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第23話 読破

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絶対に彼のような生き方はできない

本を読み終えた僕はベランダに出て冬の冷たい風を浴びながらそう感じていた。彼の人間性に感服するとともに、彼女は彼に愛されて幸せ者だ。反対に、まなみは僕に愛されておらず『それ』のための存在に過ぎない可哀想な人だ。そして何よりも僕は最低な人間だ。

僕は罪を償う罪人のごとく、ベランダで冷たい風に打たれ続けた。寒さで震える手を懸命に動かしまなみにメールを送った。

「こんばんは。楽しみやなあ!
僕も緊張するわ
家デートあんまりしたことないん?」

すぐにメールが返ってきた。

「こんばんは。
私家デートするの初めて!
したことあるの~?」

初めてな訳あるか、中学生の同級生に聞いたぞ。それとも、男の家かホテルに行ってたのか……

「初めてなんや!
僕は何回かあるよ~」

当然嘘だ

「うん。
家デートで何してたの~?」

「映画見たりお話したりしてたかなあ」

「そうなんだ。
じゃあ、土曜日私達も映画見たりお話しよう!」

「そうしよう!
眠たくなったしそろそろ寝るわ
おやすみ」

「私も寝ます~
おやすみ」

寝るというのは当然嘘でただ、めんどくさくなっただけだ。

僕は体を鈍らせないよう、ランニングに出かけることにした。ランニングコースは近くの公園まで行き公園内を1周して家に帰るといういたってシンプルなものだ。スポーツウェアに着替えてランニングシューズを履き玄関を出た。

時刻は23時を過ぎた頃、僕は寒い冬の夜、答えを追い求めるかのように走った。








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