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第二章 『厄介な日常』

どんな関係?

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 運転手さんに言われた通り緑の扉の先を行くと、体育館によくある校歌が刻まれた掲示物並のサイズの小熊さんの写真が現れた。
 角度的に盗撮に近い形で撮影されたものと理解できる。小熊さんは写真に撮られるのをあまり好まないであろうことも加えて判る。
 しかしそれよりも、俺達には気になる事があった。
 この部屋の広さ? うん、まあ体育館5つ分くらいか? そんなことはいいんだ。いやよくはない、とんでもない事だぞ、勿論。
 いやしかし、それよりも驚愕すべき光景が眼前にあるのだ。

「ねーねー金子~、お菓子まだ?」
「夢菜様お待ち下さい。只今」

「鈴木~。愛お姉ちゃんは?」
「えっと、多田様がお見えになっているのでもうそろそろいらっしゃるかと」

「あ~、ちょっと化粧ミスったかも。鏡貸して」
「畏まりました。こちらを」
「ありがと~。って、うわ。思ってたよりひどい。お手洗い行ってくるわ」

 使用人さんに抱きかかえられているような乳飲み子から、20歳を越えていそうな大人びた人達。
 小熊さんの知り合いと考えれば自然だが、妙にこの家に馴染んでいる。まさか、愛ちゃんの兄弟なのか……?
 だとすると、人数がエグすぎるのだが。1クラス分は居るぞ。
「な、なぁ多田。あの人等って──」
「「あー、居たーー!」」
 耳が割れそうになる程の声を2人揃って出して、彼女達は現れた。
「もう、何先に行ってるんですか! 探しちゃいましたよ!」
「本当よ! 焦っちゃったじゃないの」
「ご、ごめん。話し掛けられない雰囲気だったから」
「全く」
 呆れてやれやれとため息をつく加納院さん。しかしその様子からはもう、怒りや不満は感じ取れない。
 俺達が無断でここまで来た事は決して無意味ではなかったのかな。
「先に行ってしまったことは詫びるが、それよりも訊きたいことがある」
 興味津々さを隠せそうで隠せていない香山は俺も引くくらいに愛ちゃんに近付いた。
 香山は色々無関心に見えるかもしれないが、無表情が多いだけであって、興味がない訳ではないのだ。過去それを勘違いされて困った経験があるみたいなので、皆もそこは書き違えないように。
「それよりって……。はい、なんでしょう」
「ここには幼子やら大人やら沢山居るみたいだが、兄弟なのか?」
「あぁ、その事ですか」
 そういえば何も説明したことありませんね、といった感じの顔で、愛ちゃんはざっくりとした説明を開始する。
「私の父は、困っている者を放っておけない性格でして。孤児みなしごや捨てられた動物など、沢山の命を連れ帰るのです。ですから、血の繋がりのない兄弟が多く存在するのです。あ、結菜ゆな~。私はここですよ~」
「お姉ちゃん! おかえりっ」
 先程愛ちゃんを探していた女の子(結菜ちゃん)がこちらに駆け寄ってきた。
「ただいま~。あ、そうそう結菜。この方が晃狩さんですよ」
 仲良さそうに妹と手を繋ぐ愛ちゃんに名を呼ばれ、反応に少し困ったものの「こんにちは」と無難に挨拶。勿論、とびきりの笑顔で。
 香山が俺の笑顔を馬鹿にしたようにニヤニヤしているが、日常茶飯事だ。
「ちなみにですが香山さん。遺伝子的な神田家の兄弟は4人です。あそこのメイク直しの人が長女で、中央の大きな人が長男で、今多分メイク直しで居ない人が次女で、私が三女の末っ子です」
「なるほど。なんだか少なく感じるな」
 愛ちゃんのお姉さんメイク直しすぎだろ……。別に悪いことではないんだけど、ちょっとビックリしただけなんだけど!
 ──パッ。
「!? 何だ何だ?」
 突然辺りが暗闇に。
《皆様お聞き下さい。本日誕生日の小熊凛々がこちらに近付いていますので、すぐに準備をお願いします》
 部屋内に放送が流れると同時に、クラッカーのようなものが配布される。
「扉が開くいたらすぐに鳴らしてください。お願い致します」
「はい」
《クラッカーは行き渡りましたでしょうか? 放送を繰り返します。小熊凛々が接近していますのでご準備お願いします》
 もうすぐ、もうすぐ始まるんだ。
 小熊さんの誕生日パーティーが!
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