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第5話
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その日の夜、メイジーは夢を見ていた。
夢の世界に降り立ったメイジーは、何故かロードナイト邸のドアの前に立っている。
何気なく天を仰いでみると、その寒々しい灰色の空には雪が舞っていた。
雪が降っているということは、季節は冬なのだろうか。
(どうして、私は屋敷の前に立っているんだろう……?)
メイジーがそんなことを考えていると、不意に足元から「おぎゃあ、おぎゃあ」と元気のいい泣き声が聞こえてきた。
驚いて視線を落とすと、そこには大きめのバスケットが置いてあり、中に毛布に包まれた赤ん坊が入っていた。
よく見てみれば、赤ん坊の足元に「事情があって子供を育てられないので引き取ってください」という趣旨の手紙が添えられている。
筆者はこの子の母親のようだ。母親の話によれば、ちょうど一週間前に生まれたばかりの新生児らしい。
(大変。こんなところに赤ちゃんが置き去りにされているわ。早く保護しないと……)
そう思い、慌てて赤ん坊を抱き上げようとした矢先。ギィッと音を立てて目の前のドアが開いた。
中から顔を覗かせたのは、昔雇っていたメイドの一人。どうやら、メイジーの姿はあちらには見えていないらしい。
今はもう使用人は長年ロードナイト家に仕えている執事一人だけしか残っていないため、彼女の顔を見たメイジーは何だか懐かしい気持ちになる。
メイドは一瞬驚いたものの、すぐに赤ん坊のほうに駆け寄った。
そして、そのバスケットを慎重そうに抱えると、ドアを閉めて屋敷の中に戻っていった。
気づけば、いつの間にか場面が切り替わっていた。
つい先ほどまで屋敷の前に置き去りにされていた赤ん坊を、若き日の母が抱いている。その隣には同じく若き日の父がいて、愛おしそうに赤ん坊を見つめていた。
(これって、もしかして……捨て子だったカイルが拾われた日の記憶……?)
そこまで考えて、ふとメイジーは違和感に気付く。
カイルが生まれたての赤ん坊ということは、自分だってまだ一歳くらいだろう。だから、カイルが拾われた日のことをこんなに鮮明に覚えているはずがないのに。
何故この光景を覚えているのかは定かではないけれど、夢はまだまだ続くようだ。
カイルに自分の母乳を与え終わった母はベッドのほうに歩いていくと、可愛らしい子供服を身に纏った女児の隣に彼を寝かせた。
(あの子は……小さい頃の私……?)
メイジーと思しきその女児は隣に寝かされたカイルに興味を示したのか、きゃっきゃっと笑いながら両手で彼の小さな手を握り始めた。
それに応えるように、赤ん坊のカイルがメイジーの手を握り返す。
(そっか……私たち、この頃から仲が良かったのね)
メイジーが感慨深く思っていると、夢はそこで途切れた。
夢の世界に降り立ったメイジーは、何故かロードナイト邸のドアの前に立っている。
何気なく天を仰いでみると、その寒々しい灰色の空には雪が舞っていた。
雪が降っているということは、季節は冬なのだろうか。
(どうして、私は屋敷の前に立っているんだろう……?)
メイジーがそんなことを考えていると、不意に足元から「おぎゃあ、おぎゃあ」と元気のいい泣き声が聞こえてきた。
驚いて視線を落とすと、そこには大きめのバスケットが置いてあり、中に毛布に包まれた赤ん坊が入っていた。
よく見てみれば、赤ん坊の足元に「事情があって子供を育てられないので引き取ってください」という趣旨の手紙が添えられている。
筆者はこの子の母親のようだ。母親の話によれば、ちょうど一週間前に生まれたばかりの新生児らしい。
(大変。こんなところに赤ちゃんが置き去りにされているわ。早く保護しないと……)
そう思い、慌てて赤ん坊を抱き上げようとした矢先。ギィッと音を立てて目の前のドアが開いた。
中から顔を覗かせたのは、昔雇っていたメイドの一人。どうやら、メイジーの姿はあちらには見えていないらしい。
今はもう使用人は長年ロードナイト家に仕えている執事一人だけしか残っていないため、彼女の顔を見たメイジーは何だか懐かしい気持ちになる。
メイドは一瞬驚いたものの、すぐに赤ん坊のほうに駆け寄った。
そして、そのバスケットを慎重そうに抱えると、ドアを閉めて屋敷の中に戻っていった。
気づけば、いつの間にか場面が切り替わっていた。
つい先ほどまで屋敷の前に置き去りにされていた赤ん坊を、若き日の母が抱いている。その隣には同じく若き日の父がいて、愛おしそうに赤ん坊を見つめていた。
(これって、もしかして……捨て子だったカイルが拾われた日の記憶……?)
そこまで考えて、ふとメイジーは違和感に気付く。
カイルが生まれたての赤ん坊ということは、自分だってまだ一歳くらいだろう。だから、カイルが拾われた日のことをこんなに鮮明に覚えているはずがないのに。
何故この光景を覚えているのかは定かではないけれど、夢はまだまだ続くようだ。
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(そっか……私たち、この頃から仲が良かったのね)
メイジーが感慨深く思っていると、夢はそこで途切れた。
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