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第1章 転生幼女は防御特化を試みる
第7話 対談
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引きこもりキャンセルをされた私は今、父さんの部屋の前にいた。
既にここに辿り着いてから五分経過しているが、私はまだ部屋に入れそうにない。
なぜなら、父さんと話すことですら緊張してしまっているからだ。
最後にまともに父さんと会話したのがいつか、それさえも思い出せない。
それに今回私が呼ばれのは、おそらく鑑定結果についてだ。
私の鑑定結果について何を言われるか、分かったものじゃない。
けれど、いずれこのドアの先に行かなければならないのもまた事実。
「ふぅ……よし」
私は意を決し、その大きな扉をノックした。
「入れ」
ドアの先から聞こえた、父さんの低い声。
恐る恐ると中を覗けば、父さんは奥の机に腰を下ろしていた。
久しぶりに見た父さんは、なんだかやけにやつれているような気がした。
「と、父さん。えっと──」
要件を問おうとすると、父さんは私の言葉に割って入り、淡々と口にした。
「父上だ。私のことは、父上と呼びなさい。アリエはもう、七歳なんだぞ」
「は、はい。父上。えと、なんの御用でしょうか……」
失念していた。
これは前から言われていたことだった。
父さんは、母さんが亡くなってからというもの少し私に厳しくなっている。
私は肩をすくめながら、父さんの次の言葉を待った。
「今回私が、アリエのスキル鑑定を依頼した理由は分かるか?」
「……えと。すみません、わかりません……」
「今回の鑑定は、自身の才能を理解し、それを活用して欲しいがための鑑定だ」
父さんのその言葉の意味を、私は数秒遅れで理解する。
つまるところ、引きこもらないで世のためになることをしろ、ということだろう。
「聞いたところによると、アリエはマルチスキルらしいじゃないか」
「はい。……でも、私のスキルはどれも、それほど有用なものでは──」
「それでもだ。マルチスキルは素晴らしい才能であるのは間違い無いだろう。だから──」
父さんは一旦言葉を切り、溜息と共に口にした。
「そろそろ。部屋を出てみる気にはならないか?」
……やはり。そういうことらしい。
確かに父さんとしては、我が子が引きこもりっぱなしというのは嫌なのだろう。
それに私の家は、貴族であるサランの家系なのだ。
しかも娘が私一人しかいないサラン家にとって、私は一家の恥でしかない。
分かる。そんなこと、分かっている。
「アリエはもう、大人にならなければならない」
「…………はい」
重々しく頷く。と、しばらく部屋には沈黙が流れた。
父さんは考える素振りをみせると、真剣な表情で告げる。
「アリエには私の弟子と模擬戦をして貰おう」
「は? え? わ、私が? と──父上の弟子と?」
思わず間抜けな声が飛び出した。
だって、父さんの弟子は強い人ばかりだ。
そんな人と今から模擬戦、なんて。
私には正直、できる気がしない。
「アリエの才能は、戦闘でこそ覚醒する。騙されたと思え。模擬戦はこの一回きりにする」
だが、父さんはきっぱりと告げた。
私の引きこもり生活が、段々と遠のいていく。
既にここに辿り着いてから五分経過しているが、私はまだ部屋に入れそうにない。
なぜなら、父さんと話すことですら緊張してしまっているからだ。
最後にまともに父さんと会話したのがいつか、それさえも思い出せない。
それに今回私が呼ばれのは、おそらく鑑定結果についてだ。
私の鑑定結果について何を言われるか、分かったものじゃない。
けれど、いずれこのドアの先に行かなければならないのもまた事実。
「ふぅ……よし」
私は意を決し、その大きな扉をノックした。
「入れ」
ドアの先から聞こえた、父さんの低い声。
恐る恐ると中を覗けば、父さんは奥の机に腰を下ろしていた。
久しぶりに見た父さんは、なんだかやけにやつれているような気がした。
「と、父さん。えっと──」
要件を問おうとすると、父さんは私の言葉に割って入り、淡々と口にした。
「父上だ。私のことは、父上と呼びなさい。アリエはもう、七歳なんだぞ」
「は、はい。父上。えと、なんの御用でしょうか……」
失念していた。
これは前から言われていたことだった。
父さんは、母さんが亡くなってからというもの少し私に厳しくなっている。
私は肩をすくめながら、父さんの次の言葉を待った。
「今回私が、アリエのスキル鑑定を依頼した理由は分かるか?」
「……えと。すみません、わかりません……」
「今回の鑑定は、自身の才能を理解し、それを活用して欲しいがための鑑定だ」
父さんのその言葉の意味を、私は数秒遅れで理解する。
つまるところ、引きこもらないで世のためになることをしろ、ということだろう。
「聞いたところによると、アリエはマルチスキルらしいじゃないか」
「はい。……でも、私のスキルはどれも、それほど有用なものでは──」
「それでもだ。マルチスキルは素晴らしい才能であるのは間違い無いだろう。だから──」
父さんは一旦言葉を切り、溜息と共に口にした。
「そろそろ。部屋を出てみる気にはならないか?」
……やはり。そういうことらしい。
確かに父さんとしては、我が子が引きこもりっぱなしというのは嫌なのだろう。
それに私の家は、貴族であるサランの家系なのだ。
しかも娘が私一人しかいないサラン家にとって、私は一家の恥でしかない。
分かる。そんなこと、分かっている。
「アリエはもう、大人にならなければならない」
「…………はい」
重々しく頷く。と、しばらく部屋には沈黙が流れた。
父さんは考える素振りをみせると、真剣な表情で告げる。
「アリエには私の弟子と模擬戦をして貰おう」
「は? え? わ、私が? と──父上の弟子と?」
思わず間抜けな声が飛び出した。
だって、父さんの弟子は強い人ばかりだ。
そんな人と今から模擬戦、なんて。
私には正直、できる気がしない。
「アリエの才能は、戦闘でこそ覚醒する。騙されたと思え。模擬戦はこの一回きりにする」
だが、父さんはきっぱりと告げた。
私の引きこもり生活が、段々と遠のいていく。
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