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理由
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二人は同時に、声の方を振り返る。
そこに居たのは──死んだ筈の、ナー=チュアーだった。
「な、何故生きて……」
ナーの姿は、先程とまるで変化していなかった。
もはや赤色に見える(が一応)オレンジ色の一部穴の空いたドレスを身に纏い、相も変わらず圧倒的な美しさを保っている。
だが、血まみれなのが原因なのか、狂気じみたように見える。
「流石は私。演技力が高くて惚れ惚れしちゃう、なんてねっ」
ナーは自分自身を抱きしめるかのように両肩に手を置いた。
「質問に答えて」
ドニーが怒気を帯びた声で言うと、ナーは彼女の方を見た。
ナーの青い瞳はずっと輝き続けているが、どこか異変を感じる。
「あら、貴女が言ってたのですよ? ヒヒッ。質問に答えるには、順番というものがあるって」
ドニーが明らかに不機嫌になる。
「クソがっ」
「ハァーまあ、落ち着きなさいな」
ナーが両腕をゆっくり上下に動かし、ドニーをなだめるように言った。
「何故、私は生きているのか? ……という疑問について、ズバリ……! 死ななかったから! です」
ドニー、そしてコニーは、呆気にとられたような顔をした。
「……。そんなのは解るわ!」
「僕らが訊いているのは、どのようにして死ななかったのか、ということなんだ」
ナーはわざとらしく驚いた。
「まあ、それはそれは……う~ん。実を言うと、私の体に、銃弾は当たっていないのですよ」
「「はぁ!?」」
兄妹は声を揃えて叫んだ。
(私があんなに必死になって、至近距離で撃ったあの弾が……当たっていなかった?)
「あらあら、そんなに驚きます? ……まあ、普通はそうですけど……」
「どうしてだ!」
ドニーがナーを睨みつける。
「おお、怖い怖い。そうですね……ドニーさんは、私が昔大量の毒を飲んでいたのをご存知でしょう?」
「さっき聞いたな」
(え……毒?)
周りがあまりにもシリアスな雰囲気のため声には出さなかったが、コニーは一人動揺していた。
「そのお陰で、まあ、体が勝手に強くなっていったんですよ」
「でも薬を飲んでいたんじゃないのか?」
(……? クスリ……って何の!?)
コニーの表情からはこの状況を理解していないというのが見て取れるが、彼以外の二人はもはや彼の事など見ていなかった。
「ええ、まあそうなんですけどね。ですが、単純に毒に体が対応できるようになっていったという部分もありますよ」
「……だが銃弾は毒じゃない。あの距離じゃ、絶対に避けられなかった!」
ナーに向けて銃を撃った記憶が、ドニーの中で蘇る。
銃口は、ナーの胸に、しっかりと収まっていた。
それで当たっていないなんて、(組織の)リーダーに何と思われるか。
ナーがニヤリと笑う。
「その理由は──」
ナーは窓の前に移動した。
(木が揺れているのに、風が吹いていない……?)
ドニーは気が付いた。
しかしそれは、窓が閉じていれば当たり前の話、なのだが──
窓は、開いている。
(私の元には、届かないだけ?)
そこまで不審に思う事ないだろう。と、考える人がいるかもしれない。
しかし、彼女は知っているのだ。
(この森には、何かある!)
そこに居たのは──死んだ筈の、ナー=チュアーだった。
「な、何故生きて……」
ナーの姿は、先程とまるで変化していなかった。
もはや赤色に見える(が一応)オレンジ色の一部穴の空いたドレスを身に纏い、相も変わらず圧倒的な美しさを保っている。
だが、血まみれなのが原因なのか、狂気じみたように見える。
「流石は私。演技力が高くて惚れ惚れしちゃう、なんてねっ」
ナーは自分自身を抱きしめるかのように両肩に手を置いた。
「質問に答えて」
ドニーが怒気を帯びた声で言うと、ナーは彼女の方を見た。
ナーの青い瞳はずっと輝き続けているが、どこか異変を感じる。
「あら、貴女が言ってたのですよ? ヒヒッ。質問に答えるには、順番というものがあるって」
ドニーが明らかに不機嫌になる。
「クソがっ」
「ハァーまあ、落ち着きなさいな」
ナーが両腕をゆっくり上下に動かし、ドニーをなだめるように言った。
「何故、私は生きているのか? ……という疑問について、ズバリ……! 死ななかったから! です」
ドニー、そしてコニーは、呆気にとられたような顔をした。
「……。そんなのは解るわ!」
「僕らが訊いているのは、どのようにして死ななかったのか、ということなんだ」
ナーはわざとらしく驚いた。
「まあ、それはそれは……う~ん。実を言うと、私の体に、銃弾は当たっていないのですよ」
「「はぁ!?」」
兄妹は声を揃えて叫んだ。
(私があんなに必死になって、至近距離で撃ったあの弾が……当たっていなかった?)
「あらあら、そんなに驚きます? ……まあ、普通はそうですけど……」
「どうしてだ!」
ドニーがナーを睨みつける。
「おお、怖い怖い。そうですね……ドニーさんは、私が昔大量の毒を飲んでいたのをご存知でしょう?」
「さっき聞いたな」
(え……毒?)
周りがあまりにもシリアスな雰囲気のため声には出さなかったが、コニーは一人動揺していた。
「そのお陰で、まあ、体が勝手に強くなっていったんですよ」
「でも薬を飲んでいたんじゃないのか?」
(……? クスリ……って何の!?)
コニーの表情からはこの状況を理解していないというのが見て取れるが、彼以外の二人はもはや彼の事など見ていなかった。
「ええ、まあそうなんですけどね。ですが、単純に毒に体が対応できるようになっていったという部分もありますよ」
「……だが銃弾は毒じゃない。あの距離じゃ、絶対に避けられなかった!」
ナーに向けて銃を撃った記憶が、ドニーの中で蘇る。
銃口は、ナーの胸に、しっかりと収まっていた。
それで当たっていないなんて、(組織の)リーダーに何と思われるか。
ナーがニヤリと笑う。
「その理由は──」
ナーは窓の前に移動した。
(木が揺れているのに、風が吹いていない……?)
ドニーは気が付いた。
しかしそれは、窓が閉じていれば当たり前の話、なのだが──
窓は、開いている。
(私の元には、届かないだけ?)
そこまで不審に思う事ないだろう。と、考える人がいるかもしれない。
しかし、彼女は知っているのだ。
(この森には、何かある!)
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