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第1部 メアリー・グレヴィル

第12話

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 私とチャールズの結婚式の日が来た。
 何といっても、大公世子の結婚式だ。
 それなりどころではない話になってしまう。

 私達の結婚式を司るのは、枢機卿がされることになった。
 更に私達の結婚式と披露宴の警護に、騎士20騎(それに従者が約80人)が当たることになる。
 原作設定を、そこまで厳密にやっていなかった私にしてみれば、正直少し驚く羽目になったのだが。
 きっちり警護に当たる騎士は、マイトラント一族から選び抜かれていた。
 大公世子の結婚式の警護は、マイトラント家が当たるということか。

 これは、意外と難しい話になったのかも。
 と、私は内心の片隅で想った。
 もし、あの(プロローグ)時の会話通りに、作画家の彼女も転生してきているなら、彼女は、アリス・ボークラールとして転生してくるはずだ。

 ボークラール家は、「帝室の剣」と謳われる帝室寄りの大軍事貴族だ。
 一方、私は大公世子のチャールズと結婚したことで、大公家寄りの大軍事貴族のマイトラント家に警護される立場になってしまった。
 そして、帝室と大公家は、荘園整理問題等から徐々に対立が生じている。
 つまり、ボークラール家にしてみれば、私(とその父)は帝室の裏切り者とみなされても仕方ない立場なのだ。
 先読みし過ぎかもしれないが、私と作画家の彼女が共に幸せになれるのか、私は急に不安になった。

 そんな私の内心で結婚式と披露宴が取りやめになる筈もなく、結婚式と披露宴が執り行われていく。
 この世界の結婚式では、新郎新婦の介添え役を務めるのは、本来は同性の最も濃い身内が務めるものだ。
 だから、チャールズには叔父のヘンリー大公が、私には妹のアンが、それぞれ本来は務めるのだが。
 アンは半病人状態のため、女性の司祭が代わりに務めてくれた。

 チャールズは、そのことを聞いて、アンのことを心配してくれたが。
 私は内心で想った。
 披露宴の席での二人の顔合わせ、原作通りの事態が起きねば良いが。
 
 そんな私の想いに関わりなく、私とチャールズの結婚の誓言は終わる。
 アンにチャールズへの想いを断ち切らせないと。
 また、チャールズにも未練を持たせないようにしないと、と私はそう考えた。
 それにしても。

 私の横に寄り添う18歳のチャールズは、本当に美少年から美青年といってよい姿になっていた。
 私達が逢わなかった6年間で、ここまで成長するとは。
 原作通りの姿といっていい。
 私は、どうか捨てられませんように、と心から願った。
 そして、結婚式は終わり、私達の新居での披露宴に移った。
 新居といっても、私が父や妹と住んでいた家だ。
 
 原作でもそうだったが、結婚式後、私の父は北山の別荘に隠棲し、アンは離れに移り、私とチャールズが母屋に同居することになっている。
(貴族の邸宅なので、アンの住むのは離れと言っても、数部屋ある立派な家だ)
 そして、母屋のパーティー用の広間にて、私達の披露宴が始まった。

 そろそろ来るわね。
 私は覚悟を固めた。
 チャールズとアン、二人が逢った時の態度で、私の推測、原作通りの事が起こっているのか、それが分かる。

 アンが披露宴の場に現れ、チャールズと目を合わせた瞬間。
 アンは失神した。
 チャールズも顔色を急変させた。
 原作通りだ。
 ということは。

 私は、アンの手当をするように指図を下しながら、改めて思った。
 やはり、二人は関係を持っていた。
 しかも、アンは妊娠していて、キャロラインが産まれてくる可能性が高い。
 最悪の結果が分かっていたのに、私は阻止できなかった。

 しかし、問題はこれからが本番ともいえる。
 私が幸せになり、アンも幸せになれる路。
 それが、どんなに細い一本路でも私は見つけて、それを姉妹で、夫婦で通らねば。
 私は、そう内心で固く決意した。 
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