83 / 181
愚かな生物だよ、故に可愛らしくもある。
しおりを挟む
テーブルの向こう側に川名が座っている。
狂った遠近法のように、やけに遠くに感じる。物と物との距離感がつかめない。霧野の目の前に置かれたグラスに、血のような赤ワインが注がれはじめ芳醇な葡萄の香りが鼻をくすぐった。
霧野は、再び衣服を着せられ、川名に対面するようにして椅子に腰かけていた。遠目に見れば二人、グラスを交わせ、ただ飲んでいるようにも見えた。
霧野の分とは別に、川名の分の空のグラスが滑るように差し出された。いれろ、という意味だ。
霧野は震える手を伸ばして傍らのワイン瓶を手に取った。二度三度と取り損ね、ようやく掴んだ瓶を川名のグラスに向かって傾けた。勢いよく音を立てて注がれ、真っ赤な飛沫がテーブルクロスの上に飛び散り赤黒い染みになった。
川名は特に気にすることなく、じっとその様子を見、半ば口元に笑みさえたたえながら、注がれ終えたグラスを手元に戻した。口をつけ、「お前も飲めよ」とばかりに霧野に微笑みかけた。
霧野はワイン瓶から手を離し、今度は手前の、自身のグラスを掴もうとするが、やはり距離感がわからず、何度か掴み損ねてから、ようやくつかむ。グラスが異常に重く感じられる。唇に当て、一気にひっくりかえす。
喉を鳴らして飲み干せば、また、注がれた。気が、遠くなる。
まるで喉を裂かれ、血を抜かれ、目の前に注がれているようだ。
口をつける度、身体の鋭い痛みは鈍麻するが、頭が鈍っていく。
気が付けばテーブルに突っ伏して吐いていた。
ああ、また、気に入っていたスーツが一着おしゃかになったなぁとどうでもいいことを考えながら何度強く瞬きをした。嘔吐の中に蛍光色のカスのようなものがあり、なんだろうかと思ったが、半ば溶けたコンドームだと理解した。
「……、……。」
気が狂いそうだ。
「もし戻ったとして、」
霧野は、はっとして、伏していた頭を上げた。いつの間にか川名がすぐ横に立っていた。陰った顔の中で、支配的な瞳が輝いていた。幾度となく見た瞳、誰にも似ていない瞳。何一つ間違っていないとでもいうような確信に満ちた瞳。見ていてはいけないと思っていてもそらすことができない。
「カタギの世界に、お前のような異常な人間がいられる場所なんかあるのか?」
霧野の意識は確実に遠のきつつあった。返事の代わりに、ふぅふぅと熱い息が空気を濡らす。微かにだが川名の瞳の鋭さが和らいだように見えた。それから、川名の瞳がゆっくりと別の方向を向いた。
「……。そこにいるんだろ。」
川名が言いながら、霧野の背後に歩いていく、廊下にいた者の気配が立ち登り、足音が聞えた。
川名が逃がすまいと大股で襖の方へ歩み寄り、勢いよく開いた。
そこに、去ったはずであった美里が、薄暗い廊下の中心、襖から二三歩下がった位置に立ちすくんでいた。まるで何かを盗み取ろうとして逃げ損ねた猫のようだった。廊下の暗がりの中で陰って、美里の表情は見えず、立ち去ろうとした気配だけが残っていた。
「盗み聞きか。」
「……」
「酒が足りなくなったから、どれでもいいから、持ってきてくれないか。」
美里は川名越しに、テーブルに伏している霧野を見た。
「足りない?御冗談を、」
「本人に聞こう。足りないだろ?それとも水にするか。どっちがいい?」
川名が後ろを振り返りながら霧野に声を掛けた。数秒の間があいて、小さく「酒がいい……」と掠れた声が返ってくる。
「馬鹿野郎……何言ってんだお前、本当に死ぬぞ、」
「……」
「酒が良いそうだ。早くしろ。」
ピシャ、と襖が閉まる。廊下に取り残された美里のジャケットのポケットの中でまた携帯が鳴っていた。
「……、どいつもこいつも、勝手なんだよ。」
◆
雨の音だ。
車に揺られていた。悪い夢を見た気がする。自分の身体から凄まじい臭いがし、自身の口から出たと思われる汚物の塊が衣服にへばりついてカピカピになっていた。頭が割れそうなほど痛く、気持ちが悪い。
「う゛ぅ……」
「おう、起きたのか。おはよう。吐くならそこの、袋の中にでも吐けよ。」
「……」
車の信号待ちであった。運転席の二条の軽く上気した横顔が見える。飲酒運転ではないか。風が開け放たれた運転席の窓から吹き込んで頭を冷やした。
その時、身体を文字通り貫くような衝撃が走り、喉の奥から、く、と声が出た。
まだ彼に身体を支配されている。
身体の中に、ある。
触って確かめなくとも、身体の中で感じた。彼と同じサイズが少し小さいサイズの張形が、また、肉に埋め込まれているのだ。中の梁型に続いて、腰元のベルトの締付ける感覚に、偽の肉棒がハーネスか何かに固定されており、ずっぷりと、奥までくわえこまされていることが分かる。
意識すればするほどに性への欲動が高まってしまう。ソレは身体の一部にすぎないのだと、無視して身体を弛緩させる。
なぜ?と考えるだけ無駄だ。よけいに身体に力が入って、使わなくてもいい無駄な体力を使う羽目になる。
これは、身体の一部に過ぎない。そう言い聞かせても、身体が時折勝手にそれを締めたてて、気分が悪いというのに、ちりちりと、線香花火の弾ける様なくすぐったい快楽と圧迫感を身体に与え続ける。車が激しく動けば、線香花火のようだった火が、激しく吹き出すような火になって、直接内臓を抉ろうとする。
だから、気を抜きすぎることもできず、弛緩しきることもできず、微妙な塩梅で下半身でそれを受け続けた。
「く……、ふぅ……、」
ぬち、ぬち、と中を擦られる度、彼に身体を探られた感触さえ再現される。まだ後ろから抱きとめられているような不快な感じ。どこまでも行っても彼の手の中に絡め取られている。考えたくないのに、考えてしまう。休む間もなく。
さっきまで青白い顔をしていた霧野だったが、不自然に目の下が紅潮し始め、手指に忙しなく力が入り始め、背中に薄らと汗までかき始めた。
霧野は二条の視線を感じながら、見ないでくれと思った。
だらしない息が漏れる。しかし、声が出ない。出そうとすると喉がつっかえて、嘔吐感で先に内臓が痙攣する。身体を動かすと肉が、川名を感じた。
逃げられないと判断されたか手さえも拘束はされておらず、半ば倒された助手席に寝かされていた。実際、身体を自分でどうこうできる状態ではなく、視界が異常に狭く、暗い。
寝返りを打つようにして、一体どこを走っているのかと外を見る。夜ということはわかるが、雨が酷く、赤や水色、紫色のネオンの光がにじみ、ぼやけてみえ、頭痛を加速させた。
吐く息がいちいち上ずって、だらしがなかった。吐いた息が窓ガラスを真っ白に曇らせた。知らない顔が窓ガラスに映っていた。
顔を抑えて、眼をきつく閉じた。また、意識がどこかに行きそうであった。
車に乗せられる前のことを思い出そうとするが、急激な頭痛に見舞われてはっきりしない、思い出せない。飛び飛びの記憶が現われては消えて、身体を痛ませた。どこへ行くのだろう。
何故美里でなく、わざわざ、二条なのだろうか。
彼を横目で眺めていると嫌な空想ばかり頭に思い浮かぶ。今やまともに使えないこの身体を、ついに、解体されるのか。どのように……。想像はどこまでもグロテスクに酔い、乱れた霧野の脳に拡がっていく。
車は狭い道をくねくねと幾度も曲がり、止まった。
二条が先に車を出て傘をさした。助手席のドアが開かれ、霧野は二条に半ば抱かれるようにして、外に出た。地面は水溜まりができ、ぬかるんでいた。地面が水平でなく、斜めに見える。彼の身体に身を預けると、嗅ぎ慣れた煙草の香りと温かさに包まれて一瞬だけ吐瀉物の不快な臭いが掻き消えた。
彼に身を預けていると不快感と奇妙な安心感があった。自身で立って歩けるならば、即座に振り払うというのに、今はそれができない。突如、身体を抱かれた記憶が生々しく蘇る。
「お゛ぇぇ……」
立ち上がったことにより、我慢していたものがせりあがり、その場でしゃがみ込み、中の物を土の上に吐いた。毛玉を吐く猫のように背を丸くして地面に吐く。
「う゛ぇ…、」
姿勢を四つん這いに近くしたせいか、中のものがズンと一気に奥にくい込み、目の前に火花が散った。
「お゛っ……!、」
叫ぶ代わりにゲロが出て、姿勢的にあの犬に後ろからされた時によく似てるななどと思いながら、嘔吐し、身体が勝手に気持ちよくなる。
「はへ……っ、はぁ…、ぅぅぅ」
暗いせいであること、雨で地面が洗い流され、出した物が良く見えないのが唯一の救いであった。嘔吐すると生理現象として涙や鼻水も一緒に出るが、これが止まらない。これも雨に流されていく。
「おお、そうだ、出せ出せ。それが一番早い。ははは、それにしても、すげぇ臭いだな。」
いつかのように、元はと言えばアンタのせいじゃないですか!と脳内で烈火のごとく「澤野」が怒ってみせたが、とにかく出した。
一しきり中の物を出すと、腕をとられ、立ち上がらされて、再び歩を進めようとするが、自身の歩みで中を擦られ、腰が抜けて泥水の中に手をついてしまう。身体がブルブルと震え、とまらない。
「ぁ……、あ゛……うぅ…」
「しょうがないなぁ。運んでやろう。」
二条抱かれて運ばれることになった。はあはあと上擦った、苦し気な呼吸が喉を突いて出て辛く、霧野は無意識に二条の身体に爪を立てるようにしてしがみついていた。
「ぅ…う…」
「でっかい赤ちゃんだな。よしよし。」
二条がふざけるようにして身体を揺らしながら歩く。また胃の中の物がせりあがり、張形がごりごりと肉を貫く。頭の中で川名との行為の再現が始まりこびり付いて離れない。
「んぐ……っ、うっ……、うぅ!」
やめろと言葉に出来ずに、身体にしがみついてはあはあと息をして揺らされていると、なにやら余計に気分が悪く身体が火照った。
古民家のような建物の前で、身体を降ろされ、再び支えられながら、おぼつかない脚で立つ。髪を後ろでくくった優男が戸口に手をついて二条と霧野を出迎えていた。霧野は彼を見て、ココがどこか理解した。
「へぇ~間宮君の次は、澤野、いや霧野君かい。多頭飼いか二条。大変だぜ?いっぱい飼うと。まあ、お前の場合金銭面はまったく気にしなくていいかもしれないが。」
男は霧野の顔を覗き込んだ。「霧野」と呼ばれたことで、霧野のぼんやりと弛緩した表情が一瞬だけはっきりとして、男を射抜くように見た。彼は取り繕うように笑った。
「おや、こちらの言葉を理解できるくらい意識が戻ってるのか。そりゃ安心。」
男は霧野の顔から、身体へと視線を這わせた。
「ん?」
男はとぼけた調子でそう言うと、徐に霧野のはだけたシャツの間に手を突っ込み、ごしごしと無遠慮に胸部を触り立てた。力が入らないなりにもがき身体を逃がそうとする霧野を、二条が背後からいとも簡単に、大きな犬でも抱えるように腕を首元と身体にに回して、抱き留め、逃げ道を失ってしまう。二条は、腕の中でビクビクと震えアルコールのきつい息をまき散らし始める霧野を抱えながら、呆れたようにため息をついた。
「中に入ってからにしたらどうだ。」
二条にたしなめられて男は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「あはは、ついな、触診だよ、触診。ちょっと見ない内に、色っぽい身体になりなさって。」
男の指がピンと銀飾りを弾き、摘まみ上げた。
「ぐっ……」
モノを言えない霧野だが、歯を食いしばり口の奥でゴリゴリと音を立てていた。男はさらに愉快そうに顔を歪めた。
「おお、こわ~、そんな怖い顔を俺に向けるなよ澤野。職業柄俺の口は堅いから心配するなよな。」
男は指を一捻りし、霧野の唸るのを聞いてから衣服から腕を抜いた。
ジジジ……とジッパーの下がる音がして、二条の指が霧野の一物のピアスに引っかかり、摘まみ上げるようにして静かに引き出した。外気に晒されたが、紅く火照ったずる剥けた一物は縮まらず、男にその全貌を見せた。
「こっちも可愛いものだろう。」
二条は手の中で霧野の物をコリコリと転がし始め、霧野の噛みしめていた口元が緩み、反射的に視線を周囲に巡らせた。ぐっと二条の腕が締まり、動くことができず下半身をまさぐられ続ける。霧野の背後で雄の気配が高まる感じがあり、腰を押し付けられたことで、肉が偽の楔で押し開かれる。
「あぁ゛、……」
霧野の開いた口から絶望的なしかし官能的な呻き声が出た。
男の指先が、霧野の雄をひと撫でし、男の目がさっきまでの殺意の半ば抜けた霧野の瞳を覗き見た。被検体を見るようなその目がにっこりと微笑んだ。
「本当だ、こりゃあいい。こんな状況でよくもまあ……。まあ、雄という生き物は、極度の、死に匹敵する苦痛を味わった時さえも射精する。死に際に子孫を残そうと惨めにあがくからね。愚かな生物だよ、故に可愛らしくもある。俺の患者の中にも、病む終えず麻酔無しで体の一部を切断したら、まるで雄鮭のような射精をした奴が居たからな。」
姫宮診療所は繁華街の路地奥にあった古民家を改造して作られた個人病院だった。中の設備は外からは想像できないほど充実し、診察室、手術室、入院部屋も作られ、医師である姫宮の住居も兼ねていた。
霧野が彼の世話になるのは初めてのことではなかった。普通の病院では見せられない怪我を負った時、往々にして組員はここに来ることになっている。霧野自身が治療されたことも、怪我を負った者を連れてきたこともあった。
姫宮が診るのは川名の配下の者だけでなかった。兵頭組や三笠組、その他グレーゾーンの人間、保険が無い者、戸籍の無い者もここには訪れた。中立地帯、休戦地帯となるくらいには姫宮の腕は買われており、彼の経営手腕の賜物でもあった。
「さ、上がりな。死にかけ君。助けてやる。とりあえずアルコールを抜くのを手伝う。ゲロを詰まらせないようにな。栄養状態も悪そうだ。無事生き残ったら、その他諸々の診察、組長様のご要望通り性病検査までついでにしてやろう。ま、朝飯前だね。大変なのは俺じゃなくて澤野だし。…、君の…、」
姫宮はさらに何かを続けて言ったが、霧野の意識は再び落ちかけて、言葉が聞き取れなくなっていくのだった。
◆
ノアの世話当番に空きができたと聞き、間宮は進んでノアを迎えに川名の邸宅を訪れた。
川名は不在であり、代わりに女が間宮を迎え、ノアの元に案内した。ノアは玄関でつまらなそうに臥せっていたが、間宮の臭いを感じたのか素早く頭を上げ、身体を起こした。飛びつくようなこともなく、甘えだすこともなく、すくっと立ち、間宮を迎えるのだった。
「ではでは、しばしお借りします。」
間宮は女に微笑みかけて一礼し、ノアを連れて邸宅を出た。屈んでクロスバイクの鍵を外す時にノアの足が目についた。
「ん?お前、爪が伸びてるよ。誰かに切ってもらいな。」
「……」
ノアはざりざりと足で土を蹴り上げた。
「あ?そうか、それも奴がやってたのか。あの一つも気が利かない裏切り猫がやるわけないしな。はぁ……それに比べ、働き者だねぇ、肉便器ちゃんは。」
以前、世話係の誰かがノアの爪切りに失敗し大量出血させ、その世話係の指が飛んだ話も聞いたことがある。だから、誰もやりたがらない。
間宮はノアを連れたままクロスバイクに乗り、ノアの走る速度に合わせて飛ばした。間宮が変装もせず、私服で刺青も隠さず一人で歩いていたり、自転車を飛ばしたりしていると度々職質を受けるのだったが、ノアがいるだけで一気に職質の割合が減った。間宮の横でノアは楽し気に息を弾ませ、地面を蹴り上げる。黒い弾道のようだ。
ホテルの例の部屋の中で、間宮は自身の手指の臭いをノアに嗅がせ、例の物を探させた。ノアは鼻先を床やベッド、ありとあらゆる個所につけて部屋の中をのそのそとうろつく。姿勢を低くし、チェストの周辺を入念に嗅ぎまわっていたかと思うと、ノアは何かを口に咥えて一目散に間宮の足元に戻ってきた。
それはボンテージ猫のマスコットの胴体部分で首が無かった。
「よし!次は頭、もう一度だ。"GO"、ノア。」
ノアは自慢げに耳をピッと立てたまま再び出発し、部屋をしばし這いまわっていたが、今度は何も咥えずに間宮の足元に戻りお座りの姿勢をとった。
「ちぇ……やっぱり無しか。お前、まさか食ったんじゃないだろうねぇ。」
間宮はノアの目の前に屈みこみ、鋭利な牙の並ぶ口内に指を突っ込んで中を点検した。もちろん何もあるはずもなく、手がぬるぬると唾液で濡れただけであった。間宮は服で手をぬぐいながらため息をついた。わかりやすくがっかりした間宮の表情を読み取ったのか、ノアは耳と頭を下げて意味もなく辺りを徘徊し始めた。
「はあ、胴体だけじゃ売り物にもならないよ。金が……。あ……。」
殺しの仕事をひとつ思い出した。期限が先だから放っておいたのだ。
それに、何か仕事をするということは、報告義務が発生し、なんであれ二条に連絡を取る正当な口実ができる。本当ならば、こんな理由付けなどせず、いつでも側に置いてほしい。以前のように自由がなくなったっていいというのに、間宮がそう求めるようになると、二条は間宮を自由にした。自由になったというのに、満たされず、すさんだ。
二条の横の空いた空間に、時折霧野が滑り込むようになると、すさみは加速した。自分の存在価値を完全に否定されたように感じられた。本当ならば、自分が。
「不自由は自由で、自由は不自由、因果だね。」
間宮が自嘲気味につぶやくと、鼻先を濡らしたノアが間宮の方に戻ってきた。屈みこんでノアを抱いた。生き物の体温を感じて気持ちが良かった。間宮はノアのうなじにあたるだろう場所に顔をあて、その匂いをじっとりと嗅いだ。
ところで、殺しの仕事の良い点といえば、他の人間と関わらなくてもいいところにある。標的と関わるとしても、あくまで消すためにかかわるだけ。今後の人間関係など何一つ考えなくてよい。
「……ノア、お腹がすいただろ。飯でも食いに行こうぜ。」
間宮は立ち上がり、ノアに背を向けてドアの方に向かった。
ノアは奇麗に整えられた爪をちゃりちゃりと床で鳴らしながら間宮の後を追った。
◆
女はその家についた瞬間から、何か違和感を覚えたが、気のせいと思いそのまま靴を脱いで中に上がった。女はある男の週替わりの愛人であった。ただ何か直観が働いたのか、いつものように上がり際に男を呼ぶために声を出すのを無意識にやめていた。何か変な臭いがする。何の臭いだろう。
廊下をしばらく進んだところで、視界に何かチラつき、あっ、と思ったが口元を手で覆って耐えた。一階の広間のドアが開いており、何か大量の血液のような物が見え、その周囲を真っ黒い大きな影が蠢いているのだ。しかもよく耳をすませば鼻歌をうたっているような風情さえある。これは、魚を捌いた時の臭いに似てる。女はアレはマグロだマグロだと自分に言い聞かせ、しかし、好奇心から少しだけ身を乗り出し、中を見た。
頭の無いヒトの身体が三つ転がっていた。
「う゛っ……ううう……」
口元を抑え、足音を立てないように後ずさりした。確かに男は普通の男ではなく、敵が多かった。だからこそ金回りが良いのだ。女は、恐怖の中、何も私の来る曜日に殺されなくてもいいのに!と苛立ちさえ覚えながら、玄関までなんとか後ずさり、戻り振り向いた。
「ひっ……」
また、大きな声をあげそうになり、尻もちをつかぬよう壁に手をついた。いつからそこにいたのか、巨大でしなやかなやけに毛並みのいい黒い獣が扉の前に立って女を見上げていた。しかし、襲いかかるわけでも、唸るわけでもなく、はぁはぁと息を吐きながら、じっと黒い目を監視カメラのようにして女の仕草を追っていた。
「ぁ、はは……」
女はまた後ずさりし、ゆっくりと犬に背を向けて裏口に向かうことにした。その途中、別の扉から玄関先まで続く真っ赤な肉球の足跡を発見した。黒くてわからなかったが、犬は何か濡れていた。そのせいでやけに毛並みが良く……ちゃり、と背後から音がして振り向くと、音が止み、犬が1メートルほど先のところで止まって女をじっと見ていた。ついてきている。
「あ……あ……」
「おい!ノア!どこに行った!あんまりうろちょろするなよ!汚れるだろ!俺の給料から掃除代がひかれるといつも言ってるだろうが。いいか、こういうのはな」
奥から大きな声と共に足音が近づき、犬がそちらに気を取られて目を背けた。女は転がり走るようにして、すぐ近くの部屋に入り、クローゼットの中に隠れた。そこはベッドルームであった。
「おいおい、待てよ、どこに行く。餌はこっちだぜ。お前が好きな、」
ちゃりちゃりと音がして犬が入ってくるのが分かり、大きな足音と共に一緒に男が入ってきた。さっきの男だろう。女は口元を手で強く抑えて震えた。ちゃりちゃりと犬が部屋中を円を描くように歩き回っている。
突然、クローゼットの扉が激しく揺れ、がりがりがりがりと引っ掻く音と荒い息遣いが響く。血と獣の臭いが扉越しに鼻をつき、女はそのまま失神した。
「……。」
女は、クローゼットの中で再び目覚めた。まだ自分が生きていることが信じられず夢かと疑ったが、確かにまだ生きている。とっさにクローゼットの扉を押し開けようとしたが、何か小さな声と、物音がすることに気が付き、薄っすらと扉を開けて様子をうかがった。
ベッドが不自然に膨らんで蠢いていた。誰かが寝ているのだ。ベットの周りに、この家の主が集めていたウィスキーの瓶が開けられ3本ほど転がっていた。しかし、何故?自分以外の住人は全員死んだのでは?誰が……。
「んふふ……」
微かな笑い声がベッドの中から漏れ出、大きく動いた。膨らみ方がおかしい。何人かいるようだ。一体どういうことなのだろうか。今までのことが全て夢で、一日以上経過し、次の曜日の愛人が男と寝ているとでもいうのか。
「あぁ……っああ、!あはははは……っ!!!」
爆発したような笑い声が響いた。
「くすぐったいなぁ……もう……あんん……っ、あはははっ!!!ああ!!」
その喘ぎ、笑い声は明らかにいつも寝ているあの男の低い声とちがい、もっと若く、のびのびとしていた。
「くすぐったい!!あははははは!…ひぃ…しぬっ、あははは!!!…はぁっ、はぁ……そう、そのくらいに、っ!!……、っ、わはははははっ!!!」
そう、さっき聞いたのと同じような。布団が激しく蠢き、中から一本長い男の脚が突き出て、空を蹴り、笑いながら、足をピンと張り、つま先にぎゅうと力が込められた。足が幾度が痙攣するように動き、何か吐き出すような呻き声が聞こえ始める。ついでに、べちゃべちゃと異常に粘着質なまるでスライムでもこねているような音が耳につき始めた。それから、はあはあいう強い息づかい。
「ふふふ、んっ、ふっ、んん…あったかいねぇ、……ああ、……でも、流石に、もう、あついやねぇ」
ばさっ、と足でけり上げられた布団がはがれベッドの下に落ちた。白黒赤の塊が交わって、最初何かどうなっているのか、よくわからなかった。
黒い刺青に覆われた長身の裸の男が、大きな黒い犬を抱きかかえて、じゃれあうようにしていた。犬が器用に男の身体を舐めまわす。男の長い指が軽く折れて、犬の表面の短毛を、人の髪をすくようにして優しく撫でていた。奇妙な光景だった。裸ということを除けば、人が犬を抱きかかえ、犬がじゃれ、舐めているだけで、性的なところはないというのに、半分獣同士の者が交わっているように見えるのだ。
男の皮膚の上で赤の部分がぬぐわれたり、ひろがったりした。男の半分が黒いせいで、犬と同じようにどこまで血に濡れているのかわからないのだ。元々の白い皮膚の上に紅い擦れのようなものがいくらかついていた。白かったはずのシーツには異様な色をした染みがいくらか擦れ、消えずに残っていた。
犬がふんふんと軽く息を鳴らしながら、男の上に覆いかぶさって、その上で姿勢を変えては、頭を下げ、せわしなく、顔、首筋、脇、胸元、腹部、腰、鼠径部、太もも、足の裏などを大きなざらざらと舌で器用に舐めまわし、くぅくぅと啼いた。
男の身体は獣の唾液に全身が濡れ、舐められるたびに瑞瑞しくぴちゃぴちゃと音を立てた。犬の長い舌が、脇腹の辺りを下から上へと、丁寧に舐め上げ、皮膚を濡らした。男の犬をまさぐる指に力が入る。
「いいぞ……そうそう、そこだよ、そこ。それ、好き……好き……ぃぃっ、いっ……ふふふっ、あん……」
明らかに男は顔を赤らめ泣き笑うような表情を浮かべていた。くすぐられ笑い疲れたせいか数筋の涙の乾いたような跡が頬に残っていた。彼は、時折感じ入るように息を吐いて、ベッドの上で大きく身体を伸ばしたり、ちぢませたりした。また、くすぐるように、ぺろぺろと舐められると、男は顔を真っ赤にして、悶絶し、ベッドの上を転げまわる。
「はぁ……っ、はぁ……っ、」
男の左腕が犬に絡みつき抱くようにして、舐められながら、右手で自身の下半身をまさぐり始めた。女は、やはりこれは夢なのではないかと目を疑った。
「ああ……っ、ふふ、美味しいか?俺の身体は。最高か?」
男は一層犬を力強く抱きしめてベッドの上を転がって楽しそうに喘ぎ、犬も嫌がるでもなく、息を吐き、男のありとあらゆるところを舐めまわした。それこそ、ありとあらゆるところを。時折、血が、おそらく住人の血が、男と犬の舌や脚の間で伸ばされて、男が犬に自身の身体を食わせているように見えた。
男は犬の身体に顔をうずめるようにして身体をくの字に折り曲げて、低い、腹の底から唸るような声で激しく喘ぎ始めた。それこそ人でないような声で。
「ん……っ、ん、んん……!!やば、また、出ちゃう、ぅ……ああ!!!!ぁ……。ごめん……、ついた?」
男は近くによけていた毛布で犬の身体を覆うようにしてくるみ、緩慢な手つきで拭いた。犬は特に気にする様子も無くじっと、男を見て鼻を近づけて臭いを嗅ぎどこかうっとりとした表情を見せた。男は、犬をくるんでいた毛布を外し、自身の身体も同じように拭きはじめた。
「く、狂ってる……」
女は小さく呟いた。
「はぁ…ノア、お前は最高だよ……」
ふと、女は強烈な視線を感じた。さっきまで男に夢中だった犬が明らかに、こっちを見ている。
「……、……。」
男がゆっくりと女の方を向いた。精を放出させたことで、白い皮膚に紅が刺した頬と唇と対照的に、黒い瞳はどこまでも冷え、犬と同じような無機質であった。非人間じみた双眸がゆっくりと細まり、奇妙な笑顔を見せた。
「おはよう。そして、サヨウナラ。」
狂った遠近法のように、やけに遠くに感じる。物と物との距離感がつかめない。霧野の目の前に置かれたグラスに、血のような赤ワインが注がれはじめ芳醇な葡萄の香りが鼻をくすぐった。
霧野は、再び衣服を着せられ、川名に対面するようにして椅子に腰かけていた。遠目に見れば二人、グラスを交わせ、ただ飲んでいるようにも見えた。
霧野の分とは別に、川名の分の空のグラスが滑るように差し出された。いれろ、という意味だ。
霧野は震える手を伸ばして傍らのワイン瓶を手に取った。二度三度と取り損ね、ようやく掴んだ瓶を川名のグラスに向かって傾けた。勢いよく音を立てて注がれ、真っ赤な飛沫がテーブルクロスの上に飛び散り赤黒い染みになった。
川名は特に気にすることなく、じっとその様子を見、半ば口元に笑みさえたたえながら、注がれ終えたグラスを手元に戻した。口をつけ、「お前も飲めよ」とばかりに霧野に微笑みかけた。
霧野はワイン瓶から手を離し、今度は手前の、自身のグラスを掴もうとするが、やはり距離感がわからず、何度か掴み損ねてから、ようやくつかむ。グラスが異常に重く感じられる。唇に当て、一気にひっくりかえす。
喉を鳴らして飲み干せば、また、注がれた。気が、遠くなる。
まるで喉を裂かれ、血を抜かれ、目の前に注がれているようだ。
口をつける度、身体の鋭い痛みは鈍麻するが、頭が鈍っていく。
気が付けばテーブルに突っ伏して吐いていた。
ああ、また、気に入っていたスーツが一着おしゃかになったなぁとどうでもいいことを考えながら何度強く瞬きをした。嘔吐の中に蛍光色のカスのようなものがあり、なんだろうかと思ったが、半ば溶けたコンドームだと理解した。
「……、……。」
気が狂いそうだ。
「もし戻ったとして、」
霧野は、はっとして、伏していた頭を上げた。いつの間にか川名がすぐ横に立っていた。陰った顔の中で、支配的な瞳が輝いていた。幾度となく見た瞳、誰にも似ていない瞳。何一つ間違っていないとでもいうような確信に満ちた瞳。見ていてはいけないと思っていてもそらすことができない。
「カタギの世界に、お前のような異常な人間がいられる場所なんかあるのか?」
霧野の意識は確実に遠のきつつあった。返事の代わりに、ふぅふぅと熱い息が空気を濡らす。微かにだが川名の瞳の鋭さが和らいだように見えた。それから、川名の瞳がゆっくりと別の方向を向いた。
「……。そこにいるんだろ。」
川名が言いながら、霧野の背後に歩いていく、廊下にいた者の気配が立ち登り、足音が聞えた。
川名が逃がすまいと大股で襖の方へ歩み寄り、勢いよく開いた。
そこに、去ったはずであった美里が、薄暗い廊下の中心、襖から二三歩下がった位置に立ちすくんでいた。まるで何かを盗み取ろうとして逃げ損ねた猫のようだった。廊下の暗がりの中で陰って、美里の表情は見えず、立ち去ろうとした気配だけが残っていた。
「盗み聞きか。」
「……」
「酒が足りなくなったから、どれでもいいから、持ってきてくれないか。」
美里は川名越しに、テーブルに伏している霧野を見た。
「足りない?御冗談を、」
「本人に聞こう。足りないだろ?それとも水にするか。どっちがいい?」
川名が後ろを振り返りながら霧野に声を掛けた。数秒の間があいて、小さく「酒がいい……」と掠れた声が返ってくる。
「馬鹿野郎……何言ってんだお前、本当に死ぬぞ、」
「……」
「酒が良いそうだ。早くしろ。」
ピシャ、と襖が閉まる。廊下に取り残された美里のジャケットのポケットの中でまた携帯が鳴っていた。
「……、どいつもこいつも、勝手なんだよ。」
◆
雨の音だ。
車に揺られていた。悪い夢を見た気がする。自分の身体から凄まじい臭いがし、自身の口から出たと思われる汚物の塊が衣服にへばりついてカピカピになっていた。頭が割れそうなほど痛く、気持ちが悪い。
「う゛ぅ……」
「おう、起きたのか。おはよう。吐くならそこの、袋の中にでも吐けよ。」
「……」
車の信号待ちであった。運転席の二条の軽く上気した横顔が見える。飲酒運転ではないか。風が開け放たれた運転席の窓から吹き込んで頭を冷やした。
その時、身体を文字通り貫くような衝撃が走り、喉の奥から、く、と声が出た。
まだ彼に身体を支配されている。
身体の中に、ある。
触って確かめなくとも、身体の中で感じた。彼と同じサイズが少し小さいサイズの張形が、また、肉に埋め込まれているのだ。中の梁型に続いて、腰元のベルトの締付ける感覚に、偽の肉棒がハーネスか何かに固定されており、ずっぷりと、奥までくわえこまされていることが分かる。
意識すればするほどに性への欲動が高まってしまう。ソレは身体の一部にすぎないのだと、無視して身体を弛緩させる。
なぜ?と考えるだけ無駄だ。よけいに身体に力が入って、使わなくてもいい無駄な体力を使う羽目になる。
これは、身体の一部に過ぎない。そう言い聞かせても、身体が時折勝手にそれを締めたてて、気分が悪いというのに、ちりちりと、線香花火の弾ける様なくすぐったい快楽と圧迫感を身体に与え続ける。車が激しく動けば、線香花火のようだった火が、激しく吹き出すような火になって、直接内臓を抉ろうとする。
だから、気を抜きすぎることもできず、弛緩しきることもできず、微妙な塩梅で下半身でそれを受け続けた。
「く……、ふぅ……、」
ぬち、ぬち、と中を擦られる度、彼に身体を探られた感触さえ再現される。まだ後ろから抱きとめられているような不快な感じ。どこまでも行っても彼の手の中に絡め取られている。考えたくないのに、考えてしまう。休む間もなく。
さっきまで青白い顔をしていた霧野だったが、不自然に目の下が紅潮し始め、手指に忙しなく力が入り始め、背中に薄らと汗までかき始めた。
霧野は二条の視線を感じながら、見ないでくれと思った。
だらしない息が漏れる。しかし、声が出ない。出そうとすると喉がつっかえて、嘔吐感で先に内臓が痙攣する。身体を動かすと肉が、川名を感じた。
逃げられないと判断されたか手さえも拘束はされておらず、半ば倒された助手席に寝かされていた。実際、身体を自分でどうこうできる状態ではなく、視界が異常に狭く、暗い。
寝返りを打つようにして、一体どこを走っているのかと外を見る。夜ということはわかるが、雨が酷く、赤や水色、紫色のネオンの光がにじみ、ぼやけてみえ、頭痛を加速させた。
吐く息がいちいち上ずって、だらしがなかった。吐いた息が窓ガラスを真っ白に曇らせた。知らない顔が窓ガラスに映っていた。
顔を抑えて、眼をきつく閉じた。また、意識がどこかに行きそうであった。
車に乗せられる前のことを思い出そうとするが、急激な頭痛に見舞われてはっきりしない、思い出せない。飛び飛びの記憶が現われては消えて、身体を痛ませた。どこへ行くのだろう。
何故美里でなく、わざわざ、二条なのだろうか。
彼を横目で眺めていると嫌な空想ばかり頭に思い浮かぶ。今やまともに使えないこの身体を、ついに、解体されるのか。どのように……。想像はどこまでもグロテスクに酔い、乱れた霧野の脳に拡がっていく。
車は狭い道をくねくねと幾度も曲がり、止まった。
二条が先に車を出て傘をさした。助手席のドアが開かれ、霧野は二条に半ば抱かれるようにして、外に出た。地面は水溜まりができ、ぬかるんでいた。地面が水平でなく、斜めに見える。彼の身体に身を預けると、嗅ぎ慣れた煙草の香りと温かさに包まれて一瞬だけ吐瀉物の不快な臭いが掻き消えた。
彼に身を預けていると不快感と奇妙な安心感があった。自身で立って歩けるならば、即座に振り払うというのに、今はそれができない。突如、身体を抱かれた記憶が生々しく蘇る。
「お゛ぇぇ……」
立ち上がったことにより、我慢していたものがせりあがり、その場でしゃがみ込み、中の物を土の上に吐いた。毛玉を吐く猫のように背を丸くして地面に吐く。
「う゛ぇ…、」
姿勢を四つん這いに近くしたせいか、中のものがズンと一気に奥にくい込み、目の前に火花が散った。
「お゛っ……!、」
叫ぶ代わりにゲロが出て、姿勢的にあの犬に後ろからされた時によく似てるななどと思いながら、嘔吐し、身体が勝手に気持ちよくなる。
「はへ……っ、はぁ…、ぅぅぅ」
暗いせいであること、雨で地面が洗い流され、出した物が良く見えないのが唯一の救いであった。嘔吐すると生理現象として涙や鼻水も一緒に出るが、これが止まらない。これも雨に流されていく。
「おお、そうだ、出せ出せ。それが一番早い。ははは、それにしても、すげぇ臭いだな。」
いつかのように、元はと言えばアンタのせいじゃないですか!と脳内で烈火のごとく「澤野」が怒ってみせたが、とにかく出した。
一しきり中の物を出すと、腕をとられ、立ち上がらされて、再び歩を進めようとするが、自身の歩みで中を擦られ、腰が抜けて泥水の中に手をついてしまう。身体がブルブルと震え、とまらない。
「ぁ……、あ゛……うぅ…」
「しょうがないなぁ。運んでやろう。」
二条抱かれて運ばれることになった。はあはあと上擦った、苦し気な呼吸が喉を突いて出て辛く、霧野は無意識に二条の身体に爪を立てるようにしてしがみついていた。
「ぅ…う…」
「でっかい赤ちゃんだな。よしよし。」
二条がふざけるようにして身体を揺らしながら歩く。また胃の中の物がせりあがり、張形がごりごりと肉を貫く。頭の中で川名との行為の再現が始まりこびり付いて離れない。
「んぐ……っ、うっ……、うぅ!」
やめろと言葉に出来ずに、身体にしがみついてはあはあと息をして揺らされていると、なにやら余計に気分が悪く身体が火照った。
古民家のような建物の前で、身体を降ろされ、再び支えられながら、おぼつかない脚で立つ。髪を後ろでくくった優男が戸口に手をついて二条と霧野を出迎えていた。霧野は彼を見て、ココがどこか理解した。
「へぇ~間宮君の次は、澤野、いや霧野君かい。多頭飼いか二条。大変だぜ?いっぱい飼うと。まあ、お前の場合金銭面はまったく気にしなくていいかもしれないが。」
男は霧野の顔を覗き込んだ。「霧野」と呼ばれたことで、霧野のぼんやりと弛緩した表情が一瞬だけはっきりとして、男を射抜くように見た。彼は取り繕うように笑った。
「おや、こちらの言葉を理解できるくらい意識が戻ってるのか。そりゃ安心。」
男は霧野の顔から、身体へと視線を這わせた。
「ん?」
男はとぼけた調子でそう言うと、徐に霧野のはだけたシャツの間に手を突っ込み、ごしごしと無遠慮に胸部を触り立てた。力が入らないなりにもがき身体を逃がそうとする霧野を、二条が背後からいとも簡単に、大きな犬でも抱えるように腕を首元と身体にに回して、抱き留め、逃げ道を失ってしまう。二条は、腕の中でビクビクと震えアルコールのきつい息をまき散らし始める霧野を抱えながら、呆れたようにため息をついた。
「中に入ってからにしたらどうだ。」
二条にたしなめられて男は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「あはは、ついな、触診だよ、触診。ちょっと見ない内に、色っぽい身体になりなさって。」
男の指がピンと銀飾りを弾き、摘まみ上げた。
「ぐっ……」
モノを言えない霧野だが、歯を食いしばり口の奥でゴリゴリと音を立てていた。男はさらに愉快そうに顔を歪めた。
「おお、こわ~、そんな怖い顔を俺に向けるなよ澤野。職業柄俺の口は堅いから心配するなよな。」
男は指を一捻りし、霧野の唸るのを聞いてから衣服から腕を抜いた。
ジジジ……とジッパーの下がる音がして、二条の指が霧野の一物のピアスに引っかかり、摘まみ上げるようにして静かに引き出した。外気に晒されたが、紅く火照ったずる剥けた一物は縮まらず、男にその全貌を見せた。
「こっちも可愛いものだろう。」
二条は手の中で霧野の物をコリコリと転がし始め、霧野の噛みしめていた口元が緩み、反射的に視線を周囲に巡らせた。ぐっと二条の腕が締まり、動くことができず下半身をまさぐられ続ける。霧野の背後で雄の気配が高まる感じがあり、腰を押し付けられたことで、肉が偽の楔で押し開かれる。
「あぁ゛、……」
霧野の開いた口から絶望的なしかし官能的な呻き声が出た。
男の指先が、霧野の雄をひと撫でし、男の目がさっきまでの殺意の半ば抜けた霧野の瞳を覗き見た。被検体を見るようなその目がにっこりと微笑んだ。
「本当だ、こりゃあいい。こんな状況でよくもまあ……。まあ、雄という生き物は、極度の、死に匹敵する苦痛を味わった時さえも射精する。死に際に子孫を残そうと惨めにあがくからね。愚かな生物だよ、故に可愛らしくもある。俺の患者の中にも、病む終えず麻酔無しで体の一部を切断したら、まるで雄鮭のような射精をした奴が居たからな。」
姫宮診療所は繁華街の路地奥にあった古民家を改造して作られた個人病院だった。中の設備は外からは想像できないほど充実し、診察室、手術室、入院部屋も作られ、医師である姫宮の住居も兼ねていた。
霧野が彼の世話になるのは初めてのことではなかった。普通の病院では見せられない怪我を負った時、往々にして組員はここに来ることになっている。霧野自身が治療されたことも、怪我を負った者を連れてきたこともあった。
姫宮が診るのは川名の配下の者だけでなかった。兵頭組や三笠組、その他グレーゾーンの人間、保険が無い者、戸籍の無い者もここには訪れた。中立地帯、休戦地帯となるくらいには姫宮の腕は買われており、彼の経営手腕の賜物でもあった。
「さ、上がりな。死にかけ君。助けてやる。とりあえずアルコールを抜くのを手伝う。ゲロを詰まらせないようにな。栄養状態も悪そうだ。無事生き残ったら、その他諸々の診察、組長様のご要望通り性病検査までついでにしてやろう。ま、朝飯前だね。大変なのは俺じゃなくて澤野だし。…、君の…、」
姫宮はさらに何かを続けて言ったが、霧野の意識は再び落ちかけて、言葉が聞き取れなくなっていくのだった。
◆
ノアの世話当番に空きができたと聞き、間宮は進んでノアを迎えに川名の邸宅を訪れた。
川名は不在であり、代わりに女が間宮を迎え、ノアの元に案内した。ノアは玄関でつまらなそうに臥せっていたが、間宮の臭いを感じたのか素早く頭を上げ、身体を起こした。飛びつくようなこともなく、甘えだすこともなく、すくっと立ち、間宮を迎えるのだった。
「ではでは、しばしお借りします。」
間宮は女に微笑みかけて一礼し、ノアを連れて邸宅を出た。屈んでクロスバイクの鍵を外す時にノアの足が目についた。
「ん?お前、爪が伸びてるよ。誰かに切ってもらいな。」
「……」
ノアはざりざりと足で土を蹴り上げた。
「あ?そうか、それも奴がやってたのか。あの一つも気が利かない裏切り猫がやるわけないしな。はぁ……それに比べ、働き者だねぇ、肉便器ちゃんは。」
以前、世話係の誰かがノアの爪切りに失敗し大量出血させ、その世話係の指が飛んだ話も聞いたことがある。だから、誰もやりたがらない。
間宮はノアを連れたままクロスバイクに乗り、ノアの走る速度に合わせて飛ばした。間宮が変装もせず、私服で刺青も隠さず一人で歩いていたり、自転車を飛ばしたりしていると度々職質を受けるのだったが、ノアがいるだけで一気に職質の割合が減った。間宮の横でノアは楽し気に息を弾ませ、地面を蹴り上げる。黒い弾道のようだ。
ホテルの例の部屋の中で、間宮は自身の手指の臭いをノアに嗅がせ、例の物を探させた。ノアは鼻先を床やベッド、ありとあらゆる個所につけて部屋の中をのそのそとうろつく。姿勢を低くし、チェストの周辺を入念に嗅ぎまわっていたかと思うと、ノアは何かを口に咥えて一目散に間宮の足元に戻ってきた。
それはボンテージ猫のマスコットの胴体部分で首が無かった。
「よし!次は頭、もう一度だ。"GO"、ノア。」
ノアは自慢げに耳をピッと立てたまま再び出発し、部屋をしばし這いまわっていたが、今度は何も咥えずに間宮の足元に戻りお座りの姿勢をとった。
「ちぇ……やっぱり無しか。お前、まさか食ったんじゃないだろうねぇ。」
間宮はノアの目の前に屈みこみ、鋭利な牙の並ぶ口内に指を突っ込んで中を点検した。もちろん何もあるはずもなく、手がぬるぬると唾液で濡れただけであった。間宮は服で手をぬぐいながらため息をついた。わかりやすくがっかりした間宮の表情を読み取ったのか、ノアは耳と頭を下げて意味もなく辺りを徘徊し始めた。
「はあ、胴体だけじゃ売り物にもならないよ。金が……。あ……。」
殺しの仕事をひとつ思い出した。期限が先だから放っておいたのだ。
それに、何か仕事をするということは、報告義務が発生し、なんであれ二条に連絡を取る正当な口実ができる。本当ならば、こんな理由付けなどせず、いつでも側に置いてほしい。以前のように自由がなくなったっていいというのに、間宮がそう求めるようになると、二条は間宮を自由にした。自由になったというのに、満たされず、すさんだ。
二条の横の空いた空間に、時折霧野が滑り込むようになると、すさみは加速した。自分の存在価値を完全に否定されたように感じられた。本当ならば、自分が。
「不自由は自由で、自由は不自由、因果だね。」
間宮が自嘲気味につぶやくと、鼻先を濡らしたノアが間宮の方に戻ってきた。屈みこんでノアを抱いた。生き物の体温を感じて気持ちが良かった。間宮はノアのうなじにあたるだろう場所に顔をあて、その匂いをじっとりと嗅いだ。
ところで、殺しの仕事の良い点といえば、他の人間と関わらなくてもいいところにある。標的と関わるとしても、あくまで消すためにかかわるだけ。今後の人間関係など何一つ考えなくてよい。
「……ノア、お腹がすいただろ。飯でも食いに行こうぜ。」
間宮は立ち上がり、ノアに背を向けてドアの方に向かった。
ノアは奇麗に整えられた爪をちゃりちゃりと床で鳴らしながら間宮の後を追った。
◆
女はその家についた瞬間から、何か違和感を覚えたが、気のせいと思いそのまま靴を脱いで中に上がった。女はある男の週替わりの愛人であった。ただ何か直観が働いたのか、いつものように上がり際に男を呼ぶために声を出すのを無意識にやめていた。何か変な臭いがする。何の臭いだろう。
廊下をしばらく進んだところで、視界に何かチラつき、あっ、と思ったが口元を手で覆って耐えた。一階の広間のドアが開いており、何か大量の血液のような物が見え、その周囲を真っ黒い大きな影が蠢いているのだ。しかもよく耳をすませば鼻歌をうたっているような風情さえある。これは、魚を捌いた時の臭いに似てる。女はアレはマグロだマグロだと自分に言い聞かせ、しかし、好奇心から少しだけ身を乗り出し、中を見た。
頭の無いヒトの身体が三つ転がっていた。
「う゛っ……ううう……」
口元を抑え、足音を立てないように後ずさりした。確かに男は普通の男ではなく、敵が多かった。だからこそ金回りが良いのだ。女は、恐怖の中、何も私の来る曜日に殺されなくてもいいのに!と苛立ちさえ覚えながら、玄関までなんとか後ずさり、戻り振り向いた。
「ひっ……」
また、大きな声をあげそうになり、尻もちをつかぬよう壁に手をついた。いつからそこにいたのか、巨大でしなやかなやけに毛並みのいい黒い獣が扉の前に立って女を見上げていた。しかし、襲いかかるわけでも、唸るわけでもなく、はぁはぁと息を吐きながら、じっと黒い目を監視カメラのようにして女の仕草を追っていた。
「ぁ、はは……」
女はまた後ずさりし、ゆっくりと犬に背を向けて裏口に向かうことにした。その途中、別の扉から玄関先まで続く真っ赤な肉球の足跡を発見した。黒くてわからなかったが、犬は何か濡れていた。そのせいでやけに毛並みが良く……ちゃり、と背後から音がして振り向くと、音が止み、犬が1メートルほど先のところで止まって女をじっと見ていた。ついてきている。
「あ……あ……」
「おい!ノア!どこに行った!あんまりうろちょろするなよ!汚れるだろ!俺の給料から掃除代がひかれるといつも言ってるだろうが。いいか、こういうのはな」
奥から大きな声と共に足音が近づき、犬がそちらに気を取られて目を背けた。女は転がり走るようにして、すぐ近くの部屋に入り、クローゼットの中に隠れた。そこはベッドルームであった。
「おいおい、待てよ、どこに行く。餌はこっちだぜ。お前が好きな、」
ちゃりちゃりと音がして犬が入ってくるのが分かり、大きな足音と共に一緒に男が入ってきた。さっきの男だろう。女は口元を手で強く抑えて震えた。ちゃりちゃりと犬が部屋中を円を描くように歩き回っている。
突然、クローゼットの扉が激しく揺れ、がりがりがりがりと引っ掻く音と荒い息遣いが響く。血と獣の臭いが扉越しに鼻をつき、女はそのまま失神した。
「……。」
女は、クローゼットの中で再び目覚めた。まだ自分が生きていることが信じられず夢かと疑ったが、確かにまだ生きている。とっさにクローゼットの扉を押し開けようとしたが、何か小さな声と、物音がすることに気が付き、薄っすらと扉を開けて様子をうかがった。
ベッドが不自然に膨らんで蠢いていた。誰かが寝ているのだ。ベットの周りに、この家の主が集めていたウィスキーの瓶が開けられ3本ほど転がっていた。しかし、何故?自分以外の住人は全員死んだのでは?誰が……。
「んふふ……」
微かな笑い声がベッドの中から漏れ出、大きく動いた。膨らみ方がおかしい。何人かいるようだ。一体どういうことなのだろうか。今までのことが全て夢で、一日以上経過し、次の曜日の愛人が男と寝ているとでもいうのか。
「あぁ……っああ、!あはははは……っ!!!」
爆発したような笑い声が響いた。
「くすぐったいなぁ……もう……あんん……っ、あはははっ!!!ああ!!」
その喘ぎ、笑い声は明らかにいつも寝ているあの男の低い声とちがい、もっと若く、のびのびとしていた。
「くすぐったい!!あははははは!…ひぃ…しぬっ、あははは!!!…はぁっ、はぁ……そう、そのくらいに、っ!!……、っ、わはははははっ!!!」
そう、さっき聞いたのと同じような。布団が激しく蠢き、中から一本長い男の脚が突き出て、空を蹴り、笑いながら、足をピンと張り、つま先にぎゅうと力が込められた。足が幾度が痙攣するように動き、何か吐き出すような呻き声が聞こえ始める。ついでに、べちゃべちゃと異常に粘着質なまるでスライムでもこねているような音が耳につき始めた。それから、はあはあいう強い息づかい。
「ふふふ、んっ、ふっ、んん…あったかいねぇ、……ああ、……でも、流石に、もう、あついやねぇ」
ばさっ、と足でけり上げられた布団がはがれベッドの下に落ちた。白黒赤の塊が交わって、最初何かどうなっているのか、よくわからなかった。
黒い刺青に覆われた長身の裸の男が、大きな黒い犬を抱きかかえて、じゃれあうようにしていた。犬が器用に男の身体を舐めまわす。男の長い指が軽く折れて、犬の表面の短毛を、人の髪をすくようにして優しく撫でていた。奇妙な光景だった。裸ということを除けば、人が犬を抱きかかえ、犬がじゃれ、舐めているだけで、性的なところはないというのに、半分獣同士の者が交わっているように見えるのだ。
男の皮膚の上で赤の部分がぬぐわれたり、ひろがったりした。男の半分が黒いせいで、犬と同じようにどこまで血に濡れているのかわからないのだ。元々の白い皮膚の上に紅い擦れのようなものがいくらかついていた。白かったはずのシーツには異様な色をした染みがいくらか擦れ、消えずに残っていた。
犬がふんふんと軽く息を鳴らしながら、男の上に覆いかぶさって、その上で姿勢を変えては、頭を下げ、せわしなく、顔、首筋、脇、胸元、腹部、腰、鼠径部、太もも、足の裏などを大きなざらざらと舌で器用に舐めまわし、くぅくぅと啼いた。
男の身体は獣の唾液に全身が濡れ、舐められるたびに瑞瑞しくぴちゃぴちゃと音を立てた。犬の長い舌が、脇腹の辺りを下から上へと、丁寧に舐め上げ、皮膚を濡らした。男の犬をまさぐる指に力が入る。
「いいぞ……そうそう、そこだよ、そこ。それ、好き……好き……ぃぃっ、いっ……ふふふっ、あん……」
明らかに男は顔を赤らめ泣き笑うような表情を浮かべていた。くすぐられ笑い疲れたせいか数筋の涙の乾いたような跡が頬に残っていた。彼は、時折感じ入るように息を吐いて、ベッドの上で大きく身体を伸ばしたり、ちぢませたりした。また、くすぐるように、ぺろぺろと舐められると、男は顔を真っ赤にして、悶絶し、ベッドの上を転げまわる。
「はぁ……っ、はぁ……っ、」
男の左腕が犬に絡みつき抱くようにして、舐められながら、右手で自身の下半身をまさぐり始めた。女は、やはりこれは夢なのではないかと目を疑った。
「ああ……っ、ふふ、美味しいか?俺の身体は。最高か?」
男は一層犬を力強く抱きしめてベッドの上を転がって楽しそうに喘ぎ、犬も嫌がるでもなく、息を吐き、男のありとあらゆるところを舐めまわした。それこそ、ありとあらゆるところを。時折、血が、おそらく住人の血が、男と犬の舌や脚の間で伸ばされて、男が犬に自身の身体を食わせているように見えた。
男は犬の身体に顔をうずめるようにして身体をくの字に折り曲げて、低い、腹の底から唸るような声で激しく喘ぎ始めた。それこそ人でないような声で。
「ん……っ、ん、んん……!!やば、また、出ちゃう、ぅ……ああ!!!!ぁ……。ごめん……、ついた?」
男は近くによけていた毛布で犬の身体を覆うようにしてくるみ、緩慢な手つきで拭いた。犬は特に気にする様子も無くじっと、男を見て鼻を近づけて臭いを嗅ぎどこかうっとりとした表情を見せた。男は、犬をくるんでいた毛布を外し、自身の身体も同じように拭きはじめた。
「く、狂ってる……」
女は小さく呟いた。
「はぁ…ノア、お前は最高だよ……」
ふと、女は強烈な視線を感じた。さっきまで男に夢中だった犬が明らかに、こっちを見ている。
「……、……。」
男がゆっくりと女の方を向いた。精を放出させたことで、白い皮膚に紅が刺した頬と唇と対照的に、黒い瞳はどこまでも冷え、犬と同じような無機質であった。非人間じみた双眸がゆっくりと細まり、奇妙な笑顔を見せた。
「おはよう。そして、サヨウナラ。」
42
お気に入りに追加
1,353
あなたにおすすめの小説
【R18】奴隷に堕ちた騎士
蒼い月
BL
気持ちはR25くらい。妖精族の騎士の美青年が①野盗に捕らえられて調教され②闇オークションにかけられて輪姦され③落札したご主人様に毎日めちゃくちゃに犯され④奴隷品評会で他の奴隷たちの特殊プレイを尻目に乱交し⑤縁あって一緒に自由の身になった両性具有の奴隷少年とよしよし百合セックスをしながらそっと暮らす話。9割は愛のないスケベですが、1割は救済用ラブ。サブヒロインは主人公とくっ付くまで大分可哀想な感じなので、地雷の気配を感じた方は読み飛ばしてください。
※主人公は9割突っ込まれてアンアン言わされる側ですが、終盤1割は突っ込む側なので、攻守逆転が苦手な方はご注意ください。
誤字報告は近況ボードにお願いします。無理やり何となくハピエンですが、不幸な方が抜けたり萌えたりする方は3章くらいまでをおススメします。
※無事に完結しました!
陵辱クラブ♣️
るーな
BL
R-18要素を多分に含みます。
陵辱短編ものでエロ要素満載です。
救いなんて一切ありません。
苦手な方はご注意下さい。
非合法な【陵辱クラブ♣️】にて、
月一で開かれるショー。
そこには、欲望を滾せた男たちの秘密のショーが繰り広げられる。
今宵も、哀れな生け贄が捧げられた。
【R-18】♡喘ぎ詰め合わせ♥あほえろ短編集
夜井
BL
完結済みの短編エロのみを公開していきます。
現在公開中の作品(随時更新)
『異世界転生したら、激太触手に犯されて即堕ちしちゃった話♥』
異種姦・産卵・大量中出し・即堕ち・二輪挿し・フェラ/イラマ・ごっくん・乳首責め・結腸責め・尿道責め・トコロテン・小スカ
犬用オ●ホ工場~兄アナル凌辱雌穴化計画~
雷音
BL
全12話 本編完結済み
雄っパイ●リ/モブ姦/獣姦/フィスト●ァック/スパンキング/ギ●チン/玩具責め/イ●マ/飲●ー/スカ/搾乳/雄母乳/複数/乳合わせ/リバ/NTR/♡喘ぎ/汚喘ぎ
一文無しとなったオジ兄(陸郎)が金銭目的で実家の工場に忍び込むと、レーン上で後転開脚状態の男が泣き喚きながら●姦されている姿を目撃する。工場の残酷な裏業務を知った陸郎に忍び寄る魔の手。義父や弟から容赦なく責められるR18。甚振られ続ける陸郎は、やがて快楽に溺れていき――。
※闇堕ち、♂♂寄りとなります※
単話ごとのプレイ内容を12本全てに記載致しました。
(登場人物は全員成人済みです)
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる