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プロローグ
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いじめを受けている少女・地川沙愛蘭は震えながらコンビニに入る。
冷や汗をかきながら、じりじりとお菓子コーナーへ近付いていく。
(どうしよう……。本当に、やるの?……でも、やらないと何されるか……)
そんな事を考えながら、沙愛蘭はチョコレートを手に取った。
数分それを見つめた後、バッグに入れようとした、その時──
「イヤアアアアアア!」
女性の叫び声が、店外から聞こえた。
沙愛蘭はその声の主がいじめのグループのリーダー・佐々木香彩であることにいち早く気が付いた。
(佐々木さん……彼女が悲鳴をあげるなんて、何があったんだろう)
沙愛蘭はチョコレートを商品棚に戻し、コンビニの外へ飛び出した。
駐車場で腹を抱えて涙目になっていたのは、紛れもなく佐々木香彩であった。
そして香彩の前で仁王立ちしていたのは──男勝りなクラスメート・雨宮純華だった。
「何してるの?雨宮さん」
純華は沙愛蘭の声を聞いた瞬間体をビクリと震わせた。
「いや……その、えっと……こいつにちと喝を入れてやったのさっ」
「?どうして?私、雨宮さんにそんな事される義理、ないよね?」
沙愛蘭は自分を警戒している。
純華はそう思ったようだ。
「す、すまなかったね。確かに、大して話した事も無いようなヤツにこんな事されても嬉しいどころか、怪しいよねぇ」
「……」
沙愛蘭は純華を二十秒程見つめ、香彩に問い掛けた。
「あ、あ、雨宮さんは、さ、佐々木さ……んに、何をしたの?」
自分をいじめている人間にこんな事を訊くなんて、沙愛蘭にとって初めての経験だった。
香彩はそっぽを向いて、
「……腹パンよ」
と呟いた。
沙愛蘭はギョッとした。
(雨宮さんって、中学時代にヤンキーの相手よくしてたっていう噂があるのに!?)
「手加減はしたつもりだけど……そんなに痛かったかい?」
「うるさいわよ!……あ~!もういいわ!アンタ達!行くわよ!」
香彩は顔を赤らめながら、仲間と共に去っていった。
「……」
(何だったの?……それにしても、佐々木さんが逃げていくなんて…雨宮さん、怖っ)
純華は沙愛蘭に向かって頭を下げた。
「すまなかった!勝手な事をして……気が済むまで殴ってもらって構わないよっ」
「えっ!?ちょっ!?やめてよそんな……むしろ……こっちが謝りたいよ。雨宮さんに余計なことさせちゃって」
純華は手で顔を覆い隠しながら頭を上げた。
「?これはアタイの意志で、勝手にやった事だよ?」
「え?……というか、なんで顔隠してるの?」
「それは言えないけど……」
「あ、そうなんだね」
沙愛蘭はにやけていた。
(こんなに嬉しい事って……幼稚園ぶりだな……いじめ関係なしに会話したのって)
「?なんだか嬉しそうだね?」
「え?ま、まあ。……って!目隠れてるよね?なんで見えたの!?」
「それは置いておこうか…………ところで、急で申し訳ないんだけど、私と友達になってくれないかい?」
「え?」
沙愛蘭には、純華が神様に見えた。
いいの?私なんて。
(雨宮さんは強いから大丈夫だろうけど)いじめられちゃうよ?一緒に。
──それでも、それでも。
その言葉がただひたすらに。
「嬉しい──!」
──心に響くものだった。
沙愛蘭はこれ以上純華のことを見られなくなった。
(泣いてる顔なんて、見せられないよ!)
冷や汗をかきながら、じりじりとお菓子コーナーへ近付いていく。
(どうしよう……。本当に、やるの?……でも、やらないと何されるか……)
そんな事を考えながら、沙愛蘭はチョコレートを手に取った。
数分それを見つめた後、バッグに入れようとした、その時──
「イヤアアアアアア!」
女性の叫び声が、店外から聞こえた。
沙愛蘭はその声の主がいじめのグループのリーダー・佐々木香彩であることにいち早く気が付いた。
(佐々木さん……彼女が悲鳴をあげるなんて、何があったんだろう)
沙愛蘭はチョコレートを商品棚に戻し、コンビニの外へ飛び出した。
駐車場で腹を抱えて涙目になっていたのは、紛れもなく佐々木香彩であった。
そして香彩の前で仁王立ちしていたのは──男勝りなクラスメート・雨宮純華だった。
「何してるの?雨宮さん」
純華は沙愛蘭の声を聞いた瞬間体をビクリと震わせた。
「いや……その、えっと……こいつにちと喝を入れてやったのさっ」
「?どうして?私、雨宮さんにそんな事される義理、ないよね?」
沙愛蘭は自分を警戒している。
純華はそう思ったようだ。
「す、すまなかったね。確かに、大して話した事も無いようなヤツにこんな事されても嬉しいどころか、怪しいよねぇ」
「……」
沙愛蘭は純華を二十秒程見つめ、香彩に問い掛けた。
「あ、あ、雨宮さんは、さ、佐々木さ……んに、何をしたの?」
自分をいじめている人間にこんな事を訊くなんて、沙愛蘭にとって初めての経験だった。
香彩はそっぽを向いて、
「……腹パンよ」
と呟いた。
沙愛蘭はギョッとした。
(雨宮さんって、中学時代にヤンキーの相手よくしてたっていう噂があるのに!?)
「手加減はしたつもりだけど……そんなに痛かったかい?」
「うるさいわよ!……あ~!もういいわ!アンタ達!行くわよ!」
香彩は顔を赤らめながら、仲間と共に去っていった。
「……」
(何だったの?……それにしても、佐々木さんが逃げていくなんて…雨宮さん、怖っ)
純華は沙愛蘭に向かって頭を下げた。
「すまなかった!勝手な事をして……気が済むまで殴ってもらって構わないよっ」
「えっ!?ちょっ!?やめてよそんな……むしろ……こっちが謝りたいよ。雨宮さんに余計なことさせちゃって」
純華は手で顔を覆い隠しながら頭を上げた。
「?これはアタイの意志で、勝手にやった事だよ?」
「え?……というか、なんで顔隠してるの?」
「それは言えないけど……」
「あ、そうなんだね」
沙愛蘭はにやけていた。
(こんなに嬉しい事って……幼稚園ぶりだな……いじめ関係なしに会話したのって)
「?なんだか嬉しそうだね?」
「え?ま、まあ。……って!目隠れてるよね?なんで見えたの!?」
「それは置いておこうか…………ところで、急で申し訳ないんだけど、私と友達になってくれないかい?」
「え?」
沙愛蘭には、純華が神様に見えた。
いいの?私なんて。
(雨宮さんは強いから大丈夫だろうけど)いじめられちゃうよ?一緒に。
──それでも、それでも。
その言葉がただひたすらに。
「嬉しい──!」
──心に響くものだった。
沙愛蘭はこれ以上純華のことを見られなくなった。
(泣いてる顔なんて、見せられないよ!)
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