上 下
35 / 56
聖なる力は煙の奥に

しおりを挟む


農園を出て十分ほど歩くと…
森の入口に、味のある一軒家がたっていた。

庭には大量の木材や木を切る道具が置いてある。
いかにも木こりの家という雰囲気だ。


コンコン…


ドアをノックして少しまつと…
すぐに髭をたっぷり蓄えた大男が現れた。


「ん?どうしたんだい?」

「ヴェル・トゥーエ家の使者として来たモンスタースレイヤーのジェイスだ…キャローズ農園産のタバコについて調査している…木こりのファッテだな?」

「あぁ、そうだ」

「調査に協力してほしいんだが…話を聞けないか?」

「かまわないよ…出荷に制限がかかる前は、俺もキャローズのタバコファンだったしな…」

「助かるよ…最近、木を切りに森に入ったか?」

「いや…ここ数日は入って無いよ…最近森の様子が少しおかしくてな…」

「…森の様子がおかしい?」

「あぁ…今までいなかったグールの鳴き声が聞こえたり…最後に森に入った時なんか、木々が枯れている一帯を見た」

「…もしかして、先々月の嵐の後から…か?」

「あぁそうだ…よくわかったな」


ジェイスは徐々に真実を掴み始める。


「その木々が枯れている一帯に案内してもらえないか?金は払う」

「は?…だから言っただろ?グールがいるんだよ…」

「俺がアンタを守る…俺の本業はモンスタースレイヤーだからな」

「…」






森の中は、異様に暗かった。
何やら腐敗臭のようなものがふわっと臭ったり…音が全然反響しなかったり。

遠くでグールと思われる鳴き声が聞こえる。


「なんだか…前に入った時より様子がおかしいぜ…なぁ、やっぱり戻らないか?」

「大丈夫だ…グールの主食は動物や人間の死骸…滅多に生きている動物は襲われない…」

「しかしよぉ…なんか不気味じゃねぇか…?」


たしかにその森には、形容しがたい異様さが漂っていた。
ジメジメしているのに妙に寒い。

しかしジェイスはまっすぐに歩を進める。


「ほら、あそこだ…うわ…前に見た時よりも広がっているぜ…」

「…」


木々が枯れている一帯…

言葉だけでは分かりにくかったが、実際に見ているとその異様さにジェイスも言葉を失う。
まるで山火事にでもあった後のように…その森の一帯の木に葉は一切なく、灰色になり、地面には土が露出していた。

当然、他の場所以上に光は入り込んでくるものの…
まるで曇り空のように暗い。


「この一帯の中心に…池や川はないか…?」

「確かに大きな池がある…こんな風になる前は、そこでよく弁当を食ったよ…よくわかったな…」

「…」


森の一帯を進んでいくと、今度は逆に不気味な恐怖は無くなっていた。

見晴らしがいいので、周囲を見渡せることができる…というのもある。
しかしそれ以上に、その一帯に『命の感覚』を感じなかったからだ。

人間、動物、幽霊、悪魔…グールでさえも存在しない無機質な場所。
この一帯は、そんな印象を2人に与えた。


「あそこだ…うわ…」

「…」


枯れた一帯を10分ほどあるくと…大きな池があった。
しかしその池はひどく濁っており…灰色がかっていた。

森と同様に、その池も死んでいた。


「…」


ジェイスは池の前にひざまづいて、手のひらで池の水をすくう。
そしてクンクンと臭いをかいだ。



「(何の臭いもしない…腐敗臭すら…)」



そして今度は腕をまくって浅瀬の泥を救う。
胸ポケットから小さい顕微鏡を取り出し、その泥を見る。



「(これは藻(も)か?…色を失って、水分が多いのに干からびたようになっている…)」



ファッテは早くこの場から立ち去りたいのか…
ジェイスを少し急かす。



「おい…もう出ようぜ?」

「…」

「水の中に…何かいたのか?」

「…」



そしてジェイスは…
ようやく真実に到達した。



「いや…何もいない…本来、いるべき存在ですら」

「…本来いるべき存在?もしかして…何か事件についてわかったのか?」

「あぁ…」


ジェイスは軽く泥をすすいだ後…
立ち上がり、今回の事件を解決するため農園に戻る。



「あの事件を引き起こしたのは…水の精霊、ウンディーネだ」



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...