俺は特攻隊員として死んだ

SaisenTobutaira

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叫んだ

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「少しの時間でしたがお話しできて楽しかったです。どうかサヨさん、お元気で」

「私も昔を思い出したりできて楽しかった。お店は毎日してるから、いつでも来てね。
ご武運をお祈りします」

サヨさんだけでなく、奥の間からキョトンと覗き込む河童頭の少年にも手を振り、駄菓子屋を出た。サヨさんとはもう会うことはないだろう。そして、この駄菓子屋も、あの河童頭の少年も。
去り際、小豆色の看板にもさようならを告げた。

颯爽と照りつける太陽に打たれながら道を歩いていた。

ふと、遠くでキラキラと光る海が目に入った。坂道を登ろうとしたが、心が俺を下らせた。家に戻り雑草との戦争をしなければならなかったが、俺の心や背中を押す暖かい風に流されてしまった。

ただ、海へ向かいながら道を進む。道中、何気ない風景の一つ一つが切なく、寂しく、悲しく俺の目に映る。しかし同時に、どこか心を落ち着かせてくれる。

潮風により錆びた、使い物にならない自転車

ガラスが割れ雑草に覆われた廃墟

古く、今にも沈みそうな船しか停留されていない小港

魚を求め水面ギリギリを飛ぶ海鳥

誰一人ともいない砂浜

俺は靴を脱ぎ子供のように砂浜を駆け抜けた。足にまとわりつく砂の温かみが心地よく、力尽きるまで俺を動かせた。

そして、力が尽き大の字になり寝転んだ。足だけではなく、全身に温かみを感じる。目を見開き空を見つめると青く、高く、美しい。人間が戦争をしているなど、まるでお構い無しに自然は生きていた。

「日本よ、どうなるのだ」

突如、天に向かって叫んだ。波音と叫び声が調和していた。

「俺よ、どうなるのだ」

誰かか、何かに問う。

「どうなるのだ」

再び問う。当然、叫び終わった後に答えなど与えてくれるわけもなく、波音と海鳥の鳴き声しか聞こえない。

しかし、叫びに叫んだ。叫んだ、叫んだ。

そして、目を瞑ると太陽が夕陽に変わっていた。

しまった

兵学校時代のように、素早く起き上がり早足で家へ向かった。幼い頃は海までの距離がとても遠く感じていたが、今になるとそうでもなかった。

「どこまで行ってたんじゃ?」

昼寝をしたせいか、元通り元気なおじいちゃんが草を毟っていた。

「休憩がてら駄菓子屋に行った後、気まぐれに誘われ海へ行ってました。そして、砂浜で寝てしまいました。おじいちゃんは家で休んでいてください。草毟りは俺がやります」

「そうかそうか、心配したぞ。サヨちゃんは元気だったか?草毟りはワシも一緒にするぞ」

「元気でした。しかし、夫からの手紙が帰って来ず不安げな表情でした。
俺がするはずだったのにすみません」

「おー、そうか」

二人で草を毟っていた。
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