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吃音とお友達に
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こんにちは、若き日の僕
年老いた僕からの手紙です
手紙を書き慣れていないので少々読みづらいかと思いますが、未来の自分が書いた文なので理解はできるかと思います。
僕は今年で90歳を迎えました。健康大国の日本でも長寿な方でしょう。子供は?人生まれて、今では?人の孫を持つおじいちゃんです。妻も健在で今でも太陽のような笑顔は変わりません。
色々ありましたが、幸せいっぱいに生きています。
突然ですが今から、あの頃の出来事を小説風に書きますね。初めて書く小説なので、読みづらく面白くないと思いますが、絶対に最後まで読みきってくださいね。
僕は21歳になった。来年から大学4回生だ。2月の後半を迎え、そろそろ就職活動が始まる頃だ。僕は銀行志望だった。それはというと、お金の管理をしている人の真面目さや誠実さに憧れ、銀行員という響きにも胸が打たれていたからだ。そのため、銀行のインターシップに参加した。
インターシップに参加した帰り、冷たい風が吹く駅のベンチで3時間も涙を流していた。
吃音とともに過ごす人生は辛すぎると。
自己紹介すら普通の人のように言えず、いらっしゃいませや、ありがとうございましたすら吃らずには言えなかった。
周りの就活生の視線は冷たく、人事の人にも蔑んだ目で笑われた。
そして帰り際、人事の人に言われた一言が僕の夢を打ち砕くことになる。
『ちゃんと話せないと銀行員にはなれないよ。いや、今のままだと社会人にすらなれないよ』
僕は必死に人と話さずに済む仕事を探していた。しかし、人と話さないで済む仕事など当然なく、あることを思いつく。それはきっと、全ての苦痛から解放されるであろう選択肢、自殺だ。遺書を書き、大好きなバイクで和歌山県の自殺スポットへ向かった。有り金全てとともに。
黒潮市場ではどうせ死ぬからと大好物の海鮮丼を食べた。それも特上で1人前1万円だ。その後も大トロやキャビアなど高級品ばかりを食べ、有り金を全て使った。
そして満腹の中、涙とともに美しい海岸線を走っていた。すぐに人生最後の場所になる断崖にたどり着いた。そこは自殺の名所として知られており、そこら中に命を大切にしろという看板があった。しかし、そんなもの僕の目には映るが、心には映らない。胸の高ぶりを感じながら断崖の隅っこに来た。
土曜日ということもあり観光客が多くいた。幸せそうな老夫婦、これから幸せを作っていく新婚さん、初々しいカップルなど様々だ。
僕はその人達の旅の思い出を壊すことになる。
すいませんと心の中で謝っていた。
(よし、行こう)
解放への道に足を進めようとした時、おじいさんに腕を強く掴まれ、怒られた。
『な何しとるるんじゃ?そそんな所にいたら、お落ちるぞ』
『もももう、死のうとお思って』
『なな何を言っとるんじゃ』
僕はおじいさんに自殺を止められた。断崖から離れた所にあるベンチに無理やり連れていかれ話を聞かれた。
『な何で死のうとお思ったんだ?』
『きき吃音とともに生きるのが、つつ辛くなったからです』
『ワワシも吃音とともに生きてきた。た確かに辛い。か数え切れないほどバカにされてく悔しい思いもした。ししかし、死ぬなどゆゆ許さんぞ』
僕は一言話した時から気づいていた。そのおじいさんも吃音だということを。おじいさんは自分の人生を盛大に吃りながら話してくれた。そして、盛大に吃る僕の話も必死に聞いてくれた。
僕は吃音で悩んでるなど家族にすら相談したことがなかった。僕は小学校に入り吃音を意識した時からずっと1人で戦って来た。高校まで続く音読から解放されたと思えば、大学ではプレゼンテーションがあった。毎日笑われ地獄だった。あがってるわけでも緊張してるわけでもないが、そう見られる。残念ながら吃音の社会認知度はとても低い。
僕は人生で初めて話しながら泣いた。枯れることは決してなく、ただひたすらに涙を流していた。おじいさんは僕の涙を拭くだけじゃなく、何度も肩を叩き励ましてくれた。
そして去り際にこう言った。
『わ笑う奴にはわ笑わしたらええんや。そそんなやつたかがしれてるし、な何の用事もないわ。どどどんどん吃っていいったらええんや。せ盛大にど吃れの精神でええんや』
僕はおじいさんの姿が見えなくなるまで、深々とお辞儀をしていた。
僕よ、盛大に吃れ
この日から僕の座右の銘になった。
時刻は夕方を迎え、海に移る夕日が美しかった。
『きょきょ今日一日あありがとう』
心の底から綺麗な気持ちで叫んだ。周りの観光客は少し苦笑いだったが、そんなことどうでもよかった。
僕はバイクに跨り帰路に着いた。冷たい風が全く苦痛に感じなかった。それどころか生きている実感を与えてくれるようで気持ちよかった。
家に着き仕事を探した。たまたま、トラックドライバーの求人があった。元々運転好きだったことや、会話が比較的少なそうということもあり応募した。
そして、面接を潜り抜けて見事、トラックドライバーになった。トラックドライバーになってから驚いたことがある。それは、吃音とお友達の人が多くいるということだ。自分と同じ境遇の人が居て、不謹慎だが嬉しかった。
社会人生活はとても大変だったが充実していた。
ここで未来のことを話すのはやめますね。それは、自分で考えて未来を切り開いて欲しいからです。全てを語ってしまっては人生面白くないでしょう。
最後に一言だけ書かせてもらって手紙を終えますね。
僕よ、盛大に吃れ。
年老いた僕からの手紙です
手紙を書き慣れていないので少々読みづらいかと思いますが、未来の自分が書いた文なので理解はできるかと思います。
僕は今年で90歳を迎えました。健康大国の日本でも長寿な方でしょう。子供は?人生まれて、今では?人の孫を持つおじいちゃんです。妻も健在で今でも太陽のような笑顔は変わりません。
色々ありましたが、幸せいっぱいに生きています。
突然ですが今から、あの頃の出来事を小説風に書きますね。初めて書く小説なので、読みづらく面白くないと思いますが、絶対に最後まで読みきってくださいね。
僕は21歳になった。来年から大学4回生だ。2月の後半を迎え、そろそろ就職活動が始まる頃だ。僕は銀行志望だった。それはというと、お金の管理をしている人の真面目さや誠実さに憧れ、銀行員という響きにも胸が打たれていたからだ。そのため、銀行のインターシップに参加した。
インターシップに参加した帰り、冷たい風が吹く駅のベンチで3時間も涙を流していた。
吃音とともに過ごす人生は辛すぎると。
自己紹介すら普通の人のように言えず、いらっしゃいませや、ありがとうございましたすら吃らずには言えなかった。
周りの就活生の視線は冷たく、人事の人にも蔑んだ目で笑われた。
そして帰り際、人事の人に言われた一言が僕の夢を打ち砕くことになる。
『ちゃんと話せないと銀行員にはなれないよ。いや、今のままだと社会人にすらなれないよ』
僕は必死に人と話さずに済む仕事を探していた。しかし、人と話さないで済む仕事など当然なく、あることを思いつく。それはきっと、全ての苦痛から解放されるであろう選択肢、自殺だ。遺書を書き、大好きなバイクで和歌山県の自殺スポットへ向かった。有り金全てとともに。
黒潮市場ではどうせ死ぬからと大好物の海鮮丼を食べた。それも特上で1人前1万円だ。その後も大トロやキャビアなど高級品ばかりを食べ、有り金を全て使った。
そして満腹の中、涙とともに美しい海岸線を走っていた。すぐに人生最後の場所になる断崖にたどり着いた。そこは自殺の名所として知られており、そこら中に命を大切にしろという看板があった。しかし、そんなもの僕の目には映るが、心には映らない。胸の高ぶりを感じながら断崖の隅っこに来た。
土曜日ということもあり観光客が多くいた。幸せそうな老夫婦、これから幸せを作っていく新婚さん、初々しいカップルなど様々だ。
僕はその人達の旅の思い出を壊すことになる。
すいませんと心の中で謝っていた。
(よし、行こう)
解放への道に足を進めようとした時、おじいさんに腕を強く掴まれ、怒られた。
『な何しとるるんじゃ?そそんな所にいたら、お落ちるぞ』
『もももう、死のうとお思って』
『なな何を言っとるんじゃ』
僕はおじいさんに自殺を止められた。断崖から離れた所にあるベンチに無理やり連れていかれ話を聞かれた。
『な何で死のうとお思ったんだ?』
『きき吃音とともに生きるのが、つつ辛くなったからです』
『ワワシも吃音とともに生きてきた。た確かに辛い。か数え切れないほどバカにされてく悔しい思いもした。ししかし、死ぬなどゆゆ許さんぞ』
僕は一言話した時から気づいていた。そのおじいさんも吃音だということを。おじいさんは自分の人生を盛大に吃りながら話してくれた。そして、盛大に吃る僕の話も必死に聞いてくれた。
僕は吃音で悩んでるなど家族にすら相談したことがなかった。僕は小学校に入り吃音を意識した時からずっと1人で戦って来た。高校まで続く音読から解放されたと思えば、大学ではプレゼンテーションがあった。毎日笑われ地獄だった。あがってるわけでも緊張してるわけでもないが、そう見られる。残念ながら吃音の社会認知度はとても低い。
僕は人生で初めて話しながら泣いた。枯れることは決してなく、ただひたすらに涙を流していた。おじいさんは僕の涙を拭くだけじゃなく、何度も肩を叩き励ましてくれた。
そして去り際にこう言った。
『わ笑う奴にはわ笑わしたらええんや。そそんなやつたかがしれてるし、な何の用事もないわ。どどどんどん吃っていいったらええんや。せ盛大にど吃れの精神でええんや』
僕はおじいさんの姿が見えなくなるまで、深々とお辞儀をしていた。
僕よ、盛大に吃れ
この日から僕の座右の銘になった。
時刻は夕方を迎え、海に移る夕日が美しかった。
『きょきょ今日一日あありがとう』
心の底から綺麗な気持ちで叫んだ。周りの観光客は少し苦笑いだったが、そんなことどうでもよかった。
僕はバイクに跨り帰路に着いた。冷たい風が全く苦痛に感じなかった。それどころか生きている実感を与えてくれるようで気持ちよかった。
家に着き仕事を探した。たまたま、トラックドライバーの求人があった。元々運転好きだったことや、会話が比較的少なそうということもあり応募した。
そして、面接を潜り抜けて見事、トラックドライバーになった。トラックドライバーになってから驚いたことがある。それは、吃音とお友達の人が多くいるということだ。自分と同じ境遇の人が居て、不謹慎だが嬉しかった。
社会人生活はとても大変だったが充実していた。
ここで未来のことを話すのはやめますね。それは、自分で考えて未来を切り開いて欲しいからです。全てを語ってしまっては人生面白くないでしょう。
最後に一言だけ書かせてもらって手紙を終えますね。
僕よ、盛大に吃れ。
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