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第2部 アリス・ボークラール
幕間(メアリー)
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私の目の前で、かつて共に手を組んで、漫画の作画を担当してくれた彼女、姿形は彼女が描いたこの世界に合わせて変わってしまっているけれど、が煩悶している。
私の言葉、私はこの世界でのあなたの命の恩人でしょ、というのに反論のしようが無いのだ。
とはいえ。
私も、内心で煩悶せざるを得なかった。
本当に、何でここまで原作とかけ離れた世界で、共に生きているのだろう。
そもそも、私がチャールズに一目ぼれして、結婚しようと考えなければ。
いや、チャールズとアンの最初の密会の阻止に、私が成功していれば。
だけど、実際には。
結果的には、原作世界と異なり、半ば以上は自業自得といえるだろうが、私とチャールズが幸せな新婚家庭を築いたことに、アンが嫉妬して、自分からチャールズを誘惑したことから、私の逆鱗に触れ、破滅の路を歩んだ。
更に、原作では起きなかった(いや、描写できなかったというべきか)「帝都大乱」が、この世界では起きてしまったが、その勃発を煽ったのが、私なのは間違いない。
その結果、ジェームズ元皇帝は、私の眼前で自裁することになったのだ。
そして。
本来は、ある意味、原作のモブキャラに過ぎなかったアリス・ボークラール、彼女のキャラは。
原作通りの時が流れれば、ある意味平凡な、単なる宮中女官に過ぎなかったのに。
父親は「帝都大乱」の際の事実上の帝室軍の現場最高指揮官として、戦った末に自裁した。
更に、母と姉をその余波で失い、孤児院で育つ羽目になった。
この世界での半ば成人といえる15歳になってからは、原作と異なり、キャロライン皇貴妃の私的侍女となって、その後の宮中生活の中で、エドワード大公世子の心を掴み、事実上の大公世子妃殿下の地位を掴む、というこれまででも充分に波乱万丈と言える人生を、これまでに送ることになったのだ。
いや、彼女だけではない。
私も含めて、原作と様変わりした人生を、この世界では送っている人は多い。
私は、原作では既に狂死している。
他にも。
例えば、今は修道院に入られたキャサリン皇女。
彼女は、原作では私の代わりにチャールズの第一夫人として輝いていた。
それなのに、この世界では、エドワードと不幸な結婚をして、修道院に入ってしまわれたのだ。
そして。
キャロラインとエドワードの姉弟関係も、様変わりしている。
原作では、お互いに実の姉弟とは思いも寄らず、最終的には敵対関係にまで陥ったが。
この世界では、お互いに少し真実とはズレているが、相手を血のつながった姉弟と推察し、お互いに姉弟として深く愛し合っている。
本当に血縁という枷が無かったら、そして、共に理性的でなければ、二人は肉体関係までも持ってしまうのではないだろうか。
そう、ふと私は想った。
そういえば。
「キャロラインとエドワードは密通している」
そう、崩御されたジョン皇帝陛下も、キャサリン皇女も訴えられたことがある。
そんなことは流石に無い、と周囲はほぼ信じなかったが、そこまで仲の良い男女関係に傍からは見えるのだ。
そう、私が想いを巡らせていると。
彼女は、ようやく想いを前へ進めだしたようだ。
「ところで、私は子どもが産めるのかしら。あなたはどうしたの」
彼女の問いかけに、私は内心で苦笑した。
彼女の身体は、どうだったろうか。
子どもが産める身体なのだろうか。
かつて、私はこの世界の創造主といえたが、今やただの人間だ。
創造主、私が原作者だった頃、彼女については、どう設定をしただろう。
「覚えていないわね。でも、二次創作では、あなた、確か子どもを産んでいて、どちらの男の子か、分からずに悩む話があった筈だけど」
「そういえば、あったわね」
私の答えに、彼女は思わず遠くを見ていた。
私の言葉、私はこの世界でのあなたの命の恩人でしょ、というのに反論のしようが無いのだ。
とはいえ。
私も、内心で煩悶せざるを得なかった。
本当に、何でここまで原作とかけ離れた世界で、共に生きているのだろう。
そもそも、私がチャールズに一目ぼれして、結婚しようと考えなければ。
いや、チャールズとアンの最初の密会の阻止に、私が成功していれば。
だけど、実際には。
結果的には、原作世界と異なり、半ば以上は自業自得といえるだろうが、私とチャールズが幸せな新婚家庭を築いたことに、アンが嫉妬して、自分からチャールズを誘惑したことから、私の逆鱗に触れ、破滅の路を歩んだ。
更に、原作では起きなかった(いや、描写できなかったというべきか)「帝都大乱」が、この世界では起きてしまったが、その勃発を煽ったのが、私なのは間違いない。
その結果、ジェームズ元皇帝は、私の眼前で自裁することになったのだ。
そして。
本来は、ある意味、原作のモブキャラに過ぎなかったアリス・ボークラール、彼女のキャラは。
原作通りの時が流れれば、ある意味平凡な、単なる宮中女官に過ぎなかったのに。
父親は「帝都大乱」の際の事実上の帝室軍の現場最高指揮官として、戦った末に自裁した。
更に、母と姉をその余波で失い、孤児院で育つ羽目になった。
この世界での半ば成人といえる15歳になってからは、原作と異なり、キャロライン皇貴妃の私的侍女となって、その後の宮中生活の中で、エドワード大公世子の心を掴み、事実上の大公世子妃殿下の地位を掴む、というこれまででも充分に波乱万丈と言える人生を、これまでに送ることになったのだ。
いや、彼女だけではない。
私も含めて、原作と様変わりした人生を、この世界では送っている人は多い。
私は、原作では既に狂死している。
他にも。
例えば、今は修道院に入られたキャサリン皇女。
彼女は、原作では私の代わりにチャールズの第一夫人として輝いていた。
それなのに、この世界では、エドワードと不幸な結婚をして、修道院に入ってしまわれたのだ。
そして。
キャロラインとエドワードの姉弟関係も、様変わりしている。
原作では、お互いに実の姉弟とは思いも寄らず、最終的には敵対関係にまで陥ったが。
この世界では、お互いに少し真実とはズレているが、相手を血のつながった姉弟と推察し、お互いに姉弟として深く愛し合っている。
本当に血縁という枷が無かったら、そして、共に理性的でなければ、二人は肉体関係までも持ってしまうのではないだろうか。
そう、ふと私は想った。
そういえば。
「キャロラインとエドワードは密通している」
そう、崩御されたジョン皇帝陛下も、キャサリン皇女も訴えられたことがある。
そんなことは流石に無い、と周囲はほぼ信じなかったが、そこまで仲の良い男女関係に傍からは見えるのだ。
そう、私が想いを巡らせていると。
彼女は、ようやく想いを前へ進めだしたようだ。
「ところで、私は子どもが産めるのかしら。あなたはどうしたの」
彼女の問いかけに、私は内心で苦笑した。
彼女の身体は、どうだったろうか。
子どもが産める身体なのだろうか。
かつて、私はこの世界の創造主といえたが、今やただの人間だ。
創造主、私が原作者だった頃、彼女については、どう設定をしただろう。
「覚えていないわね。でも、二次創作では、あなた、確か子どもを産んでいて、どちらの男の子か、分からずに悩む話があった筈だけど」
「そういえば、あったわね」
私の答えに、彼女は思わず遠くを見ていた。
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