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第24話 迷子

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息がもたない、疲れた

年末の部活納め以降、全く運動をしていなかった僕は公園に着いたとたん足を止めた。普段なら公園を1周して家の近くまでノンストップで走り切るのだが今日は公園がゴールのようだ。夜の公園は妙な静けさで、正月ということもあり人も少なかった。

僕はとりあえず、歩いてでも1周回ろうと思い前に進み出した。普段ランニングでは見えていない景色を今日は見えている気がした。

寒さを全く感じさせない自動販売機。明かりが消えかけてお化けでもいるのかと思わせる公衆便所。子供達の遊具でさえ夜になると不安な気持ちを与えてくる。

なんか不気味やなあ……

僕は1秒でも早く公園を出たいと思った。しかし、足は鉛のように重く歩くことで精一杯だった。その公園は歩くと意外にも距離があり、木に囲まれた円周型のランニングコースのため全く進んでいないのではないかと僕に思わせた。まさに闇の中を彷徨う少年のようだった。

歩きながら僕は『それ』について考えていた。なぜなら、土曜日まなみの家に行くということは『それ』をすることになるのかもしれないからだ。いや、きっとまなみから誘ってきて『それ』をするだろう。

自分では『それ』のために付き合ったつもりで、1日でも早く『それ』をしたいと思っていたがここにきて、まなみと『それ』をすることは果たして正解なのかと考えるようになっていた。

『それ』を経験した後の自分を想像するのが怖かったのかもしれない。

もし『それ』の先に何もないと知れば僕はどうなるのだろうか?

反対に『それ』にますます溺れていく自分も怖かった。

寒い冬の夜1人公園を彷徨う僕がいた。






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