそあんな大金貸したんだ。嫁もまだ丈夫、確か長女が」
「もういいよ。」
「高校卒業するかどうかを現金」
「もういいって言ってんだよ。」
「で次女の方が」

 横に居た気配が消えたので足を止めると、すぐ後ろの方でこちらを睨んでいる。なんだ、自分で言いだした癖に自分で気分が悪くなってやがる。ガキじゃねぇか。しかし、やはりこの男、人間性が全くないわけでは無い。

 それなのに、何故か、人間性の欠如した人間の側に居ようとしている。つまり川名と同じ道を行こうとしているということだ。不可能とは思わないが、更生の余地の方が十分ある、と地域の一おまわりさんとしては言わせてもらってもいい。

 とはいえ、自分は不良少年、いやクソガキのお世話など全くもって興味がないのだ、少年課に配属された暁にはあまりに阿保らしくて辞めてやろうかと思う程に興味なし。もしかすると、神崎や由紀だったら、このクソガキを見て矯正してやろうとか、腕が鳴るのではなかろうか。しかし自分は別に聖人君子でも教育者でも神父でも無いので、このまま、さっきの解答の続きを言ってやり、精神的にこの男を追い詰め虐めてやっても全然構わないのだ。いつからか自分の中に在る悪の華を満足させるのに、うってつけの素材ではある。

 そもそも、善悪の観点で言っても悪いことじゃない。何故なら、こっちは、やりたくないとはっきりと、言葉にしてまでちゃんと伝えてやったのに、向こうが無理やり吹っ掛けて来たんだから、悪いのは向こう。しかし、今からの仕事、美里もシフトの一員としていれている。だからもうこの話は終わりなんだ。二度とする必要も無い。

「お前が聞き出そうとしたんだろ。何キレてんだよ。行くぞ。もう既に遅れてるんだ。もうこの話はしない、それでいいな。」
「……。」

 解答が無い、が、前を向いて歩き出すと少し後ろを間を空けてちゃんとついて来る気配がある。
 カジノに着くまで会話は無かったが、居心地の悪さも無かった。美里をボーイとして立たせたり裏方をやらせたりすることもできたが、バカラ等のディーラーに入らせるとその日の売り上げがやや撥ねる傾向にあることがわかった。本人も別に嫌がらない。こういう時は、きちんと前を見、人の懐にうまく入り込んで打ち解けるのに、昼間は太陽の方を見られない。不思議な男だ。営業スマイルってやつだ、と苦虫を嚙み潰したような顔で言っていた。遠くから眺めている分には自然な表情に見える。どこまでが奴の本当でどこまでが奴の偽の部分か、たまに、図りたくなって、そんな自分を意外に感じるのだ。他者に人としての興味を覚えることが難しかった。

 こうして美里が、常連客を負かしつつもなだめ会話しまた賭けさせているところを見ると、ずっとこっちの仕事でもいいのではないかと思うのだが、それは川名もそして本人も嫌うから駄目だった。「所詮こっちはバイト気分で気楽にやれるからいいんだよ。終わった後お前と遊べるしな。こんなので金もらえんの楽ちんすぎてやる気でないね。」とか、なんとかね。ああ~~そうかよ!バイト!バイト、ね!さも簡単なことのようにのたまう。霧野はディーラー業務はできないのだった。一度試しにやると言ったら、皆がオーナーがそんなことやらなくていいんですよ、下っ端がやるんですよああいうのは、というか、そんなに頻繁に来なくてもいいのに、と必死に言って止めてきた。これが、皆が霧野に対して気を使って言っていることにさえ気が付かず、「へぇ、俺にはできないと、言いたいの?そういうことか。」と言うと、誰も、何も言わなくなった。

 で、やった結果が最悪も最悪。まず、始まりもしない、そう、人が寄ってこない。流石に察した、皆の真意を。しかし、やると言った手前もう途中で止めることは嫌で、最後まで頑張ってみたものの、結局、売り上げが下がることがわかっただけだ。だから二度とやらないしこの話は美里にはしない。

「どうだよ、お前の勝ち点を上回ったぞ。」

 業務終了後、ダーツをしてた美里が、ここへ来る道でのことなど忘れたように霧野を振り見て言った。

「…………。…………。」

 霧野は電光掲示板の点数を目を細めて見る。710。霧野の公式ベスト記録700を10点上回っている。
 霧野は無言のままスツールから降り、美里の横のマシンをスタートさせ打った。

「…………。…………。」

 美里が来る度打ってるのは知っていたので黙って見ていた、が、自分が負かされるとなると話は全然別である。霧野は度々マシンの調整も兼ね、人の居ない間に打っていた。その際に、公表しているベスト記録より上の記録が出ることもあったが、内々の公式記録では無いので伏せている。880点。しかしこれは個人で遊んでいた中のベストをも更新した、最高点である。やはり一人でヤルのとでは、違う。キモチ、イイ。

「はい俺の勝ち。」
「……なんで。」

 美里は一瞬絶望したような暗い表情を見せたがすぐに気の強そうな、カタギならそれだけで側に居るのを避けるような殺気を放ち霧野を睨み始めた。一方の霧野はにやにやと美里を見降ろしながら片手でダーツの矢を弄び、放り投げた。適当に投げたその矢は、まっすぐ中央にあたる。

「なんでも何も、真っすぐ当てればいいんだよ。なぜなら、そういうゲームなのだから。」
「…………。」

 彼が唇を噛んで何も言えないで震えているのを上から眺めていると霧野の中にむずむずとした気分が沸き上がるのだった。何だろうか。目の前のその身体をすくいあげるのも、実に簡単そうだ。霧野は言った。

「くやしいのか?」
「別に。全然。こんなの、ただの遊びだから。金賭けてるならまだ勝ち目が」
「ふぅーん、負けを認めないのか、じゃ賭けてやろう、ほら」

 売上金の札束を縦に立ててサイドテーブルの上に置いた。手を離しても安定して立つ、箱のような札束など、この潜入業務が無かったら、一生ご縁が無かったかもしれない。

「お前が自分で言いだしたことだ、まさか、撤回しないよな。」
「てめぇ……」
「くやしいならくやしいと素直に言えよ。そう、今のように、下じゃなくて、そうやって俺の眼を、真っすぐ見たまま、言え。そしたらもう、弱いもの虐めは、止めてやるよ。弱い奴とやったって気分悪い、愉しくないからな。負けを認めろ。くやしいと言え。」

 札束の上部を人差し指でぐりぐりと前に後ろにと揺らしその向こう側の男の表情を伺った。表情は無いままだが、その皮膚に、かすかに赤みがさしていく過程が見えた。横一文字に結ばれていた形のいい唇が、小さく震えながら開く。言うか?降参か?掠れた小さな声が、真っすぐ飛んできた。

「てめぇは、……てめぇはよ、さっきから、何を嗤ってんだ?」
「え?」

 霧野の想定とは全く違う角度、服従でも反発でもない意外な言葉に、場のピリついた空気が少し緩んだのだった。

「……ああ、気に、障るのか?気に障るんだったら、堪えるよ、……あ、駄目だ。堪えようとすればするほど、ん、止まらないな、んあ、お前のせいだからな、普段、そんなんじゃ、ないんだから、さ、知ってるだろ、」

 霧野の身体が笑いで震えていた。美里はそんな霧野を冷めた表情で見るのだった。

「きっしょい笑い方してよ。自覚あんのか??ねぇんだろうがよ。上の連中はお前を気に入っているし下の奴らはだぁれも怖くて言えねぇのだろう、しょうがねぇから、俺が言ってやるよ、おい、お前は本当にそれで笑ってるつもりなんかよ?本気?ダーツとかいうしょうもねぇクソ面白くもねぇ幼稚な遊戯なんかやってる暇あったら鏡見て笑う練習したらどう、つきあってやろうか?遊びじゃなくシゴトに直結するんだから。もう支障出てんだぞこの馬鹿がよ、元々俺が回ってたエリアで、よしみのカタギからてめぇがいると怖いって度々言われてんだぞ、前も言ったよな、つくり笑顔でいいから少しでもいいからまともにできるようにしとけよって。てめぇのせいで古参の良いお客が離れたら責任取ってくれんのかって意味で言ったんだぜ、優しくな。で?結果、お前あれから何か直した?今まで黙って見ていたが、俺からするとな~ぁんにも直ってないように見えるぜ。おい。ほら、こっち見ろよ、特別に手本見せてやるからよ、よく見てろ。こうやんだよ。…………。」

「…………。」

 彼以外の、その、周辺の景色のすべてが遠のいて、霞んだ。実際の時間は、2、3秒といったところだろうが、霧野にはもっと、長く感じた。時間の濃淡について。ここに来てからというもの、濃いと思える時間は増えた。それが、霧野を仕事に没頭させる、時に、本来の自分の責務と呼べるものを、忘れさせた。逃げたかったのかもしれない、何かから。もしくは、その反対かもしれない。美里の表情には人を惹きつけるものがあったが、霧野の観察眼にはその顔の皮の奥にもっと、どす黒い、タールのような、グロテスクな何か、化物じみたものが渦巻いているのが写るのだった。美しい程、そちらが目につく。それを覗き込んでいる内、目が離せなくなる。お前について、もっと、知ってもいいのかもしれない。お前のその表皮に隠した、グロテスクな部分について。見せて。

「はい、終わり。」

 美里の表情が普段通りに戻ると、視界も、いつもと変わらない物になり、今霧野が感じた謎の高揚感も遠くなるのだった。遠近、明暗がはっきりとして、周囲の音も耳に入ってくる。

 知らぬ間に、身体に力が入っていた。力が抜けると同時に頭に血が上る。どういう意味であれ、自分が自分以外の男に圧倒されたことが、まず、霧野の気に障って今はそれが意識の中心を占めて、そして、全部になり、燃えた。その周辺にある細かい気持ちは遠く霞んで本人の意識の下の方へいつも乱暴に片付けられる。本人の知らぬ間に、蓄積されていく、大事な感情の欠片が。霧野の身体の異変について気が付かない美里はいつもの調子に戻って続ける。

「こんな簡単なこともできねぇ弱者が、俺に偉そうな口聞いてんじゃねぇぞ。あとで俺に授業料10万円よこしな。てめぇなんかに微笑みかけちまってこっちはゲロ吐きそうなんだよ。授業料というか慰謝料かナ?ま、どっちでもいいか。」

 美里はさっきとは違う、さもしい笑顔を見せた。霧野の、若干ささくれ立っていた心が、元に戻っていく。このさもしい笑顔さえ、この男は他人にはほとんど見せない。他の人間と比較しても、一定の信用を勝ち取れていると言って良い。彼と共にしている限り、上層部にも近いのだ、だから居るだけ。それ以上でも、以下でも、無い。

「面白いなお前、このタイミングでまさか俺に、説教かますとはね。いいよ、面白かったから、払うよ、10万くらい。あ、悪い、ためになったから、な。賭け事なんかもうどうでもよくなったよ。ただ、言わせてもらえば、別にそんなのは、得意な奴がやればいいだけの話で俺が目指すべきところではない。不得意なところを治すことに無駄な労力をさいてギリギリ一般人レベルの及第点を目指すより、得意なところを伸ばす方が楽に常人の能力値を遥に越えられるし人は成長する。と、俺も、お前に前にも言ったような気がするが。自分の欠点を無理に補う必要ない。そこは別の人間が補填する。そう、補い合えればそれでいいってわけだよ。そういうわけでお前と組んでる以上俺はお前の今の助言を無視するし、お遊びならこの話はあてはまらないわけだから、お前がダーツの練習に付き合ってほしいっていうなら、つきあってやってもいいってわけ。まぁ、こういう言い方すると十中八九お前は俺に頭を下げないから、この会話には全然意味はないわけなんだけどな。……。……、どう、笑えてる?これもお遊び、な。」

 美里はつまらなそうに霧野を見上げ、顔を伏せた。

「ああ………、さっきより、……いいんじゃねぇの、知らねぇけど、もう疲れたから帰ろうぜ。車ここに置きっぱなんだってね。乗して途中で降ろせよ。あとこれ」
 美里の指がピンピンと札束を弄ぶように弾いた。
「店の金だろ。遊んでないで、さっさと金庫しまってこい、馬鹿。」

 霧野は車を飛ばしながら、一暴れしたい気分になった。高揚している。どうしてか、わからない。
 しかし、悪い高揚では無いことは確かだ。身体の奥の方が、痒く、熱く、渇く。

「点数稼ぎ、行かないか。」

 美里は窓を開けっぱなしにして髪をなびかせていたその頭を霧野の方へ向けた。

「は?ふざけんじゃねぇよ明日もはえぇっつったじゃん!‥‥と、言いたいところだが、……いいよ。俺もなぜか未だ今日は帰りたく無い気分だから。付き合ってやるよ。で、どこ行くん?」
「三笠の、シマ」
「ひゅ~いいね~、怒られそうで、」
 美里は手を叩きながら、霧野の方を見る。
「だが、荒事になったらお前がメインでやるんだよな。怠いから俺は後ろで見てるぜ。なんか問題あったら̠加戦応援してやるが、それだってお前、嫌がるもんな。」
「向き不向きの問題だからな。」
「さっきの話の続きか?……そうだな、そうかもな、確かにお前は、向いてるよ。」
「何に?」
「化物に。」
「なんだって?どういう意味だ。」
「勘違いするなよ。珍しく俺がお前を褒めているのだから。」
「一体その言葉のどこが褒めてるっていうんだよ?あ?」
「わからないなら、それでいいよ。いつかわかるかもしれないし、お前じゃ一生わからねぇかもしれねぇな。」
「……、……。」

 美里は真正面を向いた霧野の表情がわかりやすく険しくなっていくのを微笑まし気に見ていた。

(どうして川名さんがお前を俺のところによこしたか。最近になって、少しわかった気がするんだよ。お前があまりに化物で、おかげで俺が、化物にならなくて済むからだ。お前が化物になっている間、俺が人間としてお前を守ってやる。)

 夜はまだ、長い。

『おい、そろそろ起きたらどうだ。……馬鹿犬。』



 何を……やってるんだ……???カチリ、カチリ、時計の針の刻むように一定のタイミングで金属が擦れあう音が頭の中に。身体が貫かれ揺れるたびに、深紅の首輪のリングが、カチカチ言うのだ。

 カチ、カチ、霧野はその音を聞いている内に催眠術にでもかかったようになっていた。霧野の意識は今ここの地獄から過去の出来事の方へ流されていったのだった。懐かしい、輝かしい夢を見ていたような気がする。

 うつろにぼやけていた視界が、はっきりして、誰かに手首を抑えつけられているが、油断してる、これなら、簡単に、抜ける。明確に中の異物を、感じた、ああ、まず霧野は両腕をすばやく引いて男の手から逃れ、上に乗って調子に乗っている熱源、男の左腕を不意を突いて引っ張り、前方にバランスを崩させた。男の驚愕の表情を見るまでもなくそのままひっくり返し寝技をかける、その拍子に結合していた雄の部分がずるりと抜けた。上がっていた息、それは絶望的な性的な高まりによる吐息であったが、濡れた息が、霧野の中で別の興奮へ切り変わっていく。

 相手をうつ伏せに、腕十字固めを行い制圧。そのまま霧野は思い切り体重をかけ、ごき、と鈍い音が鳴る。肩の骨の抜ける音を聞いたと同時、更に男を三角占めして失神させ離れ、勢いよく立ち上がった。この間およそ3秒である。誰も状況を理解していない。霧野は瞬時に立ち上がり一直線に竜胆へ距離を詰めた。

 既に向けられていた拳銃の筒部を掴みあげ、その瞬間発砲された弾は、向きが斜め下に向けられ、霧野の肉体からは軌道を逸れ、彼の部下の太ももを貫通した。悲鳴。血しぶきが周囲と霧野の裸体のその半分を血で赤く汚すのだった。誰かが、声を上げて笑っている。どこからか悪魔じみた笑い声が聞こえてくるような気がする。

 霧野は発砲があったと同時に竜胆の膝関節に蹴りを入れ、そのまま銃を奪取、間髪入れずに下から突き上げるように右ストレートを顎にヒットさせ、何も言わず卒倒し鼻血が飛び顔と手にしぶいた。別に竜胆が弱いから卒倒したのではなく、相手が誰であれ、渾身の力を込めた右ストレートをまともに顎にくらって立てるものなど無い。仕方のないことなのだ。竜胆が避けていれば話はまた違った、今、一番初めに狙いを定め、不意をついたから、たまたまうまく行っただけだ。

 場の空気が、怪しくなり、霧野の方へ流れ始める。霧野は奪った拳銃をまず久瀬の方へ向け、お互い向い合せに銃を構える形になる。その時、自分が手にしてる竜胆の自動小銃と目の前の銃が全く同じ型であることに気が付いた。
また大きな笑い声がして、霧野は自分が嗤っていることに、今気が付いたのだった。

「あは!なるほど、なるほど。もしかして、おそろいの使ってるの、これ。気持ち悪いなお前ら。マジでホモじゃん。きしょいよ。」

 霧野は久瀬を眺めてあからさまに嘲笑したが、久瀬は答えない。霧野は視界の端で彼の部下二人も銃を持っていることを視認した。

 その時、背後に人の気配、羽交い絞めされる前に肘打ちを顔面に与え、その後、代わる代わる雄叫びをあげて向かってくる男達を投げ飛ばし、ナイフなどの得物を持っている者からは、ついでにそいつをひねりとる。一本残して残りは窓を開けバラバラと、背中越しに外へ放り捨てた。

 背後から、抜群に気持ちのいい風が、熱く濡れた霧野の身体に、触れ周り、感じた。

 この部屋の異常な蒸れが、少しマシなものになる。再び、先ほどの続きと言うように、久瀬との距離を一気に詰めた。竜胆の時と同じく奪取しながら反撃することにする、正直久瀬は最初から戦力外だ。腹に一撃、急所にやるだけでいい。霧野の周囲に、男達の残骸が転がって、呻いていた。拳銃はあっけなくとれ、制圧する。

 制圧、制圧。弱い、弱い。
 霧野は久しぶりの、本来の意味での運動に顔を覆って高笑いした。

 久瀬はくらくらする視界の中で、久しぶりに見る強烈に凶暴でそして美しく知的でもある天性の獣を、眺めていた。今彼が一糸まとっていないせいで、今まではただ性的に見えていた身体が、仲間の血に濡れ、吠えており、ただの一頭の、人間を超越した獣が目の前に現れたように思える。つまり今の我々は、捕まえ、完全に制圧したと思っていた本来危険で獰猛な獣に、ただ反撃を受けているだけである。奴は、視界から消えたと思ったらすぐ、目の前に現れた、その瞳孔は完全に開き切り、青黒く、その向こう側に、誰かにも似た、底深い闇が広がっているのを見つける。黒曜石にも似た美しさ。その瞳に見られると、恐怖と喜悦とがごっちゃになって、怖ろしいのに、気持ちよくなる。ずっと見ていたいとさえ思う。そのまま食われたって、良い、とも。

 霧野の視界にはもう、久瀬も竜胆も何も無かった。ただ使い物にならなくなった玩具が転がっている、その位の認識しかない。人とも思ってない。簡単。簡単。あまりにも簡単。つまらない。霧野は品定めするように自分を囲んでいる残りの男達を見たが、ほとんど戦意喪失気味といった様子だった。霧野はその内一人に目を止め、じっと血濡れた顔の中で目を大きく見開いてみせるのだった。見据えられた男はたまったものではなく、情けない声を上げた。

「お前……、誰だか知らないが、良いブランド物を着ている。実は、俺もそれ持ってたんだ、買ってもらったんだ、川名さんに。もう一個上のグレードのものだけどな。どうやら貴様は体格も俺に近いようだ、よこせ。こんな格好じゃあ、外に出ていけないだろうが、俺が。」
「………」
「……何をぼーっと突っ立てるんだ、あ?聞こえなかったか?俺の、よこせという言葉が。それとも日本語がわからない?Hey!!Give me the clothes you're wearing!!……or I'll shoot you.」

 霧野は手に持っている竜胆と久瀬の二丁の拳銃の内一方を何のためらいもなく、今自分が話しかけた男の革靴に向かって打った。弾は革靴、その下の靴下、皮膚、肉、骨を貫通、声を上げ蹲る男の前に、霧野はまんべんの笑みを浮かべ、一緒にしゃがみ込み、ため息をつき、裸足の脚の下に拳銃を置いて踏み、両手で男の頭を掴み、顔を上げさせ、その瞳の奥を覗き込む。

「なんだよ、震えて。こっちは裸だぞ。面白いだろ、笑えるだろ。」

 親指で、怯え切った男の顔を、頬から眼球に向かって上へ下へと撫でた。

「お前の靴は大したことないからいらない。だから撃った。隣のお前、お前が靴を寄こす担当だ。お前は早く脱げ。それとも、ここにも穴、あけられたいのか?」
 
 霧野は男の眼球の上に置いた親指に軽く重圧をかけながらしゃがんだ身体を軽く前後にゆするのだった。男の目の前で、生肉でも嚙み砕いてくったかのように、歯まで他人の血で真っ赤に濡れ、口角のあがった唇が、動いていた。

「で、空いた穴に、革靴担当野郎の男性器でも突っ込ませてほしいのだろう。どうだ?俺の言っていることは正しいな?ああ、勿論これは俺の趣味じゃないぜ、悪趣味なお前らに合わせてご提案させていただいているんですから。おわかりいただけますか?お前らは、突っ込む、突っ込まれる、みたいなくだらない遊びが大好きなんだから。さぁぞ気持ちがいいだろうなと思っての、最高の、ご提案ですよ。紳士的だろ、俺。どう思う?どう?俺だって少しくらいは人の気持ちをおもんばかれるわけだ。お前は人の気持ちを考えられない。なんてよく言われたけど、そいつの方が間違ってるよな。どう思う?」

「す、すみません。脱ぎます、脱ぎますから、!ぁ」と蚊の鳴くような声と共に、男は自信のジャケットにに手をかけているのだが、汗にまみれ、震えて、指が滑り、すべてが遅い。話にならない。霧野は男の頭から手を離し、銃を手に立ち上がった。霧野は心から冷めたごみを見るような目で男を見降ろしていた。

「いまひとつ確かなことは、お前は何もかも駄目だということだ。呆れる。なぜお前のような出来損ないがウチに侵入できているのか全くの謎だ。この俺にもわからないことがあるということだ。この病原菌が。おい、誰か、この病原菌は、服も自分で脱げないらしいからだれでもいいから、手伝ってやれ。な。」

 霧野がそう言って周囲を見渡すと、まだ震えながら銃を向けている竜胆の腹心二人が視界の端に写った。

「なんだ、まだ元気なのが残ってるじゃないか、良かっ……」
 
 よく見れば、彼らの下半身の衣服には急いで戻したような乱れが見え、その瞬間、霧野が意識を飛ばしていた際に、奴らが何をしていたかを思い出す。霧野は反射的に、そちら二発、撃った。向こうも同時に撃った。内一発が、まったく別の男の脇腹に着弾、もう一発が霧野の頬を掠め髪を軽く焼き壁に着弾した。

 一方、霧野の打った弾は正確に二人を貫いていた。霧野は無表情に、床の上にのたうち回る男達の方へ近づいて、彼らの拳銃を蹴り飛ばし、拾いあげ、珠を抜いて窓から投げ捨てた。

「銃は脅しだけに使うもんじゃないって、知ってたか?実際に使えなければ全く意味がない。お前ら一体普段何をやってるんだ。銃の練習のひとつもしないでセックスセックスっか。流石竜胆のまぬけんとこの奴だ。拳銃もまともに扱えないで、何が犯罪者、ヤクザだよ、笑かしてくれる。張り合いが全くない。なぁ!!!これは組長に言っとかなきゃだな。あの人、銃が好きで腕が良いから、俺も見てもらって少し癖を矯正してもらった。あの時は珍しく楽しそうだったぜ。俺も愉しかった。だって、近づけたから。それだけ、奴の懐へ。たったそれだけのことで、懐に入り込んでいける。そう、そんなことも見抜けないで、お前らはその点でも頭が回らない、劣っているから上に行けないんだ。なおさない限り一生底辺人生ってことが、どうしてわからないかね。ほんと、頭悪い犯罪者って哀れだ。搾取されるだけ。客より立場悪い。こうやって俺達みたいなのの養分にされるだけってこと。わかんない?そんな簡単なことが。ま、わかってないから銃さえマトモに扱えないのだろ。いい。お前らのような救えない養分がいるおかげで、俺らも多少は愉しいんだから。でも今回のことは貴様らにとっても結構良い勉強になったと思わないかい。」

 霧野は床に倒れた二人のすぐ後方で立ち止まった。彼らの股間は小便でももらしたように濡れているがそれはドス黒い血の痕である。霧野の銃弾で、股間を正確に撃ち抜かれたのである。もう二度と使い物にならないよう。床に這いつくばって霧野と反対の方へ逃げようとする。

「おお。気を失わなかったか。それはすごい。これも報告しておいてやるよ。ところでお前ら、名前なんだっけ?まぁ、どうでもいいか、そんなこと。どうせどうでもいい奴の名前なんか聞いても忘れる。……どう?気持ちいい、か?……そうだよ、穴開けられる気持ちを、貴女方にもね、お教えして差し上げようと思いまして、ね。で、どうだい気分は。最高か?天にも昇るか?」

 逃げられるはずもないのに、まだ芋虫のようにドアの方へ這って行こうとする。

「最後に俺で思い出作れてよかっただろ。感謝しろよ。この変態野郎。」

 反応無。「返事は。」ふくらはぎに発砲すると飛びあがるように跳ねぎゃあと面白くもない悲鳴を上げ、霧野は穴の開いた部分を足で上から踏んづけぎりぎりと体重をかけた、ビシュッ!と素足に血が跳ねあがり白い脛の皮膚を濡らした。

「おい、どこに行く気だ?俺にお礼は?ありがとうございますはどうした。」
「ぁ゛……゛、」

 霧野は体重をかけながら前傾し耳に手を当てて頭を寄せた。

「んんんん????何だ?ぜんぜん、聞こえないなぁ。普段の威勢イイ声はどした?おい、いつものばかみてぇなヤクザ式の挨拶よろしく、腹から声だせよ!!!おら!!感謝してんだろ?俺に。散々してくれてよ、どうなんだよ。まさか、してないのか?してないであんなことしたのか?俺の身体によ。だとしたら礼儀がなってないな。お前らがどうしようもない変態だから特別に使わしてやったんだぜ。俺は、自分が認めた人間にしか、従わない。」

 霧野の何を言っても正しく聴こえるような精悍な声と反対に蚊の鳴くような声が上がる。言葉として成っていない。つまりそれは命令を、こちらを無視したってこと。許されないことだ。

「……。俺はな急所、命にかかわらない部分を狙っていくらでも撃てるんだ、ほら。もっと穴が欲しいようだからくれてやるよ。泣いて悦びな。大丈夫だ、絶対に死なせないからな。安心しろ。俺は人を殺さない。」

 腕、膝、と打ち込んでいく内、拳銃の内一つが弾切れし、これも開きっぱなしの窓から放り投げる。穴の開いた箇所を執拗に、抉るように踏む。絶叫。後、失神。排せつ物の匂いが漂い始めた。「どうだ。穴にいれられて気持ちがいいだろ。どうなんだよ。俺はお前らが俺にやったことをただなぞってやっているだけだ。まだ俺と、やりたいか?あ?この悪趣味野郎共が。」ありがとうございます。ありがとうございます。気持ちいいです!といつの間にか大きい声で肉が鳴いていた。その時、背後から怯えた声がした。
「お、終わりました。」
振り返ると衣服をこちらに手渡してくる男、目を合わせようとしない。その横で裸になって惨めに震えている大男。「ああ、ありがとう。やっぱりいいよな、これ。」

 受け取りながら、視界の端に三島が写って彼がこの場に居たことを思い出したのだった。熱が、少しだけ冷めていく。三島は、顔を青くしながら、しかし、目の奥に興奮と獣性を輝かせながら、恐る恐る霧野を見返していた。そして、どこか、惚けたような柔らかな、泣き笑いのような表情を作った。三島は、この部屋で霧野に指一本触れていない一人にすぎなかった。おそらく、久瀬か竜胆から何も言われない限り、最初から何もする気は無かっただろう。

 服を着終えたと同時に遅すぎるくらい遅く、銃声を聞きつけた男達がやってきた。霧野は意にも解さずに、真っすぐ彼ら、出口の方へと進んでいった。血だらけの床、倒れ呻く男達、全面血しぶきに穢れた悲惨な想定外の惨状、それから目の前から、鬼人が、凶器を手に、迫ってくる。服から露出した部分は他人の血で赤く濡れて、この惨劇を誰が起こしたのかは。誰の眼にも明らかである。大の男達が、今の霧野の姿に、ひるんだのだった。

 救いようもない、情けの無い奴らだ。霧野が前に進むと人垣が割れ、霧野は足を止め、周囲を見渡した。
 誰か何か言うか仕掛けてくるか待ってみたが、何も起こらない。霧野の方から口を開いた。

「ははは。なんだ。どいつもこいつも情けが無い連中だな。俺と遊ばないってならさ、そいつらのために早く救急車呼ぶか、姫宮センセのとこにでもとっととかつぎ込むんだな。とくに奥の奴は太もももに流れ弾が当たってるから早く処置しないと出血多量で死ぬぞ。そいつ撃ったのは俺じゃない。……おい、三島、行くぞ。足元血で滑るから、気をつけろ。」

 急に名指しで呼ばれ、驚いて一瞬出足が遅れた三島を伴って、廊下に出、そのままいとも簡単に外へ出た。

「ああ……、なんだ、思いの外、つまらなかった。竜胆とかあの辺の大物を最後に残しておくんだった。そうすれば多少は張り合いがあって気持ちが良かったのに。そう思わないか。俺も馬鹿だな。」
「し……知りませんよ!そんなこと!ていうか、何、やってくれてんですか……俺もう立場無いじゃないすか……!どうするんです、これから、あんなことして、これが知れたら」
「どうするって、決まっているだろ、行くんだよ、直接、川名のとこへ。ああ、お前は何も悪くないって言っておくから、大丈夫。俺に脅されたとかそういうことにしておくから何にも心配するな。出せるだろ車。出せ、早く。」
「ええ??あ、はい!こちらです。……、あと、これ、使って下さい。」

 差し出されたハンカチを手にした時初めて、霧野は自分の身体が穢れた血でいっぱいに濡れていることを思い、まずは残っている爪の隙間から、執拗に手を拭き始めながら、三島の後に続くのだった。



「調子はどうだね。」

 仏壇に線香を手向ける。背後からの聞きなれた声に川名は仏壇に置かれた写真の方を見たまま答えた。

「ええ、順調ですよ。手抜かりございません。」

 汐は常にこちらに、微笑みかけてくる。対照的に渚は遺影だというのに殆ど笑っていない。なかったのである、正面を向いて笑っている写真が一枚も。唯一笑ってい写真は、汐と写っている写真だけで、遺影に向かなかった。川名は立ち上がり、彼らの父、加賀徹の方へ身体を向け、向かいあって座った。

「完全に仕立て上げるつもりです。組の為にも。」
「組?お前の為だろう。」

 川名は、ふーん、と逆に徹を品定めするように見るのだった。

「ふふ、何でも御見通しって訳ですか。相変わらず、嫌なジジイだぜ、アンタ。……別に、どっちの役にも立つんだから、いいじゃないですか。ずっと前から欲しかったんだから俺、警官アガリが。最初は殺すつもりだった、その方が穏便に済むのはわかってますが、少しばかり事情が変わったものですから。八代は逆に私が育てて警官にさせたわけですがどうもね。役に立つには違いないが、毛色がまた違います。」

「まぁ、お前の好きにすればいいが、忍にはどう説明する気だ。」

「その時はその時、です。別にいい、爆弾のひとつやふたつくらい抱えていたほうがスリルがあって気が良いのです。ご存じでしょう。それではそろそろ、会合が始まるので。また寄ります。」

 本家での会合が始まる。広間に入ってすぐに刺すような視線が自分の方にいくつも向かってくるのを全身で感じる。今日は、誰も連れてきていない。全くの独りで来た。予感があったからだ。

「本題に入る前に、ひとつ。」

 忍の視線が明らかにこちらに向いていたが、川名は向かいの席の男の更にその向こうを見ていた。

「この中に、自分の組にサツの潜入を許した奴がいる。しかもそれを俺に報告していない。自分の落ち度を隠ぺいしたのだ。」
 
 周囲にざわめきが走る。

「………。」
「誰のこと言ってるか、本人が一番わかってるだろ、おい、」
「………。ああ。」

 川名は俯き加減になって忍の方を上目遣い、微笑みを浮かべた。

「ええ、それは私です。前半はあっています。だが、後半は全く事実と異なりますから訂正させていただきます。隠していたのではなく、言う必要がないから、言わなかった、だた、それだけです。」

 川名が発言したことにより、全ての視線が今度は川名に集中したが、川名の顔色一つ表情一つ変わるところはないのだった。川名はざわめきをものともせず続けた。

「確かに、私にも落ち度がありました。しかし、今、私の手で、再教育を施しているところです。」
「まさか……まだ始末さえしていないと?そういう風に聞こえるが。」
「ええ。おっしゃるとおりです。生かしています。何故なら、もう、いえ、始めから彼は私の物と決まっていますから、どう扱うも、殺すも生かすも、すべて、私の自由です。」
「お前自分が何言ってるか、わかってんのか!通るか、通らねぇよ、そんなの、俺が許さねぇ、さっさとてめぇの手で始末つけるか、できねぇってならここにしょっぴいて来いよ。」
「……。ええ。そうでしょうね。貴方の性格ではきっとそうおっしゃると思っていました。ですから、いままで貴方には、黙っていたまでです。もし、嫌、と、私が言ったら一体、どうするおつもりです?解任?ケジメ?解散要求?破門?別に、どのような宣告をしていただいても結構ですが、その場合、私一人が消えることにはならないことを、どうかお忘れなく。」

 川名は立ち上がり、場を見回すように目配せした。すると、幹部会の半数をわずかに上回る数の者が、同じく立ち上がったのである。これは現組長である忍に対し、川名を筆頭にした元組長派閥の面子である。

 元は少数派だったはずが、忍も気づかぬうち、川名の懐に入った長が幹部会の過半数をわずかに越えた。甲武会の主力勢力も含み、離脱されて困るのは、加賀家及び、忍である。とはいえ、忍が強行すれば、川名自身に「死」の宣告がされる可能性もゼロではない。暗殺である。

「き、貴様ら……」
 川名は忍の表情が歪むのに久しぶりに心動かされる欲情を感じたのだった。
(汐、やっぱりお前の兄貴じゃ駄目だ。どうして兄貴ってのはどいつもこいつも屑なんだろうね。)
「ところで組長、そろそろ私を若頭補佐にしていただけませんかね。これだけの人数を束ねてるのですから。」
「なに……」

 要求ではなく、脅しである。川名が離脱すれば、他の主要幹部も離脱する。結局困るのは忍だからだ。若頭は実質甲武会のナンバー2にあたり、忍の引退後組を継ぐ立場にある。これを忍の長男である誠が勤めるのだが、これがなかなかあまり評判が良くない。補佐に忍の弟にあたる樹、その他、別の会、組の長である、畑中、相馬、京極。実際に手綱を握っているのは彼らであり、彼らは全員が忍派の人間である。現在若頭の地位に居る忍の長男は誰が見ても明らかに実力不足。補佐の中の誰かが若頭の候補となり、地位の入れ替わることも十分に考えられた。

 川名はこの時を待っていた。忍が自分の落ち度を手に鬼の首を取ったようにして、川名に対して罷免要求をしてくることを。それを逆手に、自分が上がる算段である。駄目なら駄目で、今立っているメンバーを全員引き取って面倒を見るだけの話である、が、その前に隠居が忍を諫める形になるだろう。そして川名はこの時になって意外にも自分の命をとしても霧野を手放す気が無いことを改めて理解したのである。

「重要なことですから、今、この場でお決めにならなくても、結構です。さて、例の”糞ポリ君”の話に戻りますが、何も問題はありません。”しょっぴいてこい”とのことでしたが、時期が来れば面会させることももちろん可能です。皆さんの前に引き出すことももちろん可能。煮たり焼いたりしたいというなら、どうぞ、ご気軽にご相談ください。奴の出した実損は今後、奴自身で補ってもらう契約をしていますから、殺してしまっては甘すぎるのです。せっかく労働力として使える家畜を手に入れたというのに、肉が上手そうだからと言ってすぐに殺してしまっては、その場では一瞬満ち足りるかもしれませんが、長い目で見れば損失ですよ。実際に漏れた情報についても既にすべて把握、対処は済んでます。寧ろ利用できる情報が多く手に入ったほどとも言えましょう。そう、カモがネギしょってきたようなもんだ。はは。そう、だから、この会にこれ以上損害や被害をださせることはしません。……さ、もう私の話はいいでしょう。さもないことだ。他に話すべき議題が残っているはずですから。まずそちらを進めませんか。ポリのことはこっちで使えるようにしてますから。心配なさらなくて結構です。」

 言い終えた川名が腰を下ろし居を正すと、立っていた他の面々も次々に座った。場には殺伐とした空気だけが残された。川名一人だけが、自分が言い出したのにさめざめとした顔をして、次の議題に耳を傾けていた。

 会合の後、川名は加賀家の空いた一室に向かった。稀に客間や宴会場としても使われる何もない巨大な和室である。まだ汐が生きていた頃、彼も渚程ではないが度々体調を崩した。しかし、体調を崩してはいるが、仕事上の指示を行わなければいけない時、自室ではなく、この部屋に布団を敷き、療養しながらも部下や客人を通しながら甲斐甲斐しく仕事を進めたのだ。このことも彼の人望が厚かった理由の一つかもしれない。川名は手が空いていれば汐を介抱してやっていたが、タダ介抱してやっていたわけではない。

 ある日、川名がその部屋の隅に座っていたある時、汐は布団に寝たまま上半身を起き上がらせることもせず、異常に熱っぽい声を出し、腹心や客人を多少困惑させたものの、その度川名が「汐様は今日お熱が38度ほどあるのです。」とか、あまりにも様子がおかしい差異は「私が代わりにお聞きしましょうか。」と立ち上がり、汐の口元に耳を当て、代返するのだった。

 というのも、汐は、その布団の下でケツ穴にディルドを奥まで突っ込まれた上、無暗に出せないように上から緊縛され、その上、浴衣の一枚も着せられず、布団の下はまったくの裸なのである。裸よりさらにタチの悪い状況。だから布団を剥がされては終わりだし、もちろん喘いだりして、勘付かれても全く、終わりである。威厳も糞も吹き飛ぶ。腹心の一人が去った後、汐は川名を仰ぎ見、上半身を手を付きながらなんとか起き上がらせた。

 傷だらけの半裸の薄い肉体は体調不良による発熱と欲情の発熱で真っ赤であり、眺めている内に、川名は頭の奥の方がぐらぐらと多少揺らぐような感覚を覚えるのだった。汐の顔には怒りとも悦びともとれる表情が浮き上がりかけ、何か言おうとしていた。

 彼が口を開くより先に、川名は「なんなんだ?さっきの情けないサマは。自分の部下にはちゃんと指示しろよ。組長なんだよな、お前。ちがうのか?」とその顔に向かって唾を吐きかけるのだった。思わず目を閉ざした汐の顔面に、熱い唾液が厚い頬の上に涙の代わりのように垂れ、畳の上に堕ちた。川名は堕ちた雫を無言で観ている。汐の紅い顔に苦笑いが浮かんだ。

「は、なんだよ……舐めろってか。俺に。」
「そうだよ、よくわかってるじゃねぇか。わかってるならはやくしろよ。」
「……わかったよ……」

 汐がそのまま身を屈めようとする、その頭を、川名は横から軽く軽く蹴って横に倒させた。半身が布団から畳の上に直接伸びる。ぁ、と小さく呻きながら熱っぽい声を出し身をくゆらす組長を見ながら義孝は「今客人が来たらまずいな」とぼやいた。

 汐が両手を畳につき、「何するんだ」と咳き込みながら言うのに対し、義孝は布団を引き剥がし「こっちの台詞ですよ、汐様。……。お前、何楽しようとしてんだ。あ?熱出てるからって俺がお前に甘くするかと思ったか。馬鹿が。こっちにケツ向けて四つん這いでやるんだよ。前に一回やり方仕込んでやっただろ。……今日、一日を通して、今のところお前に加点すべきところは、一つたりともない。ひとつもだ。がっかり。減点ばっかりだぜ。どこかで持ち直さないと、後日、大変なことになるってことは、わかってるよな、汐。」

「………。」
 
 俯いた汐の表情が伺えないが、身体がまだらに紅くなり、発汗し露になった雄が、しっかり勃起している。そのまま、汐は黙って言われた通りに重い身体を低くし、畳の上の露を、吸った。

「ん?なんだ、まだ余裕ありそうだな。もう一回りデカくても大丈夫そうだ。」

 義孝が、汐の大きな身体に背後から覆いかぶさるようにして、膝で汐の肉筒に深々突き刺さり熱々になったディルドを膝でぐりぐりと押す。

「ぐぁ゛……ぁっ、んん、い゛、い、や、っ、だ……っ、止せったら、!!、ぁぁ……っ、ぁぁ、」

 そのままのしかかるように背後から身体を重ね体を触ると異常に熱い。

「……。とてもお熱い。お熱をおはかりしましょうね。」

 義孝はズボンのポケットから体温計を取り出すと、それをディルドのめり込んだ厚肉の隙間にぐに、と無理やりねじ込んだ。肉は引き攣れるように震え、その隙間から透明な汁をだらだらとたらして内腿を汚す。

「ん゛…ぅぅ‥なにを、するんだ……っ」

 ピコピコと点滅しながら、上昇していくデジタル数値が見える。義孝は体温計を摘まみ、半円を描くように汐の肉筒の淵をぐちぐちと動かし、その度に、どんどん下がっていく頭の向こうから、ぁっ、ぁっ、ぁっ、と濡れた声が漏れ、のを静かに聞いていた。

 畳に上に垂れた義孝の唾の上に、汐自身の涎と、涙が、堕ちる。それをまた、舐めとるのに忙しい。その度に痩せた身体にしては肉付きの悪くない尻が体温計を牝孔から突く出しながら右に左に媚びるように揺れている。
 ピピピピ!38.4の表示。義孝は体温計を抜き取って手拭いで丁寧にぬぐい、傍らに置いた。

 そのまま、義孝はポケットにいれていたクリップを取り出し、汐の背後から、既に硬くなりかけている小さな突起を指で、摘まみ上げた。指で転がしている内にすぐにそのピンクの肉粒は硬く反り返る程に反応する蕾だ。

「あ゛‥…ぁっ、いま、そんなこと、すん、ぁよ…‥‥っ゛……おねが、…‥っ、」
「あ?何言ってるか聞き取れない。もっとはっきり喋れよ、おら。」

 乳首をぎゅうと引っ張り上げると、高い声で啼いてさらに言葉が乱れていた。

「ああ、なんだ。もっとして欲しいのか。わかったわかった、相変わらず我儘坊ちゃんですね、汐様は。」

 痰の絡んだ、ぜぇぜぇという熱っぽい呼吸音の中、指で汐の身体を弄んでいる内、汐の身体が明らかさまに感じ、電流でも浴びせられたかのように、跳ね震え出し、義孝の目下で尻がほんのりと、あからみ、ディルドを奥まで咥え込まされた肉穴が、さらに物欲しそうに、きゅうきゅうと濡れながら引き絞られていくのだった。

 乳首に絡めていた指を外し、待ち構えるように立ち上がったその二つの淫乱な核へ、手の中に握り込んでいたクリップをつけた。同時に「きゃん!」と啼き声があがった。とても大柄な彼の口から出たは思えない小型犬のような高い声。まさかこの屋敷の誰も、その奇妙な音がこの部屋から発せられたとは気が付かない。
 
 汐はそのまま、何も言わず、いや、喘いではいたが、へなへなと畳の上に倒れ込んでしまう。
 もう、自分では動けないらしい。
 
 義孝は彼の身体を引きづるようにして布団の中に戻しかけたが、今一度上体を起こさせ、手首を後ろに回して軽く手拭いで縛っておいた。自分でクリップを外すのを防ぐためである。ただ、今の汐なら、義孝の指示なしに故意にクリップを外すような真似は事故でも起こらない限りほとんどない。ただ、自分ではもうどうにもできないという状況に追い込まれることが、汐を高める。だから自由を奪ったのだ。

 そうして再び布団に戻された汐の顔は先ほどより余程熱っぽく、口元も、目元も、濡れていた。黙って顔を拭いてやりながら、布団越しに、汐の上に跨った。また、小さく高い鳴き声が、断続的に、漏れる。布団が擦れ、乳首を刺激するらしい。

「情けない声だな。お前の大事な腹心たちにも聞かせてやりたい。」

 布団の上にまで、突き上げるように、義孝の尻の位置に、汐の淫棒が興奮に勃起し、もちあがりかけていた。汐はますます顔を赤らめ何も言えなくなって気まずげに視線を逸らした。そして、時折何か懇願するような横目を義孝の方に向けるのだった。だから、思い切り胸の部分の布団を擦り上げると、いやらしい、大きな声で啼いた。義孝は彼の頭の左右に足をおいて、立ち上がり彼を見降ろしていた。

「人様の腰に恥ずかしげもなく己のチンポをあてやがるとは、どういうつもりだ、貴様。その強欲で我儘な顔面をトイレにしてやりたい気分だ、本来ならな。だが、今日は今からもひっきりなしに人が来るから止めてやる。」

 さっき奇麗にしたというのに、また、泣いているようだった。

「また汚して。ほら、拭いてやるよ。」

 そのまま顔面をふんで靴下の裏で拭ってやった。足がどいた後も、はぁはぁして、彼は、動悸が激しくなるのが止まらないようだった。求めるように、喘いでいるのが、発熱のせいだけとはもうとても思えない。その時だった。

「失礼してもよろしいか。」

 障子の向こうから聞きなれた男の声。汐の部下である。義孝はゆっくりと汐のそばを離れながら「ああ、しばしお待ちください、今こちらからあけますから。」と言って、目配せするように汐を見降ろした。

「ば…‥馬鹿、っ、駄目だ、今は…‥!!追い払ってくれ、っ、」

 義孝は半分瞼を閉じたような疲れた瞳を汐の顔から布団の方へ移動させた。布団が、まだ屹立した汐のペニスでテントを張ったままなのだ。

「なんだお前、まだ納めてねぇのかよ……。しょうがない奴だな……。」

 義孝は行きかけた足を引き返し、汐の横へと戻ると、思い切り足を振り上げ、その恥塔を思い切り踏みつけた。義孝の笑いだしたいのを我慢するのと反対に、汐の口から、絶叫。一発ではさらに大きくするらしいその痴棒を「とんでもないマゾチンポだ。これでもまだ治らないか。まったく。」と二発三発と容赦なく踏みしだいていった。

 汐は口から泡を吹いて、とても普段の彼しか知らない人間には見せられないようなアヘ顔さながらの顔晒し、くらくらと視線を宙に彷徨わせて失神する寸前に至っていた。その時、部屋に生臭い匂いがただ漂い始め、布団に染みが拡がった。汐が、このタイミングで勝手に射精したのだ。

「てっめぇ……ふざけんなよ。クソ!」

 義孝は急いで布団を引き剥がし、押し入れに押し込み代わりの布団を放り投げた。

「組長!?、汐様、大丈夫ですか!?」

 義孝は外からの声に柄でもなく大きな声で反応した。

「大丈夫です。急に巨大な蜈蚣が出て、驚きなさったのです。おそらく内庭からでも入ってきたのでしょう。今、こちらで退治しましたから、掃除をしっかりしておくように僕からも言っておきます。残骸を始末しますから、もう少々お待ちください。」

 汐の傍らに座り、再び顔を拭ってやりながら眠気覚ましに二、三度と両頬をビンタすると、彼の無様に緩んでいた口がひきしまり、意識が正気に戻ってくる。彼は真っ赤な顔をして眉をしかめ歯を食いしばる。なるほど、なかなか迫力、胆力のある顔であるが、状況が状況だ、何も怖くない。それどころか、馬鹿みたいだ。

「き、貴様……っ!!」
「なんだ?何か文句があるのか、俺に。あるならはっきり言ってみろ。ないなら黙れ。」
「……、……。」

 汐の表情が腑抜けたように緩んでいった。彼は気まずげに眉を寄せ、唇を噛んだ。

「ああ、そうだろうな。よくわかってる、えらいえらい。ただ一瞬感情的になってしまっただけだろう、お前の悪い癖だ。本当はよく反省しているのも知っている。俺の身体に、布越しとはいえお前の汚いブツあてやがったこと、勝手に射精したこと。あとで覚えてろ。お前が病気だから加減してやってんだぜ。お前もわかってるだろ。……。もし、危なくなったら仰向けではなく、横になれ。そうすれば多少はばれないだろう。少し寒くなるかもしれないが、反対側の障子をしばらくあけておく。この部屋、お前の匂いがするからな。」

 義孝は背中に汐の視線を感じながら、客人の居るのと反対側の障子を軽く開いた。それからゆっくりとした足取りで、真っすぐ汐の方へ、汐の布団の「上」を真っすぐ踏み通って、客人の居る方の障子を開いた。

「お待たせしました。どうぞ。お入りください。先ほどお熱をお諮りしましたが、まだ38度近くから下がっていません。汐様の身体にご負担の無いよう、なるべく、手短にお願いします。」

 義孝は客人を招き入れ、自分は部屋の隅に退き、汐の様子を監視し続けた。汐も見られているのがわかっていて、疼く身体を隠しながら、普段通りの顔を繕って仕事を続けるのだった。身体の向きが、仰向けから横向きに変わるまでに、そう時間はかからなかった。
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