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プロローグ 記憶の欠片
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「もし明日、世界が滅びるとしたら、どうする?」
小学生の頃の記憶なんて今の僕にはほとんど残っていないけど、唯一鮮明に思い出せる記憶と言えば、当時好きだった霧子さんと交わした会話だった。
「急にどうしたの? 今、霧子さんの将来の夢を聞いたんだけど……」
場所は小学校の裏山。当時の僕たちは割と仲良しで、彼女が家に帰りたくないという時、たまにこの場所で時間を潰していた。彼女が切り株に腰を掛け、僕は木にもたれる形で。
「ふと気になった。いいから教えて、成瀬くん」
ちなみに霧子さんは、超かわいかった。そんな霧子さんが、僕に意味深な問いかけをしてきた。これは僕にとって重要な問題だった。だから僕は、彼女の気を引こうと、こう答えた。
「世界の終わりか。……なら、好きな人だけは守る、かな」
冷たい風がひゅうと吹き抜け、僕は『決まったな!』と無邪気に思ったが──。
「ぷっ──あはっ、あはははっ!」
霧子さんは笑い転げた。僕は笑った意図が分からず、かなり焦った。
体に何かついていないか冷静を装い見回してみると、霧子さんは「ちがうちがう!」と悶えながら手を横に振るので更に焦る。痺れを切らし「どうしたの?」と問うた。
「いや、カッコいいなって思って。甘酸っぱい臭さで」
「……褒められてる気しないけど」
「まぁまぁ。良い感性だと思う。詩人とか向いてると思うよ」
最後の最後まで褒められてる気はしなかった。
何はともあれ、次の日、長年来ると言われていた巨大地震が日本を襲った。
僕は大怪我をして、両親と妹は家の下敷きになり、僕は叔母さんに引き取られた。
霧子さんはこの地震を予言していたんだ、と思った。それ以外に有り得なかった。
だけど、それを聞こうとした頃には、すでに彼女は転校をしていた。
だから時折、霧子さんのあの質問が蘇ってくる。
彼女は何を知っていたのか。なぜ僕にあんな質問をしたのか。
でもようやく気付いた。彼女は知っていたんだ。
巨大地震が日本を襲うことも。
隕石が沖縄に落ちることも。
世界が終わりを迎えることも。
そして僕が、世界を救うべく兵器に改造されてしまうことも、全て。
小学生の頃の記憶なんて今の僕にはほとんど残っていないけど、唯一鮮明に思い出せる記憶と言えば、当時好きだった霧子さんと交わした会話だった。
「急にどうしたの? 今、霧子さんの将来の夢を聞いたんだけど……」
場所は小学校の裏山。当時の僕たちは割と仲良しで、彼女が家に帰りたくないという時、たまにこの場所で時間を潰していた。彼女が切り株に腰を掛け、僕は木にもたれる形で。
「ふと気になった。いいから教えて、成瀬くん」
ちなみに霧子さんは、超かわいかった。そんな霧子さんが、僕に意味深な問いかけをしてきた。これは僕にとって重要な問題だった。だから僕は、彼女の気を引こうと、こう答えた。
「世界の終わりか。……なら、好きな人だけは守る、かな」
冷たい風がひゅうと吹き抜け、僕は『決まったな!』と無邪気に思ったが──。
「ぷっ──あはっ、あはははっ!」
霧子さんは笑い転げた。僕は笑った意図が分からず、かなり焦った。
体に何かついていないか冷静を装い見回してみると、霧子さんは「ちがうちがう!」と悶えながら手を横に振るので更に焦る。痺れを切らし「どうしたの?」と問うた。
「いや、カッコいいなって思って。甘酸っぱい臭さで」
「……褒められてる気しないけど」
「まぁまぁ。良い感性だと思う。詩人とか向いてると思うよ」
最後の最後まで褒められてる気はしなかった。
何はともあれ、次の日、長年来ると言われていた巨大地震が日本を襲った。
僕は大怪我をして、両親と妹は家の下敷きになり、僕は叔母さんに引き取られた。
霧子さんはこの地震を予言していたんだ、と思った。それ以外に有り得なかった。
だけど、それを聞こうとした頃には、すでに彼女は転校をしていた。
だから時折、霧子さんのあの質問が蘇ってくる。
彼女は何を知っていたのか。なぜ僕にあんな質問をしたのか。
でもようやく気付いた。彼女は知っていたんだ。
巨大地震が日本を襲うことも。
隕石が沖縄に落ちることも。
世界が終わりを迎えることも。
そして僕が、世界を救うべく兵器に改造されてしまうことも、全て。
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