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ハッピーエンドをつかまえて!
さよならリリィ。またきて明日
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※ミリア視点です。
時系列的には『新世界より。あなたのために』の続きです。
──────────────
私は、先の泣き崩れた少女のことを思い出しながら、自室の中で唸っていた。
何かがおかしかった。
おかしいとはつまり、何か記憶が変だった。
私はベリー採取の際に寝てしまったんだけど、その起きた後。
私の記憶が何か混乱していた。何かが入り混じっていた様な気がした。
泣き崩れた少女を、やはりどこかで見たことがあった気がした。
既視感ともまた違う。どちらかと言えば、未視感だった。
見慣れたはずの顔なのに、私が忘れてしまっているような。
その記憶は確かに頭のどこかにあるような気がしていた。
お昼ご飯を食べた後、私は家を出た。
街中をくまなく探したわけだけど、結局その少女は見つからなかった。
帰ってしまったのだろうか。
けれど。あの時の少女は、本当に辛そうな表情で。
思い出すだけでも、胸がチクリと刺された感覚がする。
見つけたかったが、結局見つけることはできなかった。
夕方。
しょうがないか、と少女の存在は一旦忘れようとした。
それで晩御飯を食べようと家の中を漁ったのだけど、食べ物という食べ物は無かった。
ので、私は買い物に行こうと外へ出た。
そこそこ距離がある市場に来たところで私は財布を忘れたことに気付いた。
買い物に来て財布を忘れる。その事実に自分が可笑しくなりながら、家へ帰る。
そして。家の前付近にやってきたところで、私は発見した。
朝の少女だった。なぜか深呼吸を繰り返している。
私はその少女の背後に近寄り、声をかけた。
「ねぇ」
少女は肩を一瞬びくつかせると、何故か固まってしまった。
「──な、んで」
どこか辛そうな声を絞り出してくる。
何か悪いことでもしてしまったのだろうか。
思いながらも、私は少女の前に回り込み、顔を覗き込む。
「やっぱり。どこかで見た事あるような」
というよりも、多分見た事はある気がした。
時間が経つにつれ、その疑問が確信に移り変わってゆく。
けれどその顔は、とても悲しく痛々しい表情だ。
返ってきたきた言葉も、あまり好意的な返事とは言い難かった。
しかも私のことを『気のせい』だと言ってきた。
朝は私の名前を呼んできたのに、そんなはずがあるわけがなかった。
しかし少女は『気のせい』の一点張りだった。
少女は何かに耐えている様子だった。だって、とても辛そうな表情だった。
朝、少女は泣いていた。
私に『私のこと、覚えてない?』と震え声で問いながら。
つまりは、私と少女はどこかで知り合いだったのだと思う。
あまりにも辛そうな表情を、私は見ていられなかった。
だから私は『私と友達になって』とお願いしてみた。
すると、なおのこと少女の表情は悲しいものに変わり──。
──ガチャ。
思った瞬間、私の家の方角からドアが開く音がした。
父さんだろうと思い、その可能性を否定する。
だが、それ以外に考えられなくて、最終的に肯定した。
その時には、目の前から少女はいなくなっていた。
「ああぁぁあ!」
少女のどこか悲痛な叫び声が聞こえて。
前を風が通り過ぎ、それらの行き先を追う。
と、目に入るのは、父さんと少女の走る後ろ姿。
やがてその少女は片手を父さんに向け、何か風の様なものを飛ばしていた。
途轍もないほどに強い風というのを理解し、それに父さんは飛ばされた。
だがすぐに、父さんは少女に掌を向けて、そこから針の様なものを現出させた。
咄嗟に避けた少女の身体を見ながら、二人の間で魔法が使用されたことを把握した。
「ちょ、ちょっと⁉︎」
棒立ちだった私はすぐに動き出し、少女と父さんの間に入り込んだ。
「ミリア。邪魔だ」
背後から聞こえた、いつぶりかの父さんの声。共に、私の肩に手が乗る。
そのうざったらしい言い方に、少しイラッとしてしまう。
だって仕方ない。久しぶりなのに、こんな言い方をされるのだから。
私は嫌味を表情に出しながら、乗っけられた手を除けた。
表情を優しいものに切り替えて『大丈夫?』と少女に問うた。
少女は頬から赤い鮮血をたらしていた。
塗り薬も今は無かったので、応急処置で私のその傷口をペロリと舐めた。
刹那、私の全身に痺れるような痛みが走った。
同時に、また何か私の記憶が掻き混ぜられた様に、頭がくらっとした。
今はそれを気にしてもいられず、少女に声をかけると私は背後の父さんに唾を飛ばした。
「ちょっと、父さん! 久々に顔出したと思ったら、何やってるの」
「邪魔だと言っている」
ガヤガヤと。少女を無視して、家族喧嘩が始まってしまった。
だけど、この父さんの行動? というか、なぜ外に出ているのか。
そして、なぜ今なのか。意味が分からなかった。
今更。本当に今更だ。今まで外どころか部屋すら出なかったのに。
いや。それを言うなら少女の行動も腑に落ちない。
私と知り合いなら、父さんとも知り合いだったのだろうか。
全てが分からない。詳しい話はまた少女から聞こう。
そんな風に、私たちは口喧嘩を玄関前でしていて。
暫く経った時、私の視界の端から氷で形成された槍の様なものが勢いよく飛んで。
父さんの身体に刺さるかと思われたそれは当たる直前で、元の方向に戻された。
何かそこには魔法の様な力が発動していたように見えた。
引き寄せられるように、氷の行き先を見ると。
鋭利に尖ったそれは、その場所にいた少女の肩を貫いていた。
「がぁぁあああぁああああ!」
溢れ出す赤々しい血液。
それを抑えていたが、抑えきれずに血液は飛び出ていた。
肩を貫いた氷が床に転がっており。もはや氷とは思えないほどに、赤く濡れている。
今までなんでもなかった庭の光景が、一気に赤色に染められてしまった。
「はぁ。反射の魔法をかけて正解だったか」
声が聞こえたが、私は無視し振り払った。
凄惨も凄惨な光景だと言うのに、私は迷わずにそこに駆けていた。
自分でも信じられなかった。いつもの自分だったら、ここで吐いていただろうに。
それほどまでに、私は目の先の少女が大切な存在だと。そんな気がしていたのだ。
苦しむのも忘れたのか、少女は動きを止めていた。
何かできることが無いかを、私は頭を高速回転させながら考えた。
一つだけ思いつき、しかしこれでは無意味だろう。
思ったが、これ以外に考えも及ばない。
だから私は少女の服を、肩が露出するように脱がした。
先の様に、私はその赤く濡れた傷口部分に、唾を多く含んだ舌で舐めた。
「あぁっ──!」
やはり少女の血液は痛い。
だけど私は、少しでも効果があるならと、舐め続けて。
口にたっぷりと含まれた、その血液を無意識に飲み込む。
焼ける様な痛みが、私の咽喉を流れた。
その瞬間だった。
「リリィ?」
痛みを覚えながらも冷静に。私は、その名前を口にしていた。
「リリィ!」
混乱と困惑をしていた。
だけど、目の前にいたのがリリィだと言うのは確かだった。
様々な思い出が、私の頭を駆け回る。
私の頭が何か別のものに支配されるようで、正直気分はよくなかった。
が、やはり少女は、私にとって大切な存在。それは正解だった。
すかさず私は、ワンピースの一部をちぎりとり、開かれた傷口に巻き、人工呼吸をする。
意味は無いと思った。
無いけど、大丈夫だと自分に言い聞かせた。
何故なら、次があるのだから。
思考して、私は人工呼吸を続けた。
いつの間にか、リリィの身体が生暖かくなってた。
気付いた瞬間だった。
リリィが、世界が。何もかもが。
遠ざかって、私の前から消えていった。
頭の中が痛い。とても痛くて。だけど。
ハッとした時、私は森の中にいた。
朝の眩しい光が木漏れ日として、私に降り注いでいた。
先の残酷な光景から大胆な場面転換だと思いながらも。
私は、身体の中にリリィの血液を飲んだ時の痛みが残っていると分かった。
「あぁ。そっか。そうだったんだ」
私は少しだけ前の記憶を辿る。
前の記憶の筈なのに、それは今日から二日後の風景だった。
リリィと沢山楽しんで、だけど最悪な結末が待っていた。その風景。
別れ際に、リリィは沢山の秘密を話してくれた。
忘れないと言いながら、忘れてしまった自分を恨みながら。
「やっと。思い出した」
呟くと、私はそこから駆け出していた。
森を抜けて、街の門を抜けて。
家の門を抜けた。その先に。
「──リリィ!」
私は。
ようやく、リリィとの再会を果たした。
※
もう時間はお昼を回る。
私たちは、ずっと。ずーっと抱き合っていた。
長いようで短いその時間が終了し。
リリィから全ての。本当に全ての説明を受けた。
まず第一に、リリィは女神だということ。
私が今日の朝、森の中で願った女神像こそがリリィの像だったのだと。
願った内容である『私たち家族が幸せになれますように』というその願いを、リリィは叶えなければならないらしかった。
次に、リリィは女神として、何度も何度もこの三日を繰り返しているらしい。
それは確かにそうだと思う。何故なら、私にもその記憶がうっすらとある。
確かな記憶は三回前までの記憶。リリィ曰く、初めてのキスがそこらしかった。
お祭りの後に路地裏に連れ込んで、私からキス……って。
我ながらとても大胆なことをしている気がする。というより大胆だ。
でも、何回も繰り返しているのにそこが初キスなんだ、って驚く気持ちもあった。
そして残念なことに、女神としての秘密を現世の人物に話すこと。
それは神世界では非行らしく、罰せられてしまうらしい。
しかし。リリィ曰く、願いを叶えるためなら、こうするしか無かったのだと。
最後に。三日間を繰り返してしまう一番の原因というのは、私の父さんにある様で。
これも確かに納得ができた。できてしまった。あの父さんだからだ。
父さんは、どうやら母さんを生き返らせるために蘇生術を行なっているのだ。
そして母さんが死んでしまった日時に──今日から二日後の夜の十一時二十三分。
その時間に、私の魂が父さんによって抜き取られてしまうらしかった。
理由を問えば、死者の魂が最も現世に近付くのは命日の様であり。
血縁者の魂に死者の魂はより引かれるため、私の魂が必要なのだった。
引き寄せたその後は、蘇生術のために呼び出した悪魔への褒美にするのだと。
ちなみに。魂を引き寄せるというその行為に、私は引いた。
私は全てを受け入れて、飲み込んだ。
つまり、まとめると。
リリィは女神であり、私の願いを叶えにきた。
だが、障壁として私の父さんの存在があり、今まで数えられないほど失敗をしてきた。
そのために。父さんをどうにかしなければならない。
前回、父さんを襲撃したのにはその様な理由がある。と。
私はリリィが大好き。
リリィの全てを信用している。
それでも。別れがあることを、ちゃんと分かっている。
だから、
「あなたを幸せにするために、一緒にあなたの父、デーヴィドを殺してください」
リリィの願いに、はいと答える。
※
いやしかし。これで私が幸せになれるのか、と問われると、正直分からない。
分からないが。私でなくとも、私の家族は幸せになれると思う。
母さんの魂がこの世を漂っているのならば、成仏もできるのかもしれない。
そうならなくとも、少なくともこれは母さんのためでもある。
だからきっと、これでいいのだと思う。
これ以外の方法を考えろと言われも、何も思いつかない。
現在はというと、私の部屋の中で。
時刻は午後の三時を回る頃だった。
「それで。どうする!」
気が狂ったかのように、私は明るいテンションでリリィに投げる。
今から決行されることが、残酷なことだというのに。それでも明るくだ。
いや別に、本当に気が狂った訳ではない。
最後の時間だからこそ、明るく過ごしたい。
これは前回の反省でもある。
別れ際はどうしても暗くなってしまうから。
暗い別れってやっぱり寂しいから。
こうして明るく振る舞っている。
だからと言っても、無理はしていない。
精一杯の自然体である。
まぁ、どうせ。最後には悲しくなるのだろうと、目に見えてるけどね!
「……そうだね。……私はできればこれを最後にしたい。確実に仕留めたい」
リリィのそれは、心からの望みだろう。
言葉を続ける。
「ミリアの中に、私の血液がどれだけ残っているのか分からないし。それに、私の血液を飲みすぎるとミリアはきっと壊れてしまう」
「うん。そうだと思う。今もね、めっちゃ胃が苦しい」
「だよね。だから、だからね。悲しいけど、最後にしたいの」
「分かってるよ。大丈夫」
私はリリィに優しく微笑む。
リリィが優しい表情になるのを見て、強張っていたのだと分かった。
「それで。殺人方法だけど。……前回、私の放った氷魔法が跳ね返されたんだよね。それがある限り、魔法はデーヴィドには効かないのかなって」
情景を思い出す。
あまり思い出したくはなかったが、そう。
リリィの魔法は、父さんに当たる直前で反射をされていた。
あ、でも、
「それだけど。リリィの時に駆け寄った時、父さんが『反射の魔法をかけててよかった』みたいなことを言っていた気がする。だから、いつも反射される状態じゃないと思う」
「おぉ。言われてみれば魔法が反射される体質ってのは良く分からないね」
「うんうん」
「さすがミリア」
「ど、どうも……」
少し照れつつ、頬をポリポリ掻く。
リリィのこういうところ、ずるいなって思う。
私を照れさせるための発言というか、そういうのが。
今回は無自覚なのだろうけど。それだと余計にタチが悪い。
でも。こんなやり取りができるのも今日が最後だと考えると、ここは素直に恥ずかしがっておこうと思えるものだった。
「ミリアは、私が褒めただけで照れるんだからー」
とか思った矢先に指摘されてしまった。
私、そんなに露骨に照れていたのかな。
と、少しだけ焦ってしまう。
「いやーはは。好きな人だからね! そりゃあ照れます!」
こう言うのはもっと照れます!
冗談めかして誤魔化して見るけど、誤魔化せない。
熱が上がるのを感じる。
少し前なのに、この感じがとても懐かしい。
「……ミリアって。こんな真っ直ぐじゃなかったよね」
「思うところあって、ね!」
リリィも同じくだった。
私ほどとはいかないだろうけど、顔を赤くしていた。
私の脇腹を小突いてきて、何故だかとても幸せな気分になれる。
いや。小突かれ趣味がある訳ではない。断じてない。
本当にこの幸せが溢れるのは、理由は不明瞭でなんとなくなのだ。
このままキスをしたいけど、これはまた後で。
今は考えるべきことがあるのだから。それを。
「はい! それで、どうしましょうか!」
「あぁ。そうだったね」
「忘れてたんかい」
「そういう雰囲気になっちゃったから。……まぁ。今はこっち優先にしようか」
リリィは場を整えるためか、わざとらしく咳一つ。
「……えっと。魔法が反射されないと言うことを考えると、難易度は落ちる」
「うん。それに私も魔法、使えるよ」
自分の父親を殺すことに積極的になってるのが少し怖い。
が、父さんはリリィを間接的に何回も殺してきた。
そして私のことは、呪い殺してきた。
この際、私はどうでもよくて、やはりリリィだ。
大好きなリリィが殺されていたといのは、どうしても悲しいことだ。
以前の父さんの事が、頭をよぎる。
もちろん父さんは、昔からああだった訳ではない。
良い父さんだった。それを記憶している。
母さんがいたから、今みたいに豹変してしまったわけで。
こう思ってしまうのは、私の中の罪悪感か良心かのどちらかが働いているからかな。
しかし、ここで昔の話を持ち出してしまっても仕方がない。
過ぎたことより、今を見る。昔の父さんは戻ってこない。
そう考えると、やっぱり私の考えは正しいのだと思えた。
「それでね」
リリィがそう切り出して、私は思考の中から意識を戻す。
「やっぱり決行は夜の七時。デーヴィドが部屋を出る時間がいいと思う」
「うん。……思ったんだけど、その時間ってなんで父さんは部屋を出るの?」
「それは探ったことないんだよね。でも、大したことではないと思う。……その根拠が、一日目の午後七時のパターンって二つあって。ミリアがデーヴィドに出くわす時もあるのね」
「あぁ。うん。それは私も知ってる。記憶の中にあるよ」
「あ、そうだったね。……まぁ、その出くわした時って、デーヴィドってそのまま部屋に戻るのね。それからまた出てくることは無いから、本当に大したことではないと思う」
「なるほど。なら、食糧調達とかそこら辺……かな」
「うん。気にする事ではないと思う」
「そっかそっか」
「それでどうやって殺すかだけど。……やっぱり不意打ちが一番。二人だと成功率が格段に上がると思うから、それ以外に手段は無いかな」
「おぉ。なんというか、さすが女神様と言わざると得ないと言うか」
「茶化さないで」
「茶化して無いよ!」
いや、少し茶化した。
だって、女神がこんな作戦を考えるなんて。
かなり人間味があるというか、おかしいことだ。
それがちょっとだけ、面白いんだけど。
「……まぁそれで。どうやって不意打ちをするか、だけど」
「うんうん」
頷く。
「私がデーヴィドの体勢を崩して。そこを私が拘束しに行く」
「うんうん」
ただ頷く。
「そこにミリアが火の魔法を放って」
「……え? それってリリィは大丈夫なの?」
立ち止まり、疑問を呈した。
それだと普通にリリィも巻き込まれてしまうのだ。
「いや、熱いと思う」
「じゃあなんで⁉︎」
流石にリリィに魔法を放つと言うのは、少し。いや、かなりやりたくない。
どうなのだろうか。
「私は女神。魔力が身体の傷口を少しだけど治癒してくれる。……だからよほど深い傷とかでなければ普通の人よりも耐えられるの」
「そ、そっか。……それってかなり気が引けちゃうけど」
「大丈夫。これで、ミリアの願いを叶えたことになるのなら、私はそのままここからいなくなるから」
「そっか。分かった」
リリィがそう言うのなら、やるしか無いのだろう。
本当はやりたく無いけど。
しょうがないと言う言葉はあまり好きじゃない。
けど、今回はそれ以外の言葉で済ませるものが見つからなかった。
「きっと大丈夫。これで終わるはずだから」
まるで自分に言い聞かせるように、リリィは言った。
今まで幾度となく、思考して、様々なことを試行してきたのだろう。
考えてみると、リリィはずっと大変で。何度も終わらせようとしてきたのだ。
やはり、こうすることはリリィのためでもある。
ここで私が躊躇うと言うのは、間違っている。
私は深く頷いて、涙を呑む様な。それともまた違う。
深い共感と悲哀感が込められた想いを、リリィへと呟く。
「……絶対、最後にしようね」
リリィは少し驚いた様な顔をしたが、すぐに笑って、
「ミリアならそう言ってくれると思ってた!」
そんな、嬉しいことを言ってくれるのだった。
それから、もう少し詳細の説明を受けた。
決行する時間帯と、私たちの待機場所について。
準備という準備は、おそらくもう完璧だった。
その時間まで、まだそこそこの時間がある。
だから。
「じゃあ。キスしよっか」
極当たり前のように、そうなった。
ちなみにこれは、私が言った。
めちゃくちゃキスしたい人みたいになったけど、前もこんな感じだったことを思い出す。
リリィは、はにかんで「はーい」と言った。照れ隠しもあったと思う。
私はリリィの後ろに片手を回して、自分の顔を近付ける。
このキスも。きっと最後になるのだろう。
最後だと思うだけで、不思議と涙腺が緩む。
こういうものなのだろう。
不思議とは言ったが、今更不思議に思うことではない。
リリィの体温を感じながら、涙を堪える。
またいつか。こんなことを出来る日が来たらいいのに。
その想いが頭にやってきて、だめだだめだと頭を軽く振る。
今はただ、リリィを感じるだけ。
全てを委ねるように。私は無防備に口を開く。
リリィの体温が上がるのと同時に、私の中にリリィが入ってきた。
リリィの唾液は、やはりピリッとしていた。
舌の痛覚が無くなるまで、ずっとこうしていたいけど。
無くなるまでするには、もう少し時間が必要だと思う。
リリィと感じる最高の時間。部屋に夕日が差し込んで終わりを知らせてくる。
『あぁ。好きだな』と感じながら、私たちは優しくキスを終えた。
午後七時がもうじき訪れる。
「さて。行こっか」
リリィが意を決したように立ち上がり、私に手を差し伸べた。
迷いなく、その手を取って同じく私も立ち上がる。
部屋を出て廊下を歩きながら、手を繋ぐのも最後かと思った。
手を握る強さは、いつもよりもかなり強かったと思う。
リリィは何も言ってくれなかったけど。リリィは何も言わないだろう。
私のことは、色々と受け入れてくれる。受け入れ過ぎて困ることもあるけどね。
なんて。関わった期間は少しなのに、全て知った気でいる自分が少し可笑しい。
くすくすと軽く笑うと、リリィは「んー?」と私の顔を覗いてきた。
「あー。いや、なんでも!」
否定する私の声は、少しうるさかったかな。
なんでもある人の否定の仕方で、もっと可笑しい。
「なんでもないならいいけどね」
リリィは悪戯っぽく笑う。
辿り着いた玄関で、靴に履き替え外に出る。
この景色も最後になるのだろうか。
思いながら、私はドアから直線に数メートル離れた場所に立つ。
父さんの視線を、まずはそこに集めようということだ。
私に視線を奪われた父さんを、ドアからほんの少し距離を置いたところにいるリリィが横から襲う。
完全に不意打ちで、完全に私たちが悪役のようだ。
やっぱりこれは、女神が考える作戦とは到底思えない。
考えれば考えるほど可笑しくて、今度はもう少し大声で笑ってしまった。
「ちょっと。ミリア大丈夫? なんか変になってない?」
離れた場所にいるリリィが、割と心配そうに問うてくる。
「大丈夫! なんかね、少し今。私のテンションがおかしいだけ!」
「……なるほど。変になっているってことね」
「否定できない。だって、今からやろうとしていることって、親殺しだから。それなのにテンションが高いって、正直めっちゃ変だと思う」
「親殺しって……そんな深刻に捉えないで大丈夫だよ。デーヴィドの悪事を告白すれば、ミリアは親殺しの枠外のことをやっている……と言っても、そこまで深刻に考えているようには見えないね」
ちょっと冷静に思い返してみると、かなり変だ。狂気的とも言えるかも。
なぜだろう、と真面目に理由を探ってみると、やはり。やはり?
いやまぁ兎も角、リリィと一緒に何かをするというそれだけが楽しくて。
こんなにも、今の私は変な感じになっているのかもしれない。
「まぁまぁ。……それはそうと、今は時間的にどう?」
「もうすぐかな。じゃあ、そろそろ魔法の待機。……と言っても、まだ魔力は自分の中に閉じ込めていてね。あいつ、なんか魔力に敏感な節あるから」
「あいつて」
「デーヴィドね。デーヴィド」
私は「それそれ」と頷きながら、目を瞑った。
本当はここでキスをしたかった。
けれどこれで、私の願いが叶いリリィが消えてしまったとして。
そしたら忘れられなくなってしまいそうじゃない? どうだろう。
……いや。今は、魔法に集中すべきだろう。
と、思っていたのだけれど。
これまた不意打ちだった。
しかし、悪役の不意打ちではなく。
甘さ、愛おしさを感じさせてくれる。そんな優しい不意打ちだった。
私はリリィにキスをされた。
絡まった思考が、一気に解かれたようだった。
今までのキスと、全てが違っていた。
目をゆっくりと開く。
リリィがはにかんで、私からちょっぴり距離を置く。
「ふふ。ミリア、わざとキスしてこなかったでしょ。本当はしたいくせにー」
「……ずるいね。めっちゃしたかった」
全て見透かされているようだ。
やはりリリィには敵わない。
「ミリアが言ったことだよ。思い出作り。大事だよ」
「あぁもう。ずるいずるいずるい! 最後の最後なのに、こんなの」
「思い出すための、思い出だよ。じゃないと、思い出ってなんのために作るのか分からない」
「なんか言いくるめられそうで癪なのですけど」
「言いくるめようとしていますから」
「うわ。性格わっる。いや、いいけどね!」
「うん。ありがとありがと。……で、本当にそろそろ時間だよ」
「なんかあれだね。時間が無い時って、色々なことが捗るね。会話ももちろん、リリィとの三日間とか。本当に、色々と捗ってしまう」
「時の女神から言わせて貰うと、それは全くもってその通り」
「ふふ。そっか」
笑うと、リリィも笑った。
なんだかずっと、笑ってばっかりだ。
「じゃあ、私。待機しに戻るね」
「あ、待って。まだ私からしてないよ」
リリィは「そうだね」と嬉しそうに目を瞑った。
時間が無いのに、私はゆっくりと唇を近づけた。
ふわりと、唇が触れ合うだけのキス。
お昼にしたキスが最後になると思っていたのに。結局してしまった。
でもやってしまったらやはり、これでよかったのだと思えた。
唇を離すと同時に、私はリリィを抱き締める。そして、すぐに離した。
「じゃあ。また、ね」
「うん。またね」
私は待機場所に向かうリリィに、軽く手を振った。
きっとこれが、最後の会話だった。
中々に華やかで、お洒落な最後だと思う。
着いたリリィを見て頷いた私は、再び目を閉じた。
魔法を作る。火の魔法だ。
血液と共に流れる魔力を意識すると、少し違和感があった。
魔力は見つけたが……あぁ、これはリリィの魔力。
女神の物だなと感じさせる、強い魔力の流れだった。
掌には集めずに、寸前で魔力を止める。
魔法の名を呼ばないで、ちゃんと意識できるか心配だけど。できるだろう。
今の私になら、なんでも、とは言わないけど色々と出来そうな気がしていた。
静寂に素早い心臓の動悸が訪れる。
ただでさえ素早い動悸がさらに速度を上げる。
足音が家の方向から聞こえ『来た』と思った。
間も無く木の扉はゆっくりと開かれ、そこから出てきた父さんと目が合う。
私は目を離さずに、視界の端のリリィを見やる。
リリィは左の掌を輝かせ、そこから氷の刃を現出させた。
それは見事に、デーヴィドの片足を貫いた。
「────!」
リリィデーヴィドに魔法を放ち、それが命中するのを見て。
当然のことなのに『あぁ、始まったんだな』となった。
言い換えればこれは『終わるんだな』という納得でもあった。
崩れ落ちたデーヴィドに、リリィはすかさず飛び付き、身体を拘束した。
「ミリア! やって!」
迷わなかった。
目の前に見ていること以外に、思考を廻らせなかった。
ここまできて、そんな面倒くさいことを考える性格ではない。
「────っ!」
掌に、込めに込めた私の魔力を、一気に放出した。
命中し、父さんの全てが燃え上がる。同時にリリィも火炎に包み込まれていた。
父さんの、微小な叫び声が響き、母さんの名前を呼んでいた気がした。
とても熱いはずなのに、どこかリリィは穏やかな表情だった。
かなり一瞬の出来事だった。
これで終わり。本当に終わりだ。
数分が経過した。リリィの姿は、見えなかった。
火だるまが鎮火した。
そこにはリリィの姿も、影も、灰も。何も存在しなかった。
あるのは無惨に焼かれた、父さんの哀れな姿。
目に飛び込む現実。込み上げる吐き気。
最後に見せた、リリィの穏やかで優しい表情。
頭にそれらが流れ込んで、混在して。
脳の容量に収まりきらず、やがて意識は段々と薄らいでいった。
地面に倒れた私は「そっか……」と悲しく呟きながら、受け入れた。
どうやら、私の願いは叶ったらしい。
時系列的には『新世界より。あなたのために』の続きです。
──────────────
私は、先の泣き崩れた少女のことを思い出しながら、自室の中で唸っていた。
何かがおかしかった。
おかしいとはつまり、何か記憶が変だった。
私はベリー採取の際に寝てしまったんだけど、その起きた後。
私の記憶が何か混乱していた。何かが入り混じっていた様な気がした。
泣き崩れた少女を、やはりどこかで見たことがあった気がした。
既視感ともまた違う。どちらかと言えば、未視感だった。
見慣れたはずの顔なのに、私が忘れてしまっているような。
その記憶は確かに頭のどこかにあるような気がしていた。
お昼ご飯を食べた後、私は家を出た。
街中をくまなく探したわけだけど、結局その少女は見つからなかった。
帰ってしまったのだろうか。
けれど。あの時の少女は、本当に辛そうな表情で。
思い出すだけでも、胸がチクリと刺された感覚がする。
見つけたかったが、結局見つけることはできなかった。
夕方。
しょうがないか、と少女の存在は一旦忘れようとした。
それで晩御飯を食べようと家の中を漁ったのだけど、食べ物という食べ物は無かった。
ので、私は買い物に行こうと外へ出た。
そこそこ距離がある市場に来たところで私は財布を忘れたことに気付いた。
買い物に来て財布を忘れる。その事実に自分が可笑しくなりながら、家へ帰る。
そして。家の前付近にやってきたところで、私は発見した。
朝の少女だった。なぜか深呼吸を繰り返している。
私はその少女の背後に近寄り、声をかけた。
「ねぇ」
少女は肩を一瞬びくつかせると、何故か固まってしまった。
「──な、んで」
どこか辛そうな声を絞り出してくる。
何か悪いことでもしてしまったのだろうか。
思いながらも、私は少女の前に回り込み、顔を覗き込む。
「やっぱり。どこかで見た事あるような」
というよりも、多分見た事はある気がした。
時間が経つにつれ、その疑問が確信に移り変わってゆく。
けれどその顔は、とても悲しく痛々しい表情だ。
返ってきたきた言葉も、あまり好意的な返事とは言い難かった。
しかも私のことを『気のせい』だと言ってきた。
朝は私の名前を呼んできたのに、そんなはずがあるわけがなかった。
しかし少女は『気のせい』の一点張りだった。
少女は何かに耐えている様子だった。だって、とても辛そうな表情だった。
朝、少女は泣いていた。
私に『私のこと、覚えてない?』と震え声で問いながら。
つまりは、私と少女はどこかで知り合いだったのだと思う。
あまりにも辛そうな表情を、私は見ていられなかった。
だから私は『私と友達になって』とお願いしてみた。
すると、なおのこと少女の表情は悲しいものに変わり──。
──ガチャ。
思った瞬間、私の家の方角からドアが開く音がした。
父さんだろうと思い、その可能性を否定する。
だが、それ以外に考えられなくて、最終的に肯定した。
その時には、目の前から少女はいなくなっていた。
「ああぁぁあ!」
少女のどこか悲痛な叫び声が聞こえて。
前を風が通り過ぎ、それらの行き先を追う。
と、目に入るのは、父さんと少女の走る後ろ姿。
やがてその少女は片手を父さんに向け、何か風の様なものを飛ばしていた。
途轍もないほどに強い風というのを理解し、それに父さんは飛ばされた。
だがすぐに、父さんは少女に掌を向けて、そこから針の様なものを現出させた。
咄嗟に避けた少女の身体を見ながら、二人の間で魔法が使用されたことを把握した。
「ちょ、ちょっと⁉︎」
棒立ちだった私はすぐに動き出し、少女と父さんの間に入り込んだ。
「ミリア。邪魔だ」
背後から聞こえた、いつぶりかの父さんの声。共に、私の肩に手が乗る。
そのうざったらしい言い方に、少しイラッとしてしまう。
だって仕方ない。久しぶりなのに、こんな言い方をされるのだから。
私は嫌味を表情に出しながら、乗っけられた手を除けた。
表情を優しいものに切り替えて『大丈夫?』と少女に問うた。
少女は頬から赤い鮮血をたらしていた。
塗り薬も今は無かったので、応急処置で私のその傷口をペロリと舐めた。
刹那、私の全身に痺れるような痛みが走った。
同時に、また何か私の記憶が掻き混ぜられた様に、頭がくらっとした。
今はそれを気にしてもいられず、少女に声をかけると私は背後の父さんに唾を飛ばした。
「ちょっと、父さん! 久々に顔出したと思ったら、何やってるの」
「邪魔だと言っている」
ガヤガヤと。少女を無視して、家族喧嘩が始まってしまった。
だけど、この父さんの行動? というか、なぜ外に出ているのか。
そして、なぜ今なのか。意味が分からなかった。
今更。本当に今更だ。今まで外どころか部屋すら出なかったのに。
いや。それを言うなら少女の行動も腑に落ちない。
私と知り合いなら、父さんとも知り合いだったのだろうか。
全てが分からない。詳しい話はまた少女から聞こう。
そんな風に、私たちは口喧嘩を玄関前でしていて。
暫く経った時、私の視界の端から氷で形成された槍の様なものが勢いよく飛んで。
父さんの身体に刺さるかと思われたそれは当たる直前で、元の方向に戻された。
何かそこには魔法の様な力が発動していたように見えた。
引き寄せられるように、氷の行き先を見ると。
鋭利に尖ったそれは、その場所にいた少女の肩を貫いていた。
「がぁぁあああぁああああ!」
溢れ出す赤々しい血液。
それを抑えていたが、抑えきれずに血液は飛び出ていた。
肩を貫いた氷が床に転がっており。もはや氷とは思えないほどに、赤く濡れている。
今までなんでもなかった庭の光景が、一気に赤色に染められてしまった。
「はぁ。反射の魔法をかけて正解だったか」
声が聞こえたが、私は無視し振り払った。
凄惨も凄惨な光景だと言うのに、私は迷わずにそこに駆けていた。
自分でも信じられなかった。いつもの自分だったら、ここで吐いていただろうに。
それほどまでに、私は目の先の少女が大切な存在だと。そんな気がしていたのだ。
苦しむのも忘れたのか、少女は動きを止めていた。
何かできることが無いかを、私は頭を高速回転させながら考えた。
一つだけ思いつき、しかしこれでは無意味だろう。
思ったが、これ以外に考えも及ばない。
だから私は少女の服を、肩が露出するように脱がした。
先の様に、私はその赤く濡れた傷口部分に、唾を多く含んだ舌で舐めた。
「あぁっ──!」
やはり少女の血液は痛い。
だけど私は、少しでも効果があるならと、舐め続けて。
口にたっぷりと含まれた、その血液を無意識に飲み込む。
焼ける様な痛みが、私の咽喉を流れた。
その瞬間だった。
「リリィ?」
痛みを覚えながらも冷静に。私は、その名前を口にしていた。
「リリィ!」
混乱と困惑をしていた。
だけど、目の前にいたのがリリィだと言うのは確かだった。
様々な思い出が、私の頭を駆け回る。
私の頭が何か別のものに支配されるようで、正直気分はよくなかった。
が、やはり少女は、私にとって大切な存在。それは正解だった。
すかさず私は、ワンピースの一部をちぎりとり、開かれた傷口に巻き、人工呼吸をする。
意味は無いと思った。
無いけど、大丈夫だと自分に言い聞かせた。
何故なら、次があるのだから。
思考して、私は人工呼吸を続けた。
いつの間にか、リリィの身体が生暖かくなってた。
気付いた瞬間だった。
リリィが、世界が。何もかもが。
遠ざかって、私の前から消えていった。
頭の中が痛い。とても痛くて。だけど。
ハッとした時、私は森の中にいた。
朝の眩しい光が木漏れ日として、私に降り注いでいた。
先の残酷な光景から大胆な場面転換だと思いながらも。
私は、身体の中にリリィの血液を飲んだ時の痛みが残っていると分かった。
「あぁ。そっか。そうだったんだ」
私は少しだけ前の記憶を辿る。
前の記憶の筈なのに、それは今日から二日後の風景だった。
リリィと沢山楽しんで、だけど最悪な結末が待っていた。その風景。
別れ際に、リリィは沢山の秘密を話してくれた。
忘れないと言いながら、忘れてしまった自分を恨みながら。
「やっと。思い出した」
呟くと、私はそこから駆け出していた。
森を抜けて、街の門を抜けて。
家の門を抜けた。その先に。
「──リリィ!」
私は。
ようやく、リリィとの再会を果たした。
※
もう時間はお昼を回る。
私たちは、ずっと。ずーっと抱き合っていた。
長いようで短いその時間が終了し。
リリィから全ての。本当に全ての説明を受けた。
まず第一に、リリィは女神だということ。
私が今日の朝、森の中で願った女神像こそがリリィの像だったのだと。
願った内容である『私たち家族が幸せになれますように』というその願いを、リリィは叶えなければならないらしかった。
次に、リリィは女神として、何度も何度もこの三日を繰り返しているらしい。
それは確かにそうだと思う。何故なら、私にもその記憶がうっすらとある。
確かな記憶は三回前までの記憶。リリィ曰く、初めてのキスがそこらしかった。
お祭りの後に路地裏に連れ込んで、私からキス……って。
我ながらとても大胆なことをしている気がする。というより大胆だ。
でも、何回も繰り返しているのにそこが初キスなんだ、って驚く気持ちもあった。
そして残念なことに、女神としての秘密を現世の人物に話すこと。
それは神世界では非行らしく、罰せられてしまうらしい。
しかし。リリィ曰く、願いを叶えるためなら、こうするしか無かったのだと。
最後に。三日間を繰り返してしまう一番の原因というのは、私の父さんにある様で。
これも確かに納得ができた。できてしまった。あの父さんだからだ。
父さんは、どうやら母さんを生き返らせるために蘇生術を行なっているのだ。
そして母さんが死んでしまった日時に──今日から二日後の夜の十一時二十三分。
その時間に、私の魂が父さんによって抜き取られてしまうらしかった。
理由を問えば、死者の魂が最も現世に近付くのは命日の様であり。
血縁者の魂に死者の魂はより引かれるため、私の魂が必要なのだった。
引き寄せたその後は、蘇生術のために呼び出した悪魔への褒美にするのだと。
ちなみに。魂を引き寄せるというその行為に、私は引いた。
私は全てを受け入れて、飲み込んだ。
つまり、まとめると。
リリィは女神であり、私の願いを叶えにきた。
だが、障壁として私の父さんの存在があり、今まで数えられないほど失敗をしてきた。
そのために。父さんをどうにかしなければならない。
前回、父さんを襲撃したのにはその様な理由がある。と。
私はリリィが大好き。
リリィの全てを信用している。
それでも。別れがあることを、ちゃんと分かっている。
だから、
「あなたを幸せにするために、一緒にあなたの父、デーヴィドを殺してください」
リリィの願いに、はいと答える。
※
いやしかし。これで私が幸せになれるのか、と問われると、正直分からない。
分からないが。私でなくとも、私の家族は幸せになれると思う。
母さんの魂がこの世を漂っているのならば、成仏もできるのかもしれない。
そうならなくとも、少なくともこれは母さんのためでもある。
だからきっと、これでいいのだと思う。
これ以外の方法を考えろと言われも、何も思いつかない。
現在はというと、私の部屋の中で。
時刻は午後の三時を回る頃だった。
「それで。どうする!」
気が狂ったかのように、私は明るいテンションでリリィに投げる。
今から決行されることが、残酷なことだというのに。それでも明るくだ。
いや別に、本当に気が狂った訳ではない。
最後の時間だからこそ、明るく過ごしたい。
これは前回の反省でもある。
別れ際はどうしても暗くなってしまうから。
暗い別れってやっぱり寂しいから。
こうして明るく振る舞っている。
だからと言っても、無理はしていない。
精一杯の自然体である。
まぁ、どうせ。最後には悲しくなるのだろうと、目に見えてるけどね!
「……そうだね。……私はできればこれを最後にしたい。確実に仕留めたい」
リリィのそれは、心からの望みだろう。
言葉を続ける。
「ミリアの中に、私の血液がどれだけ残っているのか分からないし。それに、私の血液を飲みすぎるとミリアはきっと壊れてしまう」
「うん。そうだと思う。今もね、めっちゃ胃が苦しい」
「だよね。だから、だからね。悲しいけど、最後にしたいの」
「分かってるよ。大丈夫」
私はリリィに優しく微笑む。
リリィが優しい表情になるのを見て、強張っていたのだと分かった。
「それで。殺人方法だけど。……前回、私の放った氷魔法が跳ね返されたんだよね。それがある限り、魔法はデーヴィドには効かないのかなって」
情景を思い出す。
あまり思い出したくはなかったが、そう。
リリィの魔法は、父さんに当たる直前で反射をされていた。
あ、でも、
「それだけど。リリィの時に駆け寄った時、父さんが『反射の魔法をかけててよかった』みたいなことを言っていた気がする。だから、いつも反射される状態じゃないと思う」
「おぉ。言われてみれば魔法が反射される体質ってのは良く分からないね」
「うんうん」
「さすがミリア」
「ど、どうも……」
少し照れつつ、頬をポリポリ掻く。
リリィのこういうところ、ずるいなって思う。
私を照れさせるための発言というか、そういうのが。
今回は無自覚なのだろうけど。それだと余計にタチが悪い。
でも。こんなやり取りができるのも今日が最後だと考えると、ここは素直に恥ずかしがっておこうと思えるものだった。
「ミリアは、私が褒めただけで照れるんだからー」
とか思った矢先に指摘されてしまった。
私、そんなに露骨に照れていたのかな。
と、少しだけ焦ってしまう。
「いやーはは。好きな人だからね! そりゃあ照れます!」
こう言うのはもっと照れます!
冗談めかして誤魔化して見るけど、誤魔化せない。
熱が上がるのを感じる。
少し前なのに、この感じがとても懐かしい。
「……ミリアって。こんな真っ直ぐじゃなかったよね」
「思うところあって、ね!」
リリィも同じくだった。
私ほどとはいかないだろうけど、顔を赤くしていた。
私の脇腹を小突いてきて、何故だかとても幸せな気分になれる。
いや。小突かれ趣味がある訳ではない。断じてない。
本当にこの幸せが溢れるのは、理由は不明瞭でなんとなくなのだ。
このままキスをしたいけど、これはまた後で。
今は考えるべきことがあるのだから。それを。
「はい! それで、どうしましょうか!」
「あぁ。そうだったね」
「忘れてたんかい」
「そういう雰囲気になっちゃったから。……まぁ。今はこっち優先にしようか」
リリィは場を整えるためか、わざとらしく咳一つ。
「……えっと。魔法が反射されないと言うことを考えると、難易度は落ちる」
「うん。それに私も魔法、使えるよ」
自分の父親を殺すことに積極的になってるのが少し怖い。
が、父さんはリリィを間接的に何回も殺してきた。
そして私のことは、呪い殺してきた。
この際、私はどうでもよくて、やはりリリィだ。
大好きなリリィが殺されていたといのは、どうしても悲しいことだ。
以前の父さんの事が、頭をよぎる。
もちろん父さんは、昔からああだった訳ではない。
良い父さんだった。それを記憶している。
母さんがいたから、今みたいに豹変してしまったわけで。
こう思ってしまうのは、私の中の罪悪感か良心かのどちらかが働いているからかな。
しかし、ここで昔の話を持ち出してしまっても仕方がない。
過ぎたことより、今を見る。昔の父さんは戻ってこない。
そう考えると、やっぱり私の考えは正しいのだと思えた。
「それでね」
リリィがそう切り出して、私は思考の中から意識を戻す。
「やっぱり決行は夜の七時。デーヴィドが部屋を出る時間がいいと思う」
「うん。……思ったんだけど、その時間ってなんで父さんは部屋を出るの?」
「それは探ったことないんだよね。でも、大したことではないと思う。……その根拠が、一日目の午後七時のパターンって二つあって。ミリアがデーヴィドに出くわす時もあるのね」
「あぁ。うん。それは私も知ってる。記憶の中にあるよ」
「あ、そうだったね。……まぁ、その出くわした時って、デーヴィドってそのまま部屋に戻るのね。それからまた出てくることは無いから、本当に大したことではないと思う」
「なるほど。なら、食糧調達とかそこら辺……かな」
「うん。気にする事ではないと思う」
「そっかそっか」
「それでどうやって殺すかだけど。……やっぱり不意打ちが一番。二人だと成功率が格段に上がると思うから、それ以外に手段は無いかな」
「おぉ。なんというか、さすが女神様と言わざると得ないと言うか」
「茶化さないで」
「茶化して無いよ!」
いや、少し茶化した。
だって、女神がこんな作戦を考えるなんて。
かなり人間味があるというか、おかしいことだ。
それがちょっとだけ、面白いんだけど。
「……まぁそれで。どうやって不意打ちをするか、だけど」
「うんうん」
頷く。
「私がデーヴィドの体勢を崩して。そこを私が拘束しに行く」
「うんうん」
ただ頷く。
「そこにミリアが火の魔法を放って」
「……え? それってリリィは大丈夫なの?」
立ち止まり、疑問を呈した。
それだと普通にリリィも巻き込まれてしまうのだ。
「いや、熱いと思う」
「じゃあなんで⁉︎」
流石にリリィに魔法を放つと言うのは、少し。いや、かなりやりたくない。
どうなのだろうか。
「私は女神。魔力が身体の傷口を少しだけど治癒してくれる。……だからよほど深い傷とかでなければ普通の人よりも耐えられるの」
「そ、そっか。……それってかなり気が引けちゃうけど」
「大丈夫。これで、ミリアの願いを叶えたことになるのなら、私はそのままここからいなくなるから」
「そっか。分かった」
リリィがそう言うのなら、やるしか無いのだろう。
本当はやりたく無いけど。
しょうがないと言う言葉はあまり好きじゃない。
けど、今回はそれ以外の言葉で済ませるものが見つからなかった。
「きっと大丈夫。これで終わるはずだから」
まるで自分に言い聞かせるように、リリィは言った。
今まで幾度となく、思考して、様々なことを試行してきたのだろう。
考えてみると、リリィはずっと大変で。何度も終わらせようとしてきたのだ。
やはり、こうすることはリリィのためでもある。
ここで私が躊躇うと言うのは、間違っている。
私は深く頷いて、涙を呑む様な。それともまた違う。
深い共感と悲哀感が込められた想いを、リリィへと呟く。
「……絶対、最後にしようね」
リリィは少し驚いた様な顔をしたが、すぐに笑って、
「ミリアならそう言ってくれると思ってた!」
そんな、嬉しいことを言ってくれるのだった。
それから、もう少し詳細の説明を受けた。
決行する時間帯と、私たちの待機場所について。
準備という準備は、おそらくもう完璧だった。
その時間まで、まだそこそこの時間がある。
だから。
「じゃあ。キスしよっか」
極当たり前のように、そうなった。
ちなみにこれは、私が言った。
めちゃくちゃキスしたい人みたいになったけど、前もこんな感じだったことを思い出す。
リリィは、はにかんで「はーい」と言った。照れ隠しもあったと思う。
私はリリィの後ろに片手を回して、自分の顔を近付ける。
このキスも。きっと最後になるのだろう。
最後だと思うだけで、不思議と涙腺が緩む。
こういうものなのだろう。
不思議とは言ったが、今更不思議に思うことではない。
リリィの体温を感じながら、涙を堪える。
またいつか。こんなことを出来る日が来たらいいのに。
その想いが頭にやってきて、だめだだめだと頭を軽く振る。
今はただ、リリィを感じるだけ。
全てを委ねるように。私は無防備に口を開く。
リリィの体温が上がるのと同時に、私の中にリリィが入ってきた。
リリィの唾液は、やはりピリッとしていた。
舌の痛覚が無くなるまで、ずっとこうしていたいけど。
無くなるまでするには、もう少し時間が必要だと思う。
リリィと感じる最高の時間。部屋に夕日が差し込んで終わりを知らせてくる。
『あぁ。好きだな』と感じながら、私たちは優しくキスを終えた。
午後七時がもうじき訪れる。
「さて。行こっか」
リリィが意を決したように立ち上がり、私に手を差し伸べた。
迷いなく、その手を取って同じく私も立ち上がる。
部屋を出て廊下を歩きながら、手を繋ぐのも最後かと思った。
手を握る強さは、いつもよりもかなり強かったと思う。
リリィは何も言ってくれなかったけど。リリィは何も言わないだろう。
私のことは、色々と受け入れてくれる。受け入れ過ぎて困ることもあるけどね。
なんて。関わった期間は少しなのに、全て知った気でいる自分が少し可笑しい。
くすくすと軽く笑うと、リリィは「んー?」と私の顔を覗いてきた。
「あー。いや、なんでも!」
否定する私の声は、少しうるさかったかな。
なんでもある人の否定の仕方で、もっと可笑しい。
「なんでもないならいいけどね」
リリィは悪戯っぽく笑う。
辿り着いた玄関で、靴に履き替え外に出る。
この景色も最後になるのだろうか。
思いながら、私はドアから直線に数メートル離れた場所に立つ。
父さんの視線を、まずはそこに集めようということだ。
私に視線を奪われた父さんを、ドアからほんの少し距離を置いたところにいるリリィが横から襲う。
完全に不意打ちで、完全に私たちが悪役のようだ。
やっぱりこれは、女神が考える作戦とは到底思えない。
考えれば考えるほど可笑しくて、今度はもう少し大声で笑ってしまった。
「ちょっと。ミリア大丈夫? なんか変になってない?」
離れた場所にいるリリィが、割と心配そうに問うてくる。
「大丈夫! なんかね、少し今。私のテンションがおかしいだけ!」
「……なるほど。変になっているってことね」
「否定できない。だって、今からやろうとしていることって、親殺しだから。それなのにテンションが高いって、正直めっちゃ変だと思う」
「親殺しって……そんな深刻に捉えないで大丈夫だよ。デーヴィドの悪事を告白すれば、ミリアは親殺しの枠外のことをやっている……と言っても、そこまで深刻に考えているようには見えないね」
ちょっと冷静に思い返してみると、かなり変だ。狂気的とも言えるかも。
なぜだろう、と真面目に理由を探ってみると、やはり。やはり?
いやまぁ兎も角、リリィと一緒に何かをするというそれだけが楽しくて。
こんなにも、今の私は変な感じになっているのかもしれない。
「まぁまぁ。……それはそうと、今は時間的にどう?」
「もうすぐかな。じゃあ、そろそろ魔法の待機。……と言っても、まだ魔力は自分の中に閉じ込めていてね。あいつ、なんか魔力に敏感な節あるから」
「あいつて」
「デーヴィドね。デーヴィド」
私は「それそれ」と頷きながら、目を瞑った。
本当はここでキスをしたかった。
けれどこれで、私の願いが叶いリリィが消えてしまったとして。
そしたら忘れられなくなってしまいそうじゃない? どうだろう。
……いや。今は、魔法に集中すべきだろう。
と、思っていたのだけれど。
これまた不意打ちだった。
しかし、悪役の不意打ちではなく。
甘さ、愛おしさを感じさせてくれる。そんな優しい不意打ちだった。
私はリリィにキスをされた。
絡まった思考が、一気に解かれたようだった。
今までのキスと、全てが違っていた。
目をゆっくりと開く。
リリィがはにかんで、私からちょっぴり距離を置く。
「ふふ。ミリア、わざとキスしてこなかったでしょ。本当はしたいくせにー」
「……ずるいね。めっちゃしたかった」
全て見透かされているようだ。
やはりリリィには敵わない。
「ミリアが言ったことだよ。思い出作り。大事だよ」
「あぁもう。ずるいずるいずるい! 最後の最後なのに、こんなの」
「思い出すための、思い出だよ。じゃないと、思い出ってなんのために作るのか分からない」
「なんか言いくるめられそうで癪なのですけど」
「言いくるめようとしていますから」
「うわ。性格わっる。いや、いいけどね!」
「うん。ありがとありがと。……で、本当にそろそろ時間だよ」
「なんかあれだね。時間が無い時って、色々なことが捗るね。会話ももちろん、リリィとの三日間とか。本当に、色々と捗ってしまう」
「時の女神から言わせて貰うと、それは全くもってその通り」
「ふふ。そっか」
笑うと、リリィも笑った。
なんだかずっと、笑ってばっかりだ。
「じゃあ、私。待機しに戻るね」
「あ、待って。まだ私からしてないよ」
リリィは「そうだね」と嬉しそうに目を瞑った。
時間が無いのに、私はゆっくりと唇を近づけた。
ふわりと、唇が触れ合うだけのキス。
お昼にしたキスが最後になると思っていたのに。結局してしまった。
でもやってしまったらやはり、これでよかったのだと思えた。
唇を離すと同時に、私はリリィを抱き締める。そして、すぐに離した。
「じゃあ。また、ね」
「うん。またね」
私は待機場所に向かうリリィに、軽く手を振った。
きっとこれが、最後の会話だった。
中々に華やかで、お洒落な最後だと思う。
着いたリリィを見て頷いた私は、再び目を閉じた。
魔法を作る。火の魔法だ。
血液と共に流れる魔力を意識すると、少し違和感があった。
魔力は見つけたが……あぁ、これはリリィの魔力。
女神の物だなと感じさせる、強い魔力の流れだった。
掌には集めずに、寸前で魔力を止める。
魔法の名を呼ばないで、ちゃんと意識できるか心配だけど。できるだろう。
今の私になら、なんでも、とは言わないけど色々と出来そうな気がしていた。
静寂に素早い心臓の動悸が訪れる。
ただでさえ素早い動悸がさらに速度を上げる。
足音が家の方向から聞こえ『来た』と思った。
間も無く木の扉はゆっくりと開かれ、そこから出てきた父さんと目が合う。
私は目を離さずに、視界の端のリリィを見やる。
リリィは左の掌を輝かせ、そこから氷の刃を現出させた。
それは見事に、デーヴィドの片足を貫いた。
「────!」
リリィデーヴィドに魔法を放ち、それが命中するのを見て。
当然のことなのに『あぁ、始まったんだな』となった。
言い換えればこれは『終わるんだな』という納得でもあった。
崩れ落ちたデーヴィドに、リリィはすかさず飛び付き、身体を拘束した。
「ミリア! やって!」
迷わなかった。
目の前に見ていること以外に、思考を廻らせなかった。
ここまできて、そんな面倒くさいことを考える性格ではない。
「────っ!」
掌に、込めに込めた私の魔力を、一気に放出した。
命中し、父さんの全てが燃え上がる。同時にリリィも火炎に包み込まれていた。
父さんの、微小な叫び声が響き、母さんの名前を呼んでいた気がした。
とても熱いはずなのに、どこかリリィは穏やかな表情だった。
かなり一瞬の出来事だった。
これで終わり。本当に終わりだ。
数分が経過した。リリィの姿は、見えなかった。
火だるまが鎮火した。
そこにはリリィの姿も、影も、灰も。何も存在しなかった。
あるのは無惨に焼かれた、父さんの哀れな姿。
目に飛び込む現実。込み上げる吐き気。
最後に見せた、リリィの穏やかで優しい表情。
頭にそれらが流れ込んで、混在して。
脳の容量に収まりきらず、やがて意識は段々と薄らいでいった。
地面に倒れた私は「そっか……」と悲しく呟きながら、受け入れた。
どうやら、私の願いは叶ったらしい。
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