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無関係

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街はこんなにも寂しかったのか……

灯は殆ど付いておらず、まばらにすれ違う人々の顔も暗く見えた。戦局が悪化する前は往来が盛んだったこの街も、今では見る影もない。

外壁が剥がれ、今にも壊れそうな古家の前では痩せこけた野良犬が弱々しく眠っていたが、おそらくそう長くない命だろう。

すまない、人の争いせいで

空襲により死んだ動物達を何匹も見てきた。動物達にとって人々が争う戦争など無縁のはずだが、この土地、この国に生きている限り彼らは逃れられない。また、観賞用に狭い塀の中へ閉じ込められた動物園の彼らも日常的に殺処分が行われている。

本当にすまない

「あの犬に何か食べさせてあげたい……」

晴子さんは鞄の中に手を入れ食べ物を探している。すると古い包紙に入った飴玉を見つけ、細かく砕いて犬の口元に置いた。

俺達の気配に目が覚めた犬は力ない目で晴子さんを睨み、俺達が過ぎ去った後細かく砕いて何粒にもなった飴玉を、一粒も残さずに食べて再び眠りについた。

「こんな飴玉を最後の晩餐にしたくないですね」

寂しい瞳が4つ歩いていた。

またか

サイレンがなった。昔なら家々から人が飛び出し、道は逃げゆく人でごった返しになっていた。しかし今となっては、俺を含めほとんどの人が慌てるそぶりもなく、ただ歩いている。

人間は本当に怖い。生存本能はどこへ行ったのだろうか?

皆サイレンに慣れいる。サイレンが日常になり過ぎている。中には防空壕に避難するそぶりなど見せず、玄関の石畳に腰掛け

「今日は何機来るかのう」

などと呑気に談笑している老夫婦もいた。慣れただけなのか、それとも、最後の抵抗なのか。

「公園の防空壕に向かいましょう」

「はい」

公園までは数分で着く。ほんの少し前までは遅くなると防空壕に着いても満員で中に入れないということがあったが、そんな心配はせず歩いて向かった。案の定こんな小さな防空壕ですら、余裕があった。

皆、死への恐怖を紛らわすために反対の行動を取っているのか?それとも諦めか?

わからない、わからない

何故だか軍人だけでなく、民間人までも死への恐怖が薄らいている気がした。いや、軍人よりもかもしれない。

遠くで凄まじい爆発音が響いている。爆発音に心を動かされているのはどうやら赤子だけのようだった。






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