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さっきから、嬉しそうな雌犬声出してよ、一体何悦んでんだお前。自分が何故そうなってるのか理解してる?
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「自分が何者であるか、考えてみろよ。」
「何者か?」
「そう、お前が誰で、何で、何のためにあるのか。どうして生まれてきたのか。」
沈黙
「自分で考えることが、辛いんだな。」
沈黙
「沈黙は、すなわちYESということか。」
「違う。だいたい、そんな質問に答えは無い、愚問。」
「思考放棄だな、考えることを放棄して。そうやって、また、ムキになるなよ。お前は他人軸で生きているから」
「違う。」
「……否定する程真実味が増すな。お前は誰かが居ないと何もできないんだよ。」
「……そんなの、誰だって、そうだろ、人間は社会性動物、だから、一人で居たくて居ようたって、最初から無理な話。アナーキスト(※1)の思想だって、夢のまた夢だぜ、だって人間のほとんどは、いや俺の主観では9割以上は自分で自分を管理することさえ、ままならないのだから。」
「へぇ、そう?別に、俺は独りでも生きていける。他人は関係ない。アナーキズムね。別に夢とも思わない。お前の話ではまるで9割以上の人間はカスだから、1割の管理者が居なくては世界が成立しないと言っているような口ぶりだが、自分の管理ができないカスの方が、自分に忠実で案外長く生きるかもよ。あと、俺が一番気になったのは、どうやらお前が、当然のように自分をその1割の方に勘定しているらしいところだ。お前が?笑わせてくれる。ここ1週間の中で一番面白いかもしれない。」
「……。だったら、どうして、……」
「こうやって、お前と関わって、こんな目に遭わせるているかって?」
「……、いや、違うね、何言ってんだよ、本当に気持ち悪いな、お前らは。独りで生きていけるっていうなら、どうして群れなんか作ったのか、はなはだ疑問だって話だよ。だって、矛盾してるじゃないですか。お前と俺との関係性?そんなの今どうでもいいし、お前から聞きたくない。」
沈黙
「今度はお前が黙った、立場が逆になりましたよ。」
「お前は自分が動くのは上手くても、人を使うのはあまり上手くないよな。だからわからんのだ。」
「論点を、すり替えないでくださいよ、俺が言いたいのは」
「自信が無いのだろ。本当のところは。」
沈黙
「そんなこと、ない、できた、俺にだって、できたよ、できないことなんかない、ない、ないんだ、だって、そう、褒めてくれたことも、あったじゃないか。だから、……だから、……」
「もう、いい、寝ろよ。」
闇が身体にまとわりつく感触
(※1 無政府主義者のこと。アナーキズムは、政府が無い状態で社会が運営されるという社会思想。ここでは個人が社会から独立し完全に自由である個人主義的無政府主義を前提に会話している。)
◆
(一)霧野遥(以下、丙)は、時期を見て正規の手順で警官であることを辞、正式に川名組(以下、乙)に加入すること。
(二)丙は、乙の統括者及びその命を受けた者(以下、甲)に絶対服従、及び、身体の自由、その全てを預けること。
(三)契約の期限は無期とする。ただし、甲による契約内容の改定は、随時認めるものとする。
◆
二条薫は、ついさっきまで間宮が立っていた所、組長の部屋の扉のすぐ横の壁にもたれかかって、部屋の中心でまぐわっている二頭の獣を眺めていた。第三者が見ればさぞ異様な光景だろう。
部屋の中心で、霧野は床に手を付き蹲って頭を下げて、川名が、まずそれを読んでから署名しろと言う通りに、書面上の証文を読もうとしているのだが、失敗しては恫喝され、を、繰り返しているのだった。だが、それも無理も無いことである。不格好に川名の足もとに這いつくばらされるだけでなく、その上背後から、間宮に際限なく犯されながら証文を最初から最後まで読み上げろというのだから。
「ん゛ん゛……っを、ぅぅぅぅ、ぁ、っ、ああっ、‥……‥時期、時期を、む、むり……゛っ、ひ、む、、」
「何?無理?一体どこにそんなことが書いてあるんだ?!あ~~~?止めるか~~~??????!!!!」
「ぁ゛う……っ、うううう゛、……!!」
こんなことが、痴態失敗恫喝叱責が、もう何度も繰り返されていた。
二条の位置からはよく見えないが、霧野が間宮に組敷かれたまま川名の足元で頭を左右に振っているのがありありとわかる。その間も間宮は休みなく働いている。間宮の肉体には、あらかじめ強めの精力剤を打ってある。だから、先に間宮の方が垂れることはまず無い。延々と射精を求められ許されている間宮に対して、霧野の男根の根元は、ゴムで根元からきつく縛ってある。少なくとも宣誓が終わるまでは解放されないことを、わかっているだろう。最悪壊死させられるまであるくらいのことは霧野なら想像しているかもしれない。喘ぎ喘ぎ、不格好な姿勢で掘られ続けているこの状況に身体が慣れてきたのか、うわずってはいるもののじょじょに、幾分かマシな様子で悶え悶え続けている。
二条は壁から背を浮かせ、のしのしと部屋の件の中心部へと近づいていった。川名が視線を上げた。瞳の中に喜色が浮かび上がっていた。二条はそこに、8割の共感と2割の嫌悪を覚えた。そして、もし今、全部ぶち壊しにしたら、どうなるのだろうか、どういう反応するのだろうこの男、と、思う。その実行力が、自分にはある。しかし、今、実行はしない。もしかすれば、時が来たら実行するかもしれないが、少なくとも、今ではない。そして、この2割の嫌悪について、二条はよく覚えておこうと思った。
二条はもちろん川名を信頼しており、同時に川名も二条を信頼している。上下関係も確立されている。二条を引き入れてからの組は川名一強で勢いづいていたところ、さらに勢いづき、本部の中でも、組の存在をより確実なものにした。互いしか知らないことも随分増えた。先ほど共感を覚えたように、感性で共有する部分も多くある。自由にやらせてもらっている恩もある。
しかし、それはそれ、これはこれ、ということだ。川名の一面を知る度、そして、猛獣に餌を与えるが如く不良債権になって余ったヒトをお遊び用に提供してくる度、余計に渇望してくる部分が確実に存在するのだ。
澤野も、川名に並んで珍しく「話しができる人間」というのが、二条の認識であった。それに長よりも弟分的な立場的可愛さもある。だから、川名が彼を自分の直下に付け、美里と仕事させると言い始めた時はとんでもないことだと思ったが、潰されたら潰されたでその程度だったというだけ、逆にこれは選別になる、そう思って留飲を下げた。澤野は、期待通り、立場が変わっても淡々と仕事を続け、仕事の幅を広げ続けた。結果、二条と共にする仕事も増えた。やはり、同じように、彼を知る度、話す度、可愛さ余って……、そう、そういうことを避けるための、組長の配慮でもあったわけだ。
二条は、気持ちを切り替えるように、静かな視線を、今度は自分の獣達の方へ向けた。そうすると、久しぶりに意気揚々とした気分になってくる。圧し潰されている霧野が良いことには変わりないが、間宮も間宮で必死である。続ける・止める・サボるの選択権は、彼には与えられていない。霧野の身体に覆いかぶさるようにして、床、霧野の身体に手にをつき、腰を振って貪っていた間宮の頭が二条の方にゆっくりと上げられた。まるで沼から上がってきたかのようで、濡れている。ねっとりした瞳の輝きが妖しく二条の方を見上げていた。口角の上がった唇の隙間から浅く息をはぁはぁ吐きながら、尖った舌先から唾液がつーと零れて霧野の肩甲骨の窪みの中へ堕ちていくのを、二条は目で追った。
「まざりたい……?」
再び間宮と視線が交わった。彼は赤らんだ顔と瞳に、薄ら笑みを浮かべ「かおるも……まざりたいの……?」と低い声で、問いかけてくるのだった。続けて、ふふふふ、と耳にくすぐったい笑い声が二重三重になって、聴こえた。間宮はまた俯いて、獣らしく再び自分達の欲望の底へ沈んでいくのだった。
霧野は、条項の(二)の途中までたどり着いて、圧し掛かられた肉の下で喘ぎ身体くゆらせた。肉と肉の周囲2メートル程がサウナのように蒸し、二条の皮膚の表面までようやく湿り気を帯び始めた。
霧野は、言葉の途中途中、涎かもしくは落涙かで、紙面や床を濡らしていた。時々自分の涎で溺れて言葉に詰まったり、窒息しそうになったしている。そのせいで、頭に酸素が回りにくくなり、余計に頭がくらくらしてきているようだった。酸欠状態、極限状態に追い込まれることで出る脳内麻薬もある、ランナーズハイにも似たものである。
川名と二条は、はじめ、霧野にも、催淫剤もしくはアッパー系薬物の1つや2つ位入れてやろうかとも軽く考えていたのだが、その必要は今のところなさそうだった。間宮の絶対に萎えることのない鋼鉄巨竿の、1ストローク1ストローク貫かれる度、霧野の身体は下腹部の奥から邪で被虐的な快楽を得ていた。異常の状況で貫かれる屈辱と快感の中、快感の臨界点に到達しても、どれだけ願っても、射精できないでいる肉の内に、発せられない欲望の渦がぐるぐる渦巻いていた。そのせいで、何も考えられないまま、ただ命令されたことだけをなんとかクリアしようと頑張るだけの、奴隷である。
人間は、欲望の奴隷なのか?
時として、そうだ。
二条は今敢えて霧野に声をかけることを止めていた。
自分の仕事に、集中して、働いているのだから。邪魔をしては悪いじゃないか。
霧野は今、酔いのまわりきったように、酩酊、苦しさと、慣れ。慣れてくると、内側から、余計に漲る。霧野の様子が身体に変化を及ぼし、肉が引き締まれば、間宮もさらに精を出す仕組み。肉の交わる腫れ濡れた桃色の結合部からぶくぶくと白濁したぬめりが途方も無くどくどく溢れ出続けそれはまるで複数の生卵が肉奥から割れて溢れ出ているかのような勢いでありぬめりはじける音を立てていた。それでもまだまだ霧野が命じられたことを終わるまで終われない獣の交尾である。霧野は条項の(三)まで到達していたが、その声の六割が獣性に満ちた呻き声に掻き消され、普通なら一息で言い切れるところを、五息はついて、何も知らない人間が聞けば、それはほとんど、人間の言葉ではない。無理に抑え込んだような獣声にしか聞こえないだろう。条項を知っている人間になら辛うじて理解できる程度の言語の羅列が続いた。川名が及第点を出すまでに、三回ほど条文を往復して、ようやく、許された。
二頭の雄の身体が、結合したまま動かずぐったりとしているが、下になっている獣が、身体を時折跳ねさせるので、その勢いで上になっていた獣が、ぐったりとしていた身体を持ち上げ、下の獣の腰を持ち上げ、膝を立たせた。
二条は懐を漁り、中から手帳を1つ取り出した。片手で開くとそこに、顔写真と名前がある。
警部補
霧野 遥
××県警 捜査第ニ課
改めて、まったく、玩具みたいだな、と、二条は手に入れた霧野遥の警察手帳を手元で弄んでいた。二条は親指の腹で写真部分を撫でまわし、霧野の顔の全体を見たり、顔のパーツの部分部分を隠したりしながら見ていた。
写真の中の霧野は、今より若い。入庁した時に撮影した写真だろうか。一見、整った、若い警察官にはよく見かける、気の強そうな若者の顔である。と同時に、丁寧なほど整えられた髪、眉の上がり方、一切のブレの無い視線、輪郭を中心に全体的に直線的でシャープな印象、そこにプライドの高さが見え隠れしている。こういう種類の人間を、二条自身、官僚時代によく見たし、自分も似たようなものだっただろうと回想した。さらに、こうして、顔のパーツの一つ一つを丹念にもっとよく見ていけば、霧野の性格の根の擦れたところがよく、見受けられる。切れ長の双眸の奥の仄暗い淀みの影、不自然に引き締められた口元。二条はそうして、しばらくの間、プロファイリング”ごっこ”、一人で警官ごっこ遊びに興じていた。
二条は一人遊びに飽きると、手帳を閉じた。そして、霧野と間宮の側に屈んで、手に持っていたそれを、再度開き眺めてから、霧野の下にそっと滑り込ませたのだった。霧野は自身の身体を覗き込むようにしていたが、自分の腹の下に滑り込んできたブツを見て、どこかとろんとして痴呆寸前に妖しく暗くなっていた瞳が、だんだんと見開かれていき、理性の光が灯り始めた。たるんだ精神に気合が入ったらしい。霧野は驚嘆の表情を浮かべ、二条の方を見てすでに赤赤としていた顔を一層赤くし、何か言いたげに口を開きゆがめ、ひきつらせたまま、二条を睨み始めるのだった、その口の端からぽたぽた涎が垂れていった。二条はもう一度写真の中の精悍な霧野遥の顔と、今の霧野遥の顔との間を、視線を往復させてから、にやぁにやぁと笑った。そして、霧野の雄の根元をキツく縛っていたゴムを解く。ソレは、勢いよく二条の掌の手前でビン!と屹立し、とろぉ……とろぉ……と、ひくついた先端の穴からもう、すぐに苦蜜が、我慢汁が、苦い香りを放ちながら滴りつたい溢れはじめた。そのままいくと……。
霧野は身体を動かそうとしたようだが、散々虐められた腰から下を間宮に腰をがっちり抱えられた上、まだ中を貫かれたままでは、もがいてももがいても、殆ど動けず、寧ろ下手に動いたせいで結合部が摩擦してしまい、余計に消耗して雄声を上げる無様な始末。二条はつい堪えきれずに笑いながら、「嫌なら、こっちの方を、止めたらいいだろ。収めろよ、そいつを。」と反り返った男根の先端に突き刺さったピアスを指で軽くはじいた。ぁぁ…っ!と霧野は喘ぎかけて奥歯を噛みしめた、その拍子にしぶいた透明な汁の飛沫の一部が、霧野の警察手帳の、開かれた表紙の部分に飛び散った。霧野は一層歯を食いしばり、二条の方を、見ようによっては鬼のような形相で見るのだが、二条にたしなめられても、全くギンギンに勃起はしたままで、背後から動かぬ巨鉾を挿入され続けており、鉾の楔、返し、凹凸部、カリが、霧野の肉筒の中で特にうるおい引き締まる完成された快楽の園を制服し、圧し潰されたままであり、ほんの少し動かれただけでも、その度全身がひりつき、今すぐにでも射精したいことに限りなく、先端がひくんひくんと、もう、尿意を堪えて堪らない時のように、ほとんど痙攣するほどになって、ひくついてとまらずにいる。身体も、下半身の要望に耐え切れず、時々ビクビクと痙攣して、止まらず、霧野の手は自然拳を強く握り、足の指も同じく、ぎゅうと握られ、脚の甲が内側に向かって曲線を描く。霧野のいきり立った痴雄の、その射程圏内に、ある意味彼自身の誇りのよりどころでもある警察手帳がぱっくりと開かれているのである。
「ぁ゛ぁ゛う゛……う゛うううう……」
霧野は唸り声をあげ、まるで威嚇する犬の様である。
「したかったんだろ、射精、どうぞ、どうぞォ。ほら。」
二条はさっき霧野から取り払ったゴムを指で引き延ばして、輪ゴム鉄砲の要領で引き延ばし、霧野の「や゛、」の震える声と無駄なあがきを無視して霧野の陰茎を撃ち抜いた。バチン!
「きゃひっ!!!」
ビクンビクンとのたうつ霧野の重量感のある陰茎が、真っ赤になって陰嚢と一緒にボロンボロンと上下に揺れていた。それで汗や透明な汁がまた、ぼたぼたぼたァ……!と霧野の周囲に飛び、手帳の端も透明に濡れた。
川名が、すっかり熱く火照った霧野の肉体を見降ろし、反対に冷え冷えした目つきをして、髪をかき上げた。
「やれやれ、さっきから、嬉しそうな雌犬声出してよ、一体何悦んでんだお前。自分が何故そうなってるのか理解してる?なめてるのか?……ああ、何から何まで、最悪すぎて、こっちの頭が痛くなってくる。」
「よ゛ろこんでなんかない゛……、なぜって、てめぇが……っ、」
二条は落ちたゴムを摘まみ上げ、再び指で引き絞った。途端に目の前で霧野の身体がぶるぶるとわかりやすく震え始め、「ぁ……ぁ……」と小さく唸ったと思うと、目をぎゅうと閉じて黙り始め、耐えようという素振りを見せた。二条は何度かフェイントをかけて遊んで、三回ほどしてから打った。さっきのような高い声さえ上げなかったものの、反対に低い声でお゛ぅと啼き、その反動で筋肉が緊張したのか霧野の中がぐぐぐぐと締まったらしく、間宮も呻いて、再び霧野に重なり覆いかぶさるようになって、吐息をついた。下で圧し掛かられた霧野の中で、一層盛り上がった間宮の雄が、その地獄のような天国の中で更に膨張し、ぬらついてひくつく中で、せめぎ合うように強く圧迫するのだった。
「ぁああ゛…!?゛…う゛ううううう……」
霧野の全身の発汗が一層激しいものになった。青く血管の浮き盛り上がった肩から膨らんだ肉の間の溝、薄くなめらかな皮膚の下、背骨の浮いた背中まで上下して、いまや全身で呼吸しているといった感じだ。二条は霧野の横にしゃがみ込みながら、どこかどんよりとしてきた涙の痕さえ見える霧野を見ていた。しかし、再び目があうと彼はまた気骨を取り戻してきて、川名に言われれたことなど忘れたように、二条を見るのである。今、霧野の痴態は、川名美里間宮二条の四人全員、それぞれの角度から見えるものの、差し向かいでその顔を見ていたのは二条ただ一人である。
「ふふふ、なるほど、無様な声出す割に耐える耐える……、そうでなきゃあ……ネ、な、遥くぅん……、だって、まだ一人前に捜査官のつもりなんだもんナ、大したもんだよ。ダカラァ、まさか、まさか、野郎に、犯罪者に囲まれ、散々に尻穴犯され感じたあげく、警察手帳に精液ぶっかけるなァんてこと、するわけねぇよなァ~~~!!!!????あっちゃいけねぇよナ、そんなことはサァ~……、……。間宮、お前、まだ、出し足りないだろ……、動いて良いぞ。」
「何者か?」
「そう、お前が誰で、何で、何のためにあるのか。どうして生まれてきたのか。」
沈黙
「自分で考えることが、辛いんだな。」
沈黙
「沈黙は、すなわちYESということか。」
「違う。だいたい、そんな質問に答えは無い、愚問。」
「思考放棄だな、考えることを放棄して。そうやって、また、ムキになるなよ。お前は他人軸で生きているから」
「違う。」
「……否定する程真実味が増すな。お前は誰かが居ないと何もできないんだよ。」
「……そんなの、誰だって、そうだろ、人間は社会性動物、だから、一人で居たくて居ようたって、最初から無理な話。アナーキスト(※1)の思想だって、夢のまた夢だぜ、だって人間のほとんどは、いや俺の主観では9割以上は自分で自分を管理することさえ、ままならないのだから。」
「へぇ、そう?別に、俺は独りでも生きていける。他人は関係ない。アナーキズムね。別に夢とも思わない。お前の話ではまるで9割以上の人間はカスだから、1割の管理者が居なくては世界が成立しないと言っているような口ぶりだが、自分の管理ができないカスの方が、自分に忠実で案外長く生きるかもよ。あと、俺が一番気になったのは、どうやらお前が、当然のように自分をその1割の方に勘定しているらしいところだ。お前が?笑わせてくれる。ここ1週間の中で一番面白いかもしれない。」
「……。だったら、どうして、……」
「こうやって、お前と関わって、こんな目に遭わせるているかって?」
「……、いや、違うね、何言ってんだよ、本当に気持ち悪いな、お前らは。独りで生きていけるっていうなら、どうして群れなんか作ったのか、はなはだ疑問だって話だよ。だって、矛盾してるじゃないですか。お前と俺との関係性?そんなの今どうでもいいし、お前から聞きたくない。」
沈黙
「今度はお前が黙った、立場が逆になりましたよ。」
「お前は自分が動くのは上手くても、人を使うのはあまり上手くないよな。だからわからんのだ。」
「論点を、すり替えないでくださいよ、俺が言いたいのは」
「自信が無いのだろ。本当のところは。」
沈黙
「そんなこと、ない、できた、俺にだって、できたよ、できないことなんかない、ない、ないんだ、だって、そう、褒めてくれたことも、あったじゃないか。だから、……だから、……」
「もう、いい、寝ろよ。」
闇が身体にまとわりつく感触
(※1 無政府主義者のこと。アナーキズムは、政府が無い状態で社会が運営されるという社会思想。ここでは個人が社会から独立し完全に自由である個人主義的無政府主義を前提に会話している。)
◆
(一)霧野遥(以下、丙)は、時期を見て正規の手順で警官であることを辞、正式に川名組(以下、乙)に加入すること。
(二)丙は、乙の統括者及びその命を受けた者(以下、甲)に絶対服従、及び、身体の自由、その全てを預けること。
(三)契約の期限は無期とする。ただし、甲による契約内容の改定は、随時認めるものとする。
◆
二条薫は、ついさっきまで間宮が立っていた所、組長の部屋の扉のすぐ横の壁にもたれかかって、部屋の中心でまぐわっている二頭の獣を眺めていた。第三者が見ればさぞ異様な光景だろう。
部屋の中心で、霧野は床に手を付き蹲って頭を下げて、川名が、まずそれを読んでから署名しろと言う通りに、書面上の証文を読もうとしているのだが、失敗しては恫喝され、を、繰り返しているのだった。だが、それも無理も無いことである。不格好に川名の足もとに這いつくばらされるだけでなく、その上背後から、間宮に際限なく犯されながら証文を最初から最後まで読み上げろというのだから。
「ん゛ん゛……っを、ぅぅぅぅ、ぁ、っ、ああっ、‥……‥時期、時期を、む、むり……゛っ、ひ、む、、」
「何?無理?一体どこにそんなことが書いてあるんだ?!あ~~~?止めるか~~~??????!!!!」
「ぁ゛う……っ、うううう゛、……!!」
こんなことが、痴態失敗恫喝叱責が、もう何度も繰り返されていた。
二条の位置からはよく見えないが、霧野が間宮に組敷かれたまま川名の足元で頭を左右に振っているのがありありとわかる。その間も間宮は休みなく働いている。間宮の肉体には、あらかじめ強めの精力剤を打ってある。だから、先に間宮の方が垂れることはまず無い。延々と射精を求められ許されている間宮に対して、霧野の男根の根元は、ゴムで根元からきつく縛ってある。少なくとも宣誓が終わるまでは解放されないことを、わかっているだろう。最悪壊死させられるまであるくらいのことは霧野なら想像しているかもしれない。喘ぎ喘ぎ、不格好な姿勢で掘られ続けているこの状況に身体が慣れてきたのか、うわずってはいるもののじょじょに、幾分かマシな様子で悶え悶え続けている。
二条は壁から背を浮かせ、のしのしと部屋の件の中心部へと近づいていった。川名が視線を上げた。瞳の中に喜色が浮かび上がっていた。二条はそこに、8割の共感と2割の嫌悪を覚えた。そして、もし今、全部ぶち壊しにしたら、どうなるのだろうか、どういう反応するのだろうこの男、と、思う。その実行力が、自分にはある。しかし、今、実行はしない。もしかすれば、時が来たら実行するかもしれないが、少なくとも、今ではない。そして、この2割の嫌悪について、二条はよく覚えておこうと思った。
二条はもちろん川名を信頼しており、同時に川名も二条を信頼している。上下関係も確立されている。二条を引き入れてからの組は川名一強で勢いづいていたところ、さらに勢いづき、本部の中でも、組の存在をより確実なものにした。互いしか知らないことも随分増えた。先ほど共感を覚えたように、感性で共有する部分も多くある。自由にやらせてもらっている恩もある。
しかし、それはそれ、これはこれ、ということだ。川名の一面を知る度、そして、猛獣に餌を与えるが如く不良債権になって余ったヒトをお遊び用に提供してくる度、余計に渇望してくる部分が確実に存在するのだ。
澤野も、川名に並んで珍しく「話しができる人間」というのが、二条の認識であった。それに長よりも弟分的な立場的可愛さもある。だから、川名が彼を自分の直下に付け、美里と仕事させると言い始めた時はとんでもないことだと思ったが、潰されたら潰されたでその程度だったというだけ、逆にこれは選別になる、そう思って留飲を下げた。澤野は、期待通り、立場が変わっても淡々と仕事を続け、仕事の幅を広げ続けた。結果、二条と共にする仕事も増えた。やはり、同じように、彼を知る度、話す度、可愛さ余って……、そう、そういうことを避けるための、組長の配慮でもあったわけだ。
二条は、気持ちを切り替えるように、静かな視線を、今度は自分の獣達の方へ向けた。そうすると、久しぶりに意気揚々とした気分になってくる。圧し潰されている霧野が良いことには変わりないが、間宮も間宮で必死である。続ける・止める・サボるの選択権は、彼には与えられていない。霧野の身体に覆いかぶさるようにして、床、霧野の身体に手にをつき、腰を振って貪っていた間宮の頭が二条の方にゆっくりと上げられた。まるで沼から上がってきたかのようで、濡れている。ねっとりした瞳の輝きが妖しく二条の方を見上げていた。口角の上がった唇の隙間から浅く息をはぁはぁ吐きながら、尖った舌先から唾液がつーと零れて霧野の肩甲骨の窪みの中へ堕ちていくのを、二条は目で追った。
「まざりたい……?」
再び間宮と視線が交わった。彼は赤らんだ顔と瞳に、薄ら笑みを浮かべ「かおるも……まざりたいの……?」と低い声で、問いかけてくるのだった。続けて、ふふふふ、と耳にくすぐったい笑い声が二重三重になって、聴こえた。間宮はまた俯いて、獣らしく再び自分達の欲望の底へ沈んでいくのだった。
霧野は、条項の(二)の途中までたどり着いて、圧し掛かられた肉の下で喘ぎ身体くゆらせた。肉と肉の周囲2メートル程がサウナのように蒸し、二条の皮膚の表面までようやく湿り気を帯び始めた。
霧野は、言葉の途中途中、涎かもしくは落涙かで、紙面や床を濡らしていた。時々自分の涎で溺れて言葉に詰まったり、窒息しそうになったしている。そのせいで、頭に酸素が回りにくくなり、余計に頭がくらくらしてきているようだった。酸欠状態、極限状態に追い込まれることで出る脳内麻薬もある、ランナーズハイにも似たものである。
川名と二条は、はじめ、霧野にも、催淫剤もしくはアッパー系薬物の1つや2つ位入れてやろうかとも軽く考えていたのだが、その必要は今のところなさそうだった。間宮の絶対に萎えることのない鋼鉄巨竿の、1ストローク1ストローク貫かれる度、霧野の身体は下腹部の奥から邪で被虐的な快楽を得ていた。異常の状況で貫かれる屈辱と快感の中、快感の臨界点に到達しても、どれだけ願っても、射精できないでいる肉の内に、発せられない欲望の渦がぐるぐる渦巻いていた。そのせいで、何も考えられないまま、ただ命令されたことだけをなんとかクリアしようと頑張るだけの、奴隷である。
人間は、欲望の奴隷なのか?
時として、そうだ。
二条は今敢えて霧野に声をかけることを止めていた。
自分の仕事に、集中して、働いているのだから。邪魔をしては悪いじゃないか。
霧野は今、酔いのまわりきったように、酩酊、苦しさと、慣れ。慣れてくると、内側から、余計に漲る。霧野の様子が身体に変化を及ぼし、肉が引き締まれば、間宮もさらに精を出す仕組み。肉の交わる腫れ濡れた桃色の結合部からぶくぶくと白濁したぬめりが途方も無くどくどく溢れ出続けそれはまるで複数の生卵が肉奥から割れて溢れ出ているかのような勢いでありぬめりはじける音を立てていた。それでもまだまだ霧野が命じられたことを終わるまで終われない獣の交尾である。霧野は条項の(三)まで到達していたが、その声の六割が獣性に満ちた呻き声に掻き消され、普通なら一息で言い切れるところを、五息はついて、何も知らない人間が聞けば、それはほとんど、人間の言葉ではない。無理に抑え込んだような獣声にしか聞こえないだろう。条項を知っている人間になら辛うじて理解できる程度の言語の羅列が続いた。川名が及第点を出すまでに、三回ほど条文を往復して、ようやく、許された。
二頭の雄の身体が、結合したまま動かずぐったりとしているが、下になっている獣が、身体を時折跳ねさせるので、その勢いで上になっていた獣が、ぐったりとしていた身体を持ち上げ、下の獣の腰を持ち上げ、膝を立たせた。
二条は懐を漁り、中から手帳を1つ取り出した。片手で開くとそこに、顔写真と名前がある。
警部補
霧野 遥
××県警 捜査第ニ課
改めて、まったく、玩具みたいだな、と、二条は手に入れた霧野遥の警察手帳を手元で弄んでいた。二条は親指の腹で写真部分を撫でまわし、霧野の顔の全体を見たり、顔のパーツの部分部分を隠したりしながら見ていた。
写真の中の霧野は、今より若い。入庁した時に撮影した写真だろうか。一見、整った、若い警察官にはよく見かける、気の強そうな若者の顔である。と同時に、丁寧なほど整えられた髪、眉の上がり方、一切のブレの無い視線、輪郭を中心に全体的に直線的でシャープな印象、そこにプライドの高さが見え隠れしている。こういう種類の人間を、二条自身、官僚時代によく見たし、自分も似たようなものだっただろうと回想した。さらに、こうして、顔のパーツの一つ一つを丹念にもっとよく見ていけば、霧野の性格の根の擦れたところがよく、見受けられる。切れ長の双眸の奥の仄暗い淀みの影、不自然に引き締められた口元。二条はそうして、しばらくの間、プロファイリング”ごっこ”、一人で警官ごっこ遊びに興じていた。
二条は一人遊びに飽きると、手帳を閉じた。そして、霧野と間宮の側に屈んで、手に持っていたそれを、再度開き眺めてから、霧野の下にそっと滑り込ませたのだった。霧野は自身の身体を覗き込むようにしていたが、自分の腹の下に滑り込んできたブツを見て、どこかとろんとして痴呆寸前に妖しく暗くなっていた瞳が、だんだんと見開かれていき、理性の光が灯り始めた。たるんだ精神に気合が入ったらしい。霧野は驚嘆の表情を浮かべ、二条の方を見てすでに赤赤としていた顔を一層赤くし、何か言いたげに口を開きゆがめ、ひきつらせたまま、二条を睨み始めるのだった、その口の端からぽたぽた涎が垂れていった。二条はもう一度写真の中の精悍な霧野遥の顔と、今の霧野遥の顔との間を、視線を往復させてから、にやぁにやぁと笑った。そして、霧野の雄の根元をキツく縛っていたゴムを解く。ソレは、勢いよく二条の掌の手前でビン!と屹立し、とろぉ……とろぉ……と、ひくついた先端の穴からもう、すぐに苦蜜が、我慢汁が、苦い香りを放ちながら滴りつたい溢れはじめた。そのままいくと……。
霧野は身体を動かそうとしたようだが、散々虐められた腰から下を間宮に腰をがっちり抱えられた上、まだ中を貫かれたままでは、もがいてももがいても、殆ど動けず、寧ろ下手に動いたせいで結合部が摩擦してしまい、余計に消耗して雄声を上げる無様な始末。二条はつい堪えきれずに笑いながら、「嫌なら、こっちの方を、止めたらいいだろ。収めろよ、そいつを。」と反り返った男根の先端に突き刺さったピアスを指で軽くはじいた。ぁぁ…っ!と霧野は喘ぎかけて奥歯を噛みしめた、その拍子にしぶいた透明な汁の飛沫の一部が、霧野の警察手帳の、開かれた表紙の部分に飛び散った。霧野は一層歯を食いしばり、二条の方を、見ようによっては鬼のような形相で見るのだが、二条にたしなめられても、全くギンギンに勃起はしたままで、背後から動かぬ巨鉾を挿入され続けており、鉾の楔、返し、凹凸部、カリが、霧野の肉筒の中で特にうるおい引き締まる完成された快楽の園を制服し、圧し潰されたままであり、ほんの少し動かれただけでも、その度全身がひりつき、今すぐにでも射精したいことに限りなく、先端がひくんひくんと、もう、尿意を堪えて堪らない時のように、ほとんど痙攣するほどになって、ひくついてとまらずにいる。身体も、下半身の要望に耐え切れず、時々ビクビクと痙攣して、止まらず、霧野の手は自然拳を強く握り、足の指も同じく、ぎゅうと握られ、脚の甲が内側に向かって曲線を描く。霧野のいきり立った痴雄の、その射程圏内に、ある意味彼自身の誇りのよりどころでもある警察手帳がぱっくりと開かれているのである。
「ぁ゛ぁ゛う゛……う゛うううう……」
霧野は唸り声をあげ、まるで威嚇する犬の様である。
「したかったんだろ、射精、どうぞ、どうぞォ。ほら。」
二条はさっき霧野から取り払ったゴムを指で引き延ばして、輪ゴム鉄砲の要領で引き延ばし、霧野の「や゛、」の震える声と無駄なあがきを無視して霧野の陰茎を撃ち抜いた。バチン!
「きゃひっ!!!」
ビクンビクンとのたうつ霧野の重量感のある陰茎が、真っ赤になって陰嚢と一緒にボロンボロンと上下に揺れていた。それで汗や透明な汁がまた、ぼたぼたぼたァ……!と霧野の周囲に飛び、手帳の端も透明に濡れた。
川名が、すっかり熱く火照った霧野の肉体を見降ろし、反対に冷え冷えした目つきをして、髪をかき上げた。
「やれやれ、さっきから、嬉しそうな雌犬声出してよ、一体何悦んでんだお前。自分が何故そうなってるのか理解してる?なめてるのか?……ああ、何から何まで、最悪すぎて、こっちの頭が痛くなってくる。」
「よ゛ろこんでなんかない゛……、なぜって、てめぇが……っ、」
二条は落ちたゴムを摘まみ上げ、再び指で引き絞った。途端に目の前で霧野の身体がぶるぶるとわかりやすく震え始め、「ぁ……ぁ……」と小さく唸ったと思うと、目をぎゅうと閉じて黙り始め、耐えようという素振りを見せた。二条は何度かフェイントをかけて遊んで、三回ほどしてから打った。さっきのような高い声さえ上げなかったものの、反対に低い声でお゛ぅと啼き、その反動で筋肉が緊張したのか霧野の中がぐぐぐぐと締まったらしく、間宮も呻いて、再び霧野に重なり覆いかぶさるようになって、吐息をついた。下で圧し掛かられた霧野の中で、一層盛り上がった間宮の雄が、その地獄のような天国の中で更に膨張し、ぬらついてひくつく中で、せめぎ合うように強く圧迫するのだった。
「ぁああ゛…!?゛…う゛ううううう……」
霧野の全身の発汗が一層激しいものになった。青く血管の浮き盛り上がった肩から膨らんだ肉の間の溝、薄くなめらかな皮膚の下、背骨の浮いた背中まで上下して、いまや全身で呼吸しているといった感じだ。二条は霧野の横にしゃがみ込みながら、どこかどんよりとしてきた涙の痕さえ見える霧野を見ていた。しかし、再び目があうと彼はまた気骨を取り戻してきて、川名に言われれたことなど忘れたように、二条を見るのである。今、霧野の痴態は、川名美里間宮二条の四人全員、それぞれの角度から見えるものの、差し向かいでその顔を見ていたのは二条ただ一人である。
「ふふふ、なるほど、無様な声出す割に耐える耐える……、そうでなきゃあ……ネ、な、遥くぅん……、だって、まだ一人前に捜査官のつもりなんだもんナ、大したもんだよ。ダカラァ、まさか、まさか、野郎に、犯罪者に囲まれ、散々に尻穴犯され感じたあげく、警察手帳に精液ぶっかけるなァんてこと、するわけねぇよなァ~~~!!!!????あっちゃいけねぇよナ、そんなことはサァ~……、……。間宮、お前、まだ、出し足りないだろ……、動いて良いぞ。」
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