堕ちる犬

四ノ瀬 了

文字の大きさ
上 下
94 / 171

嘘つきの上に汚らしい売女だな。中が爛れて腐っている。

しおりを挟む
目を閉じて地に伏せながら、身体の中の精液のことを思うと気分が悪くなった。全身がむずむずとして痒い。湯船につかりたかった。川名が何も言わず黙っている。気配は感じる。

風呂に入りたいです、そう懇願する自分を想像する。その後の展開を想像する。呼吸を続ける。さっきまで、呼吸するたび口の中が青臭くて気分が悪かったが、器官全てに精が馴染み染み込んだかのように、気にならなくなってきていた。まとまらない考えの中で呼吸だけを繰り返しているとある意味、座禅をしているかのような落ち着いた心地よい感覚を思い出す。

「顔をあげろ。」

闇の中で、ようやく川名の声がした。

顔を上げた。光が眩しく、目が見えず、先に鼻先に革手袋の匂いが漂った。首元をぐいと掴まれ、金属のこすれる音と共に感覚が蘇った。カチカチという小気味の良い音と共に、首を締め上げられて、ぴったりと首にはまり込む。鍵が特定の鍵穴にしか挿さらないように、首輪は彼の首にこそよく馴染んだ。カチ、

呼吸をする度、首にはめ込まれた非人間的戒めを感じる。口の中に溜まった苦い唾液を飲み込む、喉ぼとけが上下して皮膚が首輪の中で擦れた。川名の視線を感じて目を合わせる。

川名の瞳の中に、冷めた物とは別の揺らぎを感じ取った。何かを。それは、集団の中に立つ時の彼とは少しだけ異なった。事務所で庭先で皆の振舞う彼と、今の彼は同じでありながら少しだけどこか違った。霧野にはどこが違うのか言語ではうまく説明ができなかった。気のせいかもしれない。思惑するように川名から視線を外すと首輪がぐぅと引かれて上を向かせらる。身体のバランスが崩れて、血に濡れた方の手、前脚を一歩前に出す。川名の瞳が一瞬手の方を向き霧野に戻った。

「さっきからお前の息遣いだけで部屋が蒸れそうだな。」

彼はそう言って首輪に繋がるリードをひいた。言われて、口からはあはあと何をしたわけでもないのに激しい息が漏れているの気が付いた。口を無理やり閉じると鼻から長い息が抜けていった。ふぅふぅ、と、息が漏れる。昂っているのか?一体何に?仕事中、同じような感覚を抱いたことがある、あれは……。

「喉が渇いただろ。飲むと良い。」

川名が霧野の前から右に少しずれた。少し先に、水の張られた銀の皿が置かれていた。見覚えのある皿だった。縁に彫刻が施されて美しいがよく使いこまれ、よく言えばアンティーク調、悪く言えば少し小汚い、少なくとも人間の食卓の上に置くには少し躊躇する品物であった。リードの引きが弱まって、四つん這いのまま這って更に近づいた。チャリチャリと進むたび音がする。川名と常に繋がっている。

近くで見降ろせば、見たことのあるはずだった。ノアに使わせていたものだ。皿の縁についた特徴的な傷にも見覚えがある。不自然に濁ってみえる水。乾いていたが、飲もうという気にならなかった。

「いらないのか。」

川名がそう言ったと同時に川名の方から携帯の振動する音が鳴った。川名はスマートフォンをとりだして眺め何か打ち返していた。そうして、霧野が水を飲むことを躊躇している間に手術室のドアが開き、二人の男が入ってくる。二条と姫宮だった。二人は何を言うでもなく、霧野と川名の間で揺れるリードを眺めながら近づいてくる。

「二条、困ってるんだ。ハルが俺が用意した水を飲むのを拒絶する。」
「そうですか。それはよろしくないことですね。」

二条は淡々と言って、勝手を知っているかのように手術室の奥へ向かっていった。姫宮は壁に背を預け、ことの成り行きを眺めていた。きゅ、きゅ、きゅと水道の蛇口を回す音、水の出る音。じょぼじょぼと水が溜まる音がしばらく続いた。バケツを片手に川名と霧野の前に戻ってきた。ちゃぷ、ちゃぷ……と穏やかかな水の音がする。

「多分そんな小さいのじゃ足りないんですよ。な、そうだろ。」

二条がしゃがみ込み、バケツを銀皿のすぐ横に置いた。バケツが音を立てて床に置かれた。衝撃で水が周囲に飛び散った。水の表面がゆらゆらと薄暗い部屋の中で表面を輝かしていた。あっ、と思う間もなく、霧野は首輪ごと首根を掴まれ、身体が二、三歩と前進し、水しぶきと共にバケツの中に頭が突っ込まれていた。

「!!!、んぐ……!!!ぅう!!‥‥…ご」

ぼこぼこと音を立てて大量の空気が口から出て水の表面を激しく揺らして、跳ね上がった水が床に飛び散った。霧野が頭をあげようとすればするほどに、下へ下へと沈められていく。冷たい、苦しい。

「うごうう……!」

身体に力が入って猫のように背が丸まり、床に無意味に爪が立つ。川名や二条が何か言っているが、水に沈んでよく聞こえない。口から出ていくものがなくなり、大量の水が体内に流れ込み、身体が痙攣し始めたところで、ようやく頭をあげさせられた。

「げほっ!う゛ぇ゛‥!!…ぇ」
「熱さで頭が湧いていたようだし、ちょうどいい。良かったなハル。気持ちいいだろう。」
「おい、どうした。全然飲み終わらないじゃないか。一ミリもカサが減ってないぞ。死にたいのか?」

瀕死の状態で言葉が出るわけもなく、むせ、咳き込み、一つ大きく呼吸をした途端また頭が沈められ上げられる。一瞬だけ、二条の言う通り飲んでみようと、愚かな考えにとりつかれ口を開くと器官に水が容赦なく侵入しぴったりと器官全体を塞いだ。水中で目を開くとほのかなぼやけた闇がひろがり、霧野の目は酸欠と水の刺激で徐々に充血していった。どこを見ても狭いバケツの表面以上の景色は無い。こんな死に方は嫌だ。

これを五往復ほどしているうちに、頭が回らず常に酔っているような、焦点の定まらない状態になってくる。死ぬ、死にたくない、と身体が脈拍を上げて火照る。途中、何か尋問されながら。何も答えない、答えられない。酸素を取り入れようと脈拍が急激にあがって頭の中で心音が鳴り響く。脈拍にあわせて銀に貫かれた三点が光が明滅するように、肉の上で存在を主張した。こんな時に、と思うほどに性感帯は存在を主張して霧野を蝕んだ。

「足りないんだろ?」
「あ゛…?…、なに、」

また、水の中。ぼこぼこと泡が溢れ、掌一つで命を握られ続ける。頭に、爪を立てられ、引っ掻くように、時に髪をわしゃわしゃと撫でられながら。まるで大鷲に掴まれた生き餌だ。水の中とは対照的に、手術室の中は静かだった。水音とそこから沸き上がる空気の音だけが響いていた。

何度目かわからぬ責めのあと、抵抗を諦め、力の入らなくなった頭をあげられた。二条の爛々とした瞳がようやく目に入ってくると、何故なのか間宮のことを思い出した。川名に比べると二条はわかりやすく、極端に言えば、半ば愛おし気に霧野の顔を覗き込んでいた。普段より幾分も無邪気な顔とも言えるだろうか。彼に殺された人間の最後に見る彼の表情はどのようなものだろう。今と同じか、と言われればなんとなく、少し異なる様な気がした。

「もう顔面が蒼白だぜ。そのままやってたら死ぬ。」
姫宮がそのようなこと言って三人の方へ近づいた。
「あんまり体力を奪ってもよくない。この後が詰まってるんだし、それなりに体力残しておかないと。人形弄ったって面白くも何ともないだろ。やるならギリギリを責めてから壊さないと、ですよね?」

ようやく完全に頭を引き挙げられた霧野は息を整え整え、元の様に地に伏せていた。頭が冷え、首から下が熱い。しかし、身体が震えて力が入らず、正しい、奇麗な臥せった姿勢にはならず、徐々に脚が崩れていく。横から身体に痛みを加えられた。

「誰が姿勢を崩していいと言った。俺だけの前ならまだしも、人前だぞ。根性がない。これくらいのことができないで、何ができるんだよ。」

くそ、くそ、と思いながら姿勢を正していた。首までずぶに濡れらして、濡れた顔の、どこまでが水で、どこまでが霧野の身体から出た物なのかわからない。げほげほと咳き込むとまた靴先が身体にめりこみ、嗚咽しながら水を吐いていた。ようやく息が整った頃、ずるずると何かが床を引きずられる音がして目の前で止まった。恐る恐る顔をあげると、口をつけなかった銀色の皿が目の前に置かれ、皿をひきずってきたであろう靴がどけられた。

「……、」

バケツと皿とを伏せられた視線が何度か往復した。霧野が水に口をつけると上からタオルが被せられ誰かの手が乱暴に霧野の頭を顔をわしゃわしゃとふき取っていった。口の中が苦く、甘く、冷えたはずの頭の奥の方がじわ、と何か染み出るように熱くなっていった。水の中に塩辛さが入り混じり始めた。舌先が音を立てる。皿の底面に舌があたりピアスがカチカチと音を立てていた。



モニターの中に、てらてらとした桃色肉と肉にこびりついた白く黄色い塊が映っていた。
霧野は縄とチェーンの飾りを解かれ、手術台の上に寝かされて、周りを姫宮、二条、川名が囲んでいた。霧野の尻からは長い尻尾のように機械の管が飛び出て、姫宮がそれを掴んで操作する。

「本当に17発か?お前嘘をついたんじゃないか。また。」

川名がモニターを見ながらわざと揶揄うような口調を作って言った。

ずる、と霧野の身体の中でカメラが出口に向かって動き、腸壁がきゅるきゅると動いた。四人はモニターを通して霧野の体内の肉壁を見ていた。霧野自身、身体的心情的な気持ち悪さに目を逸らしたかったが、そのようなことをした瞬間に二条がカメラの入っている身体の上から拳をいれてくるであろうことを想像するとむやみなことはできず、ひゅうひゅうと呼吸をしながら、わずかに視線を揺らしながら朦朧と画面を眺めていた。既に奥に異物があることは確認できており、カメラを抜いた後に摘出すると姫宮は説明した。

体内で肉がひくひくと一つの器官として蠢いて、中を濡らして、出口に近づくほどに激しく穢れていた。どこにも吸収されず穢れるだけ穢れた腸壁は、自分の身体がいかに精液をぶちまけられたのかをいやでも理解させてくる。それを三人の男に細かく点検されていると思うと、羞恥に狂いそうな気持ちになり、ふぅと震えた息が出る。姫宮が「爛れた自分の中を見られて感じてるんだね」と尻を触り始めた。霧野は言葉にならない何か非難めいたうめき声を上げた。

「ふふふ、確かに、17にしては随分汚いですねぇ。ごしごしとブラシでも突っ込んで洗ってやりたいくらいです。ここなんか、ほら、見て。一面真っ白な塊がついてるじゃないか~、霧野君~。最悪にきったないねぇ。精液だよ?これ全部。見ろ、ここを。おや、便カスも少しあるが、それを凌駕するこの精液の量ときたらないね。ほら、ちゃんと見ろよ。見ろってば。あはは、随分ねとねとして、また中をうごめかして足りない足りないと君の代わりに言ってるみたい。エッチな色をして。」
「ぅ…ぁ…、……るせ、」

尻の奥に感じたことない抉るような気持ち悪さがキリキリと拡がり悶絶する。モニターの中の映像が乱れた。
「お゛……ぉ、ぉ、」
「何か言ったか?たくさんたくさんハメられて君が中に出された証拠なんだよ。君がここに運ばれてきた時もなかなか凄かったが‥…。どうだい。自分の中を見た感想は?」
「……、き、きもちわりぃ゛、」
「そうだね、便カスと精液まみれで汚らわしく、気持ち悪いねぇ。臭くてとっても汚いよ。」

ふふふ、と姫宮が笑う横で二条が「こりゃあ小汚い居酒屋のダクトと変わらんですね。裏返して洗ったってこびりついてとれないですよ。肉に染み付いて。……食卓に並べても精液臭くてたまらねぇだろうよ。誰も手を付けてくれん。普通の人間にはとても食えたもんじゃないな。」と言った。姫宮が「普通の人間には、ねぇ、」とひとりごち、「部位だったらハツが好きかな」と舌先で下唇を舐めた。

「そうだな。汚らしい。お前は汚らしいよ。嘘つきの上に汚らしい売女だな。中が爛れて腐っている。」

川名に言われ、きゅううと霧野のなまめかしい腸壁が波打つように蠢いて、爛れた中の肉をくゆらせていた。誰かが小さく笑っていた。身体の中が気持ち悪いのに、頭の中がぼんやりとしてきて、あたたかい。はやくおわってくれ、

「はぁ……はぁ……ぁぁ」

誰かが霧野の尻の肉を摘まみ上げ、つねる。「ぁ゛…っ…」と声が上がり、ざらざらしたため息と共に身体が跳ねた。そうしてしばらくの間、中を点検された。



カメラが抜かれ、ようやく本来の施術が始まろうとしていた。股を大きく開かされ、両手足を手術台に拘束されて、後孔に器具をいれられて中を開かれていた。しばらくの間そのまま放置されて、六つの視線が排泄器官に集中していた。今日起きてからのすべての責め苦で身体はぐったりとしていた。

「そんなに見て、なにがたのしい、もう、さんざん…、…」

霧野は、乱れる思考と呼吸をごまかすように言った。川名が首を傾げた。

「お前の排泄器官がすっかり女性器になったことに感心して、皆で鑑賞して愉しんでいるんだよ。ごらん。」

川名が鏡を取り出して、霧野からも自身の開かれた性器が見れるようにかざした。排泄器官とは別の、裂け、爛れた器官がぬとぬとと艶めかしく開かれた中を動かした。絶望的な気分。見ていたくないのに、目を逸らせず、息が上がっていった。見せつけられるたび、自分の身体が別の何かに変わっていくような感覚を覚える。

「お前はこの世界に存在するだけで人様をイラつかせるのだから、鑑賞物にされて人を愉しませることができてありがたいくらい思わないか。」

霧野が川名の言うことを飲み込めずに黙っていると「何も言えないようだな。その通りだから。」と付け加えた。器具の間で開かれた割れ目の奥で肉がきゅうと反応した。それから少しして姫宮が器具を弄り始めた。

「じゃあ始めようかな。」

姫宮が中に器具をさしいれる。そのやり方が絶妙で、コリコリと擦らなくていいはずの場所まで丁寧に擦るようにして中を調べていくのだ。似鳥にされた時より繊細で、似鳥のやり方が皮膚をさする様なやり方なら姫宮のやり方はくすぐりにも近かった。

「んっ、ふ、゛……っ、」
「おやおや、霧野君。まさか感じてるんじゃないだろうね。これは施術なんだぜ。」

くい、と中をまた、器具が抉る。

「!!」

引き攣りながら口を開き、閉じを繰り返しながら、声を漏らすまい漏らすまいとすると、反対に身体が震えて、姫宮が嗜虐的な瞳を向けてくる。ギシッ、と声の代わりに手足を拘束する革ベルトが音を立てた。足首は開脚式の椅子のそれぞれに、手首は頭の後ろで回されるようにして椅子の頭と結合されていた。二条がにやにやと霧野の顔を見据えていた。

「おいおい、遥君~。それが施術中にする顔かよぉ?まるでAVの撮影と見間違うぜ。そうだ姫宮、三脚はまだあるのかな。」
姫宮が中を弄りながら「前と同じ場所にあるはず。」と言った。二条がその場から去り、少しして、奥から三脚とカメラを持ってきて霧野の対面に設置し始めた。無機質なカメラの目がくわわると、身体に新たな火が灯る。

「、やめろよ……あ!…ふ…」
「組長、どうします?撮ってどこか」
「んん…、こんなの、撮ったってっ、う゛」

霧野が遮るように言った。川名の右手の指が霧野の口の中に差し込まれて舌を弄び引き出した。

「んえ゛……」
「さっきから随分勝手にしゃべる。お前の身体が感じているようなら、カメラを回されても嬉しいはずだ。その証拠に回されても無いカメラをそこに置かれてからというもの……」

革手袋越しに、川名の左手が霧野の脇腹から胸に沿ってを撫で上げた。ゾクゾクと身体が波打つ。川名の指先が、いつのまにか、ピンと立ち上がった、ピアスに貫かれた桃色の突起を指先で二度三度と弾いた。

「ん゛ん…っ、ぇうう゛…、ふ、」

指の間で弄ばれ、膨らみはさらに充血した。器用な手つきで指がカリ、カリ、と突起を責めた。痛めつけるではなく、愛撫するように人差し指と中指の間で弄ばれる。舌を出されて開きっぱなしになった口から、ひぃひぃと声が上がり涎が垂れた。

「雌犬……お前はそこにカメラをそこに置かれてから、さっそくここをアンテナの様に反応させて息をあげていたんだぞ。自覚無いのか?」

霧野は口から涎を垂らしながら「ひらない゛、‥‥…っ、」と啼いた。

「へぇ、感じてないのか。」
指が舌から離れ、濡れた指先同士を擦り合わせ、突起になすりつけるようにして擦り上げた。ぬちぬちと音がして濡れた肉がピンッと主張するように立ち上がり、霧野が何を思おうが、激しく主張した。
「ぁ…っ…、く、」
濡れた突起が花咲くようにライトの下で輝いていた。
「だったら何やったって平気だな。」

川名は霧野から手を離した。それから細手のチェーンを取り出し、胸のピアス、まずは左側に引っ掛けて吊り上げた。痛みに堪える霧野の反応を確認しながら、チェーンの反対側を首輪の輪っかにつなぎとめ、手を離した。ビッと左側の乳首がチェーンと首輪によって上に引かれて吊り上げられる。

「…ぃ゛…っ!!、ああ……ぁっ、く…ぅ…」

身体が動けば首輪に連動してピアスも上にピンピンと引かれた。常に引き上げられている肉蕾が、霧野の動きに合わせて、強弱付けられて引かれ続ける。摘ままれこねくりまわされているようだ。

「ん?感じないんだろ?」

弁解する間もなく、右側の突起も容赦なく同じように施され、上に無理に引っ張られた肉蕾が形を変形させ、通常時の1.5倍程度に伸び、周囲の皮膚も桃色に腫れてながら引き上げられていた。姫宮が中を弄るとまた身体が疼いて、中の窪みと胸の突起を同時に刺激する。霧野が啼くのをこらえて身体を震わせる度、今度は追加の責め苦を負うのだった。

川名が小指を左側のチェーンに引っ掛け折り曲げ弄ぶ。

「何も感じないらしいのに、随分悶えるじゃないかよ、あ?」
乳首がちぎれるのではないかというところまで引き上げられて、ぎゃ、と悲鳴を上げる。
「嘘つき。」
小指が外れた。
「二条、回していいぞ。ビンビンに感じているからな。この底辺AV女優は。」

左側の突起が異常に熱く、脈打ちながら勃っていた。姫宮がにやにやと川名と霧野の様子を見守っていた。

「いいですね。ずっとそのままにしておいたらいかがです。もとに戻らなくなるまで。」

嫌だ、と、身体をもがかせ、手首に革ベルトが食い込んで擦れるが外れるわけもなく、余計に身体を感じさせた。
「ぁ……」
天を仰ぐようにして、上を向いた霧野の視界に真っ白な円い電灯が三つ並んでいるのが見えた。
三つが滲んで五つ、六つになり、一つの大きな光になった。何も考えられず、そのまま喘ぐような呼吸を続ける。痛みと苦しみと爛れた快楽が身体を満たして何も考えられない。

中で何か引っかかるような感覚があり、ずる……と掻きだされるような感覚が始まった。ついに、異物がひきだされつつあるのだ。ず、ず、と奥から引き抜かれると身体が、台の上で軽くのけ反った。また汗が浮く。

肉の小径を小さな異物がゆっくりと動いているだけなのに、敏感な部分をじわじわと焙られているような、もどかしい感覚。その感覚に逆に肉が自動的に異物を逃がさぬというように巾着の口の様にきゅうきゅうと締まり、姫宮を笑わせた。

「こらこら、離さないか。あんまりすると中で破けるぞ。」
「は……っ、ひぃ‥‥…」

狭くなった肉の間をゆっくりと摘ままれた小さな異物が移動して、ぬぽっと音を立てて抜けた。ピンセットで摘ままれたピンクに濡れた小さな袋が銀トレーの上に置かれた。濡れてしんなりとしたソレは薬物の入った袋というより光の下で濡れて輝き何か生き物のようにも見えた。

「よしよし、無事採れましたよ。」
「ぁっ……ぁ、……」

とろぉ、と銀色の器具で押し開かれた肉の裂け目から薄桃色の液がこぼれ出てシートを穢した。危機は免れた、終わった、と身体が弛緩した。霧野の弛緩した意識を嗜めるように、ビッと胸の突起が強制的に勃たせられ続ける。

乳首と同様にいつからか主張を始めていた肉棒を、姫宮が無遠慮に掴み上げた。身体がまた一度大きく跳ねて宙を彷徨っていた霧野の濡れた視線が姫宮をしっかりと睨んだ。姫宮は霧野の尿道を押し開けるようにして親指の先端を突き立て、ねじいれるようにして立ててぐりぐりと弄り始めた。霧野が驚きに声を上げ、痛みと不快感で唸って川名や二条を見たが、何も言わないで黙っている。黙っている時の彼らが最も怖いかもしれない。
ピアスと亀頭とを擦るようにしながら爪を立てられるので、強烈な痛み、不快感とそれらに付随する怪しい快感の波に苛まれて、また声が上がった。

「何を啼いてるんだ。採ってやったのにお礼も言わねぇで、失礼だね、君は。」

姫宮は二条と川名の方を見て「ここはどうするつもりです?」と聞き、再び霧野の亀頭に視線を向けた。姫宮があまりに顔をそこに近づけるので、彼の瞳が少しより目がちになり、息が竿をくすぐった。

「うーん、すごい精の匂い。どうします?指くらい入るようにするんです?そ、れ、と、も……。しかし、まだ開発も未熟だ。いじってみても大丈夫ですか?」
「別に、好きにしてかまわない。未来永劫マトモに使わせてやる気も無いからな。」
「ふふ、やった。ありがとうございます。」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

お客様はヤのつくご職業

恋愛 / 完結 24h.ポイント:99pt お気に入り:2,704

ショタ天国

BL / 連載中 24h.ポイント:49pt お気に入り:7

本日のディナーは勇者さんです。

BL / 完結 24h.ポイント:305pt お気に入り:2,601

処理中です...