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「お待ちください。どうかどうか。」

おじいちゃんに深々ーと頭を下げられ、ついで周囲のオヤジも深々ーと頭を下げる珍事?に2人は困惑した。
何しろ2人は日本人、年上のしかもおじいちゃんに深々頭を下げられたままのこの状況はものすごく居心地が悪い。
悪いことしたわけじゃないのに罪悪感というか、こう、心に突き刺さる光景だ。

「あの、えっと。頭を上げてくれませんか?なんと言うか心臓に悪いんで。」

「僕たち待ちますから、どうか頭をあげてください。」

美香と聖が慌てふためきつつ、おじいちゃんに声をかける。

「おおー、ありがとうござますありがとうございます。」

感激した様子でおじいちゃんが頭を上げる。

「私、フォーテム王国の魔術長官でアルブム・バルバと申します。あなた方にこの世界を救っていただきたく、了承も得ずに召喚をしましたこと、大変申し訳なく思っております。突然のことで混乱されていると思いますが、どうぞこの世界をお救いくださいませ。」

おじいちゃん、ことアルブムはそう話すと再び深々ーと頭を下げた。

「え?めっちゃ設定細かいね。これがコスプレする人たちの常識?パないね。」

「すごいね。光の演出で目が開けられないうちに僕らの周りに集まって、召喚かー。すごいね、これドッキリかもよ?」

「え?何?どっかにカメラ仕込まれてる?」

「とりあえず話合わせとく?おじいちゃんが必死に頑張ってるなら助けてあげないと。」

「そうね、ドッキリって気付いてるってわかったら可哀想だし、気付いてないフリしてあげよう。」

「よし、じゃあその方向でいこうか。」

周りに聞こえないよう小声で、ドッキリに乗ることに決めた。

「えっと、ご丁寧に?ありがとうございます。」

「先ほど、僕たちに世界を救って欲しい、と言ってましたが、具体的にはどのようなことでしょう?」

次に進めるべく返答すると

「はい。お2人には、もうすぐ生まれる魔王を退治していただきたいのです。つい先日神託がありました。もうすぐ魔王が再び誕生すると。魔王が現れると魔物が活性化し、多くの人々が魔物の犠牲となります。どうかどうかこの世界を魔王からお救いください。」

そう言うと再び頭を下げてきた。

2人は顔を見合わせる。

「えっと、よくある設定だよね?召喚されて魔王倒して!お願い勇者様!みたいなの。」

「じゃあ僕たちが勇者役ってことかな?」

「2人勇者ってこと?珍しいパターンだよね。」

「さっきね、聖女って聞こえたよ?美香ちゃん聖女じゃないかなぁ。」

「えっ。私聖女って柄じゃないよ?」

「僕も勇者ってタイプじゃないなぁ。おじいちゃんには可哀想だけど、ミスキャストじゃないかな。」

コソコソと美香と聖は意見をだしつつ、内容をまとめる。

「よし!おじい・・・えっとアルバム?さん」

「違うよ美香ちゃん。アルブムさんだよ。」

「うえっ。すみませんアルブムさん!どうやって魔王って斃すんですか?」

「いえいえ。それで、魔王討伐について書かれた古い文献によりますと、勇者様と聖女様が神より授かったお力で斃されたとしか。お2人をこうして目の前にいたしますと、とても力強い魔力を感じます。・・・ちなみに、先ほど貴方様がお使いになったのは治癒魔法でした。これは光属性の魔力をお持ちだと言うことになります。」

アルブムさんは治癒魔法の話をしたところで聖を見ていた。

「えっ?さっき?」

だが、何のことか分からなず聖はただ困惑する。

「ええ。そちらのお嬢さんに貴方様が手をかざした際、光ったでしょう?あれが治癒魔法です。」

「ええ!美香ちゃんの頭触った時に光ったのって見間違いじゃなかったの!?」

「ちょっと、聖なんの話してるの?治癒魔法?」

美香は不審そうに聖をみる。

「治癒魔法・・・美香ちゃん頭痛治ったんだよね?」

聖は確認するように美香に尋ねる。

「へっ?ああ、うん。あんなに痛かったのが嘘みたいに、今はなんともないよ。」

すると聖は窺うようにアルブムをみた。

「ほほ。そうです。貴方様が治されたのです。」

アルブムはうんうん頷いている。そして聖はと言うと

「でも、地球じゃそんなこと・・・ドッキリじゃない?手品とか・・・?」

何やらブツブツ言っている。
そして美香はと言うと、会話についていけず周囲をキョロキョロ見回していた。

そして・・・
見つけてしまった。

窓の外、お空に浮かぶ2を。


「!”#$%&’!?」

バンバンバンバン!!

美香は声にならない叫びと共に隣にいた聖の肩を叩きまくる。
流石に聖も深く沈んだ思考の海から意識を浮上させ

「イタっ、痛いよ、美香ちゃん。どうしたの?」

美香を落ち着かせようとするが

「しょ、聖!!あれ、アレ、アレーーーー!」

ワナワナと空を指差す。

「何?あれって・・・・・!?!?」

2人の目に映る、2つの太陽。
地球では絶対にあり得ない景色があったのだ。


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