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「もう肩が上がりません。おじいちゃんは大丈夫ですか?」
「ワシは全然平気じゃ、若いのに本当情けないのう。よしっ、飯食うてからもう一回行くか?」
「いえいえ、もう結構ですよ」
「あっ、はっはっ」
内心、安心したという顔でおじいちゃんは笑った。
「はーい、お待ちどうさま」
台所からお皿を抱えたおばあちゃんが出てきた。先程から部屋中に懐かしくいい匂いが充満している。
「美味しそうですね」
おばあちゃんの料理はとても美味しい。そして、どことなく父が作る味と似ている。
「賢ちゃん魚好きだろ?いっぱいお食べ」
お皿に魚が山盛りになっていた。これだけの量を見たのは久しぶりだ。あの晴子さんですら一匹しか持っていなかったのに、ここには山ほどある。
「なんでこんなにもあるんですか?」
不思議そうな顔で二人は俺を見る。
「ご近所さんに譲ってもらったのよ。そんなに驚くほどの量じゃないでしょう?」
「大阪の大金持ちの人ですら、一匹しか持っていなかったのにこの村はすごいですね。大阪ではもう、これだけの量はお目にかかれません」
俺は驚きを隠せなかったが、腹一杯魚を食べれることに嬉しさも込み上げてきた。
「大阪の方はご飯に困っとるんか?」
二人はまだ信じられないという様相だった。おじいちゃんが不思議そうな目で問う。
「配給が少なく、近所の子友達はいつも不満を言ってます。ふくよかだった知り合いの多くが今では細くなってしまいました」
「そうなんかあ……
こっちはご飯に困ることはないのお。なあ、ばあちゃん」
「そうですねえ、欲しい物は手に入るし困ることはないですね。それに、海も近いし山も近いし、最悪狩りに行けばなんとかなりますしね」
都会と田舎では戦争から受ける影響が大きく違っていた。都会では空襲の恐怖に怯え、食糧難で戦争をしていることを毎日感じながら生きている。しかし、田舎では敵機を見たことすらない人がほとんどで、食糧に困ることもない。現に、この二人はそうだった。
同じ日本とは思えなかった。
「ご馳走さまでした。久しぶりに腹一杯食べれて幸せです」
「まだまだあるから腹減ったらいつでも食べていいからの」
「ありがとうございます」
この感覚はいつ以来だろうか?腹いっぱい食べて苦しいこの感覚。昔なら食べ過ぎたことを後悔していたが、今になると苦しいが幸せに思えた。
少し横になり時が流れるままに身を任せた。おじいちゃんは昼寝を始めてすぐに熟睡しており、おばあちゃんは婦人雑誌を読んでいる。雑誌には相変わらず快進撃と書かれていた。ここに住む人なら騙すことができるだろうが、空襲を受けたり、敵機が上空を通過していく姿を見た人は、こんな馬鹿げたことを信じることはないだろう。
腹が少し楽になった。
俺は玄関を出て、袖をまくった。
なかなか手強いなあ
一面にびっしりと生えつくす雑草達との戦いが始まった。
「ワシは全然平気じゃ、若いのに本当情けないのう。よしっ、飯食うてからもう一回行くか?」
「いえいえ、もう結構ですよ」
「あっ、はっはっ」
内心、安心したという顔でおじいちゃんは笑った。
「はーい、お待ちどうさま」
台所からお皿を抱えたおばあちゃんが出てきた。先程から部屋中に懐かしくいい匂いが充満している。
「美味しそうですね」
おばあちゃんの料理はとても美味しい。そして、どことなく父が作る味と似ている。
「賢ちゃん魚好きだろ?いっぱいお食べ」
お皿に魚が山盛りになっていた。これだけの量を見たのは久しぶりだ。あの晴子さんですら一匹しか持っていなかったのに、ここには山ほどある。
「なんでこんなにもあるんですか?」
不思議そうな顔で二人は俺を見る。
「ご近所さんに譲ってもらったのよ。そんなに驚くほどの量じゃないでしょう?」
「大阪の大金持ちの人ですら、一匹しか持っていなかったのにこの村はすごいですね。大阪ではもう、これだけの量はお目にかかれません」
俺は驚きを隠せなかったが、腹一杯魚を食べれることに嬉しさも込み上げてきた。
「大阪の方はご飯に困っとるんか?」
二人はまだ信じられないという様相だった。おじいちゃんが不思議そうな目で問う。
「配給が少なく、近所の子友達はいつも不満を言ってます。ふくよかだった知り合いの多くが今では細くなってしまいました」
「そうなんかあ……
こっちはご飯に困ることはないのお。なあ、ばあちゃん」
「そうですねえ、欲しい物は手に入るし困ることはないですね。それに、海も近いし山も近いし、最悪狩りに行けばなんとかなりますしね」
都会と田舎では戦争から受ける影響が大きく違っていた。都会では空襲の恐怖に怯え、食糧難で戦争をしていることを毎日感じながら生きている。しかし、田舎では敵機を見たことすらない人がほとんどで、食糧に困ることもない。現に、この二人はそうだった。
同じ日本とは思えなかった。
「ご馳走さまでした。久しぶりに腹一杯食べれて幸せです」
「まだまだあるから腹減ったらいつでも食べていいからの」
「ありがとうございます」
この感覚はいつ以来だろうか?腹いっぱい食べて苦しいこの感覚。昔なら食べ過ぎたことを後悔していたが、今になると苦しいが幸せに思えた。
少し横になり時が流れるままに身を任せた。おじいちゃんは昼寝を始めてすぐに熟睡しており、おばあちゃんは婦人雑誌を読んでいる。雑誌には相変わらず快進撃と書かれていた。ここに住む人なら騙すことができるだろうが、空襲を受けたり、敵機が上空を通過していく姿を見た人は、こんな馬鹿げたことを信じることはないだろう。
腹が少し楽になった。
俺は玄関を出て、袖をまくった。
なかなか手強いなあ
一面にびっしりと生えつくす雑草達との戦いが始まった。
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