46 / 120
第4章 西南戦争の勃発
第11話
しおりを挟む
「嘆いていても始まりません。対策を考えましょう」
荒井郁之助局長と、補給担当の責任者との会話の場に同席していた大鳥圭介が発言した。
「幸いなことにシャスポー銃はフランス陸軍の制式小銃でもあります。
至急、フランス本国や植民地からの銃弾の輸入を行う必要があると考えます。
後は生産設備の拡張ですが、横須賀造船所にその余裕はあるでしょうか」
大鳥の発言を聞いて、荒井も多少は頭が冷えて来た。
「まずは、どの程度、銃弾が必要になると見積もられるかな。
大鳥の見解を聞きたい。」
荒井は、新設の海兵旅団長に就任予定の大鳥の意見を、まずは聞くことにした。
「実査に戦場に赴く身としては、日産3万発は最低でも欲しいところです。
なぜなら、海兵旅団の兵員数は約3000名余りです。
1人1日10発は、最低でも安心して撃てるくらいは必要と考えます」
荒井の問いに、大鳥が答えた。
「横須賀造船所の生産設備の拡張ですか。
海軍省本体はいい顔をしない、と考えます。
まず、多額の予算が必要になります。
しかも、シャスポー銃は既に後継銃を検討せねばならない段階に達しつつある銃でもあります。
幾ら戦時中とはいえ、そのような銃の銃弾の生産設備の拡張というのは、予算面からいうと無駄遣いと海軍省本体から言われても仕方がありません。
それに横須賀造船所はその名のとおり、造船を主に考えている施設です。
銃弾の生産設備のために更に土地が欲しいと言っても、その余裕はないと言われると考えます。
かといって銃弾の生産設備のための工場を新たに作るとなると、土地の確保等も必要になってきます。
それにシャスポー銃は陸軍は採用しておらず、事実上は、海兵隊の専用銃です。
そういった点からも生産設備の拡張は望み薄です」
補給担当の責任者が、丁寧に事情を説明した。
この言葉を聞いた荒井は、簡潔に自らの理解を要約した。
「シャスポー銃の銃弾生産設備拡張の金があるなら、そのための金を、フランス本国等からの銃弾購入に回した方がいい、と海軍省本体には言われるだろうし、実際問題として、その方が合理的な判断で、シャスポー銃の銃弾生産設備拡張は非現実的ということか」
「はい。ほぼ間違いなく」
補給担当の責任者は、荒井の言葉を肯定した。
「となると、フランス本国等からの銃弾の輸入を至急図るしかないか。
日産1万発なら、何とか可能ということだから、1月に製造可能な銃弾は約30万発にはなるが。
その一方で、1月に必要な銃弾は約90万発だ。
逆算すると、不足分として月に最低60万発の銃弾の輸入が必要だ。
膨大な数の銃弾を輸入せんとならんぞ」
荒井は、自らそう言いながら、自分の頭痛が酷くなるのを覚えていた。
荒井の気持ちを変えようと、大鳥が口を挟んだ。
「それにしても、海兵隊全部を動員した場合に、約10日しか戦えないくらいの銃弾しか、海兵隊が予め備蓄していなかったというのは問題ですね。
今後は、平時の備蓄量を増やしておく必要がありますね」
「それは今後の課題だ。
動員が完了して銃弾を充分に確保してとなると、海兵隊が前線に赴けるのは、2月以上先になる可能性が高い。
それは政治的な事情が許さないだろう。
ある程度は、大隊単位での前線投入を考えざるを得ないと考えるが、大鳥はどう考える」
大鳥の言葉を聞いて、気持ちを切り替えた荒井が言った。
「私も同感ですな。
大隊単位で前線に投入というのは兵力の逐次投入で、兵法上は愚策ですが、政治的にはやむを得ないかと。
それに兵力輸送面の問題も、意外と大きいと私は考えます」
「次から次と問題が続出するな。問題は、そろそろ終わりにしてほしいが」
大鳥の返答を聞いて、荒井は自嘲せざるを得なかった。
荒井郁之助局長と、補給担当の責任者との会話の場に同席していた大鳥圭介が発言した。
「幸いなことにシャスポー銃はフランス陸軍の制式小銃でもあります。
至急、フランス本国や植民地からの銃弾の輸入を行う必要があると考えます。
後は生産設備の拡張ですが、横須賀造船所にその余裕はあるでしょうか」
大鳥の発言を聞いて、荒井も多少は頭が冷えて来た。
「まずは、どの程度、銃弾が必要になると見積もられるかな。
大鳥の見解を聞きたい。」
荒井は、新設の海兵旅団長に就任予定の大鳥の意見を、まずは聞くことにした。
「実査に戦場に赴く身としては、日産3万発は最低でも欲しいところです。
なぜなら、海兵旅団の兵員数は約3000名余りです。
1人1日10発は、最低でも安心して撃てるくらいは必要と考えます」
荒井の問いに、大鳥が答えた。
「横須賀造船所の生産設備の拡張ですか。
海軍省本体はいい顔をしない、と考えます。
まず、多額の予算が必要になります。
しかも、シャスポー銃は既に後継銃を検討せねばならない段階に達しつつある銃でもあります。
幾ら戦時中とはいえ、そのような銃の銃弾の生産設備の拡張というのは、予算面からいうと無駄遣いと海軍省本体から言われても仕方がありません。
それに横須賀造船所はその名のとおり、造船を主に考えている施設です。
銃弾の生産設備のために更に土地が欲しいと言っても、その余裕はないと言われると考えます。
かといって銃弾の生産設備のための工場を新たに作るとなると、土地の確保等も必要になってきます。
それにシャスポー銃は陸軍は採用しておらず、事実上は、海兵隊の専用銃です。
そういった点からも生産設備の拡張は望み薄です」
補給担当の責任者が、丁寧に事情を説明した。
この言葉を聞いた荒井は、簡潔に自らの理解を要約した。
「シャスポー銃の銃弾生産設備拡張の金があるなら、そのための金を、フランス本国等からの銃弾購入に回した方がいい、と海軍省本体には言われるだろうし、実際問題として、その方が合理的な判断で、シャスポー銃の銃弾生産設備拡張は非現実的ということか」
「はい。ほぼ間違いなく」
補給担当の責任者は、荒井の言葉を肯定した。
「となると、フランス本国等からの銃弾の輸入を至急図るしかないか。
日産1万発なら、何とか可能ということだから、1月に製造可能な銃弾は約30万発にはなるが。
その一方で、1月に必要な銃弾は約90万発だ。
逆算すると、不足分として月に最低60万発の銃弾の輸入が必要だ。
膨大な数の銃弾を輸入せんとならんぞ」
荒井は、自らそう言いながら、自分の頭痛が酷くなるのを覚えていた。
荒井の気持ちを変えようと、大鳥が口を挟んだ。
「それにしても、海兵隊全部を動員した場合に、約10日しか戦えないくらいの銃弾しか、海兵隊が予め備蓄していなかったというのは問題ですね。
今後は、平時の備蓄量を増やしておく必要がありますね」
「それは今後の課題だ。
動員が完了して銃弾を充分に確保してとなると、海兵隊が前線に赴けるのは、2月以上先になる可能性が高い。
それは政治的な事情が許さないだろう。
ある程度は、大隊単位での前線投入を考えざるを得ないと考えるが、大鳥はどう考える」
大鳥の言葉を聞いて、気持ちを切り替えた荒井が言った。
「私も同感ですな。
大隊単位で前線に投入というのは兵力の逐次投入で、兵法上は愚策ですが、政治的にはやむを得ないかと。
それに兵力輸送面の問題も、意外と大きいと私は考えます」
「次から次と問題が続出するな。問題は、そろそろ終わりにしてほしいが」
大鳥の返答を聞いて、荒井は自嘲せざるを得なかった。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/history.png?id=c54a38c2a36c3510c993)
【完結】風天の虎 ――車丹波、北の関ヶ原
糸冬
歴史・時代
車丹波守斯忠。「猛虎」の諱で知られる戦国武将である。
慶長五年(一六〇〇年)二月、徳川家康が上杉征伐に向けて策動する中、斯忠は反徳川派の急先鋒として、主君・佐竹義宣から追放の憂き目に遭う。
しかし一念発起した斯忠は、異母弟にして養子の車善七郎と共に数百の手勢を集めて会津に乗り込み、上杉家の筆頭家老・直江兼続が指揮する「組外衆」に加わり働くことになる。
目指すは徳川家康の首級ただ一つ。
しかし、その思いとは裏腹に、最初に与えられた役目は神指城の普請場での土運びであった……。
その名と生き様から、「国民的映画の主人公のモデル」とも噂される男が身を投じた、「もう一つの関ヶ原」の物語。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
1333
干支ピリカ
歴史・時代
鎌倉幕府末期のエンターテイメントです。
(現在の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』から、100年ちょい後の話です)
鎌倉や京都が舞台となります。心躍る激しい合戦や、ぞくぞくするようなオドロオドロしい話を目指そうと思いましたが、結局政治や謀略の話が多くなりました。
主役は足利尊氏の弟、直義です。エキセントリックな兄と、サイケデリックな執事に振り回される、苦労性のイケメンです。
ご興味を持たれた方は是非どうぞ!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/history.png?id=c54a38c2a36c3510c993)
世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記
颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。
ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。
また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。
その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。
この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。
またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。
この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず…
大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。
【重要】
不定期更新。超絶不定期更新です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/history.png?id=c54a38c2a36c3510c993)
【架空戦記】蒲生の忠
糸冬
歴史・時代
天正十年六月二日、本能寺にて織田信長、死す――。
明智光秀は、腹心の明智秀満の進言を受けて決起当初の腹案を変更し、ごく少勢による奇襲により信長の命を狙う策を敢行する。
その結果、本能寺の信長、そして妙覚寺の織田信忠は、抵抗の暇もなく首級を挙げられる。
両名の首級を四条河原にさらした光秀は、織田政権の崩壊を満天下に明らかとし、畿内にて急速に地歩を固めていく。
一方、近江国日野の所領にいた蒲生賦秀(のちの氏郷)は、信長の悲報を知るや、亡き信長の家族を伊勢国松ヶ島城の織田信雄の元に送り届けるべく安土城に迎えに走る。
だが、瀬田の唐橋を無傷で確保した明智秀満の軍勢が安土城に急速に迫ったため、女子供を連れての逃避行は不可能となる。
かくなる上は、戦うより他に道はなし。
信長の遺した安土城を舞台に、若き闘将・蒲生賦秀の活躍が始まる。
織田信長IF… 天下統一再び!!
華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。
この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。
主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。
※この物語はフィクションです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/history.png?id=c54a38c2a36c3510c993)
日本が危機に?第二次日露戦争
杏
歴史・時代
2023年2月24日ロシアのウクライナ侵攻の開始から一年たった。その日ロシアの極東地域で大きな動きがあった。それはロシア海軍太平洋艦隊が黒海艦隊の援助のために主力を引き連れてウラジオストクを離れた。それと同時に日本とアメリカを牽制する為にロシアは3つの種類の新しい極超音速ミサイルの発射実験を行った。そこで事故が起きた。それはこの事故によって発生した戦争の物語である。ただし3発も間違えた方向に飛ぶのは故意だと思われた。実際には事故だったがそもそも飛ばす場所をセッティングした将校は日本に向けて飛ばすようにセッティングをわざとしていた。これは太平洋艦隊の司令官の命令だ。司令官は黒海艦隊を支援するのが不服でこれを企んだのだ。ただ実際に戦争をするとは考えていなかったし過激な思想を持っていた為普通に海の上を進んでいた。
なろう、カクヨムでも連載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/history.png?id=c54a38c2a36c3510c993)
大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる