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初々しい二人
7.ドッキドキ!?な、お出掛け![前編]
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今日、沙愛蘭と純華は二人でショッピングモールに訪れていた。
純華が強引に誘い、沙愛蘭はそれを断る事ができなかった。という感じで今に至る。
ちなみに、今の沙愛蘭の思考はこうだ。
(雨宮さんの私服初めて見たけど……。何だろう。いつも通りヤンキーみたいな感じなのに、雨宮さん自体が綺麗だからなのか、すごいお洒落……!)
純華が着用しているのは、白黒のボーダーシャツと、制服時と同じようなロングスカート。
対する沙愛蘭の服装は、黄色の爽やかなワンピース。
(隣に居たら私すごい見劣りするよなぁ……。恥ずかしい)
しかし純華は隣の沙愛蘭がそんな事を考えているなんて露知らず、
(うっしゃーー!寄り道の事もあって頼みづらかったけど、とうとう二人で出掛けられたよー!)
という具合に心の中で舞い上がっていた。
今の二人の心情。
ハッキリ言って正反対である。
ついでに言っておくが、こんな場面に紅麗亜が付いていかない筈がない。
普通ならば。
ただ、三人中一人、彼女は部活動に所属しているのだ。
家の方針で、彼女は部活動の欠席を許されない。
旅行で学校を休んでいたにも関わらず、だ。
まあ今回は紅麗亜の事は置いておこう。
「何か気になる店とかあるかいぃ?」
気持ちが昂ぶリ過ぎて、話し方までおかしくなる純華。
そんな事よりも不安が上回り、まともに話を聞いていない沙愛蘭。
「……」
「あれぇ?さ、沙愛蘭ぁ?」
ビクッ!
「ご、ごめんなさい!なんでしょう!」
不安と緊張が混じった結果、沙愛蘭は敬語になった。
本来は笑うべきところであるのだろうと察しつつ、口角がなかなか上がらない純華。
言い返せずにできた沈黙が、二人をどんどん気まずくする。
「……」
「……」
(どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう……)
自分を責め、パニックに陥っている沙愛蘭。
(くそぉ!なんで気まずくなるんだい!?せっかく誘ったのに……!)
先程まで舞い上がっていた純華だが、今となっては心の中で泣いている。
そのまま二人は何も話せず、モール内をぐるぐると歩き続ける。
(このままじゃ駄目だ……!これから先、永遠に二人で出掛けられなくなる……)
純華が本格的に危機感を感じ、一言声を掛けようとした、その時──
「あの、沙愛──」
「えっと、雨宮さん、お手洗い行ってきていい?」
顔を赤らめ目を逸らし、申し訳なさそうに訊く沙愛蘭。
(不意打ち……!)
純華は手で顔を覆い隠した。
「も、もちろん!」
「あ、ありがとう。ごめんね……」
(久しぶりに見たなアレ……)
割と簡単に気まずさは打開され、二人はトイレに向かっていった。
「結構混んでるね…。一人で待ってて退屈にじゃない?」
「大丈夫だよ。沙愛蘭は優しいねぇ」
「……そんなこと無いよ。じゃあ並んでくるね」
その言葉を最後に、沙愛蘭は女子トイレの列に並んでいった。
純華は彼女の姿が見えなくなったのを確認し、バッグからスマホを取り出した。
イヤホンを装着し、音楽を聴いている。
──ように、見えるであろう。
しかし、実際は。
(最近慣れてきたけど急な赤面は辛い!あんなの直視できないだろう!うあーー!アタイ変な顔してなかったかな……?)
などと悶えている。
◇ ◇ ◇
(まだ結構いるな~)
沙愛蘭が周りを見渡すと、ほとんどの人が待ち時間をスマホを見ながら過ごしていた。
(そういえば雨宮さんも持ってたなぁ。高校生の必需品っていうし、今度買ってもらおうかなぁ……)
などなど考えていくうち、自然と自分の番が近付いてくる。
(あ!端空いた!)
前に入っていた女性が出るのを確認し、沙愛蘭は急いで個室の中へ。
ササッと用を足し、すぐに個室から出る。
手を洗い終えた沙愛蘭がトイレから出ようとした、その瞬間──
「!?……」
目が合った。確実に。
その相手は──
沙愛蘭が一番会いたくなかった、佐々木香彩であった。
(どうして……)
香彩はスマホをバッグにしまい、ニヤリと、悪そうな笑みを浮かべた。
見慣れた表情であるが、沙愛蘭はそれを見てビクリと震える。
「まさかこんなとこでアンタと出会えるとはねぇ?……いつの間にか人生エンジョイしちゃって……似合わないわよ」
聞き慣れたその声。
芯があり、暗く、低い声。
かつての記憶が、蘇ってくる。
「な~んも言い返せないのね。まあ、アンタらしいけど」
香彩はトイレの順番待ちの列から外れ、沙愛蘭の手を引いてパウダールームへ向かう。
そこでメイクを直していた数名の女性が二人を見て迷惑そうな顔をしたが、香彩はそんなのお構いなしだ。
「最近構ってあげられなくてごめんねぇ?今は一人だけど、あの子達(取り巻き)すぐ来るから安心して?」
怒りに満ちた笑顔の香彩が、じりじりと沙愛蘭に歩み寄り、壁に追い込む。
(ど、どうしよう……!)
すでに沙愛蘭は、少々涙を流していた。
─────────────────────────────
※補足説明※
一応のため説明です。
佐々木香彩は、プロローグ辺りの時代に沙愛蘭をいじめていたグループのリーダーとなります。
純華が強引に誘い、沙愛蘭はそれを断る事ができなかった。という感じで今に至る。
ちなみに、今の沙愛蘭の思考はこうだ。
(雨宮さんの私服初めて見たけど……。何だろう。いつも通りヤンキーみたいな感じなのに、雨宮さん自体が綺麗だからなのか、すごいお洒落……!)
純華が着用しているのは、白黒のボーダーシャツと、制服時と同じようなロングスカート。
対する沙愛蘭の服装は、黄色の爽やかなワンピース。
(隣に居たら私すごい見劣りするよなぁ……。恥ずかしい)
しかし純華は隣の沙愛蘭がそんな事を考えているなんて露知らず、
(うっしゃーー!寄り道の事もあって頼みづらかったけど、とうとう二人で出掛けられたよー!)
という具合に心の中で舞い上がっていた。
今の二人の心情。
ハッキリ言って正反対である。
ついでに言っておくが、こんな場面に紅麗亜が付いていかない筈がない。
普通ならば。
ただ、三人中一人、彼女は部活動に所属しているのだ。
家の方針で、彼女は部活動の欠席を許されない。
旅行で学校を休んでいたにも関わらず、だ。
まあ今回は紅麗亜の事は置いておこう。
「何か気になる店とかあるかいぃ?」
気持ちが昂ぶリ過ぎて、話し方までおかしくなる純華。
そんな事よりも不安が上回り、まともに話を聞いていない沙愛蘭。
「……」
「あれぇ?さ、沙愛蘭ぁ?」
ビクッ!
「ご、ごめんなさい!なんでしょう!」
不安と緊張が混じった結果、沙愛蘭は敬語になった。
本来は笑うべきところであるのだろうと察しつつ、口角がなかなか上がらない純華。
言い返せずにできた沈黙が、二人をどんどん気まずくする。
「……」
「……」
(どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう……)
自分を責め、パニックに陥っている沙愛蘭。
(くそぉ!なんで気まずくなるんだい!?せっかく誘ったのに……!)
先程まで舞い上がっていた純華だが、今となっては心の中で泣いている。
そのまま二人は何も話せず、モール内をぐるぐると歩き続ける。
(このままじゃ駄目だ……!これから先、永遠に二人で出掛けられなくなる……)
純華が本格的に危機感を感じ、一言声を掛けようとした、その時──
「あの、沙愛──」
「えっと、雨宮さん、お手洗い行ってきていい?」
顔を赤らめ目を逸らし、申し訳なさそうに訊く沙愛蘭。
(不意打ち……!)
純華は手で顔を覆い隠した。
「も、もちろん!」
「あ、ありがとう。ごめんね……」
(久しぶりに見たなアレ……)
割と簡単に気まずさは打開され、二人はトイレに向かっていった。
「結構混んでるね…。一人で待ってて退屈にじゃない?」
「大丈夫だよ。沙愛蘭は優しいねぇ」
「……そんなこと無いよ。じゃあ並んでくるね」
その言葉を最後に、沙愛蘭は女子トイレの列に並んでいった。
純華は彼女の姿が見えなくなったのを確認し、バッグからスマホを取り出した。
イヤホンを装着し、音楽を聴いている。
──ように、見えるであろう。
しかし、実際は。
(最近慣れてきたけど急な赤面は辛い!あんなの直視できないだろう!うあーー!アタイ変な顔してなかったかな……?)
などと悶えている。
◇ ◇ ◇
(まだ結構いるな~)
沙愛蘭が周りを見渡すと、ほとんどの人が待ち時間をスマホを見ながら過ごしていた。
(そういえば雨宮さんも持ってたなぁ。高校生の必需品っていうし、今度買ってもらおうかなぁ……)
などなど考えていくうち、自然と自分の番が近付いてくる。
(あ!端空いた!)
前に入っていた女性が出るのを確認し、沙愛蘭は急いで個室の中へ。
ササッと用を足し、すぐに個室から出る。
手を洗い終えた沙愛蘭がトイレから出ようとした、その瞬間──
「!?……」
目が合った。確実に。
その相手は──
沙愛蘭が一番会いたくなかった、佐々木香彩であった。
(どうして……)
香彩はスマホをバッグにしまい、ニヤリと、悪そうな笑みを浮かべた。
見慣れた表情であるが、沙愛蘭はそれを見てビクリと震える。
「まさかこんなとこでアンタと出会えるとはねぇ?……いつの間にか人生エンジョイしちゃって……似合わないわよ」
聞き慣れたその声。
芯があり、暗く、低い声。
かつての記憶が、蘇ってくる。
「な~んも言い返せないのね。まあ、アンタらしいけど」
香彩はトイレの順番待ちの列から外れ、沙愛蘭の手を引いてパウダールームへ向かう。
そこでメイクを直していた数名の女性が二人を見て迷惑そうな顔をしたが、香彩はそんなのお構いなしだ。
「最近構ってあげられなくてごめんねぇ?今は一人だけど、あの子達(取り巻き)すぐ来るから安心して?」
怒りに満ちた笑顔の香彩が、じりじりと沙愛蘭に歩み寄り、壁に追い込む。
(ど、どうしよう……!)
すでに沙愛蘭は、少々涙を流していた。
─────────────────────────────
※補足説明※
一応のため説明です。
佐々木香彩は、プロローグ辺りの時代に沙愛蘭をいじめていたグループのリーダーとなります。
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