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あと、三日
魔法の指導
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先までの時間はかなり無意味だったような気もするが。
本題に移れただけマシな方なのかもしれない。
……いや、無意味とも言い切れない。
なんとなく楽しかったし、それに結構涼しくなった。
これで、暑さに邪魔されずに魔法に集中できるというわけだ。
その前に、気になること一つ。リリィに聞く。
「そういえばリリィ」
「なに?」
「魔法放つ時にさ『アイス』って言ってたよね?」
「うん。言ってた」
「なんかそういう名前とか言わないと、魔法って放たれないとかある? 『魔術の書』には何も書かれていなかったけど……」
「いやいや。そんなことないよ。私が勝手に名前を付けただけ。水なら『ウォーター』。炎なら『ファイヤ』って」
「勝手に付けたんかい」
「でも。名前を口に出した方が、その魔法を意識しやすい」
なるほど。かっこいいからとかじゃなくてそういう理由なのか。
確かに、放つ魔法に名前を付ければ、それを頭でよく描けるものなのかも。
「おっけー! 疑問は解消された」
「じゃあ。教えてあげる。教えるの下手でも気にしないでね」
「ぜんっぜん! 私、そもそも使えないから」
「わかった。じゃあ、教える。見てて」
リリィはそう言うと、私から少し離れて庭の真ん中に。
太陽が正面から刺していたので、リリィは眩しそうに目を細める。
と、思ったら「やっぱこっち」と背を向け、木陰に戻っていく。
私は太陽に照らされても先の冷たさが残っているので、とりあえずこのまま。
リリィはこっちを向いて「じゃあ」と切り出した。
「とりあえず、氷。どの魔法も原理は一緒だから。氷が使えれば、他のやつも多分使えるようになると思う」
「分かった! とりあえず見とく!」
元気に返事をすると、リリィは満足げに頷く。
私の方を向いていた体は横を向き、そして真っ直ぐと前に手を伸ばした。
リリィの顔だけが私の方を向き、
「氷ね」
そう言った。
「うん」と首を縦に振る。
「まずね。こう、掌を向けるの」
「うん」
とりあえず実践はこれを聞いた後だ。
今はリリィの言葉に集中。
「そして次は。まぁ、目を瞑った方が集中しやすいのかな」
自分の言った通りに、リリィは目を瞑る。
「えっとそれから。『魔術の書』には血液の流れを意識するって書いてたよね」
「うん」
「それは、血液の流れイコール魔力と考えていい。体内の魔力は血液と共に流れているから」
「うんうん」
リリィ。なんか凄く詳しい……。
「そしたら、魔力が流れているって分かるタイミングが来るの」
「あ、そうなの?」
今日の朝、草原に向かって風の魔法を使おうとした時は、確かにそんなタイミングは来ずに。ただ、なんとなくで魔法を放とうとしていた。
そりゃ、使えるはずもない。
リリィに教えを乞うてよかったなと、心の底から思った。
「うん、そうだよ。そしたらその流れを掌に一気に持っていくの。ビュンって」
「難しそう」
「これはもう。慣れるしかない」
「が、頑張る!」
「そしたらね。魔法の種類、そしてその形を頭の中で造形するの。今からするのは、種類は氷。形は──じゃあ、今回は丸い形。これをちゃんと考えないと、失敗しちゃう」
「えー。そんなこと『魔術の書』に書いてたっけ?」
「どっかのページには書いてた」
「なるほど。私、風魔法のところしか見ていなかったからかな」
「多分、そうだと思う。風の初球魔法に形なんて無いしね。今回は、氷っていう固形のものだからだと思う」
「ふむふむ」
私が納得すると、リリィは閉じていた目を開き、
「じゃあ、もう一回最初からやるね」
と、そう顔を向けて言ってくる。
「はーい」
リリィは顔を自身の体と同じ方向に戻し、先のように掌を正面に向ける。
そして一呼吸の間を置いて、目を瞑った。
今の時間、その魔力の流れを意識している。
と、思えば、掌は若干の輝きを見せ始める。
すぐしてから、リリィは合わさった唇をゆっくりと開いた。
「……『アイス』」
その言葉と並ぶように、光を帯びた掌から現出する氷。
お昼ご飯の時に、コップに入れたやつ大きさはほぼ同じだと思う。
リリィはその状態を数秒保つと、目をカッと開く。
その時、リリィの腕が震え、掌にあった氷は勢いよく前方に発射された。
目で追い、それが到着するのは家の塀。それを確認。その瞬間だ。
氷はその場所にぶつかり、パリンと気持ちのいい音を立て粉々になった。
「すご……」
口から無意識に漏れるのは、そんな雑な感想。
けど、ハッとしてからその感想は別におかしくないことに気付く。
だって本当に凄い。これが初球の魔法なのって疑ってしまうくらいだ。
今まで私が見てきたものは、着火に使う火の魔法とか、配達屋さんの浮遊の魔法とか。他には、水の魔法とか。まぁ諸々。
どれも私にとったら凄いもので、けど今回は何か違う。
違うところと言えば、なんというか、リリィの発射した魔法はめっちゃかっこよかったっていうところ。
掌に現出した氷の球を、こんなに速く飛ばした。
言葉にするとそれだけなんだけど、とにかく、めっちゃかっこいい。
悪い人を魔法で懲らしめるみたいな妄想を、昔から散々した私にとったら、このいかにも攻撃的なリリィの魔法は、私の癖にドンピシャだった。
今までこんな魔法を見たことが無かったのは、魔法は人を傷付けるためにあるものじゃないと、そういう認識が世間にあったからだと思う。
魔物を倒す時には使っていいらしいけど、そんな魔物がいるような危ない場所には子供は行くことができなかったし。
「まぁ、こんな感じ。分かった?」
リリィは手をパンパンとして、身体ごと私の方を見た。
「かっこいい! やってみる!」
本当に。今なら自分にでもできそうな気がした。
本題に移れただけマシな方なのかもしれない。
……いや、無意味とも言い切れない。
なんとなく楽しかったし、それに結構涼しくなった。
これで、暑さに邪魔されずに魔法に集中できるというわけだ。
その前に、気になること一つ。リリィに聞く。
「そういえばリリィ」
「なに?」
「魔法放つ時にさ『アイス』って言ってたよね?」
「うん。言ってた」
「なんかそういう名前とか言わないと、魔法って放たれないとかある? 『魔術の書』には何も書かれていなかったけど……」
「いやいや。そんなことないよ。私が勝手に名前を付けただけ。水なら『ウォーター』。炎なら『ファイヤ』って」
「勝手に付けたんかい」
「でも。名前を口に出した方が、その魔法を意識しやすい」
なるほど。かっこいいからとかじゃなくてそういう理由なのか。
確かに、放つ魔法に名前を付ければ、それを頭でよく描けるものなのかも。
「おっけー! 疑問は解消された」
「じゃあ。教えてあげる。教えるの下手でも気にしないでね」
「ぜんっぜん! 私、そもそも使えないから」
「わかった。じゃあ、教える。見てて」
リリィはそう言うと、私から少し離れて庭の真ん中に。
太陽が正面から刺していたので、リリィは眩しそうに目を細める。
と、思ったら「やっぱこっち」と背を向け、木陰に戻っていく。
私は太陽に照らされても先の冷たさが残っているので、とりあえずこのまま。
リリィはこっちを向いて「じゃあ」と切り出した。
「とりあえず、氷。どの魔法も原理は一緒だから。氷が使えれば、他のやつも多分使えるようになると思う」
「分かった! とりあえず見とく!」
元気に返事をすると、リリィは満足げに頷く。
私の方を向いていた体は横を向き、そして真っ直ぐと前に手を伸ばした。
リリィの顔だけが私の方を向き、
「氷ね」
そう言った。
「うん」と首を縦に振る。
「まずね。こう、掌を向けるの」
「うん」
とりあえず実践はこれを聞いた後だ。
今はリリィの言葉に集中。
「そして次は。まぁ、目を瞑った方が集中しやすいのかな」
自分の言った通りに、リリィは目を瞑る。
「えっとそれから。『魔術の書』には血液の流れを意識するって書いてたよね」
「うん」
「それは、血液の流れイコール魔力と考えていい。体内の魔力は血液と共に流れているから」
「うんうん」
リリィ。なんか凄く詳しい……。
「そしたら、魔力が流れているって分かるタイミングが来るの」
「あ、そうなの?」
今日の朝、草原に向かって風の魔法を使おうとした時は、確かにそんなタイミングは来ずに。ただ、なんとなくで魔法を放とうとしていた。
そりゃ、使えるはずもない。
リリィに教えを乞うてよかったなと、心の底から思った。
「うん、そうだよ。そしたらその流れを掌に一気に持っていくの。ビュンって」
「難しそう」
「これはもう。慣れるしかない」
「が、頑張る!」
「そしたらね。魔法の種類、そしてその形を頭の中で造形するの。今からするのは、種類は氷。形は──じゃあ、今回は丸い形。これをちゃんと考えないと、失敗しちゃう」
「えー。そんなこと『魔術の書』に書いてたっけ?」
「どっかのページには書いてた」
「なるほど。私、風魔法のところしか見ていなかったからかな」
「多分、そうだと思う。風の初球魔法に形なんて無いしね。今回は、氷っていう固形のものだからだと思う」
「ふむふむ」
私が納得すると、リリィは閉じていた目を開き、
「じゃあ、もう一回最初からやるね」
と、そう顔を向けて言ってくる。
「はーい」
リリィは顔を自身の体と同じ方向に戻し、先のように掌を正面に向ける。
そして一呼吸の間を置いて、目を瞑った。
今の時間、その魔力の流れを意識している。
と、思えば、掌は若干の輝きを見せ始める。
すぐしてから、リリィは合わさった唇をゆっくりと開いた。
「……『アイス』」
その言葉と並ぶように、光を帯びた掌から現出する氷。
お昼ご飯の時に、コップに入れたやつ大きさはほぼ同じだと思う。
リリィはその状態を数秒保つと、目をカッと開く。
その時、リリィの腕が震え、掌にあった氷は勢いよく前方に発射された。
目で追い、それが到着するのは家の塀。それを確認。その瞬間だ。
氷はその場所にぶつかり、パリンと気持ちのいい音を立て粉々になった。
「すご……」
口から無意識に漏れるのは、そんな雑な感想。
けど、ハッとしてからその感想は別におかしくないことに気付く。
だって本当に凄い。これが初球の魔法なのって疑ってしまうくらいだ。
今まで私が見てきたものは、着火に使う火の魔法とか、配達屋さんの浮遊の魔法とか。他には、水の魔法とか。まぁ諸々。
どれも私にとったら凄いもので、けど今回は何か違う。
違うところと言えば、なんというか、リリィの発射した魔法はめっちゃかっこよかったっていうところ。
掌に現出した氷の球を、こんなに速く飛ばした。
言葉にするとそれだけなんだけど、とにかく、めっちゃかっこいい。
悪い人を魔法で懲らしめるみたいな妄想を、昔から散々した私にとったら、このいかにも攻撃的なリリィの魔法は、私の癖にドンピシャだった。
今までこんな魔法を見たことが無かったのは、魔法は人を傷付けるためにあるものじゃないと、そういう認識が世間にあったからだと思う。
魔物を倒す時には使っていいらしいけど、そんな魔物がいるような危ない場所には子供は行くことができなかったし。
「まぁ、こんな感じ。分かった?」
リリィは手をパンパンとして、身体ごと私の方を見た。
「かっこいい! やってみる!」
本当に。今なら自分にでもできそうな気がした。
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