俺は特攻隊員として死んだ

SaisenTobutaira

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「今日はいい天気ですね」

窓から入り込む日差しなど、比べ物にならないほどの眩しくも美しい笑顔で窓の外を見つめる晴子さんに見惚れていた。

「傷はまだ痛みますか?」

「いえ、もう平気です」

「よかったです……」

「毎日足を運んでくれてありがとう」

「いえいえ、少しでも一緒に居たいですもの」

平気だと聞き少し寂しげな表情を見せた晴子さん。平気ということは俺の復帰が近づいていることを意味している。復帰すればもう二度と会えないかもしれない。戦局がこれほどにまで悪化した今、戦死する確率は比べものにならないほどに上がっている。心配している晴子さんの顔を見るのが辛かった。少し沈黙が続いた。

「賢治さん、外に出る準備をしてください」

寂しげな表情は再び明るくなったが、すぐに無理して作った笑顔だとわかった。

「外にって、どこに行くんですか?」

「私達の写真撮りに行くんです。まだ、撮ってなかったですし」

そういえば、晴子さんとの写真を撮っていなかった。いや、撮れる余裕などなかった。写真屋は戦局の悪化に伴い、どこもかしこも閉まっている。

「写真屋開いてますかね?」

「知り合いの内藤さんに頼んだら特別に撮ってくださるそうなんです。さあさあ、行きましょう」

手を引っ張る晴子さんに半ば強引に、写真屋へ連れて行かれた。

「こんにちは。今日はわざわざありがとうございます」

深々と頭を下げる晴子さんを見た老人は

「いえいえ、わしも久しぶりに撮りたかったんじゃ。写真屋が写真撮れんのは辛いからのお」

内藤さんに会うのは初めてだった俺は軽く挨拶を済まし、奥の部屋へ案内された。

「君が晴子ちゃんの主人か。確か賢治さんだったかな?」

「はい、山本賢治と申します。本日は本当にありがとうございます」

「まあまあ、そう固くならずに。晴子ちゃんのことは小さい時から知っててのお。べっぴんちゃんでこの辺りじゃ知らない男はおらんかった」

「自分が晴子さんと結婚できたこと、未だに夢のように思えます」

「絶対に幸せにせんといかんど」

奥の部屋に入ると大量の服が置いてあり、内藤さんは一枚一枚鬼のような眼差しで見ている。きっと俺に会う一枚を探しているのだろう。お洒落なハットを被る、白髭の老人は見るからに職人だ。
何枚かかき分けた後、職人の手が止まった。

「これにしようかの、ほれ」

俺は渡された服に着替え晴子さんの元へ向かった。

「とても似合ってます」

顔を赤らめる晴子さんを見て俺の顔も赤らんだ。晴子さんこそ美しい純白の服に包まれており、何よりも美しく見えた。

「晴子さんこそ何よりも美しいです」

お互いさらに赤くなった。

「さあさあこっちに、二人とも顔が固まってるど」

その言葉に二人目が合い笑顔になった。

「その笑顔じゃ、その笑顔じゃ。一、二、の三で撮るからの」

「はい」

「それ一、二の三」

お互い笑顔の最高の写真が撮れたはずだ。早く写真を見てみたいが、現像するまでに時間がかかり復帰までには決して間に合わないだろう。

「いい写真が撮れたはずじゃ。楽しみにしといてくれよ」

「今日は本当にありがとうございました」

二人で深く頭を下げ写真屋を出た。

「内藤さんから聞きましたよ」

「何をですか?」

「晴子さんの昔のことですよ。俺なんかと結婚してくれて本当にありがとう」

「もう、何を今更」

手を強く握りしめ街を歩いていた。























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