32 / 47
最後の日と、別れの日と、
幸せの頂点
しおりを挟む
リリィにはリビングの方で待って貰っている。
対する私はお着替え中だ。
半袖のシャツから白色のワンピースへ。
私が持ってる服で見栄えがいいのって、ほとんどがワンピースだ。
けどけど。この白色のワンピースは中でも一番綺麗というか。
そう。なんか天使が着ていそうな服なので、今回はこれを選択した。
一昨日に着ていた服でも良いけど、まだ洗濯していないんだよね。
明日にはちゃんと溜まった家事をしないと。
思いながら、着替えも終わり、姿見の前で「よし」と頷く。
財布も持ったしそのままリリィのところに──って思ったけど。
私は引き出しのところに足を向けていた。
それを開き、中にある物──ネックレスを取り出し、自身に取り付けた。
少々派手なそれは、付けるがの恥ずかしい感じあるけど。
付けたらリリィが喜んでくれるかなって、そう思い立って付けてみた。
私は再び「よし!」と口に出す。
リビングに行き、テーブルに頬杖を付いているリリィの前に立つ。
下を向いていたリリィの顔が、私を向く。
「準備できたよー」
「ん。じゃあ行こっか」
リリィは頬杖を取り外し、のっそりと己の体を持ち上げた。
そのリリィの首にもネックレスが巻かれていた。
見ていると、リリィも私のことを見てきて。
少し驚いたように「あ!」と声をあげた。
「ミリア、ちゃんとネックレス付けてくれてる。ありがと」
「あ、うん! えへへ。せっかくリリィが選んでくれた物だからね」
「嬉しい」
「ど、どうもどうもー」
ちょっと照れちゃう。
頬をポリポリと掻きながら、顔を背けてしまう。
けど、ネックレスを付けてきたのは正解だったらしい。
数分前の私、よくやった!
※
朝よりも外は暑く。街の活気のせいか、さらに暑く感じた。
けれど手は繋いでいる。
お互いの手汗で濡れていて結構気になるけど、リリィは特に気にしていなさそう。
まぁ。私的にも、繋いでいる方が嬉しいからこれでいいんだけどね。
最初は人の通りは少なかったのに、段々とそれは増えていった。
やがて、店が出ているところに近くなると、もういっぱいいっぱいだった。
だから余計に暑くなるし、ちょっとでもはぐれたらすぐに見失いそう。
なぜお祭りを冬に実施しないのか。なぜなのか。
私は前からこのお祭りには参加していたから大丈夫だけど、リリィは大丈夫かな。
ふとそう思い、私は歩きながらリリィに問うてみた。
「リリィ、暑くない? 大丈夫そう?」
言い終えて、リリィの顔を見ると、結構すまし顔だった。いつもの。
だけど、すぐに笑った。今日は本当によく笑うなぁ。
やっぱり可愛い。ドキッとさせられる。
「大丈夫。私、暑いの慣れてる」
「おぉ。それなら良かったー」
声量を上げる。
人のガヤガヤであまり声が通らないから。
けど、リリィの声は大きくないのに、すんなりと私の耳に届く。
好きな人だからなのかな。多分そうだろう。
ずっとその顔を見ていたいけど、前を見ないと歩けないので。私は惜しみつつも、前を向いて歩く。
けど、ちょいちょい横目でチラと彼女を見る。
溜息が出そうな程に、いくら見ても可愛い。
こんな風に。そういう感じで。
リリィのことを想っていると、いつの間にか出店のある通りに出ていた。
奥まで沢山のお店があって、やっぱり奥まで沢山の人がいる。
いつも人通り少ないのに、みんなこういう時は凄いなって。
まぁいいや。
「とりあえず何か食べよっかー。リリィは何食べたい? 色んなものあるよ」
人の波に乗りながら、私はまた問うた。
結構私のお腹は空いている。なんでも美味しく食べれそうなくらいには。
「何でも──。あ、お肉系食べたい」
「いいねー。私もそういうの食べたい」
答えて。
私は背伸びをし、キョロキョロと首を回す。
人に押されながらも、私は見つけた。
そこは串焼きのお肉が売っている店だった。
少し離れた距離だけど、何だか見ているだけでいい香りがしてくる。
「リリィ。あそこのどう?」
肩をポンポンと叩きながら、私は数メートル先のその店を指す。
リリィも若干背伸びをし、それを見て、また笑顔で頷いた。
「よし。じゃあ、待ってて!」
私はそう飛ばすと、早足で向かった。
並ぶ人の量は少なく、結構早く串焼きを買えた。
お祭り料金で少々値が張った二本のそれは、見た目よりも良い匂い。
両手に持ち、私はリリィのところに向かおうと振り返り──。
「きゃっ」
先の場所に向かおうとしたら、流れてくる人に肩がぶつかった。
やばい。本当に人が多い。
暑苦しいし。早く休める場所に行きたい。
私は大事に串焼きを抱きながら、縫うように人の間を抜ける。
なんとかさっき居た場所まで辿り着いたけど、リリィは見当たらない。
「……あれ?」
人に流されたのかも知れない。物理的に。
確かに、ずっと同じ場所に立ちっぱでいるわけにもいかないし。
食べ物を買うことだけに集中しすぎて、そこのところ意識が向いてなかった。
変な汗をかきながら、私は見回す。
遠くには行ってないはずだから。
そう理解しているはずなのに、不安が募る。
一緒に買いに行けば良かったのかも。
というか、普通そうだよね。
さっき私だって、はぐれそうって思ってたのに。
やっぱり私、バカすぎる。
嫌だ。どこ。どこにいるの。
暑さのせいか目も回ってきた。
頭にもやがかかるような感覚がし始めてきた。その時だった。
私の背中に誰かが、どん、とぶつかってきた。
「ご、ごめんなさい」
謝る。だが、焦りのせいか後ろの人も見らずに。
離れようと距離を置いたら。肩を掴まれ、背後の気配が私に寄る。
困惑でおかしくなりそうだった。
だけど──。
「……もう。焦りすぎ」
リリィだった。
「え? リリィ?」
バッと振り向いて、額に汗をかいているその人がいて。
私はその優しい顔を見て、もうめっちゃ安堵した。
「あー! 良かった!」
抱きつきたいところだったけど、両手が塞がっているせいでそれも出来ない。
泣きそうな顔になっているであろう私を、今度は苦笑いで見てくる。
「すぐそこにいたよ」
「気付かなかった……。もう絶対に離れないようにする」
「え、えぇ? ……いや、うん。離れないでね」
「うん。凄く離れない」
「す、凄く? うん、まぁ。……うん」
リリィは照れ臭そうに、俯きがちに、はにかんだ。
※
その後私たちは、人混みから外れ。というか、通りから離れ。
昨日座った雑貨屋横のベンチに腰を降ろして、二人で仲良く串焼きを食べた。
すごーく美味しかった。
手が空いたので、さっきやり損ねた安堵のハグをリリィにしてみた。
リリィは嬉しそうに抱き返してくれた。
そしてまた、色々な店を回った。
ひんやりした食べ物を食べたり、甘いお菓子を食べたり。
めっちゃ食べて、めっちゃお腹が膨れちゃった。
時間は過ぎる。
どんどん過ぎる。
私の財布の中身がどんどん減っていく。
それはこの際、別にいいんだけどね。
楽しくて、沢山笑った。
そんな風に笑う度。時間が無くなっていくのを実感して。
リリィとの時間が少なくなっているのが、凄く分かる。
非現実なものに感じていたそれが、一気に現実味を帯びる。
私の笑顔が歪んでいく。悲しくて、辛くて。
でも。だからこそ、大事にしないといけない。
お祭りが終わった後も時間はあると思う。
こんな悲しい思考をするのは、その時だけでいい。
前にそう決めたじゃん。
うん。そうだ。そうしないと。
こんなに笑ってくれているリリィに失礼だ。
現在の時刻は、空の焼け具合から察せられるに、恐らく十八時ごろ。
懐中時計は家に置いてきたのか持ってきていなかった。
今から中央広場で、女神への感謝の集いがある。
女神像が中央広場にあるので、そこへ集まることとなっている。
別に私自身、女神に感謝することなんてないけど。
お腹いっぱいだし、することも特にないので私たちはそこに向かった。
「はぁー。楽しかったねー」
ようやく落ち着けたかもしれない。
広場の端っこで、私たちはしゃがんで隣り合っていた。
「うん。私も。ここまでノンストップで疲れちゃったよ」
「疲れたねー。感謝の集いが終わって、その後の花火でお祭りは終了だよ」
「そっか」
「うん。……あ。花火って見たことある? 爆発の魔法に光の魔法を込めて、空に打ち上げて発散させるやつ! リリィでもできそう」
「知ってるよ。でも、私には出来ない。……爆発の魔法は、初級魔法しか使えない私には扱える代物じゃない」
「とか言って! 今までの初級の魔法。特に火の魔法とか、初級の威力じゃないよねー」
「……んー。そうかも。……けど、初級より上は本当に使えないよ」
「そっか。そこまで言うなら本当に使えなさそう」
「……うん。そうだよ」
言いながら、悲しそうに俯くリリィ。
あまり触れられるのが好ましくない話題だったのかもしれない。
無神経な自分を恥入り、私はしゃがんだ状態でペコリと頭を下げた。
「ごめん。踏み込みすぎた」
リリィは顔を上げ、焦るように笑みを浮かべた。
「いやいや。全然嫌じゃない。というか、前もこんなやり取りあった」
「あれ! そうだっけ⁉︎」
全く覚えてなかった。
もっと無神経すぎる自分を、深く反省した。
それからしばらく雑談をしていたら。
途端に人のざわめきが落ち着いた。
何かが始まるらしい。
そう思った矢先に、広場の中央の方から、
「地の女神、クレス・スチュワートに感謝を!」
神官の女声が、鳴り響いた。
けど、しゃがんでいる私たちには、何も見えていなかった。
見たいとも思わないからいいんだけど。
その声を聞いて、どうでもいいことを思い出した。
この世界には神様が沢山いるって本で見たことがある。
確か、地の女神にも沢山いて、このクレスっていう女神はその中の一人。
地の女神のファミリーネームがスチュワートという名前らしい。
女神の家族って、文章として起こしてみると本当に訳わかんないし、一人っていう単位が正しいのかも分からないけども。
他にも火の女神やら、水の女神やら、風の女神やら。
運命の女神っていうのも耳にしたことがある。
それほどまでに、女神は沢山のものに宿っているらしい。
あと、この女神の像の周りは、かなり厳重に囲われている。
いつもは見えない様になってるんだけど、今日はお祭りだからこんな感じだ。
なんでも女神像の周りは、若干の魔力が流れており近付けない様にしているらしい。
それが本当のことなのかは不明瞭だけど。
女神像って、人工物だよね? 人が作り出したものなのに、なんでそこまで。
って思っちゃうけど、そう思うのは野暮というものなのかな。
……本当にどうでもいいことだ。
神官の言う事を聞くのがめんどくさいからって、つまんないこと考えちゃった。
そうしている内に、神官の言葉は終わっていた。
今から三十分後に花火が幾つか打ち上げられる旨を伝えていた。
人々は散り始めて、人の行き来が落ち着いたところで私たちも立ち上がった。
「なんだか退屈な話だったね。私、女神とか信用してないからなー。助けられたとか全くないし!」
母さんのことだって、そうだ。
三年前の、この日だから。
「……へー。そう」
「リリィも退屈そうだ」
「そうかも」
「そうだよー」
うんうんと首を縦に振り、私は話題の転換のため手をポンと叩く。
「……えっと、それでどうしよっか。花火ってほんとに綺麗だから、見やすいところがいいんだけど。昨日の展望台はもう人でいっぱいだろうし」
「見やすいところ……。なら、家の屋根の上とかは?」
「確かに見やすそう。けど、私の家ハシゴとか無いよ?」
「大丈夫、私に任せて」
リリィはどこか自身たっぷりに胸を叩く。
何か良い策でもあるのだろう。
リリィはなんでもできる人なので。
「あーうん。分かった、任せるよ」
言われるがままにリリィに託し。
今度はリリィが私の手を引っ張る形で私たちは家に向かった。
道中では沢山の人々が場所取りに苦戦している様子が見えた。
門をくぐり、庭へ。
赤く染まった庭をしばらく歩き。
最終的に、家の壁から少し離れたところに落ち着いた。
私は、家の頂上を見上げる。
私の家は二階建てだ。
そこまではハシゴを使ったとしても、まだ遠い距離かもしれない。
澄ました様子のリリィはクルリと振り返り私を見ると。
「ミリア。おんぶするから、私の背中に引っ付いて」
「え! なんで!」
「いいから。はい」
私の問いをスルーしたリリィは、少しだけ腰を下げた。
また言われるがままに私はその背中に抱きつく様にして、おぶってもらった。
リリィの手が後ろに伸び、私を囲う。
「よいしょ」と、場所を整えるように身体を跳ねさせて。
「手、離さないでね」
その回されていたリリィの手が、ゆっくりと取り外される。
私は重くないか心配しつつ、リリィに更に密着しようと手に力を込めた。
外されたリリィの手は、本来の位置に戻るわけでもなく。
広げられ、その掌を地面に向けていた。
呼吸音が僅かに聞こえ、最後に深く息を吸う音がしっかりと聞こえる。
今から起こるのは──魔法だ。
「──『ウィンド』」
落ち着いた声。
ウィンド。風の魔法。
次のリリィの行動まで少し間があった。
魔力を込めているのだと簡単に分かった。
そして──。
「いくよ」
平坦だが力のある声。
準備が整ったらしい。
私はリリィのすることを察し、回す手に再度力を込めた。
風の魔法ということは、恐らくそういうことだ。
リリィは「じゃあ、あと五秒後に」と。
言われ、私は心の中で数字を数える。
4。
3。
2。
1。
ゼロを数えると同時に凄まじい風が吹き荒れ──浮遊感。
リリィの身体と共に空に舞い上がる。
遠ざかる地面。身体を触る疾風。
自分の身体も風に持ち上げられているのか、軽い。
瞬き一つもできない内に、私たちは家の屋根に着地していた。
「やば……。家の窓、割れそう」
直ぐに過ぎ去った早すぎる先の出来事に、私の口から漏れるのは無意識な感想。
意識が数秒も経たない内に私の頭に戻り、屋根に足をつく。
少しだけ傾斜があって怖いけど、形は平たいので注意してれば落ちそうには無い。
それにしても、これが初級の魔法の威力……。
これ程のものが、そんな程度の低いものとは思えない。
私も極めれば、初級でもこんなに凄いことができるのかな。
……いや、出来ないよね。これ。
と、真理に辿り着いてしまった私は、思考の中から視界を広げる。
目の前にある、街の景色と夕日を見た。
今まで見たことない街の景色がそこにはある。
展望台で見る景色とは違う。こっちの方が、なんだか好きかも。
夕焼けに照らされた街模様は、どこか懐かしくてノスタルジーすら覚える。
「ねぇねぇ」
隣の、同じく景色を眺めているリリィに、私は話しかけた。
呆気に取られすぎて。というか、景色に魅了されて会話することも忘れていた。
私の声に耳をピクリと反応させた彼女は、眩しそうに目を細めながらこっちを向く。
「綺麗だね。リリィ」
「……私が綺麗?」
「あ、えっと。景色のつもり。……でも、リリィは。ずっと綺麗だよ」
「……それは、ありがとう」
リリィは優しく微笑む。
つられて私も笑う。
凄く温かいものを感じていた。
可愛くて、一途なリリィを想う。
何か不思議と涙が出てきそうになるのは何故だろう。
感情が溢れてくる。
どんな感情かと聞かれても難しい。
強いていうなら、愛情なのかもしれない。
私はその溢れる愛情を、言葉にしてリリィに伝えた。
「リリィと、一緒にいられてよかった。本当に、幸せな三日間だったよ」
「……んー。もう終わりみたいな言い方しないで」
「ごめん。そういうことを言いたいんじゃなくてね」
「うん」
「私ね。リリィと出会って気付いたんだ。……出会う前の私って、かなり落ち込んでいたんだなって。母さんが亡くなったのを境目にしてかな。自分ではそれに気が付かなくてさ。でもリリィと、色々なこと──魔法を教えてもらったり、デートしたりして、それが幸せってことなんだって実感したの。同時に、それまでの私って暗く生きてたんだなって分かった」
「……ミリアは今、幸せってこと? 私はミリアを幸せにしたってこと?」
「うん。少なくとも今の私は、凄く幸せ。幸せの一番上」
「ふふ。何それ」
「幸せってこと! リリィ、本当にありがとう!」
「……どういたしまして? ……あ、けど。私もお礼を言わないといけない。私も、こんなに幸せな日は今までで初めてだった。また、明日からも頑張れそうって思った」
「そっか。お互いに幸せ。だね!」
「うん。幸せ」
お互い、ずっと笑っていた。
そして私は、今しかないと思った。
今が絶好のタイミングだと。
何って。好きって伝える、そのタイミングだ。
夕日はもう地平線の向こうに沈み、お互いの顔も少し暗くて見えづらい。
だから。好きって言った私の崩れた顔を見られることは無くて。
だから。今が一番いいと思った。
それを意識した途端に、心臓の動悸が恐ろしいくらいに速度を上げた。
この動悸を収める一番の方法。それは、きっと想いを伝えること。
そもそも私の想いはリリィに見破られている。
私は、動悸を少しでも抑えようと深く呼吸を行う。
足踏みはしない。
私は待機しているその言葉を絞り出す。
「私──」
言ったその瞬間。
私の視界の左端で、美しい白い光の塊が爆けていた。
私に焦点を合わせていたリリィの目は、そっちを向いた。
──花火が始まっていた。
だからって、今更言葉を止めることはできなかった。
「──好き、だよ」
だが同時だった。
私が想いを伝えたのと、爆発の音が響いたのは。
その言葉は、遅れて届いた爆発の音に紛れ込んだ。
照らされたリリィの顔は、何も、ピクリとも反応していなかった。
目の前の花火に、心を奪われているようであった。
それから続く爆発音は、途切れることを知らなかった。
ここでまた好きって言ったって、きっとリリィの耳には届かないのだろう。
そう思って、私は仕方なく花火に向き直る。
空のあちこちに咲いているそれは、直ぐに儚く散っていて。
本当に美しい。
「……いいか。今はこれで」
今はもう。花火を楽しもう。
リリィが隣にいる。それだけで私は満足できる。
想いは届かなくとも。絶好のタイミングを逃していても。
今は、これだけでいいと思える。
未来は誰にも分からない。
きっとまた、絶好のタイミングはやってくる。
やってくるって信じてる。
信じないと、涙が溢れてしまいそう。
だから私は、未来に縋る。
未来は誰にも分からないからこそ、不安な時の私の拠り所。
良い未来を期待することで、ちょっとだけ明るくなれる。
それは、リリィに出会ってから実感したことだ。
つまり。
リリィがいなくなれば、私の拠り所は未来だけになる。
それって凄く悲しいことだと思ってしまうのは私だけ?
対する私はお着替え中だ。
半袖のシャツから白色のワンピースへ。
私が持ってる服で見栄えがいいのって、ほとんどがワンピースだ。
けどけど。この白色のワンピースは中でも一番綺麗というか。
そう。なんか天使が着ていそうな服なので、今回はこれを選択した。
一昨日に着ていた服でも良いけど、まだ洗濯していないんだよね。
明日にはちゃんと溜まった家事をしないと。
思いながら、着替えも終わり、姿見の前で「よし」と頷く。
財布も持ったしそのままリリィのところに──って思ったけど。
私は引き出しのところに足を向けていた。
それを開き、中にある物──ネックレスを取り出し、自身に取り付けた。
少々派手なそれは、付けるがの恥ずかしい感じあるけど。
付けたらリリィが喜んでくれるかなって、そう思い立って付けてみた。
私は再び「よし!」と口に出す。
リビングに行き、テーブルに頬杖を付いているリリィの前に立つ。
下を向いていたリリィの顔が、私を向く。
「準備できたよー」
「ん。じゃあ行こっか」
リリィは頬杖を取り外し、のっそりと己の体を持ち上げた。
そのリリィの首にもネックレスが巻かれていた。
見ていると、リリィも私のことを見てきて。
少し驚いたように「あ!」と声をあげた。
「ミリア、ちゃんとネックレス付けてくれてる。ありがと」
「あ、うん! えへへ。せっかくリリィが選んでくれた物だからね」
「嬉しい」
「ど、どうもどうもー」
ちょっと照れちゃう。
頬をポリポリと掻きながら、顔を背けてしまう。
けど、ネックレスを付けてきたのは正解だったらしい。
数分前の私、よくやった!
※
朝よりも外は暑く。街の活気のせいか、さらに暑く感じた。
けれど手は繋いでいる。
お互いの手汗で濡れていて結構気になるけど、リリィは特に気にしていなさそう。
まぁ。私的にも、繋いでいる方が嬉しいからこれでいいんだけどね。
最初は人の通りは少なかったのに、段々とそれは増えていった。
やがて、店が出ているところに近くなると、もういっぱいいっぱいだった。
だから余計に暑くなるし、ちょっとでもはぐれたらすぐに見失いそう。
なぜお祭りを冬に実施しないのか。なぜなのか。
私は前からこのお祭りには参加していたから大丈夫だけど、リリィは大丈夫かな。
ふとそう思い、私は歩きながらリリィに問うてみた。
「リリィ、暑くない? 大丈夫そう?」
言い終えて、リリィの顔を見ると、結構すまし顔だった。いつもの。
だけど、すぐに笑った。今日は本当によく笑うなぁ。
やっぱり可愛い。ドキッとさせられる。
「大丈夫。私、暑いの慣れてる」
「おぉ。それなら良かったー」
声量を上げる。
人のガヤガヤであまり声が通らないから。
けど、リリィの声は大きくないのに、すんなりと私の耳に届く。
好きな人だからなのかな。多分そうだろう。
ずっとその顔を見ていたいけど、前を見ないと歩けないので。私は惜しみつつも、前を向いて歩く。
けど、ちょいちょい横目でチラと彼女を見る。
溜息が出そうな程に、いくら見ても可愛い。
こんな風に。そういう感じで。
リリィのことを想っていると、いつの間にか出店のある通りに出ていた。
奥まで沢山のお店があって、やっぱり奥まで沢山の人がいる。
いつも人通り少ないのに、みんなこういう時は凄いなって。
まぁいいや。
「とりあえず何か食べよっかー。リリィは何食べたい? 色んなものあるよ」
人の波に乗りながら、私はまた問うた。
結構私のお腹は空いている。なんでも美味しく食べれそうなくらいには。
「何でも──。あ、お肉系食べたい」
「いいねー。私もそういうの食べたい」
答えて。
私は背伸びをし、キョロキョロと首を回す。
人に押されながらも、私は見つけた。
そこは串焼きのお肉が売っている店だった。
少し離れた距離だけど、何だか見ているだけでいい香りがしてくる。
「リリィ。あそこのどう?」
肩をポンポンと叩きながら、私は数メートル先のその店を指す。
リリィも若干背伸びをし、それを見て、また笑顔で頷いた。
「よし。じゃあ、待ってて!」
私はそう飛ばすと、早足で向かった。
並ぶ人の量は少なく、結構早く串焼きを買えた。
お祭り料金で少々値が張った二本のそれは、見た目よりも良い匂い。
両手に持ち、私はリリィのところに向かおうと振り返り──。
「きゃっ」
先の場所に向かおうとしたら、流れてくる人に肩がぶつかった。
やばい。本当に人が多い。
暑苦しいし。早く休める場所に行きたい。
私は大事に串焼きを抱きながら、縫うように人の間を抜ける。
なんとかさっき居た場所まで辿り着いたけど、リリィは見当たらない。
「……あれ?」
人に流されたのかも知れない。物理的に。
確かに、ずっと同じ場所に立ちっぱでいるわけにもいかないし。
食べ物を買うことだけに集中しすぎて、そこのところ意識が向いてなかった。
変な汗をかきながら、私は見回す。
遠くには行ってないはずだから。
そう理解しているはずなのに、不安が募る。
一緒に買いに行けば良かったのかも。
というか、普通そうだよね。
さっき私だって、はぐれそうって思ってたのに。
やっぱり私、バカすぎる。
嫌だ。どこ。どこにいるの。
暑さのせいか目も回ってきた。
頭にもやがかかるような感覚がし始めてきた。その時だった。
私の背中に誰かが、どん、とぶつかってきた。
「ご、ごめんなさい」
謝る。だが、焦りのせいか後ろの人も見らずに。
離れようと距離を置いたら。肩を掴まれ、背後の気配が私に寄る。
困惑でおかしくなりそうだった。
だけど──。
「……もう。焦りすぎ」
リリィだった。
「え? リリィ?」
バッと振り向いて、額に汗をかいているその人がいて。
私はその優しい顔を見て、もうめっちゃ安堵した。
「あー! 良かった!」
抱きつきたいところだったけど、両手が塞がっているせいでそれも出来ない。
泣きそうな顔になっているであろう私を、今度は苦笑いで見てくる。
「すぐそこにいたよ」
「気付かなかった……。もう絶対に離れないようにする」
「え、えぇ? ……いや、うん。離れないでね」
「うん。凄く離れない」
「す、凄く? うん、まぁ。……うん」
リリィは照れ臭そうに、俯きがちに、はにかんだ。
※
その後私たちは、人混みから外れ。というか、通りから離れ。
昨日座った雑貨屋横のベンチに腰を降ろして、二人で仲良く串焼きを食べた。
すごーく美味しかった。
手が空いたので、さっきやり損ねた安堵のハグをリリィにしてみた。
リリィは嬉しそうに抱き返してくれた。
そしてまた、色々な店を回った。
ひんやりした食べ物を食べたり、甘いお菓子を食べたり。
めっちゃ食べて、めっちゃお腹が膨れちゃった。
時間は過ぎる。
どんどん過ぎる。
私の財布の中身がどんどん減っていく。
それはこの際、別にいいんだけどね。
楽しくて、沢山笑った。
そんな風に笑う度。時間が無くなっていくのを実感して。
リリィとの時間が少なくなっているのが、凄く分かる。
非現実なものに感じていたそれが、一気に現実味を帯びる。
私の笑顔が歪んでいく。悲しくて、辛くて。
でも。だからこそ、大事にしないといけない。
お祭りが終わった後も時間はあると思う。
こんな悲しい思考をするのは、その時だけでいい。
前にそう決めたじゃん。
うん。そうだ。そうしないと。
こんなに笑ってくれているリリィに失礼だ。
現在の時刻は、空の焼け具合から察せられるに、恐らく十八時ごろ。
懐中時計は家に置いてきたのか持ってきていなかった。
今から中央広場で、女神への感謝の集いがある。
女神像が中央広場にあるので、そこへ集まることとなっている。
別に私自身、女神に感謝することなんてないけど。
お腹いっぱいだし、することも特にないので私たちはそこに向かった。
「はぁー。楽しかったねー」
ようやく落ち着けたかもしれない。
広場の端っこで、私たちはしゃがんで隣り合っていた。
「うん。私も。ここまでノンストップで疲れちゃったよ」
「疲れたねー。感謝の集いが終わって、その後の花火でお祭りは終了だよ」
「そっか」
「うん。……あ。花火って見たことある? 爆発の魔法に光の魔法を込めて、空に打ち上げて発散させるやつ! リリィでもできそう」
「知ってるよ。でも、私には出来ない。……爆発の魔法は、初級魔法しか使えない私には扱える代物じゃない」
「とか言って! 今までの初級の魔法。特に火の魔法とか、初級の威力じゃないよねー」
「……んー。そうかも。……けど、初級より上は本当に使えないよ」
「そっか。そこまで言うなら本当に使えなさそう」
「……うん。そうだよ」
言いながら、悲しそうに俯くリリィ。
あまり触れられるのが好ましくない話題だったのかもしれない。
無神経な自分を恥入り、私はしゃがんだ状態でペコリと頭を下げた。
「ごめん。踏み込みすぎた」
リリィは顔を上げ、焦るように笑みを浮かべた。
「いやいや。全然嫌じゃない。というか、前もこんなやり取りあった」
「あれ! そうだっけ⁉︎」
全く覚えてなかった。
もっと無神経すぎる自分を、深く反省した。
それからしばらく雑談をしていたら。
途端に人のざわめきが落ち着いた。
何かが始まるらしい。
そう思った矢先に、広場の中央の方から、
「地の女神、クレス・スチュワートに感謝を!」
神官の女声が、鳴り響いた。
けど、しゃがんでいる私たちには、何も見えていなかった。
見たいとも思わないからいいんだけど。
その声を聞いて、どうでもいいことを思い出した。
この世界には神様が沢山いるって本で見たことがある。
確か、地の女神にも沢山いて、このクレスっていう女神はその中の一人。
地の女神のファミリーネームがスチュワートという名前らしい。
女神の家族って、文章として起こしてみると本当に訳わかんないし、一人っていう単位が正しいのかも分からないけども。
他にも火の女神やら、水の女神やら、風の女神やら。
運命の女神っていうのも耳にしたことがある。
それほどまでに、女神は沢山のものに宿っているらしい。
あと、この女神の像の周りは、かなり厳重に囲われている。
いつもは見えない様になってるんだけど、今日はお祭りだからこんな感じだ。
なんでも女神像の周りは、若干の魔力が流れており近付けない様にしているらしい。
それが本当のことなのかは不明瞭だけど。
女神像って、人工物だよね? 人が作り出したものなのに、なんでそこまで。
って思っちゃうけど、そう思うのは野暮というものなのかな。
……本当にどうでもいいことだ。
神官の言う事を聞くのがめんどくさいからって、つまんないこと考えちゃった。
そうしている内に、神官の言葉は終わっていた。
今から三十分後に花火が幾つか打ち上げられる旨を伝えていた。
人々は散り始めて、人の行き来が落ち着いたところで私たちも立ち上がった。
「なんだか退屈な話だったね。私、女神とか信用してないからなー。助けられたとか全くないし!」
母さんのことだって、そうだ。
三年前の、この日だから。
「……へー。そう」
「リリィも退屈そうだ」
「そうかも」
「そうだよー」
うんうんと首を縦に振り、私は話題の転換のため手をポンと叩く。
「……えっと、それでどうしよっか。花火ってほんとに綺麗だから、見やすいところがいいんだけど。昨日の展望台はもう人でいっぱいだろうし」
「見やすいところ……。なら、家の屋根の上とかは?」
「確かに見やすそう。けど、私の家ハシゴとか無いよ?」
「大丈夫、私に任せて」
リリィはどこか自身たっぷりに胸を叩く。
何か良い策でもあるのだろう。
リリィはなんでもできる人なので。
「あーうん。分かった、任せるよ」
言われるがままにリリィに託し。
今度はリリィが私の手を引っ張る形で私たちは家に向かった。
道中では沢山の人々が場所取りに苦戦している様子が見えた。
門をくぐり、庭へ。
赤く染まった庭をしばらく歩き。
最終的に、家の壁から少し離れたところに落ち着いた。
私は、家の頂上を見上げる。
私の家は二階建てだ。
そこまではハシゴを使ったとしても、まだ遠い距離かもしれない。
澄ました様子のリリィはクルリと振り返り私を見ると。
「ミリア。おんぶするから、私の背中に引っ付いて」
「え! なんで!」
「いいから。はい」
私の問いをスルーしたリリィは、少しだけ腰を下げた。
また言われるがままに私はその背中に抱きつく様にして、おぶってもらった。
リリィの手が後ろに伸び、私を囲う。
「よいしょ」と、場所を整えるように身体を跳ねさせて。
「手、離さないでね」
その回されていたリリィの手が、ゆっくりと取り外される。
私は重くないか心配しつつ、リリィに更に密着しようと手に力を込めた。
外されたリリィの手は、本来の位置に戻るわけでもなく。
広げられ、その掌を地面に向けていた。
呼吸音が僅かに聞こえ、最後に深く息を吸う音がしっかりと聞こえる。
今から起こるのは──魔法だ。
「──『ウィンド』」
落ち着いた声。
ウィンド。風の魔法。
次のリリィの行動まで少し間があった。
魔力を込めているのだと簡単に分かった。
そして──。
「いくよ」
平坦だが力のある声。
準備が整ったらしい。
私はリリィのすることを察し、回す手に再度力を込めた。
風の魔法ということは、恐らくそういうことだ。
リリィは「じゃあ、あと五秒後に」と。
言われ、私は心の中で数字を数える。
4。
3。
2。
1。
ゼロを数えると同時に凄まじい風が吹き荒れ──浮遊感。
リリィの身体と共に空に舞い上がる。
遠ざかる地面。身体を触る疾風。
自分の身体も風に持ち上げられているのか、軽い。
瞬き一つもできない内に、私たちは家の屋根に着地していた。
「やば……。家の窓、割れそう」
直ぐに過ぎ去った早すぎる先の出来事に、私の口から漏れるのは無意識な感想。
意識が数秒も経たない内に私の頭に戻り、屋根に足をつく。
少しだけ傾斜があって怖いけど、形は平たいので注意してれば落ちそうには無い。
それにしても、これが初級の魔法の威力……。
これ程のものが、そんな程度の低いものとは思えない。
私も極めれば、初級でもこんなに凄いことができるのかな。
……いや、出来ないよね。これ。
と、真理に辿り着いてしまった私は、思考の中から視界を広げる。
目の前にある、街の景色と夕日を見た。
今まで見たことない街の景色がそこにはある。
展望台で見る景色とは違う。こっちの方が、なんだか好きかも。
夕焼けに照らされた街模様は、どこか懐かしくてノスタルジーすら覚える。
「ねぇねぇ」
隣の、同じく景色を眺めているリリィに、私は話しかけた。
呆気に取られすぎて。というか、景色に魅了されて会話することも忘れていた。
私の声に耳をピクリと反応させた彼女は、眩しそうに目を細めながらこっちを向く。
「綺麗だね。リリィ」
「……私が綺麗?」
「あ、えっと。景色のつもり。……でも、リリィは。ずっと綺麗だよ」
「……それは、ありがとう」
リリィは優しく微笑む。
つられて私も笑う。
凄く温かいものを感じていた。
可愛くて、一途なリリィを想う。
何か不思議と涙が出てきそうになるのは何故だろう。
感情が溢れてくる。
どんな感情かと聞かれても難しい。
強いていうなら、愛情なのかもしれない。
私はその溢れる愛情を、言葉にしてリリィに伝えた。
「リリィと、一緒にいられてよかった。本当に、幸せな三日間だったよ」
「……んー。もう終わりみたいな言い方しないで」
「ごめん。そういうことを言いたいんじゃなくてね」
「うん」
「私ね。リリィと出会って気付いたんだ。……出会う前の私って、かなり落ち込んでいたんだなって。母さんが亡くなったのを境目にしてかな。自分ではそれに気が付かなくてさ。でもリリィと、色々なこと──魔法を教えてもらったり、デートしたりして、それが幸せってことなんだって実感したの。同時に、それまでの私って暗く生きてたんだなって分かった」
「……ミリアは今、幸せってこと? 私はミリアを幸せにしたってこと?」
「うん。少なくとも今の私は、凄く幸せ。幸せの一番上」
「ふふ。何それ」
「幸せってこと! リリィ、本当にありがとう!」
「……どういたしまして? ……あ、けど。私もお礼を言わないといけない。私も、こんなに幸せな日は今までで初めてだった。また、明日からも頑張れそうって思った」
「そっか。お互いに幸せ。だね!」
「うん。幸せ」
お互い、ずっと笑っていた。
そして私は、今しかないと思った。
今が絶好のタイミングだと。
何って。好きって伝える、そのタイミングだ。
夕日はもう地平線の向こうに沈み、お互いの顔も少し暗くて見えづらい。
だから。好きって言った私の崩れた顔を見られることは無くて。
だから。今が一番いいと思った。
それを意識した途端に、心臓の動悸が恐ろしいくらいに速度を上げた。
この動悸を収める一番の方法。それは、きっと想いを伝えること。
そもそも私の想いはリリィに見破られている。
私は、動悸を少しでも抑えようと深く呼吸を行う。
足踏みはしない。
私は待機しているその言葉を絞り出す。
「私──」
言ったその瞬間。
私の視界の左端で、美しい白い光の塊が爆けていた。
私に焦点を合わせていたリリィの目は、そっちを向いた。
──花火が始まっていた。
だからって、今更言葉を止めることはできなかった。
「──好き、だよ」
だが同時だった。
私が想いを伝えたのと、爆発の音が響いたのは。
その言葉は、遅れて届いた爆発の音に紛れ込んだ。
照らされたリリィの顔は、何も、ピクリとも反応していなかった。
目の前の花火に、心を奪われているようであった。
それから続く爆発音は、途切れることを知らなかった。
ここでまた好きって言ったって、きっとリリィの耳には届かないのだろう。
そう思って、私は仕方なく花火に向き直る。
空のあちこちに咲いているそれは、直ぐに儚く散っていて。
本当に美しい。
「……いいか。今はこれで」
今はもう。花火を楽しもう。
リリィが隣にいる。それだけで私は満足できる。
想いは届かなくとも。絶好のタイミングを逃していても。
今は、これだけでいいと思える。
未来は誰にも分からない。
きっとまた、絶好のタイミングはやってくる。
やってくるって信じてる。
信じないと、涙が溢れてしまいそう。
だから私は、未来に縋る。
未来は誰にも分からないからこそ、不安な時の私の拠り所。
良い未来を期待することで、ちょっとだけ明るくなれる。
それは、リリィに出会ってから実感したことだ。
つまり。
リリィがいなくなれば、私の拠り所は未来だけになる。
それって凄く悲しいことだと思ってしまうのは私だけ?
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて
千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、娘の幼稚園の親子イベントで娘の友達と一緒にいた千春と出会う。
ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。
ハッピーエンドになると思うのでご安心ください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

檸檬色に染まる泉
鈴懸 嶺
青春
”世界で一番美しいと思ってしまった憧れの女性”
女子高生の私が、生まれてはじめて我を忘れて好きになったひと。
雑誌で見つけたたった一枚の写真しか手掛かりがないその女性が……
手なんか届かくはずがなかった憧れの女性が……
いま……私の目の前ににいる。
奇跡的な出会いを果たしてしまった私の人生は、大きく動き出す……

身体だけの関係です‐原田巴について‐
みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子)
彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。
ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。
その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。
毎日19時ごろ更新予定
「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。
良ければそちらもお読みください。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる