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第一章
どうして
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そこに居たのは、憤怒の形相を浮かべる戸山君だった。
「何、してんの?」
彼は女子達にそう問い掛けた。
突然の戸山君の登場に、ドギマギしている彼女達。
「いや、えっと……。この女が海斗に近付こうとしてるから、叱ってあげたのよ」
女子の一人がそう言って、私を指差した。
それの言葉を聞き、戸山君の表情がより険しくなる。
「あのさ、俺、君達にそんな事頼んだかな? ……頼んでないよね? それなのに勝手な事されると、迷惑でしかないんだけど」
(正論……!)
私には到底言えない事を、彼は堂々と述べていく。少しも物怖じしていないその様子は、ちょっと羨ましかった。
そしてその言葉は、確実に彼女達にダメージを与えていた。
「で、でも! こんなのに付きまとまれたら海斗だって迷惑でしょ? だから、アンタの気持ちを代弁というか……」
「だから、それが迷惑だって言ってるの。分からない?」
「う……」
何も言い返せない、彼女達。
ここまで簡単にいくのか、戸山君が場に加わるだけで。
「それにさ、君達の勘違いを勝手に押し付けないでくれない? 気分悪いんだけど。自分の見た事や聞いた事が、全て本当の事だと思わない方がいいよ」
戸山君は彼女達のリーダーのらしきロングヘアーの子にズイと近付き、彼女を睨みつけながらそう言った。
「ハンッ。何よ、まさか海斗、木嶋夕梨のことが好きなの?」
ヒヤリとした。
彼なら、『付き合っている』と言ってしまうかもしれない。
そうすればたちまち噂が学年中に広まり、私は目立つ存在になってしまう可能性がある。
彼女らは、絶対に噂を広める。そういう人種だ。見たらわかる。
「うん。だから何なの?」
まっすぐとロングヘアーの子を見つめて、戸山君は言った。
彼の堂々たる態度に、ロングヘアーの子は絶句してしまう。
もちろん、私も何も言えなくなってしまった。
真っ直ぐすぎるのだ、彼は。
「分かったら、さっさとどっか行って。──目障り」
戸山君はロングヘアーの子を鋭く睨みつけた。
「……チッ」
彼女は舌打ちをして、逃げるように歩いていった。
「木嶋さん、大丈夫だった?」
先程の怒りの表情から一変、戸山君は私に微笑みかけた。
「あ……は、はい」
「それならいいんだけどね。だけど、ああいう輩にはちゃんといってやった方がいいよ。正論言われたら、すぐに尻尾巻いて逃げるから」
彼はやはり分かっていない。いや、彼だけではないな。彼方君もそうだ。自分と同じ立ち位置であるのは前提で、話を進める。
何度も言うが、私があんなキラキラした女子に本音をぶつけられるわけが無いだろう。
「あぁ、う、うん」
助けてもらったのに悪いが、私にとってはこの状況も軽く地獄だ。
やれやれ。さっきの呼び出しといい、今日はとことん運が悪い。
「それにしても、噂が広まるのって早いね。しかも内容は間違ってるしさ……。ああいうのって、誰が流してるんだろうね」
知る訳が無いだろう。
だが、そんな事は絶対に口に出せない。
「さ、さあ──」
「アタシよ!」
突如、ツインテールの小柄な女子が目の前に現れた。
「え?」
だ、誰だ急に!?
「何、してんの?」
彼は女子達にそう問い掛けた。
突然の戸山君の登場に、ドギマギしている彼女達。
「いや、えっと……。この女が海斗に近付こうとしてるから、叱ってあげたのよ」
女子の一人がそう言って、私を指差した。
それの言葉を聞き、戸山君の表情がより険しくなる。
「あのさ、俺、君達にそんな事頼んだかな? ……頼んでないよね? それなのに勝手な事されると、迷惑でしかないんだけど」
(正論……!)
私には到底言えない事を、彼は堂々と述べていく。少しも物怖じしていないその様子は、ちょっと羨ましかった。
そしてその言葉は、確実に彼女達にダメージを与えていた。
「で、でも! こんなのに付きまとまれたら海斗だって迷惑でしょ? だから、アンタの気持ちを代弁というか……」
「だから、それが迷惑だって言ってるの。分からない?」
「う……」
何も言い返せない、彼女達。
ここまで簡単にいくのか、戸山君が場に加わるだけで。
「それにさ、君達の勘違いを勝手に押し付けないでくれない? 気分悪いんだけど。自分の見た事や聞いた事が、全て本当の事だと思わない方がいいよ」
戸山君は彼女達のリーダーのらしきロングヘアーの子にズイと近付き、彼女を睨みつけながらそう言った。
「ハンッ。何よ、まさか海斗、木嶋夕梨のことが好きなの?」
ヒヤリとした。
彼なら、『付き合っている』と言ってしまうかもしれない。
そうすればたちまち噂が学年中に広まり、私は目立つ存在になってしまう可能性がある。
彼女らは、絶対に噂を広める。そういう人種だ。見たらわかる。
「うん。だから何なの?」
まっすぐとロングヘアーの子を見つめて、戸山君は言った。
彼の堂々たる態度に、ロングヘアーの子は絶句してしまう。
もちろん、私も何も言えなくなってしまった。
真っ直ぐすぎるのだ、彼は。
「分かったら、さっさとどっか行って。──目障り」
戸山君はロングヘアーの子を鋭く睨みつけた。
「……チッ」
彼女は舌打ちをして、逃げるように歩いていった。
「木嶋さん、大丈夫だった?」
先程の怒りの表情から一変、戸山君は私に微笑みかけた。
「あ……は、はい」
「それならいいんだけどね。だけど、ああいう輩にはちゃんといってやった方がいいよ。正論言われたら、すぐに尻尾巻いて逃げるから」
彼はやはり分かっていない。いや、彼だけではないな。彼方君もそうだ。自分と同じ立ち位置であるのは前提で、話を進める。
何度も言うが、私があんなキラキラした女子に本音をぶつけられるわけが無いだろう。
「あぁ、う、うん」
助けてもらったのに悪いが、私にとってはこの状況も軽く地獄だ。
やれやれ。さっきの呼び出しといい、今日はとことん運が悪い。
「それにしても、噂が広まるのって早いね。しかも内容は間違ってるしさ……。ああいうのって、誰が流してるんだろうね」
知る訳が無いだろう。
だが、そんな事は絶対に口に出せない。
「さ、さあ──」
「アタシよ!」
突如、ツインテールの小柄な女子が目の前に現れた。
「え?」
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