堕ちる犬

四ノ瀬 了

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身体の奥底から確実に壊れ、いや、生まれ変わってきてくれてるはずだ。

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「こんなもの、どうする気です?」
「ん、後で本人に見せていびる。お前だって見て楽しんだろ。」
「まあ、いいオカズにはなりますがね、如何にせよ引きが遠いですわ。ハメてとらないと。」
「ハメて?」

パソコンのディスプレイの中で一つの動画が流されていた。霧野が脱走を図り二条に対して発砲する30分ほど前、川名は似鳥の持ってきた動画を見ていた。この前の動画だった。

「しかし、よくこんなことさせて壊れませんでしたね、こいつ。」

早回しで流しながらも、まだ半分程度、後二時間以上の長尺だった。画面の真ん中で一人服を脱がされ人間でなくなった一頭の獣が人間から凌辱を受けていた。後半の二時間はほとんど理性がないためそこまで面白くもない。30分も観れば飽きるだろうと川名は思った。

「そういうとこが好きなんだよ。とはいえ、身体の奥底から確実に壊れ、いや、生まれ変わってきてくれてるはずだ。スクラップ&ビルドだよ。」

画面の向こうの彼は、半ば快楽の底にいるのを必死で隠そうとしているようだが、淫靡に腰を振っていた。「というか、自覚なんかないんだろ。」と川名は頭の中で画面の向こうの彼に声を掛けた。手塩に掛けて育てた人間が、自分の手足とも呼べる部下達の手によって一度壊され、再構築されつつある。

「……。」

がくがく震えた身体、無数の傷口、悔しそうな表情を見ていると、彼を誉めてやりたくなった。彼はずっと心の中ではこうだったはずだ。それを川名や他の者に見せないようにして甲斐甲斐しく頑張っていたと思うと。
動画のシークバーを後半まで一気に飛ばした。部屋中に嬌声が響き始め、似鳥が「ははは」と低い声で笑った。

彼が、外面の皮一枚残して中身が全く別人となってしまっても致し方がない。究極を言えばそれでも別にいい。もともとが彼であったという事実は消えないし、本人も忘れることはない。かつての彼が消えてしまうのは、もったいないが、これは懲罰を兼ねた矯正治療なんだ。

結局のところ生かしてやることにしたが、彼の裏切り行為を確認し、殺すことを決めてから彼と顔を合わせるたびに、奇妙な感覚が川名の中に育まれていった。何も知らない彼が、普段通りに振る舞い時に笑顔さえ見せているの見ると、憎さが沸き上がると同時に可愛がってやりたくなった。

二条と美里、霧野を連れて高級な飯を食わせている時、何もわかっていない若い二人を二条と共に眺めていた。彼らが彼らの話に夢中になっていがみ合っている横で、二条が優しい笑顔を浮かべてそれを見ていた。

「何を笑ってるんだよ、気味が悪いな。そんなに旨いか?こんなの食べ飽きたろ。」
「いえ、おいしいですね。普段よりずっと。」

彼の右手の指のあたりが軽く震えていた。一番心配だったことは、彼が約束の日より前に臨界を迎えて霧野を殺してしまうことだった。二条にまかせたのは、彼が一番残酷な方法で裏切り者を消してくれるだろうと思ったからだった。彼のような鬱屈した性欲を抱えた人間はある意味使いやすいが、たまにこちらの想像を超えた動きをする。

性的な鬱屈を抱えた人間は、人生の大部分を性欲に支配されるのだ。行動原理の底に常に性欲が付きまとう。だから彼はわざわざ人生の真っ当なキャリアを破壊するようなこの仕事に就き、誰もやりたがらない仕事ばかり好んでやって、性的な欲求を満たすと同時に、成果を上げている。人には向き不向きがあるのだ。自分が何に向いているのか理解し人生の目標を達成するか欲望を満たす必要がある。霧野は二条に比べるとそれがわかっていない。

「おいしいのはわかったが、あれにはまだ手をつけるなよ。」
「大丈夫ですよ。あと8日でしょ。寧ろ組長こそあと8日なんだから、危ない仕事を任せたりしないようにしてくださいね。せっかく準備してるのに、ここで死なれでもしたらたまらない。」

さっさと目の前から葬るのをやめ、約束の日を設けたのは、今のこの状況が存外楽しいからだった。どういう気持ちでそこに存在して、どういう気持ちで川名や周囲の人間と接し、どういう気持ちで生きているのか考えていると、もう憎いを通り越して愉快で止まらなかった。目の前の馬鹿がまだ自分たちを欺いていられてると思って振舞っているのを見ていると、演劇、もっといえばお遊戯会か何かみたいだ。

人を欺くのは楽しい。そして、彼も同じように、身に染みてその楽しさを知っているはずだ。この地獄の中での数少ない楽しみの一つだろう。ばれた時の代償が「死」であることもこのゲームを面白くさせる。最高のスリルだっただろう。そのような楽しみ方をしていて、人格が歪まないわけがないのに。まともな神経を守るために、「澤野」としての皮をかぶっていたとしても、「霧野」の部分まで届いてしまう。

今やらせていることは、ある意味彼の人格を統合させる行為だ。新しい彼になってもらう禊なのだ。



「いい仕上がりですね。これは完成が楽しみです。」

霧野の身体の上で刺青は白い肌の上で痛々しく赤みを帯びてはいたが、川名の書いたとおりの図番がそのまま内腿から尻の方に向けて入っていた。施された本人は観念したように、目を軽く伏せて、じっと床を見ていた。

「犬、疲れただろう。帰るか。」
川名がそう言うと、二条が黙って霧野の拘束具や刺し込まれままになっていたポンプを外し、椅子を元に戻した。黒いワイシャツ一枚になった霧野はそれでも立ち上がろうとせず、ぐったりと椅子に座ってはあはあと息をしていた。

「まだここにいたいのか?……そこに這ってみろ。」

『這ってみろ』の言葉に反応した霧野がハッとした顔で川名の方を見、ゆっくりと椅子から降り床に膝をついた。彼の言葉の通りに彼の方に下半身を向けて床に這う。
なぜこんなことを?という疑問が霧野の頭の中に一瞬浮かんで霧のように消えた。床に這うと、三点に穿たれた金属が重力の重みで下に引っ張られて、軽く声が出た。

「なんですかこれは。」
川名の反対側、霧野の頭の側にいる二条の声には高揚感と動揺が混ざっていた。
「今なにもハメてやってないからな、切なくて仕方がない尻を突きだして媚びてるんだよ。海堂お前確かバイだったよな。ハメてやっていいぞ。急な貸し切りに対応してくれたお礼だ。」
「ええ?」

刺青の入っていない方、尻の右側に川名の脚が乗り、押し開くようにして圧がかけられていった。穴が開き、中からまた体液と精液の混ざった濁液がこぼれ出ていった。

海堂は霧野の顔が伏せられて見えないのをいいことに、先刻よりも無遠慮に彼の身体を眺めることができるようになった。脇腹や腹部の痣も気になってはいたが、背中の黒いシャツに真っ黒になった血がしみて張り付いていた。よく目を凝らさないとわからないが、切り傷のような鞭痕から出血しているのだろう。いくらかのクライアントの傷跡を刺青で消し込んでやったことが思い出された。

先ほど彫った皮膚の上に穢れた液体がつたっていき、床にまで零れ落ちていった。穴は衆目に晒されてひくついて、さらに惨めな様相を醸していた。荒れた息遣いが床に近い場所から聞こえてくる。川名の言う通り、これは犬だなと海堂は思った。

目の前の彼がなにをやらかしてこうなったかはしらないが、そそるものがないわけではない。しかし普段の彼を知っている手前、気が引ける。それに、川名や二条のいる前でヤルなど嫌だが、断って無事でいられるとも思えない。

「汚いですねぇ。」
「汚い?」
「こういう仕事だし、意外と衛生面気になるんですよね俺は。病気うつされても困る。」
「そうか、じゃあ口でしてもらえ。そっちの方がまだ奇麗だ。」
霧野の身体を押し広げていた川名の脚がどかされ、張りのある肉が揺れた。

「おい犬、口の中は奇麗か?誰かに出されたとしても舌で舐めてとって飲んで奇麗にしているだろ?お前は几帳面の奇麗好きだからな。」
「‥‥…、」
床の底の方から何か声が聞こえてくるが、小さすぎて何を言っているのか立っている三人にはまるで聞こえなかった。
「もっとでかい声を出さないか。」
二条が靴先を霧野の喉元に刺し込んで顔を上げさせた。
「何言ってんのか全然聞こえねぇんだよ。質問に答えな。」

霧野は二条と目を合わせて、息を荒げた。二条を下から見上げていると穿たれたピアスが一層じんじん痛み出して、身体に鳥肌が立った。声を出そうとするがつっかえてうまく出せず、喘ぐようにしてなんとか声を出した。

「汚いです。」
「何故汚いんだ?」
「……小便器を……」
霧野は言ってから、何を馬鹿正直に答えているんだ、嘘をつけよと自分を叱咤したがすべてが遅かった。思考が感情よりだいぶ後にならないともうついてこない。
「小便器を何だ。」
「……」
何も言えなくなってしまって代わりにまた身体が熱く、許しを請うように二条をじっと見つめた。身体の奥から何か締め付けられるような感覚が沸き上がり、目を伏せた。途端靴が顔の下からどいて、背中に重い衝撃が打ち下ろれ鈍い音がした。
「うぐっ……」
踵落としだ。身体に力を入れて耐えたが、目の前の無機質な床が歪んで見え、傷口に響いて鈍痛に続いてヒリヒリした痛みがやってきた。足は背中の上に乗せられたままになっている。
「小便器を何だよ。舐めでもしたのか?どうなんだ。」

首を垂らしたまま二三度うなずくと「ふん、便所掃除させられたか。」と笑いの混じった声と共に足がどいた。
川名の靴音が頭の方に近づいてきた。軽く目線を上げると川名の革靴が見えた。床に這いつくばりすぎて、靴を見ただけでそれが誰なのか大体わかるようになっていた。

「なんだそんなもの舐めて、物好きな奴だ。まあ精液でもなく、便を食べさせられたわけでもなし、唾液で飲み込んでるから大丈夫だな。」

彼が目の前で屈みこみ、腕が霧野の方に伸びてきた、反射的に身体が強張った。川名の手が霧野の首筋をゆるゆると撫で始めた。最後に手が顔を掴み、顔を上げさせられる。

「お前が犬である自覚をもっと持てるように、これをはめてやろう。」
彼の左手に黒い革でできた帯のような物が握られていた。
「ノアとおそろいの特注品だ。嬉しいだろ。ちょうどさっき届いたんだ。」
「……」
はい、と言え。上の者の命令を聞くんだよ。と頭の中の澤野が霧野に命令していた。頭の中で拮抗したが、結局のところ全身の痛みや状況が反抗をできなくさせた。
「嬉しいだろ?」
「はい……」
悪趣味な人間用の首輪だった。おとなしくされるがままに首にそれを嵌められると、紐が通され、紐のいき着く先を見れば川名と目があった。ピンとはった紐が首輪を引っ張って顔を上げさせるのだ。

「よく似合うぞ。……おい、海堂、俺の横に立ってコイツの口の中にいれてやれよ。息を荒げて、欲しくて仕方ないって顔をしてるだろ?」

海堂はしぶしぶ川名の横に立って目の前の物を見下げた。便所を舐めさせられるとは、一体どういうことなのだろうか。そもそも、これはなんだ?つくづくヤバい連中で、嫌な噂ばかり聞く。唯一2年前から担当になったこの澤野くらいがマトモだと思っていたのに、澤野までもが彼らの手でマトモではない領域に入りつつある。いや、自分が知らないだけでもともとこうだったのだろうか。本人に様々聞きたいが、この状況では無理だ。

彼の視線が川名の方から海堂自身ではなく、海堂の下半身の方に向けられていった。川名に首輪を強く引っ張られて膝立ちに身体を起こした彼の胸のピアスが蛍光灯を反射して光っていた。初めて見る彼の胸部の乳首は桃色に熟れ、手を伸ばして触ってやると、身体が軽く跳ねてすぐさま視線が上に上がった。眉がしかめられ、半ば開いた口から舌が覗いていた。そこからはあはあと漏れ出る息が腕に触れてくすぐったい。

ジーパンをずり下げてみると既に海堂の下半身は軽く熱く硬くなっていた。恋人でもないノンケの仕事相手の身体にこんなことをする状況そのものはそそるものであった。
川名や二条の存在は気にはなるが、彼らは海堂に関心はなく、じっと目の前の男の方ばかり見ている。ペニスを露出させると川名が「ほら、お前の好物だぞ。良かったな。」と言って靴先で彼の脚をこずいた。

海堂の目の前の彼は一瞬躊躇う表情を見せながらも、どこか飛びつくようにして海堂の下半身に顔を埋めて一気にソレを咥え込んだ。
「んっ……」
うまいな、と思った。粘着質な音を立てながら、肉棒と彼の境い目がわからないように舌と中の肉がまとわりついてくる。彼の頭に手を置いてやりながら、彼から延びる紐の先川名の方を横目で見ると、目を細めて軽く笑っているようにも見えた。

「なかなかうまいものだろう。」
「あっ……はい、思ってたより、ずっと、いいっす」
「そうだろう。これでも最近覚えたばかりだからな。物覚えがいいんだよ。天才だな。」

あまりのうまさに彼がノンケではなく、元々自分と同志なのではと疑ったが、どうやら教育されたようであった。元々のぎこちのない彼の口に痛かろうが突っ込んでみたかったと思った。視線の下で彼の身体が軽く求めるようにして揺れていた。

「腰が軽く揺れてますね。」
海堂の代わりに二条が声を掛けると同時に、わかりやすいくらいに彼の身体の動きが止まって、表情が強張っていた。二条がにやにやしながら彼のすぐ後ろに近づいてくる。

「そのまましてろよ。別に恥ずかしくもないだろ。今更。」

二条の手が彼の後頭部を押し込んで、海堂の肉棒が喉の奥まですっぽり入り込んだ。息遣いが荒くなるが、舌の動きは鈍らずそのまま口内を跳ね回っていた。
「ん゛ぐ‥‥‥」
「心配しなくても、お前の反応は、雄としては終わってるが、性処理奴隷としては正常だ。」

二条は視線を川名の持ってきたアタッシュケースの方に横目を向けた。首輪も元々その中に入っており、開きっぱなしになって床に置かれていた。中には尻尾が一緒に入っていた。

「ああ、それか。コイツにはアナル拡張9センチの罰が残ってるからな、首輪のついでに持ってきたんだ。結構太いが、まあ入らなくもないだろ。」
「ん゛ん!…‥うう゛っ…‥!!!!」
海藤の雄を捕らえていた舌の動きが止まって、代わりに切実なうなり声があがり、喉の奥から口にかけて軽く振動した。二条の彼の後頭部を押し付けていた手が離れ、軽く頭を叩いた。
「うるせぇなぁ。お前は口の中のに集中してろよ。海堂、ソイツの頭抑えてろよ。」

霧野の口内に雄臭い香りが溜まりつつあり、においと刺激に耐えられなくなった涎がだらだらと口からあふれ出ていた。鼻先を陰毛がくすぐり、狭い視界の中で海堂の腰元に彫られた黒い幾何学模様の刺青が目に入る。

はやく出させてやれば、苦痛の時間も短くて済む。そう思って口内の物に集中していると、さっきまでポンプで拡張されていた穴の奥の方がむなしく、何もないことに反目するように切なげに煽動し、中から何かが漏れ出ていくような嫌な感覚がした。

「なんだ?精液交じりの期待汁漏らして。さっきは興奮して叫んでいたのか?可愛い奴だな。」

ちがう、と言いたくとも口内を犯す肉棒を外すことはできず、必死になって舐め続けた。このまま海堂がすぐ射精でもしてくれれば、入れられずに済むかもしれないという淡い期待だった。しかし心の底ではもしすぐさま海堂をイカせようとも結果は変わらないこともわかっていた。膝に固いものが当たり二条の脚だとすぐに分かった。ローションのぶちまけられる音がする。

「もっと足を開かねぇか。」

言われた通り足を開きながら、海堂にしがみつくようにして口の中の物を頬張る。頭の上の方で彼がいい声を出した。口内を犯すこれより大きなものがまた身体の中に押し入ってくるのかと思うと、恐怖と若干の期待に身体が震えていた。期待?何に?

熟れた排泄孔に固く冷たく湿ったものがあてがわれて、ゆるゆると中に突き刺されていく。口の中の雄の臭いが一層強く肉が脈打ってもうすぐ出ることを示唆していた。より一層海堂を抱きしめると「ああ‥…」と吐息の混じった声が聞こえ、それから果てた。

口から吐き出すようにして達した雄を出すと同時に、一番太いと思わる部分が侵入してきた。耐え切れずに床に手をつき、尻を高くつき上げた。そのような姿勢をしたいわけではないのに勝手に、できるだけ楽にそれが中に入る姿勢になってしまう。
「うぁ、…、あああ゛…‥!!」
「大丈夫だ、下手に動かなきゃちゃんと入るぞ。」
ゆっくりだが、微かに進んでいる感覚があり、太い部分を通過すると後はするんと簡単に入ってしまった。再び身体の中が満たされ、中から確実に性感帯を刺激されていく。動かされなくとも圧迫されるだけ、そして屈辱的なだけで感じてしまう。
「あ゛‥‥っ…ん、ふっ……ふぅ……」
中で感じていると身体全体が嫌に高まってきて、口内に溜まっていた涎が一気に床に滴り落ちた。視線を下げて垂れたものを確認しようとすると、目の前に一本の紐があることを思い出した。アクセサリーのようにゆらゆらとゆれて上に続いている。

「タンパク質が摂れて良かったな。海堂にお礼は?」
「……、ありがとう、ござい、ました。」

たわんでいた紐がまっすぐになって上に立ち上った。首が締まり首輪を手で押さえながら上を向くと、赤面したまま性を吐き出した余韻で淀んだ目をした海堂と病んだ笑みを浮かべた川名の顔が見えた。

「ぐぅ……」
「そんなんじゃダメだろ。まず人様の目を見ろ。今までよくでき、人を威圧していたくらいなのに、なぜ急にできなくなったんだ?お礼も最悪だよ。『口マンコに貴重なたんぱく源恵んでくれてありがとうございました。』くらい気の利いたこと言ってみろ。お前は今までもっと気の利いたセリフが言えただろ。つまらんことするな。」
「く……くちまんこに、、きちょうなたんぱくげんを、めぐんでくれて、ありがとうございました。おいしかったです、またしてください、、」

首輪の紐が緩んで再び床に這いつくばって息を整えた。同時に口の中を汚した粘ついた液を飲み、舌で中を奇麗にしていた。いくら舐めとっても気持ち悪さが消えない。

「いいぞ、それくらい常に言えるようにしておけよ。じゃ、このまま帰るぞ。車は近くのパーキングに止めさせてるから。」

たわんでいた紐が移動し始め、川名の靴が一緒に移動し始めた。さも当然のように歩き、霧野の身体が動かないので当然また紐がピンと張る始末になる。

「帰るんだよ。まだ彫ってほしいか。別に俺は良いぞ。今度はもっと目立つ紅い花でも彫ってやるよ。今日はもう暇だからいくらでもつきあってやれるよ。どうする?」
「…‥帰ります。」
「じゃあ、さっさとついてこないか。」
「……このまま、ですか?」
「なにが?」
「服は、」
「服?何言ってるんだ?下はさっき二条が切り刻んでしまったし、もう無いぞ。そのまま這ってついてこいよ。這うのを止めて良いとも言ってないだろ。」

紐を引かれてそのまま這って移動しながら、心の中が沈んで冷えていくのに対して、身体が羞恥で滾り、あるく度に中が擦れ、尻の表面を尻尾の毛束がくすぐり、勃起した性感帯が常に金属で刺激された。
ほとんど性と羞恥に浸された頭の中で、パーキングの位置を考えていた。ここは入り組んだ路地の奥にある店だ。車で来た場合、店からおよそ50メートル近く離れたパーキングに止める必要がある。細い路地から抜け出てすぐ曲がった場所にあるパーキングだが、そこだけは大通りに面していた。
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