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目覚め
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少女が目を覚ますと、ベッドの上に居た。
(痛っ……)
少女は少し動いただけで、体に謎の激痛が走る──
演技をしていた。
心の声すらも偽って、自分を隠そうと。
少女が左を向くと、そこには少女が居るベッドと全く同じ物がズラリと並べられていた。
その上には、見知らぬ人間たちが大勢いた。
その中に一人、少女は見つけた。
──自分の大切な人を。
(やっぱり……)
今すぐ彼と共にここから逃げ出したい。
しかし、彼を目覚めさせるには少々時間がかかる。
その間に奴が、ナー=チュアーがこの部屋に来る可能性がある。
それは望ましくない事だ。避けなければ。
「だから……まずは彼女を殺さないと……!」
少女が呟いた。
それを聞いていたであろう一人の青年は、満足そうな表情を浮かべた。
「♪~」
ナーは鼻歌を歌いながら一人お茶を飲んでいた。
いつの間にか、あんなにひどかった雨もやんでいた。
「ウフフ。貴方も嬉しいの?」
彼女は森に問いかけた……のだろう。
(森に話しかけるなんて……やっぱりあの人は、狂ってる)
少女は部屋の外で、ナーの台詞を聞いていた。
「もうそろそろいい頃かしら? フフッ……大丈夫よ、蓄えはあるから」
少女にはナーがその場に一人とは思えないくらいに自然な会話をしているように見えた。
(今なら、いけるかも……)
少女はナーの部屋に入り込み、彼女に向けて銃を構えた。
ナーはそんな少女を冷静に見つめていた。
「……まずは、貴女がどうして生きているのか、訊いても?」
(笑顔じゃなくなってる……多少は動揺、してるのかも)
「ええ、もちろん。まず私は、ここの事を知っている。アナタがこの森の周辺の、文化の遅れた人々を狙って毒茶・「ナー」で殺している事を」
少女は落ち着いた様子で話そうとしたが、内心緊張していた。
そして、それをナーは見抜いた。
「質問の答えになっていませんよ?」
これは単なる疑問なのか、煽りなのか。
少なくとも少女は、煽りととったようだ。
「うるさい。順番というものがある」
ナーに、余裕が出始める。
顔に、笑みが浮かぶ。
「随分と、口調が変わりましたねぇ……ウフフッ」
(! ……落ち着け。堂々としてないと)
「と、とにかく! 私は解毒薬をあらかじめ飲んでいたんだ! だから死ななかった!」
「そう。それで、誰に命令されてここへ? 兄を殺された復讐……って感じてもないですし」
ナーがゴクリと茶を飲んだ。
「──組織。アナタに親戚を殺された人が立ち上げたもの。私は殺人が嫌いだから入った。それだけ。……そのお茶、もしかして」
(痛っ……)
少女は少し動いただけで、体に謎の激痛が走る──
演技をしていた。
心の声すらも偽って、自分を隠そうと。
少女が左を向くと、そこには少女が居るベッドと全く同じ物がズラリと並べられていた。
その上には、見知らぬ人間たちが大勢いた。
その中に一人、少女は見つけた。
──自分の大切な人を。
(やっぱり……)
今すぐ彼と共にここから逃げ出したい。
しかし、彼を目覚めさせるには少々時間がかかる。
その間に奴が、ナー=チュアーがこの部屋に来る可能性がある。
それは望ましくない事だ。避けなければ。
「だから……まずは彼女を殺さないと……!」
少女が呟いた。
それを聞いていたであろう一人の青年は、満足そうな表情を浮かべた。
「♪~」
ナーは鼻歌を歌いながら一人お茶を飲んでいた。
いつの間にか、あんなにひどかった雨もやんでいた。
「ウフフ。貴方も嬉しいの?」
彼女は森に問いかけた……のだろう。
(森に話しかけるなんて……やっぱりあの人は、狂ってる)
少女は部屋の外で、ナーの台詞を聞いていた。
「もうそろそろいい頃かしら? フフッ……大丈夫よ、蓄えはあるから」
少女にはナーがその場に一人とは思えないくらいに自然な会話をしているように見えた。
(今なら、いけるかも……)
少女はナーの部屋に入り込み、彼女に向けて銃を構えた。
ナーはそんな少女を冷静に見つめていた。
「……まずは、貴女がどうして生きているのか、訊いても?」
(笑顔じゃなくなってる……多少は動揺、してるのかも)
「ええ、もちろん。まず私は、ここの事を知っている。アナタがこの森の周辺の、文化の遅れた人々を狙って毒茶・「ナー」で殺している事を」
少女は落ち着いた様子で話そうとしたが、内心緊張していた。
そして、それをナーは見抜いた。
「質問の答えになっていませんよ?」
これは単なる疑問なのか、煽りなのか。
少なくとも少女は、煽りととったようだ。
「うるさい。順番というものがある」
ナーに、余裕が出始める。
顔に、笑みが浮かぶ。
「随分と、口調が変わりましたねぇ……ウフフッ」
(! ……落ち着け。堂々としてないと)
「と、とにかく! 私は解毒薬をあらかじめ飲んでいたんだ! だから死ななかった!」
「そう。それで、誰に命令されてここへ? 兄を殺された復讐……って感じてもないですし」
ナーがゴクリと茶を飲んだ。
「──組織。アナタに親戚を殺された人が立ち上げたもの。私は殺人が嫌いだから入った。それだけ。……そのお茶、もしかして」
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