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心音と共に、
明日泊まっていいですか?
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キスした後というのは決まって気まずさがある。
気まずさというか……なんだろうか。
雰囲気が少し前とは全くもって異なる。
独特な、何かが私たちの間を漂っているのだ。
キスをしている最中はそんなことを全くと言っていいほどないのに。
付き合っていたらこういうこともなくなるのだろうか。疑問だ。
キスの匂いが残る部屋の中、さっさとお昼ご飯を食べる。
けど。さっきのキスで既にお腹はパンパンだった。
心音も同様に残りのサンドウィッチを食べている。
食べる顔は言わずもがな真顔で、何を考えているのかなーって思ってしまう。
けど、心音って表に出さないだけで、心の内はきっと普通の人よりも表情豊かなんじゃないかな。だってあんなキスを強行してくるくらいだしねー。
……待って。心の内だから内情豊か?
なんだか人の名前みたい。
……まぁいいか。いつものように、まぁいいか。
……。おぉ。意図していないのに川柳を作ってしまった。
……なんだか。頭の悪い思考をしている。
これもさっきのキスの恥ずかしさを紛らわすためなのかな。
ずっと頭の中がワイワイとうるさく騒いでる。
で、こういう風にキスのことを思い出すと顔が再燃する。
うーん。どうすればいいんだろう。
昨日、私が支配権を握っていたキスでは、のちの恥ずかしさは薄かった気がするんだけど。じゃあ、自分からキスをしてみようか。
……んー。けど、心音は今日、自分の家だからか、かなり積極的だからな。
自分からしたってカウンターを食らう気がした。
※
時刻はもう午後二時。
課題はあまり進んでいない。
けど、数学の課題はもうじき終わりそう。
心音はキスのことを忘れたかのように、大真面目に課題に取り組んでいる。
私も真面目にしないといけないとは思っているけれど。
別のことが私の脳内に入り込んで、私の手の動きをストップさせてしまう。
別のことって、キスのこともあるけど告白のこと。
さっきからずーーーーっと考えているのに良い結論には全然たどり着けない。
午後三時。
課題は進んでいない。やばそうだ。
心音ママが部屋に三時のお菓子を運んできてくれた。
それだけだ。私はムシャムシャと、それを頬張っていた。
心音も私の横に並んだけど、さっきみたいな口移し展開にはならなかった。
ハグして会話もした。ドキドキはすれど、告白の勇気なんて全く出ない。
震えた口から飛び出すのは、いつもかすれた吐息ばかり。
言葉すらも、あまり出てくれなかった。
午後四時。
刻々と、時間は経過していく。
母さんから、『五時半頃に迎え行くからー』と連絡があった。
帰りも心音ママに迎えを頼むのは失礼な気がして、母に心音の家までの地図を添付して依頼したのだ。
そしたら五時半らしい。思ったよりも早い。
うーん。告白。……告白。
勇気が出ないなぁ。全く。
午後五時。
心音は課題と反省文を終わらせたらしい。
私は、数学の課題を終わらせました。それだけです。
今は心音と会話するためにハグしているわけだけど。
なんか、あのキスからは特に何も起こらなかったなぁ。
私が。行動を起こさないっていう明確な理由があるんだけど。
告白なんて、考えてみればたった数文字を相手に伝えるだけ。
しかも心音が抱く私への好感度は大きいものだし、告白にはちゃんと応えてくれると思うから、より難易度というものは低くなりそうであるし。
けどさ。無理だってば。無理無理。
抱き合って、心音の背中をなんとなく撫でながら。そう思った。
「伊奈さん。課題の進捗はどうですか?」
背中側から、嫌な言葉が飛んでくる。
「見てたら分かるでしょー。全然だよ」
「じゃあ、明日は家にこもって課題三昧ですか?」
さらに嫌な言葉が飛んできた。
「うっ。……折角だし、また心音の家に来てやろーかなーなんて」
「私はそれで嬉しいですけど、課題進みますか? 今日も、私のことばっかり見て、手が動いてなかったですよ」
さらにさらに嫌な言葉が飛んできた。完全に図星だ。
私が明日、心音の家に行ったって、きっと今日みたいに課題は捗らない。
でも……心音に会いたい。早く、付き合いたい。
……って考え、すごい恥ずかしいな。
でも、課題はやらないといけないし。
でもでも。心音には会いたいし。
そういうジレンマがある。
心音にも会えて。けど課題はちゃんと終わらせれて。
そういう方法が無いか無いかと。あるわけ無いのに頭をフル回転させる。
あるわけ無いのに……。
…………いや、あるかも?
いや。あるあるあるある!
「心音さん!」
「なんでしょーか」
私の唐突な大声に、心音が肩を揺らす。
「明日、朝とお昼で課題を頑張るので! 夜に心音さんの家に行っていいですか!」
「……それは。私の家に泊まりたいということですか?」
そういうことなので、私は恥ずかしくなりつつ大きく頷いた。
「多分。親もいいって言うと思いますから。大丈夫ですよ」
「ほんとっ⁉︎ ですかっ⁉︎」
「それくらいなら。親も許しますよ」
「やった! じゃあ、制服とか、カバンとか! 諸々、明日持っていく! 次の日そのまま学校に行く!」
あまりにもあっさりと決まったそのお泊まり計画に、私は嬉しさを抑えきれずに大声で発言してしまう。
心音もどこか嬉しそうな調子で「じゃあ、そうしましょう」と言ってくれた。
私たちが男と女だったら、こうもあっさりといかないと思う。
いやー。女同士って最高。ビバ女同士。
まだ明日がある。
明日こそ、告白をしよう。
私ならできるはず。
心音を強く抱きしめて、強く決意する。
……課題を、明日でちゃんと終わらせんと。
気まずさというか……なんだろうか。
雰囲気が少し前とは全くもって異なる。
独特な、何かが私たちの間を漂っているのだ。
キスをしている最中はそんなことを全くと言っていいほどないのに。
付き合っていたらこういうこともなくなるのだろうか。疑問だ。
キスの匂いが残る部屋の中、さっさとお昼ご飯を食べる。
けど。さっきのキスで既にお腹はパンパンだった。
心音も同様に残りのサンドウィッチを食べている。
食べる顔は言わずもがな真顔で、何を考えているのかなーって思ってしまう。
けど、心音って表に出さないだけで、心の内はきっと普通の人よりも表情豊かなんじゃないかな。だってあんなキスを強行してくるくらいだしねー。
……待って。心の内だから内情豊か?
なんだか人の名前みたい。
……まぁいいか。いつものように、まぁいいか。
……。おぉ。意図していないのに川柳を作ってしまった。
……なんだか。頭の悪い思考をしている。
これもさっきのキスの恥ずかしさを紛らわすためなのかな。
ずっと頭の中がワイワイとうるさく騒いでる。
で、こういう風にキスのことを思い出すと顔が再燃する。
うーん。どうすればいいんだろう。
昨日、私が支配権を握っていたキスでは、のちの恥ずかしさは薄かった気がするんだけど。じゃあ、自分からキスをしてみようか。
……んー。けど、心音は今日、自分の家だからか、かなり積極的だからな。
自分からしたってカウンターを食らう気がした。
※
時刻はもう午後二時。
課題はあまり進んでいない。
けど、数学の課題はもうじき終わりそう。
心音はキスのことを忘れたかのように、大真面目に課題に取り組んでいる。
私も真面目にしないといけないとは思っているけれど。
別のことが私の脳内に入り込んで、私の手の動きをストップさせてしまう。
別のことって、キスのこともあるけど告白のこと。
さっきからずーーーーっと考えているのに良い結論には全然たどり着けない。
午後三時。
課題は進んでいない。やばそうだ。
心音ママが部屋に三時のお菓子を運んできてくれた。
それだけだ。私はムシャムシャと、それを頬張っていた。
心音も私の横に並んだけど、さっきみたいな口移し展開にはならなかった。
ハグして会話もした。ドキドキはすれど、告白の勇気なんて全く出ない。
震えた口から飛び出すのは、いつもかすれた吐息ばかり。
言葉すらも、あまり出てくれなかった。
午後四時。
刻々と、時間は経過していく。
母さんから、『五時半頃に迎え行くからー』と連絡があった。
帰りも心音ママに迎えを頼むのは失礼な気がして、母に心音の家までの地図を添付して依頼したのだ。
そしたら五時半らしい。思ったよりも早い。
うーん。告白。……告白。
勇気が出ないなぁ。全く。
午後五時。
心音は課題と反省文を終わらせたらしい。
私は、数学の課題を終わらせました。それだけです。
今は心音と会話するためにハグしているわけだけど。
なんか、あのキスからは特に何も起こらなかったなぁ。
私が。行動を起こさないっていう明確な理由があるんだけど。
告白なんて、考えてみればたった数文字を相手に伝えるだけ。
しかも心音が抱く私への好感度は大きいものだし、告白にはちゃんと応えてくれると思うから、より難易度というものは低くなりそうであるし。
けどさ。無理だってば。無理無理。
抱き合って、心音の背中をなんとなく撫でながら。そう思った。
「伊奈さん。課題の進捗はどうですか?」
背中側から、嫌な言葉が飛んでくる。
「見てたら分かるでしょー。全然だよ」
「じゃあ、明日は家にこもって課題三昧ですか?」
さらに嫌な言葉が飛んできた。
「うっ。……折角だし、また心音の家に来てやろーかなーなんて」
「私はそれで嬉しいですけど、課題進みますか? 今日も、私のことばっかり見て、手が動いてなかったですよ」
さらにさらに嫌な言葉が飛んできた。完全に図星だ。
私が明日、心音の家に行ったって、きっと今日みたいに課題は捗らない。
でも……心音に会いたい。早く、付き合いたい。
……って考え、すごい恥ずかしいな。
でも、課題はやらないといけないし。
でもでも。心音には会いたいし。
そういうジレンマがある。
心音にも会えて。けど課題はちゃんと終わらせれて。
そういう方法が無いか無いかと。あるわけ無いのに頭をフル回転させる。
あるわけ無いのに……。
…………いや、あるかも?
いや。あるあるあるある!
「心音さん!」
「なんでしょーか」
私の唐突な大声に、心音が肩を揺らす。
「明日、朝とお昼で課題を頑張るので! 夜に心音さんの家に行っていいですか!」
「……それは。私の家に泊まりたいということですか?」
そういうことなので、私は恥ずかしくなりつつ大きく頷いた。
「多分。親もいいって言うと思いますから。大丈夫ですよ」
「ほんとっ⁉︎ ですかっ⁉︎」
「それくらいなら。親も許しますよ」
「やった! じゃあ、制服とか、カバンとか! 諸々、明日持っていく! 次の日そのまま学校に行く!」
あまりにもあっさりと決まったそのお泊まり計画に、私は嬉しさを抑えきれずに大声で発言してしまう。
心音もどこか嬉しそうな調子で「じゃあ、そうしましょう」と言ってくれた。
私たちが男と女だったら、こうもあっさりといかないと思う。
いやー。女同士って最高。ビバ女同士。
まだ明日がある。
明日こそ、告白をしよう。
私ならできるはず。
心音を強く抱きしめて、強く決意する。
……課題を、明日でちゃんと終わらせんと。
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