俺は特攻隊員として死んだ

SaisenTobutaira

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金曜日

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金曜日の夜を迎えた。もうすぐ晴子さんが食堂に来る頃だ。俺は身支度を整え、食堂の前に立っていた。

「こんばんは」

「あっ、晴子さん、こんばんは。今日はせっかくなんで別の所で食べましょう」

「賢治さんのお店じゃないんですか?」

「俺のお店ばかりじゃ申し訳ないので、別の所にしましょう。食堂はいつでも来てください」

「そうですか……
私、賢治さんのお店の次に美味しい所知ってますよ」

「ぜひ、そこに行きましょう」

川沿いを手を繋ぎながら歩いていた。実は先日、晴子さんにお付き合いを申し込んだのだ。

「晴子さんのことがずっと好きでした。これからもずっと好きです。俺とお付き合いしてください」

「ありがとうございます。私も賢治さんのことが好きです。これからもよろしくお願いします」

俺の不器用な告白に晴子さんは笑みをこぼしながら、承諾してくれた。そして今日、初めて晴子さんの手に触れた。それは小さくも暖かく、愛おしい。

絶対、幸せにする

胸の中でそう誓った俺は心臓の鼓動が高まっているのを感じていた。

「実は俺、晴子さんが初めての彼女なんです……」

「そうなのですか。初めての恋人が私なんかで良かったのですか?」

「私なんかって、俺みたいな小さな人間が、お美しい晴子さんとお付き合いできてることが幸せでなりません。お誘いも多いだろうに……
逆に俺なんかでいいのですか?」

「お美しいだなんて恥ずかしいです。小さくなんかありません。賢治さんはとても立派で男らしいですよ」

俺達は水の流れが石に響き、なんだか耳が心地良く感じる中、川沿いを歩いていた。

「ここです」

晴子さんが指差したお店は川沿いから少し入り組んだ所にあり、中は大盛況だった。現代でいうところの大衆居酒屋みたいなものだろう。

「居酒屋は食堂とまた違いますね」

「そうですよね。お酒飲んでる方が多くてなんだか賑やかですね。でも私は賢治さんの食堂が1番落ち着いて好きです」

「ありがとうございます。本当にいつでも食べに来てくださいよ」

俺達は唯一空いていた隅っこの席に腰掛けた。

「アメリカの日々も楽しかったけど、やはり日本は落ち着きますね」

「そうですよね。アメリカに行って、より日本のことが好きになりました」

「私もです。賢治さんの大好きなマスター元気にしてたらいいですね」

「マスターには本当にお世話になりました」

俺はそう言うとポケットからマスターにもらったアクセサリーを取り出し晴子さんに見せた。

「最後にバーへ行った時、マスターの宝物をもらったんです。俺の一生の宝物です」

「美しいですね。きっとマスターの思いも詰まってますよ」

俺達はアメリカに居た頃の話で盛り上がった。時刻が22時を回った頃、店を出ることにした。そして晴子さんを家まで送り届けて俺も帰路に着いた。晴子さんの家から俺の家までは約3kmだ。

一人夜道を歩きながら物思いに耽っていた。
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