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プロローグ 私が引きこもりになったワケ

第4話 龍との戦闘

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「アリエ様! 今、外出するのは──!」

 すれ違う使用人をかいくぐる。
 長い階段を降りて、玄関の扉を勢いよく開いた。
 途端に鼻を衝くのは煙の匂い。奥の空を見れば、至る所から煙が立ち込めていた。

「母さん。母さん……!」

 雨に打たれながらも、私の足は止まらなかった。
 けれど、三歳の体は思うように動かせない。
 体力はすぐに限界を迎えて、私の足を動かす速度は次第に遅まり、やがて止まった。

「……母さん、どこにいるの」

 呼吸を整えながら、周囲を見る。その時──。

「ギャアアアアアア!!」

 ふと遠くから何かの叫び声が聞こえた。
 見れば、町の奥の方で飛龍が舞っている。
 飛龍なんて普通、こんな町には飛んでこない。
 けれど今は、そんなことはどうだっていい。
 母さんは、母さんは一体、どこに。

「──はぁ。はぁ」

 飛龍が見えた町の方まで。
 無理にでも足を前に運ぶ。前に、前に。
 そして路地裏に入ったところで、私は足をピタと止めた。

「あっ…………」

 路地裏の奥、小さな黒い影。
 それが地面に転がった、誰かの死体を貪っている。
 吐き気が込み上げ、思わず目を逸らす。だが、恐怖から足を動かない。
 そうしている間に、奥の小さな影が私の方を向いた。
 小さな龍のように見えるそいつの瞳がぎょろりと動く。

「────っ」

 私は腰を抜かした。
 龍が私を捉え、私に距離を詰める。
 死ぬ? そう思ったとき、私は母さんが私に持たせた魔法石の存在を思い出した。
 その中の一つ──光の魔法石を取り出すと、勢いに任せて前方に投げる。
 魔法石は龍に当たると、そのまま眩い輝き放った。

「ギャアア!」

 光に目を奪われた龍は動きを鈍らせる。
 だが、こんな小さな魔法石じゃ、ほとんど無駄だったようだ。
 龍は私が起き上がるよりも先に回復してみせた。
 そのまま金切り声にも似た声を出すと、口を大きく開き、喉奥に炎を宿してみせる。

「────」

 まずい。
 そう思うと同時に、龍の口から炎が吐かれた。
 私は咄嗟に、右の手を構え、叫んだ。

「リフレクションっ!」

 眼前に現れるのはリフレクションの結界。
 それは敵の炎を跳ね返し、そのまま対象を包み込む。
 龍は悲痛な叫び声を残して、そのまま息を絶やしたようだった。

「……はぁ。……はぁ」

 もう体に力が入らない。
 視界がくらむ。雨で体が冷える。
 また、死んでしまうのかもしれない。
 だけどいい。私が死ぬくらい。
 母さんが生きていてくれさえいれば。

「か、母さん……」

 私はそのまま、地面に倒れ込んだ。
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