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靴でも舐めさせて自分の立場をわからせてやりたいな。
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事務所には屋上がある。霧野は仕事が行き詰った時はそこで気分転換をする習慣があった。
事務所は周辺の建物と比較して少し背が高く、地形としても丘だった場所にあるため、街が見降ろせて気持ちがいいのだ。よく晴れた日には少し目を凝らせば警察署までよく見えた。
霧野の他にも屋上を利用する組員は多い。屋上に女を呼ぶような者も少なくなく、その場合は屋上のドアの外側からコンクリートブロックを置き、中に人をいれさせないようにするのが暗黙の了解となっていた。
霧野はブロックを扉の前に足で移動させ、携帯を見ながら一番見晴らしのいい場所に移動する。不在着信通知に折り返しの電話をかけた。数コールで相手方が電話をとる。
「何か問題でも?」
『お前の言っていたカジノは摘発させた。しかし逮捕者の中に警視の息子が入っていたぞ。お前知っててやったんじゃないか。』
「知りませんよ。たまたまそこにいただけなんじゃないですか?それよりも、そんなくだらないことでそちらから電話をかけてこないでください。私を殺したいんですか。緊急時以外、基本的にはこちらから報告をする決まりでしょう。」
『お偉いさんたちがおかんむりだよ。』
「説教電話は勘弁してください。」
電話を切る。携帯を警察署の見える方向に向かって投げ捨てたい衝動にかられた。あのまま会話を続けていたら一生お前を戻さないなどと脅しともとれる説教を永遠に続けられたはずだ。
屋上の入口に戻り、急いでブロックをどかす。あまりすぐに戻りすぎても違和感があるため、もう一度見晴らしのいい場所に戻り大きく伸びをした。
うまくいってよかった。
摘発させたカジノは、組の経営する他の店舗に比べて明らかに売り上げがのびていなかった。その上、上が許可してない麻薬密売の温床になり始めており、泳がせておくと麻薬の出まわるスピードがはやくなる。
組としても警察としても不良債権でしかない店。警察の強制介入で潰しておくのが最適解だった。
都合のいいことに、顧客リストの中に何人か有力者の親族が存在した。捜査に踏み込ませる時間帯を警察側に指示しておくことで、いくらか目当ての人物をついでに逮捕させることができた。
有力者の子息など、このようなつまらない罪で逮捕させたところで、すぐに釈放されるのが関の山だ。しかし、多少は灸を添えることができるだろう。何より自分の気が晴れる。憂さ晴らしとしては悪くない。
しばらく屋上で風にあたってから中に戻り、自席のパソコンで今月の資金回収の収支をまとめていた。
こうしてエクセルに向かい合っていると、自分が一体何の仕事をしているのかよくわからなくなってくる。
下の者に任せていた資金の回収データを見る。あまりの杜撰さに辟易してくる。
自ら出向いた方が早いのではないかといらいらしながら計算表を見ていると、誰か目の前に立っている気配がした。
「怖い顔してどうした?」
シャツに目立たない程度の返り血をつけた美里が目の前にボーっとした表情で立ち、こちらを見降ろしていた。
「お前に言われたくないな……。何人か集金をちゃんとやってない奴がいるんだ。十万誤差があるなんてザラ。綾瀬が60万円先取りして回収してくれたから合計値としては悪くないんだが……」
「お前なめられてるんじゃないの?」
美里は意地の悪い笑い方をすると霧野のすぐ横に来て一緒になってパソコンの画面を眺めた。
血の臭いと香水の混じった独特な匂いが鼻をついた。不思議とそれは嫌な臭いではなかった。
「……。なるほどな、この程度なら誤差でいけるよ。お前が細かいこと気にしすぎなんだよ。あんまり細かいことで人をいびるのはやめな。誰かみたく人望が無くなるぜ。来月上乗せさせて回収させればいいじゃねえか。……。それにしても藤堂は酷いな。アイツは俺にもなめた態度とるからなぁ。一回どこかで靴でも舐めさせて自分の立場をわからせてやりたいな。すげぇムカつく。」
◆
尻から太ももに向かって穢れた液体がゆっくり滴りおちている。中に出されるとほとんど同時に後部座席のドアロックが外れる音がした。
「ご苦労様、良かったよ。」
車から押し出されようにして外に出た。
上昇した脈拍、下半身にうまく力が入らない。
酸欠で一瞬目の前に黄色のモヤのようなものが横切っていた。
運転席の窓がゆっくしまっていった。
美里の表情が見えない。
車の天井に手をついて呼吸を整える。何度か自分の意識と関係なく行為の余韻で身体が軽くビクビクとはねた。うなじに張り付いた汗で外気の涼しさを感じ取れるほど、全身が薄らと汗で覆われていた。
軽く勃起してしまっている下半身を抑えるために頭の中でどうでもいいことを考えようとする。まとまらず木崎のことを思い出すと一瞬にして身体が萎えた。
運転席の窓が閉まった代わりに後部座席の窓がゆっくりと下がり、二条がはやくいけよと手でジェスチャーしてくる。
ゆっくりと車から手を離し、車に背を向けた。粘つくような複数の視線を背後に感じながら歩き始めた。
歩く度に湿り気を帯びた下半身がぐちゃぐちゃと音を立てて擦れる音がする。気持ちが悪い。
コンビニの自動ドアに一瞬だけ反射した自分の顔は紅潮し、殺気だっていた。
中に入った瞬間から、人の視線が止まってはすぐに避けられる。自分が客としてコンビニにいたとしてもきっと同じ行動をとる。
本当ならば、すぐさまトイレに行って中に出されたものを掻きだしてしまいたい。しかし、ヤクザが出入りできるような場所にあるコンビニだ。治安の問題でトイレには使用禁止の張り紙がでかでかと貼られている。
客がレジ前からはけたのを見計らい、足早にレジに向かった。眼鏡をかけた痩せた店員の男は、こちらの姿を確認するとあからさまに視線を逸らした。
レジに手を付き身を乗り出すようにして、店員の背後に並んだ煙草に目を凝らした。
店内が暗いのか自分の頭が曇ってるからなのか、目当ての銘柄JPSが見つからない。黒のパッケージにシンプルな金文字でアルファベットが並んだパッケージで、普段であればすぐに発見できるのだが。
「JPSは?」
自分の声は痰が絡みかなり上ずっていて、さらにもう一度深く息を吸った。これではまるで短距離走を走った後の学生か酔っぱらいだ。
「は、なんでしょうか。」
店員の男はおどおどした様子で、霧野と背後に並んだ棚を交互に見た。
「JPSだよ、黒いパッケージの煙草。」
「こちらですか?」
店員が手に持ってきたのはメビウスだった。骨ばった手の指先に真っ黒なインクの染みが付いていた。
視線を煙草から店員、それからゆっくり天井に向けた。レジの中に監視カメラがついている。おそらくすぐに奴らが来て取り押さえられるにしても、何かしらの記録は残るし、うまくいけば警察を呼んでもらえる。
霧野はおもむろにレジの前面に強めの蹴りを入れ、店員を睨みつけた。
「誰がメビウスだなんて言ったんだよ?小学生でも読めるぞこんなもん。」
そのまま店員の襟首をつかみ、レジから引きずり出した。後ろに並んでいた客が商品を棚に戻しそそくさと店から出ていった。
「すみません。すぐ探しますから、勘弁してください。」
店員の眼鏡のフレーム当たりを狙って軽く平手で打つと眼鏡が飛んでいく。眼鏡は平手の威力とは関係なく派手な大きな音を立てて床を滑っていった。
音を聞いて騒ぎを察知した客ふたりが出ていき、一人プロレスラー体型をした大きな中年男がこちらに近づいてきて霧野の肩に手を置いた。
「兄ちゃん、あんたなにしてんの?警察呼ぶよ?」
「警察?呼びたきゃ勝手に呼べよ。」
男は狂人を見るような目で霧野を見て肩をすくめると、霧野の手首のあたりを強く掴んでポケットから携帯を取り出し通話画面を表示させた。しかし、110と入力してから通話ボタンを押さずに霧野の背後に視線を向けていた。
「すみません、勘弁してやってくれませんか。酔ってるんですよ、ソイツ。」
背中にぞわぞわと鳥肌がたち始めた。散々さっき人を嘲っていた人間とは思えない優しい声色が余計に恐怖と気持ちの悪さを煽る。
「しかし……」
このままこの手首を離さないでほしいと、視線を下げて男の手を見つめていたがその力はどんどん弱まっていった。
代わりに太い腕が霧野の肩を強い力で抱き、手から財布を奪い取った。
「ほら、お前も早く謝らないか。」
「……」
「謝れと言っているのが聞こえないのか?」
突然、みぞおちに容赦のないボディブローがはいり、目の前にきらきらと星のようなものがまった。
衝撃に耐えきれず身体を曲げると追い打ちをかけるように深い膝蹴りが入る。内臓が抉られ身体の中にいれられたドロドロしたものが漏れ出て一気に下半身をつたった。
手首を掴んでいた男の手が完全に離されてしまう。
口を押えながら、床にしゃがむこむと上から革靴で頭と肩を踏みつけられ、そのまま床に手をつく形になる。
「ここまでしなくても……」
上から弱ったような中年男の声が降ってくる。そう思うならこの男を止めて欲しい。
「おい、はやく謝れよ」
「……。すいませんでした。」
肩の上に乗っていた脚がどかされたかと思うと、下半身強い衝撃が走った。
「あ゛あ……!」
「聞こえねぇな。もっとでかい声出せねぇのか。お前には誠意がねぇよ。誠意が。この二枚舌野郎が。」
軽く開いているパンツの上から足の甲のあたりで鞭打つように二、三度蹴り上げられ、革靴の凹凸のある表面が直接性器を強く嬲り肉が肉を叩く様な破裂音が響いた。
「お゛っ……!…やめ……、すみません、すみませんでした……!」
自分の声が情けないような涙声になり、痛みと羞恥心で体が熱くなる。
事務所、地下ならまだしも、公衆の面前でなぜこんな仕打ちをされなければいけないのだ。
足がどけられ、ゆっくり身体を起こし正座する姿勢になる。下半身が強く脈打ち、痛みの余韻に身体がまだ震えている。
二条が片手で財布を器用に開いて、一万円を男の手の中に押し込み、二万円をレジの上にたたきつけるようにして置く。それからカウンターの中から目当てのタバコを手に取ってポケットに入れた。
中年男はさっきとは打って変わって心配そうな顔をして霧野の方を見下げており、店員の男が変わらずおどおどとした態度で、壊れた眼鏡を震える手の中でいじっていた。
反撃したかったが、店の中で発砲騒ぎになどなり、増してや民間人にまで被害が及ぶことは許されなかった。それに今の状態で戦闘に突入したところで、軽く二条に制圧され、車内に押し戻される未来が容易に想像できた。
下半身の痛みに耐えながら、立ち上がろうとすると上から半笑いの声が降ってきた。
「おいおい、遥。まだ立つなよ。俺の足元をよく見てみろ。」
二条の足元を見ても何も落ちておらず、磨かれたコンビニの床が光っていた。
「そっちじゃない、俺の靴だよ。」
視線を二条の革靴の方へと向けると片方の靴の表面に白い液体がべったりと張りついて蛍光灯の光に反射され、てらてらと光っていた。
「お前がちゃんとケツを締めていないからせっかく出してやったものが出てるじゃないか。その上それで俺の靴を汚すとは、お前は本当に最悪だな。」
「……」
「ははは、お前さあ、何黙ってるんだ?こういう時はとりあえず謝るんだよ。そういうところは学習能力がねぇ奴だな。お前は俺が何をしてほしいか察しているが身体が動かないんだろ。どうしても難しいというなら、もう一回腹にキツイのくらわしてゲロってる口に無理やり靴突っ込んで手伝ってやってもいいぞ。」
自分の身体の体温が急速に冷めていく感じがし、今鏡を見たらさぞかし青い顔をしているに違いなかった。上目遣いで二条の方を見上げるとさっきまでの殺気だった雰囲気ではなく嗜虐的な表情でこちらを見ていた。
「監視カメラが……」
「だからなんだ?人が人の前に這いつくばってたら犯罪なのか?まして俺とお前は同門だろ、誰もお前を助けてなんかくれないよ。……。どうした?できないのか?それとも帰ってからまた首を吊ってほしいのか?今度は本当に殺すぞ。」
呼吸が荒くなってきて、視線をあげていることができなくなる。
二条は霧野を見降ろしながら、さっきまで車の中で息を荒げてそれでもわずかにでも気丈な顔をしていた男が、顔を真っ青にして打ちのめされかけている様子見て性行為をしていたとき以上に昂ってしまい口元に手を当てた。
「やるのか?やらないのか?」
10秒程度のこと、考えることをやめてやれ
こんなことするなら、死んだほうがましでは?
今更なにが恥ずかしいんだ?
こんなことで死んでいいのか?
心を殺して二条の前に首を垂れると、異常に心音が高鳴り、有り得ないがこの心臓の音が外にまで漏れ出てしまっているのではないかと心配になった。
羞恥に身体がマグマのようにに熱くなっていく。顔が熱い。
悲しいことなどないが、涙がぼろぼろとこぼれた。泣くなど、目の前にいる悪魔の心を喜ばせるとわかっているのに、そう思えば思うほど伝ってくる涙の量が増えてしまう。
羞恥など感じず淡々とすべき作業でしかない、なんの問題もないと言い聞かせても、さらに脈拍が上昇し息が荒くなった。
人は危機的状況に陥るとアドレナリンを出して、心拍数を上げる。瞬発力を高め攻撃に対抗するためだ。
本来ならそうやって使うはず有益な物質が自分の脳と身体をおかしくさせる。反撃ができないのに攻撃性だけが高まってくると、攻撃性は自分に向けられる。
二条以外の人間の視線を感じることが最も悪なことだった。彼ら自身に悪意はないとしても、その視線は霧野を昂らせ屈辱を与えるために大いに役に立った。
二条と霧野がやりあっている間に、コンビニに入ってきた人間は少なくなかった。
二条と霧野の圧に近くには寄ろうとしないが遠巻きに彼らを見ている。二条の威圧的な風格と霧野の整った容姿が輪をかけて彼らの目を引く原因でもあった。
舌先をつけ、公衆の面前で穢れた液体を舐めとっていく作業は、無理やりペニスをくわえさせらること以上に心にこたえる屈辱だった。
自分のたてる粘着質な音が耐えられない。
ましてパンツを切られており、姿勢と角度のよっては全く知らない人間に自分の穢れた陰部を晒していることになる。
陰部からはまだ体内に残された精液が溢れ出ており、わかる人が見れば、自分が男達から辱めを受けていることがわかってしまう。
どこからか知らない誰かが自分たちのことを言っている声が断片的な聞こえてきて頭の中で勝手に解釈して渦巻いてく。
「ヤクザだ」「酷い見せしめ」「いい気味だ」「かわいそう」「せっかくの顔なのに台無し」「エロい面」「中に出されている」「野外プレイ」「変態」
散々教えこまれた精液の味と革や地面の味が口内でまざりあい、口内から喉まで、それから脳を犯していく。乱雑にペニスを咥えこんでいる時とは異なる屈辱の味だ。
あまりの羞恥に身体の熱さが下半身にまでめぐり、陰部に触れられているわけでもないのに、ドクドクと熱い脈打ちを感じてしまう。下半身が脈打つ度に頭が馬鹿になる、頭に対して何も考えるなと下半身から指示される感覚。
あまりの自体に脳が追いつかず耐えきれない。
理性で考えると気持ちが悪いことを身体が気持ちがいい事として置き換え、書き換えて状況に対応しようとしている。
そんなやり方で体を守って欲しくない。こんなことで感じるとは信じたくない。と思うほど身体は霧野の理性を裏切って疼いた。
二条は霧野が自分の足元で惨めに頭を垂れているのを見ながら、愛おしさを覚えた。下半身の様子を見てやることはできないが、きっとある程度の最悪な快楽を与えてやっているはずだと直感する。
なぜなら、この男は自分の状況をまだ受け入れようとしていないからだ。そういった人間ほど恥辱の感情が膨れ上がり脳と身体をしっかりと犯され、とんでもない淫乱に化けやすい。早くこの男の脳の感性を破壊してやりたいが、今のような中途半端に理性がある状態が1番そそるのも確かだった。
霧野はゆっくりと口を靴の表面から離した。舌が白い糸を引いて真っ黒な革靴とつながっており、見た目にはもう白い液体はなかった。自分の息がかかった箇所が結露のように一瞬白くなっては元に戻る。頭の奥の方がキリキリ痛む。
「まだ汚いな。」
「……きれいにしました」
「汚いな。」
「……」
再度靴の上に舌を這わせていくと、最早何も考えられなくなる。口内にイキり勃った誰かのペニスをおさめるときのように必死になってそれを舐めた。もう何の味もしない。
上がる息や紅潮した顔が見ている人間を喜ばせる。
それだけのための無意味な作業。自分を人間と思うな。
考えると発狂すると本能がやっと理解してくれたようだ。また何か心の奥底で何か折れるような音を聞いた。
どれくらい長い間それを続けさせられたのか覚えていない。実際の時間はおそらく短かっただろうが、体感時間としては異常なほど長い時間であった。気が付くと腕を二条に掴まれて車の前まで戻っていた。
腕の痛みのおかげで意識がはっきりと戻ってくる。痣になりそうなほど強く、あの中年男の握り方がいかに優しいものだったか思い出された。
掴まれていないほうの手で口元をぬぐいながら車の窓に写っている自分の酷い顔を眺めていた。
掴まれていた腕が離され、上から声が降ってきた。
「警察を呼ぶためにお前ならやるかと半分くらい思って見守っていたが、なんだアレは。下手だなお前。あんなの初手でいきなり骨を折るくらいの気概で殴るくらいしないとだめだ。甘いんだよな。」
突然二条がまるで友達のようなフランクさで話しかけてきたので、記憶が若干飛んでいるがきっと満足してくれたのだろうと思いながら彼の胸元あたりを見ながら返事をした。とても顔を直視できる気分ではなかった。
「……だって、カタギですよ」
「お前さあ……」
いつから窓が開いていたのか知らないが美里が運転席からこちらを見上げていた。
彼は何か言いかけたが、気まずそうな顔をして顔を引っ込めた。
後部座席のドアが開き、中に乗り込むと、川名が珍しくバツの悪そうな顔しているのが印象的だった。
「お前帰ったらわかってるな。」
「……なんですか?」
「なんですか?……なめてるのか?そのなめた態度の分も加算していたぶってやる。」
美里が川名の方を振り返って右手を出した。
「川名さんと似鳥さんは俺と二条さんに一万円ずつですよ。似鳥さんからはさっきもらったんで、くれません?」
それから、ゆっくりと視線を霧野の方に向け目だけで軽く微笑んだ。
「俺と二条さんはお前が店員にいちゃもんつけて騒ぎを起こして警察呼ばせようとする方に一万円かけてたんだよ。やっぱり俺がお前のことを一番理解できてるよね。」
事務所は周辺の建物と比較して少し背が高く、地形としても丘だった場所にあるため、街が見降ろせて気持ちがいいのだ。よく晴れた日には少し目を凝らせば警察署までよく見えた。
霧野の他にも屋上を利用する組員は多い。屋上に女を呼ぶような者も少なくなく、その場合は屋上のドアの外側からコンクリートブロックを置き、中に人をいれさせないようにするのが暗黙の了解となっていた。
霧野はブロックを扉の前に足で移動させ、携帯を見ながら一番見晴らしのいい場所に移動する。不在着信通知に折り返しの電話をかけた。数コールで相手方が電話をとる。
「何か問題でも?」
『お前の言っていたカジノは摘発させた。しかし逮捕者の中に警視の息子が入っていたぞ。お前知っててやったんじゃないか。』
「知りませんよ。たまたまそこにいただけなんじゃないですか?それよりも、そんなくだらないことでそちらから電話をかけてこないでください。私を殺したいんですか。緊急時以外、基本的にはこちらから報告をする決まりでしょう。」
『お偉いさんたちがおかんむりだよ。』
「説教電話は勘弁してください。」
電話を切る。携帯を警察署の見える方向に向かって投げ捨てたい衝動にかられた。あのまま会話を続けていたら一生お前を戻さないなどと脅しともとれる説教を永遠に続けられたはずだ。
屋上の入口に戻り、急いでブロックをどかす。あまりすぐに戻りすぎても違和感があるため、もう一度見晴らしのいい場所に戻り大きく伸びをした。
うまくいってよかった。
摘発させたカジノは、組の経営する他の店舗に比べて明らかに売り上げがのびていなかった。その上、上が許可してない麻薬密売の温床になり始めており、泳がせておくと麻薬の出まわるスピードがはやくなる。
組としても警察としても不良債権でしかない店。警察の強制介入で潰しておくのが最適解だった。
都合のいいことに、顧客リストの中に何人か有力者の親族が存在した。捜査に踏み込ませる時間帯を警察側に指示しておくことで、いくらか目当ての人物をついでに逮捕させることができた。
有力者の子息など、このようなつまらない罪で逮捕させたところで、すぐに釈放されるのが関の山だ。しかし、多少は灸を添えることができるだろう。何より自分の気が晴れる。憂さ晴らしとしては悪くない。
しばらく屋上で風にあたってから中に戻り、自席のパソコンで今月の資金回収の収支をまとめていた。
こうしてエクセルに向かい合っていると、自分が一体何の仕事をしているのかよくわからなくなってくる。
下の者に任せていた資金の回収データを見る。あまりの杜撰さに辟易してくる。
自ら出向いた方が早いのではないかといらいらしながら計算表を見ていると、誰か目の前に立っている気配がした。
「怖い顔してどうした?」
シャツに目立たない程度の返り血をつけた美里が目の前にボーっとした表情で立ち、こちらを見降ろしていた。
「お前に言われたくないな……。何人か集金をちゃんとやってない奴がいるんだ。十万誤差があるなんてザラ。綾瀬が60万円先取りして回収してくれたから合計値としては悪くないんだが……」
「お前なめられてるんじゃないの?」
美里は意地の悪い笑い方をすると霧野のすぐ横に来て一緒になってパソコンの画面を眺めた。
血の臭いと香水の混じった独特な匂いが鼻をついた。不思議とそれは嫌な臭いではなかった。
「……。なるほどな、この程度なら誤差でいけるよ。お前が細かいこと気にしすぎなんだよ。あんまり細かいことで人をいびるのはやめな。誰かみたく人望が無くなるぜ。来月上乗せさせて回収させればいいじゃねえか。……。それにしても藤堂は酷いな。アイツは俺にもなめた態度とるからなぁ。一回どこかで靴でも舐めさせて自分の立場をわからせてやりたいな。すげぇムカつく。」
◆
尻から太ももに向かって穢れた液体がゆっくり滴りおちている。中に出されるとほとんど同時に後部座席のドアロックが外れる音がした。
「ご苦労様、良かったよ。」
車から押し出されようにして外に出た。
上昇した脈拍、下半身にうまく力が入らない。
酸欠で一瞬目の前に黄色のモヤのようなものが横切っていた。
運転席の窓がゆっくしまっていった。
美里の表情が見えない。
車の天井に手をついて呼吸を整える。何度か自分の意識と関係なく行為の余韻で身体が軽くビクビクとはねた。うなじに張り付いた汗で外気の涼しさを感じ取れるほど、全身が薄らと汗で覆われていた。
軽く勃起してしまっている下半身を抑えるために頭の中でどうでもいいことを考えようとする。まとまらず木崎のことを思い出すと一瞬にして身体が萎えた。
運転席の窓が閉まった代わりに後部座席の窓がゆっくりと下がり、二条がはやくいけよと手でジェスチャーしてくる。
ゆっくりと車から手を離し、車に背を向けた。粘つくような複数の視線を背後に感じながら歩き始めた。
歩く度に湿り気を帯びた下半身がぐちゃぐちゃと音を立てて擦れる音がする。気持ちが悪い。
コンビニの自動ドアに一瞬だけ反射した自分の顔は紅潮し、殺気だっていた。
中に入った瞬間から、人の視線が止まってはすぐに避けられる。自分が客としてコンビニにいたとしてもきっと同じ行動をとる。
本当ならば、すぐさまトイレに行って中に出されたものを掻きだしてしまいたい。しかし、ヤクザが出入りできるような場所にあるコンビニだ。治安の問題でトイレには使用禁止の張り紙がでかでかと貼られている。
客がレジ前からはけたのを見計らい、足早にレジに向かった。眼鏡をかけた痩せた店員の男は、こちらの姿を確認するとあからさまに視線を逸らした。
レジに手を付き身を乗り出すようにして、店員の背後に並んだ煙草に目を凝らした。
店内が暗いのか自分の頭が曇ってるからなのか、目当ての銘柄JPSが見つからない。黒のパッケージにシンプルな金文字でアルファベットが並んだパッケージで、普段であればすぐに発見できるのだが。
「JPSは?」
自分の声は痰が絡みかなり上ずっていて、さらにもう一度深く息を吸った。これではまるで短距離走を走った後の学生か酔っぱらいだ。
「は、なんでしょうか。」
店員の男はおどおどした様子で、霧野と背後に並んだ棚を交互に見た。
「JPSだよ、黒いパッケージの煙草。」
「こちらですか?」
店員が手に持ってきたのはメビウスだった。骨ばった手の指先に真っ黒なインクの染みが付いていた。
視線を煙草から店員、それからゆっくり天井に向けた。レジの中に監視カメラがついている。おそらくすぐに奴らが来て取り押さえられるにしても、何かしらの記録は残るし、うまくいけば警察を呼んでもらえる。
霧野はおもむろにレジの前面に強めの蹴りを入れ、店員を睨みつけた。
「誰がメビウスだなんて言ったんだよ?小学生でも読めるぞこんなもん。」
そのまま店員の襟首をつかみ、レジから引きずり出した。後ろに並んでいた客が商品を棚に戻しそそくさと店から出ていった。
「すみません。すぐ探しますから、勘弁してください。」
店員の眼鏡のフレーム当たりを狙って軽く平手で打つと眼鏡が飛んでいく。眼鏡は平手の威力とは関係なく派手な大きな音を立てて床を滑っていった。
音を聞いて騒ぎを察知した客ふたりが出ていき、一人プロレスラー体型をした大きな中年男がこちらに近づいてきて霧野の肩に手を置いた。
「兄ちゃん、あんたなにしてんの?警察呼ぶよ?」
「警察?呼びたきゃ勝手に呼べよ。」
男は狂人を見るような目で霧野を見て肩をすくめると、霧野の手首のあたりを強く掴んでポケットから携帯を取り出し通話画面を表示させた。しかし、110と入力してから通話ボタンを押さずに霧野の背後に視線を向けていた。
「すみません、勘弁してやってくれませんか。酔ってるんですよ、ソイツ。」
背中にぞわぞわと鳥肌がたち始めた。散々さっき人を嘲っていた人間とは思えない優しい声色が余計に恐怖と気持ちの悪さを煽る。
「しかし……」
このままこの手首を離さないでほしいと、視線を下げて男の手を見つめていたがその力はどんどん弱まっていった。
代わりに太い腕が霧野の肩を強い力で抱き、手から財布を奪い取った。
「ほら、お前も早く謝らないか。」
「……」
「謝れと言っているのが聞こえないのか?」
突然、みぞおちに容赦のないボディブローがはいり、目の前にきらきらと星のようなものがまった。
衝撃に耐えきれず身体を曲げると追い打ちをかけるように深い膝蹴りが入る。内臓が抉られ身体の中にいれられたドロドロしたものが漏れ出て一気に下半身をつたった。
手首を掴んでいた男の手が完全に離されてしまう。
口を押えながら、床にしゃがむこむと上から革靴で頭と肩を踏みつけられ、そのまま床に手をつく形になる。
「ここまでしなくても……」
上から弱ったような中年男の声が降ってくる。そう思うならこの男を止めて欲しい。
「おい、はやく謝れよ」
「……。すいませんでした。」
肩の上に乗っていた脚がどかされたかと思うと、下半身強い衝撃が走った。
「あ゛あ……!」
「聞こえねぇな。もっとでかい声出せねぇのか。お前には誠意がねぇよ。誠意が。この二枚舌野郎が。」
軽く開いているパンツの上から足の甲のあたりで鞭打つように二、三度蹴り上げられ、革靴の凹凸のある表面が直接性器を強く嬲り肉が肉を叩く様な破裂音が響いた。
「お゛っ……!…やめ……、すみません、すみませんでした……!」
自分の声が情けないような涙声になり、痛みと羞恥心で体が熱くなる。
事務所、地下ならまだしも、公衆の面前でなぜこんな仕打ちをされなければいけないのだ。
足がどけられ、ゆっくり身体を起こし正座する姿勢になる。下半身が強く脈打ち、痛みの余韻に身体がまだ震えている。
二条が片手で財布を器用に開いて、一万円を男の手の中に押し込み、二万円をレジの上にたたきつけるようにして置く。それからカウンターの中から目当てのタバコを手に取ってポケットに入れた。
中年男はさっきとは打って変わって心配そうな顔をして霧野の方を見下げており、店員の男が変わらずおどおどとした態度で、壊れた眼鏡を震える手の中でいじっていた。
反撃したかったが、店の中で発砲騒ぎになどなり、増してや民間人にまで被害が及ぶことは許されなかった。それに今の状態で戦闘に突入したところで、軽く二条に制圧され、車内に押し戻される未来が容易に想像できた。
下半身の痛みに耐えながら、立ち上がろうとすると上から半笑いの声が降ってきた。
「おいおい、遥。まだ立つなよ。俺の足元をよく見てみろ。」
二条の足元を見ても何も落ちておらず、磨かれたコンビニの床が光っていた。
「そっちじゃない、俺の靴だよ。」
視線を二条の革靴の方へと向けると片方の靴の表面に白い液体がべったりと張りついて蛍光灯の光に反射され、てらてらと光っていた。
「お前がちゃんとケツを締めていないからせっかく出してやったものが出てるじゃないか。その上それで俺の靴を汚すとは、お前は本当に最悪だな。」
「……」
「ははは、お前さあ、何黙ってるんだ?こういう時はとりあえず謝るんだよ。そういうところは学習能力がねぇ奴だな。お前は俺が何をしてほしいか察しているが身体が動かないんだろ。どうしても難しいというなら、もう一回腹にキツイのくらわしてゲロってる口に無理やり靴突っ込んで手伝ってやってもいいぞ。」
自分の身体の体温が急速に冷めていく感じがし、今鏡を見たらさぞかし青い顔をしているに違いなかった。上目遣いで二条の方を見上げるとさっきまでの殺気だった雰囲気ではなく嗜虐的な表情でこちらを見ていた。
「監視カメラが……」
「だからなんだ?人が人の前に這いつくばってたら犯罪なのか?まして俺とお前は同門だろ、誰もお前を助けてなんかくれないよ。……。どうした?できないのか?それとも帰ってからまた首を吊ってほしいのか?今度は本当に殺すぞ。」
呼吸が荒くなってきて、視線をあげていることができなくなる。
二条は霧野を見降ろしながら、さっきまで車の中で息を荒げてそれでもわずかにでも気丈な顔をしていた男が、顔を真っ青にして打ちのめされかけている様子見て性行為をしていたとき以上に昂ってしまい口元に手を当てた。
「やるのか?やらないのか?」
10秒程度のこと、考えることをやめてやれ
こんなことするなら、死んだほうがましでは?
今更なにが恥ずかしいんだ?
こんなことで死んでいいのか?
心を殺して二条の前に首を垂れると、異常に心音が高鳴り、有り得ないがこの心臓の音が外にまで漏れ出てしまっているのではないかと心配になった。
羞恥に身体がマグマのようにに熱くなっていく。顔が熱い。
悲しいことなどないが、涙がぼろぼろとこぼれた。泣くなど、目の前にいる悪魔の心を喜ばせるとわかっているのに、そう思えば思うほど伝ってくる涙の量が増えてしまう。
羞恥など感じず淡々とすべき作業でしかない、なんの問題もないと言い聞かせても、さらに脈拍が上昇し息が荒くなった。
人は危機的状況に陥るとアドレナリンを出して、心拍数を上げる。瞬発力を高め攻撃に対抗するためだ。
本来ならそうやって使うはず有益な物質が自分の脳と身体をおかしくさせる。反撃ができないのに攻撃性だけが高まってくると、攻撃性は自分に向けられる。
二条以外の人間の視線を感じることが最も悪なことだった。彼ら自身に悪意はないとしても、その視線は霧野を昂らせ屈辱を与えるために大いに役に立った。
二条と霧野がやりあっている間に、コンビニに入ってきた人間は少なくなかった。
二条と霧野の圧に近くには寄ろうとしないが遠巻きに彼らを見ている。二条の威圧的な風格と霧野の整った容姿が輪をかけて彼らの目を引く原因でもあった。
舌先をつけ、公衆の面前で穢れた液体を舐めとっていく作業は、無理やりペニスをくわえさせらること以上に心にこたえる屈辱だった。
自分のたてる粘着質な音が耐えられない。
ましてパンツを切られており、姿勢と角度のよっては全く知らない人間に自分の穢れた陰部を晒していることになる。
陰部からはまだ体内に残された精液が溢れ出ており、わかる人が見れば、自分が男達から辱めを受けていることがわかってしまう。
どこからか知らない誰かが自分たちのことを言っている声が断片的な聞こえてきて頭の中で勝手に解釈して渦巻いてく。
「ヤクザだ」「酷い見せしめ」「いい気味だ」「かわいそう」「せっかくの顔なのに台無し」「エロい面」「中に出されている」「野外プレイ」「変態」
散々教えこまれた精液の味と革や地面の味が口内でまざりあい、口内から喉まで、それから脳を犯していく。乱雑にペニスを咥えこんでいる時とは異なる屈辱の味だ。
あまりの羞恥に身体の熱さが下半身にまでめぐり、陰部に触れられているわけでもないのに、ドクドクと熱い脈打ちを感じてしまう。下半身が脈打つ度に頭が馬鹿になる、頭に対して何も考えるなと下半身から指示される感覚。
あまりの自体に脳が追いつかず耐えきれない。
理性で考えると気持ちが悪いことを身体が気持ちがいい事として置き換え、書き換えて状況に対応しようとしている。
そんなやり方で体を守って欲しくない。こんなことで感じるとは信じたくない。と思うほど身体は霧野の理性を裏切って疼いた。
二条は霧野が自分の足元で惨めに頭を垂れているのを見ながら、愛おしさを覚えた。下半身の様子を見てやることはできないが、きっとある程度の最悪な快楽を与えてやっているはずだと直感する。
なぜなら、この男は自分の状況をまだ受け入れようとしていないからだ。そういった人間ほど恥辱の感情が膨れ上がり脳と身体をしっかりと犯され、とんでもない淫乱に化けやすい。早くこの男の脳の感性を破壊してやりたいが、今のような中途半端に理性がある状態が1番そそるのも確かだった。
霧野はゆっくりと口を靴の表面から離した。舌が白い糸を引いて真っ黒な革靴とつながっており、見た目にはもう白い液体はなかった。自分の息がかかった箇所が結露のように一瞬白くなっては元に戻る。頭の奥の方がキリキリ痛む。
「まだ汚いな。」
「……きれいにしました」
「汚いな。」
「……」
再度靴の上に舌を這わせていくと、最早何も考えられなくなる。口内にイキり勃った誰かのペニスをおさめるときのように必死になってそれを舐めた。もう何の味もしない。
上がる息や紅潮した顔が見ている人間を喜ばせる。
それだけのための無意味な作業。自分を人間と思うな。
考えると発狂すると本能がやっと理解してくれたようだ。また何か心の奥底で何か折れるような音を聞いた。
どれくらい長い間それを続けさせられたのか覚えていない。実際の時間はおそらく短かっただろうが、体感時間としては異常なほど長い時間であった。気が付くと腕を二条に掴まれて車の前まで戻っていた。
腕の痛みのおかげで意識がはっきりと戻ってくる。痣になりそうなほど強く、あの中年男の握り方がいかに優しいものだったか思い出された。
掴まれていないほうの手で口元をぬぐいながら車の窓に写っている自分の酷い顔を眺めていた。
掴まれていた腕が離され、上から声が降ってきた。
「警察を呼ぶためにお前ならやるかと半分くらい思って見守っていたが、なんだアレは。下手だなお前。あんなの初手でいきなり骨を折るくらいの気概で殴るくらいしないとだめだ。甘いんだよな。」
突然二条がまるで友達のようなフランクさで話しかけてきたので、記憶が若干飛んでいるがきっと満足してくれたのだろうと思いながら彼の胸元あたりを見ながら返事をした。とても顔を直視できる気分ではなかった。
「……だって、カタギですよ」
「お前さあ……」
いつから窓が開いていたのか知らないが美里が運転席からこちらを見上げていた。
彼は何か言いかけたが、気まずそうな顔をして顔を引っ込めた。
後部座席のドアが開き、中に乗り込むと、川名が珍しくバツの悪そうな顔しているのが印象的だった。
「お前帰ったらわかってるな。」
「……なんですか?」
「なんですか?……なめてるのか?そのなめた態度の分も加算していたぶってやる。」
美里が川名の方を振り返って右手を出した。
「川名さんと似鳥さんは俺と二条さんに一万円ずつですよ。似鳥さんからはさっきもらったんで、くれません?」
それから、ゆっくりと視線を霧野の方に向け目だけで軽く微笑んだ。
「俺と二条さんはお前が店員にいちゃもんつけて騒ぎを起こして警察呼ばせようとする方に一万円かけてたんだよ。やっぱり俺がお前のことを一番理解できてるよね。」
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