8 / 22
初々しい二人
7.ドッキドキ!?な、お出掛け![前編]
しおりを挟む
今日、沙愛蘭と純華は二人でショッピングモールに訪れていた。
純華が強引に誘い、沙愛蘭はそれを断る事ができなかった。という感じで今に至る。
ちなみに、今の沙愛蘭の思考はこうだ。
(雨宮さんの私服初めて見たけど……。何だろう。いつも通りヤンキーみたいな感じなのに、雨宮さん自体が綺麗だからなのか、すごいお洒落……!)
純華が着用しているのは、白黒のボーダーシャツと、制服時と同じようなロングスカート。
対する沙愛蘭の服装は、黄色の爽やかなワンピース。
(隣に居たら私すごい見劣りするよなぁ……。恥ずかしい)
しかし純華は隣の沙愛蘭がそんな事を考えているなんて露知らず、
(うっしゃーー!寄り道の事もあって頼みづらかったけど、とうとう二人で出掛けられたよー!)
という具合に心の中で舞い上がっていた。
今の二人の心情。
ハッキリ言って正反対である。
ついでに言っておくが、こんな場面に紅麗亜が付いていかない筈がない。
普通ならば。
ただ、三人中一人、彼女は部活動に所属しているのだ。
家の方針で、彼女は部活動の欠席を許されない。
旅行で学校を休んでいたにも関わらず、だ。
まあ今回は紅麗亜の事は置いておこう。
「何か気になる店とかあるかいぃ?」
気持ちが昂ぶリ過ぎて、話し方までおかしくなる純華。
そんな事よりも不安が上回り、まともに話を聞いていない沙愛蘭。
「……」
「あれぇ?さ、沙愛蘭ぁ?」
ビクッ!
「ご、ごめんなさい!なんでしょう!」
不安と緊張が混じった結果、沙愛蘭は敬語になった。
本来は笑うべきところであるのだろうと察しつつ、口角がなかなか上がらない純華。
言い返せずにできた沈黙が、二人をどんどん気まずくする。
「……」
「……」
(どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう……)
自分を責め、パニックに陥っている沙愛蘭。
(くそぉ!なんで気まずくなるんだい!?せっかく誘ったのに……!)
先程まで舞い上がっていた純華だが、今となっては心の中で泣いている。
そのまま二人は何も話せず、モール内をぐるぐると歩き続ける。
(このままじゃ駄目だ……!これから先、永遠に二人で出掛けられなくなる……)
純華が本格的に危機感を感じ、一言声を掛けようとした、その時──
「あの、沙愛──」
「えっと、雨宮さん、お手洗い行ってきていい?」
顔を赤らめ目を逸らし、申し訳なさそうに訊く沙愛蘭。
(不意打ち……!)
純華は手で顔を覆い隠した。
「も、もちろん!」
「あ、ありがとう。ごめんね……」
(久しぶりに見たなアレ……)
割と簡単に気まずさは打開され、二人はトイレに向かっていった。
「結構混んでるね…。一人で待ってて退屈にじゃない?」
「大丈夫だよ。沙愛蘭は優しいねぇ」
「……そんなこと無いよ。じゃあ並んでくるね」
その言葉を最後に、沙愛蘭は女子トイレの列に並んでいった。
純華は彼女の姿が見えなくなったのを確認し、バッグからスマホを取り出した。
イヤホンを装着し、音楽を聴いている。
──ように、見えるであろう。
しかし、実際は。
(最近慣れてきたけど急な赤面は辛い!あんなの直視できないだろう!うあーー!アタイ変な顔してなかったかな……?)
などと悶えている。
◇ ◇ ◇
(まだ結構いるな~)
沙愛蘭が周りを見渡すと、ほとんどの人が待ち時間をスマホを見ながら過ごしていた。
(そういえば雨宮さんも持ってたなぁ。高校生の必需品っていうし、今度買ってもらおうかなぁ……)
などなど考えていくうち、自然と自分の番が近付いてくる。
(あ!端空いた!)
前に入っていた女性が出るのを確認し、沙愛蘭は急いで個室の中へ。
ササッと用を足し、すぐに個室から出る。
手を洗い終えた沙愛蘭がトイレから出ようとした、その瞬間──
「!?……」
目が合った。確実に。
その相手は──
沙愛蘭が一番会いたくなかった、佐々木香彩であった。
(どうして……)
香彩はスマホをバッグにしまい、ニヤリと、悪そうな笑みを浮かべた。
見慣れた表情であるが、沙愛蘭はそれを見てビクリと震える。
「まさかこんなとこでアンタと出会えるとはねぇ?……いつの間にか人生エンジョイしちゃって……似合わないわよ」
聞き慣れたその声。
芯があり、暗く、低い声。
かつての記憶が、蘇ってくる。
「な~んも言い返せないのね。まあ、アンタらしいけど」
香彩はトイレの順番待ちの列から外れ、沙愛蘭の手を引いてパウダールームへ向かう。
そこでメイクを直していた数名の女性が二人を見て迷惑そうな顔をしたが、香彩はそんなのお構いなしだ。
「最近構ってあげられなくてごめんねぇ?今は一人だけど、あの子達(取り巻き)すぐ来るから安心して?」
怒りに満ちた笑顔の香彩が、じりじりと沙愛蘭に歩み寄り、壁に追い込む。
(ど、どうしよう……!)
すでに沙愛蘭は、少々涙を流していた。
─────────────────────────────
※補足説明※
一応のため説明です。
佐々木香彩は、プロローグ辺りの時代に沙愛蘭をいじめていたグループのリーダーとなります。
純華が強引に誘い、沙愛蘭はそれを断る事ができなかった。という感じで今に至る。
ちなみに、今の沙愛蘭の思考はこうだ。
(雨宮さんの私服初めて見たけど……。何だろう。いつも通りヤンキーみたいな感じなのに、雨宮さん自体が綺麗だからなのか、すごいお洒落……!)
純華が着用しているのは、白黒のボーダーシャツと、制服時と同じようなロングスカート。
対する沙愛蘭の服装は、黄色の爽やかなワンピース。
(隣に居たら私すごい見劣りするよなぁ……。恥ずかしい)
しかし純華は隣の沙愛蘭がそんな事を考えているなんて露知らず、
(うっしゃーー!寄り道の事もあって頼みづらかったけど、とうとう二人で出掛けられたよー!)
という具合に心の中で舞い上がっていた。
今の二人の心情。
ハッキリ言って正反対である。
ついでに言っておくが、こんな場面に紅麗亜が付いていかない筈がない。
普通ならば。
ただ、三人中一人、彼女は部活動に所属しているのだ。
家の方針で、彼女は部活動の欠席を許されない。
旅行で学校を休んでいたにも関わらず、だ。
まあ今回は紅麗亜の事は置いておこう。
「何か気になる店とかあるかいぃ?」
気持ちが昂ぶリ過ぎて、話し方までおかしくなる純華。
そんな事よりも不安が上回り、まともに話を聞いていない沙愛蘭。
「……」
「あれぇ?さ、沙愛蘭ぁ?」
ビクッ!
「ご、ごめんなさい!なんでしょう!」
不安と緊張が混じった結果、沙愛蘭は敬語になった。
本来は笑うべきところであるのだろうと察しつつ、口角がなかなか上がらない純華。
言い返せずにできた沈黙が、二人をどんどん気まずくする。
「……」
「……」
(どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう……)
自分を責め、パニックに陥っている沙愛蘭。
(くそぉ!なんで気まずくなるんだい!?せっかく誘ったのに……!)
先程まで舞い上がっていた純華だが、今となっては心の中で泣いている。
そのまま二人は何も話せず、モール内をぐるぐると歩き続ける。
(このままじゃ駄目だ……!これから先、永遠に二人で出掛けられなくなる……)
純華が本格的に危機感を感じ、一言声を掛けようとした、その時──
「あの、沙愛──」
「えっと、雨宮さん、お手洗い行ってきていい?」
顔を赤らめ目を逸らし、申し訳なさそうに訊く沙愛蘭。
(不意打ち……!)
純華は手で顔を覆い隠した。
「も、もちろん!」
「あ、ありがとう。ごめんね……」
(久しぶりに見たなアレ……)
割と簡単に気まずさは打開され、二人はトイレに向かっていった。
「結構混んでるね…。一人で待ってて退屈にじゃない?」
「大丈夫だよ。沙愛蘭は優しいねぇ」
「……そんなこと無いよ。じゃあ並んでくるね」
その言葉を最後に、沙愛蘭は女子トイレの列に並んでいった。
純華は彼女の姿が見えなくなったのを確認し、バッグからスマホを取り出した。
イヤホンを装着し、音楽を聴いている。
──ように、見えるであろう。
しかし、実際は。
(最近慣れてきたけど急な赤面は辛い!あんなの直視できないだろう!うあーー!アタイ変な顔してなかったかな……?)
などと悶えている。
◇ ◇ ◇
(まだ結構いるな~)
沙愛蘭が周りを見渡すと、ほとんどの人が待ち時間をスマホを見ながら過ごしていた。
(そういえば雨宮さんも持ってたなぁ。高校生の必需品っていうし、今度買ってもらおうかなぁ……)
などなど考えていくうち、自然と自分の番が近付いてくる。
(あ!端空いた!)
前に入っていた女性が出るのを確認し、沙愛蘭は急いで個室の中へ。
ササッと用を足し、すぐに個室から出る。
手を洗い終えた沙愛蘭がトイレから出ようとした、その瞬間──
「!?……」
目が合った。確実に。
その相手は──
沙愛蘭が一番会いたくなかった、佐々木香彩であった。
(どうして……)
香彩はスマホをバッグにしまい、ニヤリと、悪そうな笑みを浮かべた。
見慣れた表情であるが、沙愛蘭はそれを見てビクリと震える。
「まさかこんなとこでアンタと出会えるとはねぇ?……いつの間にか人生エンジョイしちゃって……似合わないわよ」
聞き慣れたその声。
芯があり、暗く、低い声。
かつての記憶が、蘇ってくる。
「な~んも言い返せないのね。まあ、アンタらしいけど」
香彩はトイレの順番待ちの列から外れ、沙愛蘭の手を引いてパウダールームへ向かう。
そこでメイクを直していた数名の女性が二人を見て迷惑そうな顔をしたが、香彩はそんなのお構いなしだ。
「最近構ってあげられなくてごめんねぇ?今は一人だけど、あの子達(取り巻き)すぐ来るから安心して?」
怒りに満ちた笑顔の香彩が、じりじりと沙愛蘭に歩み寄り、壁に追い込む。
(ど、どうしよう……!)
すでに沙愛蘭は、少々涙を流していた。
─────────────────────────────
※補足説明※
一応のため説明です。
佐々木香彩は、プロローグ辺りの時代に沙愛蘭をいじめていたグループのリーダーとなります。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
かつて僕を振った幼馴染に、お月見をしながら「月が綺麗ですね」と言われた件。それって告白?
久野真一
青春
2021年5月26日。「スーパームーン」と呼ばれる、満月としては1年で最も地球に近づく日。
同時に皆既月食が重なった稀有な日でもある。
社会人一年目の僕、荒木遊真(あらきゆうま)は、
実家のマンションの屋上で物思いにふけっていた。
それもそのはず。かつて、僕を振った、一生の親友を、お月見に誘ってみたのだ。
「せっかくの夜だし、マンションの屋上で、思い出話でもしない?」って。
僕を振った一生の親友の名前は、矢崎久遠(やざきくおん)。
亡くなった彼女のお母さんが、つけた大切な名前。
あの時の告白は応えてもらえなかったけど、今なら、あるいは。
そんな思いを抱えつつ、久遠と共に、かつての僕らについて語りあうことに。
そして、皆既月食の中で、僕は彼女から言われた。「月が綺麗だね」と。
夏目漱石が、I love youの和訳として「月が綺麗ですね」と言ったという逸話は有名だ。
とにかく、月が見えないその中で彼女は僕にそう言ったのだった。
これは、家族愛が強すぎて、恋愛を諦めざるを得なかった、「一生の親友」な久遠。
そして、彼女と一緒に生きてきた僕の一夜の物語。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる